ストリーミングサービスのPlexが「音響的に似ている」曲を集めたプレイリストを作る機能を公開

メディアソフトウェアメーカーのPlexは、2020年にサブスク専用音楽アプリPlexampをリリースした。このアプリ名は、かつてのWinampに代わるものを目指すことを表している。米国時間8月12日、同社はPlexampアプリをアップデートし、Super Sonicという新機能を搭載した。これは例えば音楽のジャンルが一致するというようにメタデータだけを使うのではなく、「音響的に」似ている曲を集めたプレイリストを作れる機能だ。

同社は、ユーザーのライブラリにある曲が別の曲とどのように関連するかを音で判断するためにSuper Sonicを開発したと説明する。これは多くの曲を含むカタログにアプローチする方法のひとつで、雰囲気やトーン、テンポなどの属性に基づいて曲を分類するPandoraのMusic Genome Projectのようなものを思い起こさせる。

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しかし熟練の音楽学者が多くの属性をもとに曲を解析するMusic Genome Projectとは異なり、Super Sonicはテクノロジーを使う。

Plexampの新しい音響解析機能は、ニューラルネットワークとAIを活用してライブラリ中のすべての曲、アルバム、アーティストをマッピングする。Super Sonicはその解析の中から50ほどのパラメーターを抜き出して、適切に重みづけする。「音響的に似ている」とはN次元の空間において2つの点が近いことを指しているとPlexは説明する。

この新機能の設定にはCPUにかなり大きな負荷がかかり、ライブラリのサイズによるが数時間から数日かかることもある。しかし完了後はこの機能を使って音楽を発見できる。メタデータが少ない、あるいはまったくないインディーズや無名の音楽をたくさん聴く人にとっては、特に有効だろう。

解析が完了すると、新しいRelated Tracks(関連のある曲)機能で音響的に似ている曲が表示される。標準的なメタデータだけでは一致しない曲が出てきて驚くこともありそうだ。

もうひとつ、Mixes for You(あなたのためのミックス)にはユーザーがヘビロテした曲が集められ、さらに最近のお気に入りの他に音響的に似た曲も追加される。サーバーは以前に聞いていた曲をベースにしたミックスもいくつか作るので、さらにさまざまな曲が見つかる。

人気があったが数年前にメタデータプロバイダーの変更に伴って廃止されたPlex Mixに代わるものとして、新しいラジオ機能も公開する。音響的に似ている曲やアルバム全体を再生するTrack RadioとAlbum Radioに音響のデータが使われる。

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Super Sonic以外の新機能としては、アルバムをタイプごと(「デモ」や「ライブアルバム」など)に整理したり絞り込んだりする機能がある。またOn This Day(この日)機能では、アルバムの節目、例えばアルバムが20年前、30年前、50年前にリリースされたといったことがわかる。

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新しい音響解析機能を使えるのは有料のPlex Passのサブスク利用者で、macOS、Windows、LinuxのいずれかのマシンでPlex Media Server v1.24.0を動作させる必要がある。ただしARMのCPUには対応していない。

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Plexはパワーユーザーにもっとアピールできるサブスクリプションにしようと以前から取り組んできた。登録ユーザーはおよそ2500万人だが、パワーユーザーは多くない。しかし現在、同社の利益はサブスクの売上に完全に依存しているわけではない。無料の広告付きストリーミング市場に進出し、資金調達も実施した

現在Plexは、ストリーミング事業をレンタル、購入、サブスクリプションといった分野に拡大しようとしている。しかしSuper Sonicを見ればわかるように、Plexはデジタルメディアのコレクターや大ファンであるコアなオーディエンスにアピールするテクノロジーを今後も探り続けるだろう。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

ストリーミングメディアソフトメーカーPlexが広告付きストリーミングと事業拡大のため54.6億円の資金調達を実施

ストリーミングメディアソフトウェアメーカーのPlexはレンタル、購入、サブスクリプションコンテンツへの事業拡大に向けて、既存の投資元であるIntercapから5000万ドル(約54億600万円)の増資を行ったことを米国時間4月14日に発表した。今回の資金調達は、Plexにとって2014年以来初めてのものであり、Plexの初期のシード投資家や過去の買収時の株主からの株式およびオプションの購入、および初期の従業員の流動性確保のために一部が使用される。調達した5000万ドル(約54億600万円)のうち、1500万ドル(約16億2200万円)は新たな成長資金として活用される。

今回の資金調達(厳密にはPlexのシリーズC)による評価額は公表されていないが、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)やNexstar(ネクスタ―)など、継続している既存の投資家にとっては、比較的希薄化は低く済んだということだ。一方、初期の投資家の中には、株式の10倍以上のリターンを得ることができた人もいた。

今回のラウンドの一環として、Intercapの会長兼CEOであるJason Chapnik(ジェイソン・チャプニック)氏が会長として取締役会に参加し、Intercapの社長であるJames Merkur(ジェームズ・メルクア)氏も取締役会に参加した。今回の資金調達を含め、Plexはこれまでに6000万ドル(64億8900万円)以上の資金を調達している。

