高級飲食店予約の「ポケットコンシェルジュ」、運営元が500 Startups Japanなどから資金調達——訪日外国人旅行者に照準

ポケットメニューのメンバーら。2列目中央が代表取締役社長の戸門慶氏、その右が500 Startups Japanのジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏

ポケットメニューのメンバーら。2列目中央が代表取締役社長の戸門慶氏、その右が500 Startups Japanのジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏

高級飲食店に特化した飲食店予約サービス「ポケットコンシェルジュ」。サービスを運営するポケットメニューは4月13日、アイ・マーキュリーキャピタル、アドウェイズ、マネックスベンチャーズ、アライドアーキテクツおよび500 Startups Japanが運営するファンドから資金調達を実施したことをあきらかにした。金額や出資比率は非公開だが、合計で数億円に上るという。今回の調達をもとに採用を進め、開発、営業、マーケティングを強化するとしている。ポケットメニューは2013年にフジ・スタートアップ・ベンチャーズと日本ベンチャーキャピタルから、2015年2月にLINEから資金調達を実施している。

なお今回の投資は、2015年9月に立ち上がった500 Startups Japanの投資第1号案件となる(500 Startups Japanは同時にもう1社スペイシーへの投資を実行しており、厳密にはこの2社が最初の投資案件となる)。500 Startups Japanは2月にファンドのファーストクローズ(最終的な規模は3000万ドルを予定。現在1500万ドル規模だという)を終えたばかり。今後積極的に投資を行うとしている。

ポケットメニューは2011年の創業で、2013年からポケットコンシェルジュを展開してきた。代表取締役である戸門慶氏は元料理人で飲食店のプロデュースなどを手がけてきた人物。これまでのキャリアも生かし、高級飲食店を中心に予約可能な店舗を拡大。また2014年には予約に加えて決済サービスも開始した。現在の会員数は12万人、300店舗以上を掲載している。

ポケットコンシェルジュは東京を中心に横浜、京都の店舗を掲載しているが、最近ではインバウンド、つまり訪日外国人旅行者のニーズが急増しているのだという。「訪日旅行者の予約は月次で20〜30%ずつ伸び、日本人の予約と半々というところまで伸びている。現在はFacebook広告や一部の英語メディアでの露出などをしているが、調達を契機により積極的なマーケティングを進める」(ポケットメニューCFOの小山達郎氏)という。

ちなみにポケットコンシェルジュにおける1件の予約(平均2.2人)あたりの平均単価は国内ユーザーで3万円、訪日旅行者のユーザーで6万円。僕らだって旅先ではいつも以上にいいモノを食べたいのだから単価も高くなることが多いが、一方で店舗からすれば、外国人の旅行者に対して言語の問題を感じたり、ドタキャン(直前の予約キャンセル)やノーショウ(連絡もなく、来店もしないこと)のリスクを感じたりするケースもあるそう。昨年ミシュランの2つ星を獲得した寿司屋が外国人の予約を断るという対応をしたとして賛否があったが、その背景には「旅行者のドタキャンが多い」という問題があったと言われている。ポケットコンシェルジュはコース料理の予約が中心となっていること、決済機能も提供することで、こういった店舗側の課題を解決する一助にもなっているという。

自身もポケットコンシェルジュのユーザーであるという500 Startups Japanの澤山陽平氏は「苦しい時期もあったが、現在はトラクションも非常に好調で、インバウンド需要なども増えるため、さらに伸ばせるサービス」だと語る。OpenTableのような競合サービスもあるが、ポケットコンシェルジュが掲載するのは、高級店や伝統のある店などが多く、実は参入障壁の高いサービスとも言える。こういった点でも元料理人である戸門氏、そして同社の強みがあるとしている。500 Startupsとしては、将来的には海外のパートナー紹介なども行っていく考え。

政府では2020年に訪日旅行者4000万人という目標を掲げている。ポケットメニューでは今後、彼らのニーズを満たすべく、さまざまな施策を行っていく予定だという。

レストラン予約サービスのポケットコンシェルジュ、Uberライクなスマート決済を実現

12億ドルの超大型調達をはじめとして、最近何かと話題に上がる「Uber」。そのビジネスの話は置いておいて、実際にユーザーとして使ってみると分かることがある。降車の際にいちいち財布からお金を出して会計しなくとも、そのまま車を出て、あらかじめ登録しておいたクレジットカードで自動で決済できるという快適さだ。僕もまだ2度ほどしか使っていないが、想像以上に使い心地がいい。

そんな快適な経験をレストランでも味わえるようになるのが、ポケットメニューが手がけるレストラン予約サービス「ポケットコンシェルジュ」の新機能「ポケットエクスペリエンス」だ。

ポケットコンシェルジュは、会食や接待などにも使える厳選されたレストランを予約できるサービスだ。現在は東京を中心に150店舗ほどのレストランが登録されており、客単価は1万3000円程度。1年前の時点では高所得者層を中心に約1万人が利用していると話していたが、現在のユーザー数に関しては詳細は公開していない。

実際僕も利用したことがあるが、通常紹介がないと入れないようなところも含めて、ポケットコンシェルジュでないとオンライン予約できないようなレストランが中心となってラインアップされている。店舗数こそまだ少ないがそのグレードは既存のレストラン予約サービスとは一線を画している。また、会食での利用を想定していることもあって、レストランへの要望や利用用途なども登録できるようになっている。

