試験監督ソフトのProctorioを大学生が提訴「批判を抑えるために著作権法を乱用した」

米国のある大学生が、試験監督ソフトウェアをてがけるProctorio(プロクトリオ)を提訴した。同社が批判に対する「不愉快な活動」を鎮めるために、著作権法を乱用して同社製品に批判的なツイートを削除したと告発している。

電子フロンティア財団(EFF)は、このマイアミ大学の学生でセキュリティ研究も行っているErik Johnson(エリック・ジョンソン)氏の代理人として訴訟を起こし、Proctorioが「DMCAを不当利用してジョンソン氏のコメントを弱体化させた」と非難した。

Proctorioは、ジョンソン氏のツイート3件が同社の著作権を侵害しているとして、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき削除要請を通知。これを受けてTwitter(ツイッター)はそれらのツイートを非表示にした。

新型コロナウイルス感染流行が拡大する中、学校や大学では学生の試験をリモートで行い、そのバーチャルな監督として試験監督ソフトウェアを用いるケースが増えている。学生は学校が選んだ試験監督ソフトウェアをインストールし、PCのマイクやウェブカメラへのアクセスを許可しなければならない。学校側は、この試験監督ソフトを通じて、学生の不正行為の可能性を発見することが可能になる。しかし、有色人種の学生からは、このソフトウェアが白人以外の顔をきちんと認識できないことについて不満が出ている。また、このソフトウェアには高速インターネットアクセスが必要だが、低所得者層の家庭にはそれがないことも多い。これらのチェックに失敗すると、その学生は試験に落ちてしまうこともある。

このようにソフトウェアが不正を防ぐための監視を行っているにもかかわらず、Viceは2021年3月、Proctorioが監視している試験で簡単に不正行為を行う学生がいると報じた。いくつかの学校では、プライバシーの問題を理由に、Proctorioやその他の試験監督ソフトウェアの使用を禁止または中止している。

Proctorioの試験監視ソフトウェアはChromeの拡張機能であり、一般的なデスクトップ用ソフトウェアとは違って、バグや欠陥がないか、簡単にダウンロードしてソースコードを調べることができる。ジョンソン氏は、このソフトが不正行為の兆候を検出した場合、どのような状況で学生のテストが終了するのか、疑わしい目の動きや異常なマウスクリックをどのように監視しているのかなど、コードを調査して発見した内容をツイートした。

これらのジョンソン氏のツイートには、このChrome拡張機能のソースコードの一部が公開されているPastebin(ペーストビン)へのリンクが含まれていた。

Proctorioは当時、ジョンソン氏が「Proctorioのソフトウェアコードの抜粋をコピーして自身のTwitterアカウントに投稿した」ことで、同社の権利を侵害したと、危機管理会社のEdelman(エデルマン)を通じて主張。しかし、Twitterは、Proctorioの削除要請が「不完全」であると判断し、ジョンソン氏のツイートを復活させた

「ソフトウェア企業は、自社に対する批判者を弱体化させるために著作権法を乱用することはできません」と、EFFのスタッフ弁護士であるCara Gagliano(カーラ・ガグリアーノ)氏は述べている。「自分の研究を説明したり、批判的なコメントを裏づけるためにコードの一部を使用することは、書評で本を引用することと何ら変わりません」。

訴状では、Proctorioの「根拠のないDMCA削除要請のパターン」が「自分の研究結果を報告することでさらなる嫌がらせを受けるのではないか」という不安を抱かせ、ジョンソン氏のセキュリティ研究活動に萎縮効果を与えたと主張している。

「著作権所有者は、批判者が著作権侵害をしていると虚偽の告発をした場合、特にその目的が脅迫や弱体化であることが明らかな場合には、責任を問われるべきです」と、ガグリアーノ氏は述べている。「私たちは、ジョンソン氏が自身のコメントを裏づけるためにコードの抜粋やスクリーンショットを使用したことに対する、さらなる法的脅迫や削除要請を防ぐため、侵害はないという宣言的判決を裁判所に求めています」。

EFFは、これが批判に対応するためにProctorioが広く用いている手法の1つであると主張している。2020年、ProctorioのCEOであるMike Olsen(マイク・オルセン)氏は、学生のプライベートなチャットログを許可なくRedditに掲載した。この事件の後、オルセン氏は自分のTwitterアカウントを非公開にしている。また、Proctorioはブリティッシュ・コロンビア大学の学習技術専門家であるIan Linkletter(イアン・リンクレター)氏が、同社の試験監督ソフトウェアを批判するツイートを投稿したとして提訴している。

今回の訴訟はProctorioの本社があるアリゾナ州で行われている。Proctorioのマイク・オルセンCEOは、コメントの要請に応じていない。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Proctoriomデジタルミレニアム著作権法(DMCA)裁判Twitterプライバシー

画像クレジット:Alex Edelman / AFP / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)