これまでPlexが資金調達に慎重だったのは、PlexのCEOであるKeith Valory(キース・ヴァロリー)氏がいうように「本当にその必要がなかったから」だ。つまり、同社は単独で利益を上げてきた

しかし、近年のPlexの状況は変化している。Plexは、映画やテレビ、音楽、写真などをユーザーのホームネットワーク上で整理するソフトウェアを提供することで、ホームメディアの愛好家を対象としてきたが、2017年に低価格のDIYストリーミングTVサービスを開始したことで、より大きな市場であるインターネットメディアに移行する人々を本格的に狙うようになった。その後Plexは、広告付きの無料ストリーミングサービスを展開し、2020年はViacomCBS(バイアコムCBS)傘下のPluto TV(プルートTV)のようなライバル企業に対抗して、広告付きのライブTV配信サービスを開始した。

現在、Plexは193カ国で2万本以上の無料オンデマンド映画や番組、150以上の無料ライブTVチャンネルを提供しており、パーソナルメディアライブラリやストリーミング音楽、ポッドキャストなどのコンテンツにもアクセスできる。

Plexは、提供するサービスの種類を増やすと同時に、Plexを初めて利用する人にとっての参入障壁を低くした。ユーザーはアカウント登録をせずに広告付き動画やライブ・リニア・ストリーミング・サービスにアクセスでき、これはPlexのビジネスモデルに影響を与えている。

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「これは例えば、RokuやFire TV、Vizioなどのデバイスの検索機能に組み込まれるようなデジタルマーケティングを対象としています。またサーチエンジンマーケティングやFacebookなど、デバイス上のデジタルマーケティングプログラムを利用して、ユーザーに視聴を開始してもらうこともあります」とヴァロリー氏はいう。「このタイプのデジタルマーケティングと事業のための顧客獲得コストが、実に効率的であることが分かりました。その結果、マーケティングへの投資から本当にすぐに利益を得ることができました」と付け加えた。

このモデルを基に、Plexは事業の拡大と新たな分野への進出のための資金調達を検討した。

新たな分野にはサブスクリプションコンテンツの管理やレンタル・購入の提供なども含まれており、Plexは2020年のロードマップの中で、2020年に登場する可能性があるとも話していた。しかし、その後新型コロナが発生した。ストリーミング自体は成長し、特に4月から6月、7月にかけては広告付きの動画が増えたものの、Plexの一部の社員は新型コロナ流行の影響を他の人よりも強く受けた。また、Plexはインフラの準備にもっと時間が必要だった。

Plexは現在、これらの取り組みを2021年中に開始するための準備を進めており、おそらく最初は動画レンタルかサブスクリプション・アグリゲーターのどちらかを提供することになるだろう(Plexによると、両方が同時に構築されているため、どちらが先にスタートするかは不明とのことだ)。

Plexは、AmazonやAppleがPrime VideoチャンネルやApple TVチャンネルで行っているようなサブスクリプションの販売だけを考えているわけではない。Plexは、ユーザーがお気に入りのストリーミングアプリ(他のサービスでは利用できない有名ブランドも含む)にアクセスできるようなディープリンク技術も検討している。これにより、PlexはReelgoodのようなサービスの競合相手となる可能性があるだろう。Reelgoodでは、ユーザーが視聴しているコンテンツを追跡し、個々のアプリ内だけでなく、すべてのストリーミングアプリでお勧めのコンテンツを得ることができる。

一方、Plexの動画レンタル(および購入)市場は、他のサービスと同じように、ユーザーがストリーミングできなかったコンテンツをお金を払って視聴する機会を提供するものだ。

双方のアイデアは「すべてのメディアニーズに応えるワンストップショップになる」というPlexの大きな目標に合致している。

「私たちは常に、かなり大胆なミッションを掲げています。自分の好きなコンテンツを手に入れるために、20種類のアプリを使用する必要はありません。1つの場所に行けば、すべてのことができるようにするべきなのです」とヴァロリー氏は語る。

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Plexは、この分野と広告サポート事業の両方で成長を促進するために、今回の資金を利用して現在100人いるチームを拡大し、マーケティング部門やマネタイズ部門、開発面での投資を行う予定だ。

「確かに、パフォーマンス、成長のためのマーケティング、そしてエンゲージメントの強化という点では、まだまだやるべきことがあります。この事業は非常に急速に成長しており、これまでのところ、広告型動画配信サービスで新規ユーザーを獲得するための力をつけるという点ではかなり上手くいっています。課題は山積していますが、今までにつけた力は、製品全体のTOFU(トップオブファネル)やエンゲージメントの向上につながると考えています」とヴァロリー氏はいう。

Plexのラウンドを主導したIntercapは、長期的な視野に立っており、特にストリーミングの世界で現在起こっている断片化は、最終的にPlex自身の成長に役立つと述べている。

チャプニック氏は「コンテンツプロバイダー、クリエイター、そして消費者は、多くのストリーミングメディアサービスが爆発的に増えたことによるツケを払っていて、業界は、その体験を可能な限り楽しくするための信頼できる方法を必要としています。Plexは、常に新しいメディアの課題を解決する最前線にいて、この問題を解決するための準備が整っていると信じています。彼らは将来のTV会社になるでしょう」と語った。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)