今回発表されたポケットエクスペリエンスだが、あらかじめクレジットカードを登録して、予約の際にカードでの支払いを選択しておけば、当日レストランで会計をすることなく、自動でカード決済されるというもの。会計の内容は会計後にメールで送信される。ユーザーのサービス利用は無料。ポケットメニューは店舗側への手数料と、カード会社への手数料の差額で収益を上げるモデルとなる。

お酒の追加などで金額が変わることもあるため、基本的にはコース料理とペアリング(コースのひと皿ごとに合ったお酒を提供する)、コース料理とドリンク1杯のセットといったようなパッケージを店舗が用意し、追加注文については加算して決済するという仕組みにする。1ユーザーが登録できるカードは5枚となっており、法人カードと個人カードを登録して使い分けることもできる。

店舗にも大きなメリット

このポケットエクスペリエンス、ユーザーにとっては会食での話の腰を折らずにスムーズな会計を実現できるというメリットがすぐに想像できると思うが(デートなどでおごる際にも有効ではないかという話も出たが)、実はそれ以上に大きいのは店舗側のメリットだそうだ。

ポケットメニュー代表取締役社長の戸門慶氏は6年間板前として修業をしたのち、飲食店のコンサルティングを手がけていた人物。同氏の話によると、実は会計のたびにスタッフが伝票を取ってレジに移動して…という作業はいつ発生するか分からず、なかなか面倒なモノだそうだ。それがポケットコンシェルジュの管理画面1つで、しかも多少の時間差はあっても処理できるようになるのは、ユーザー以上にありがたい話なのだそうだ。

現時点でポケットエクスペリエンスに対応するのは全レストランのうち15店舗ほど。同社ではこれを月内にも30店舗程度まで拡大し、最終的には全店舗への導入を目指すとしている。またこれにあわせて、7月末にもポケットコンシェルジュの有料会員モデルをやめ、無料利用、決済手数料でのマネタイズというビジネスモデルに移行するとしている。今秋にはスマートフォンアプリも提供予定だ。


ポケットコンシェルジュを運営するポケットメニューが総額6,000万円の資金調達を実施

会食や接待向けのレストラン予約サービス「ポケットコンシェルジュ」を運営するポケットメニューがフジ・スタートアップ・ベンチャーズ、日本ベンチャーキャピタル、個人投資家から第三者割当増資で約6,000万円を調達した。今回調達した資金は主にサービスの展開地域をパリ、京都、大阪に広げていくために充てられる。

ポケットコンシェルジュは、会食や接待などに使える厳選されたレストランを予約できるサービスである。現在は東京の60店舗ほどのレストランが登録されており、レストランの客単価は1万円から2万円程度で、高所得者層を中心に約1万人が利用しているそうだ。

このサービスは食べログやRettyのようなユーザーの評価を中心としたものではなく、サービス側が選んだレストランだけが掲載されている。ユーザーは目的(接待、デート等)、日程、料理のジャンルからレストランを探し、サービス上で予約できる。

この予約フォームは今時のサービスに比べるとやや入力項目が多い。会食の趣旨や過去の来店回数、店への要望、連れの情報(アレルギーや好き嫌い)といったものがある。また、登録時にも年齢や性別などの情報も入力を求められる。

だが、これにはもちろん訳があるようだ。板前として6年間働いた経験を持つポケットメニュー代表取締役の戸門慶氏曰く、普段レストランが電話で予約を受け付ける際には声のトーンから年齢と性別を判断し、それを踏まえた上で席の配置はもちろん(若い人で騒ぎそうならカウンターの端っこなど)、高齢の方の場合には味を薄めたり、量を減らすなどの工夫をしているという。その他、来店回数によってコース料理でも同じメニューを出さないようにもできる。

ポケットコンシェルジュでは会食や接待で利用されることが多いから、このような細かな気配りも重要になってくる。入力は確かに面倒だが、結果として一番大事なレストランでの体験が向上することになる。こういった点は板前の経験がある戸門氏ならではの視点と言えるだろう。

このようにポケットコンシェルジュは戸門氏の経験を活かしている点が多いように感じるのだが、今後のパリでの展開方法も同様だ。パリでの事業では地元の企業と組み、新たに新会社を立ち上げて展開していくのだが、これがレストランの海外展開と似ているという。

IT企業はGoogleやFacebookのように自社で海外展開していくことも多々あるが、ポケットコンシェルジュの場合はレストランと組むため、そのネットワークが非常に重要だという。というのも、レストランはシェフ同士の繋がりも多いようで、実際にサービスに掲載するレストランをシェフから紹介してもらうこともあるからだ。良いシェフが紹介するレストランは良い確率高いそうで、そのようなコネがあるのと無いのでは良いレストランをサービスに取り込めるか否かに差が出てくる。

戸門氏によると、レストランの海外展開では、しばしばこのように地元レストランや企業と組んで展開することがあるそうで、ポケットコンシェルジュもこれと似たような展開をしていくという。

すでにパリでの事業は話が進んでおり、数名がパリに移動し本格的に展開していくという。今後は上記の地域での展開はもちろん、スマートフォン向けのアプリの開発やクレジットでの事前決済機能などサービス内容の充実も進めていく。