YC支援のBooktropeは編集チームをマーケットプレイスで募る新しい出版プラットフォーム

なんらかの物書きであれば、本の出版に関するホラーストーリーを聞いたことがあるだろう。次から次とあらゆる版元から突き返された原稿。版元のロッカーに何年も埋まっていた原稿。出版はされたものの版元の支援がゼロだった本、等々。

一方で著者自身によるセルフ・パブリッシングにもリスクが一杯だ。優秀な編集者やデザイナーを自費で雇うとなれば大金がかかる。その費用を惜しめばみっともない表紙に誤植や辻褄の合わぬ文章だらけの見るからに「自費出版」の本になってしまう。

これに対して現在Y Combinatorで現在開講中のインキュベーター・クラスに所属しているスタートアップ、Booktropeは異なるアプローチを提案している。Booktrope自身が版元だが、著者は伝統的版元が出版を受け入れる際の高いハードルに妨げられるずにプロの出版チームの支援を受けられる。

最高マーケティング責任者のKatherine Searsによれば、彼女自身も共同ファウンダーも出版業界の出身ではないという。 「私たちの強みは先入観なしに問題に取り組むことができたことだ。しかし私たちは全員、熱烈な読書家だ」とSearsは語った。

小さな版元から本を出したことがあり、優秀な出版のプロにも知り合いがいる私としては、部外者が出版ビジネスを始めたと聞いて、いささか懸念を覚えた。しかしSearsやCEOのKen Shear(ちなみにTwitchTVの共同ファウンダーEmmett Shearの父)、CTO Andy Robertsに取材するうちに、彼らは出版業界出身ではなくても、出版に関して知識豊富であり、ビジネスモデルも綿密に検討していることが分かった。

著者はBooktropeに自分自身と出版を希望している本に関する情報を送る。Booktropeはすべての申し込みをそのまま受け入れるわけではない。アルゴリズムと人間の判断を組み合わせた選定プロセスが用意されている。

ただしBooktropeが重視するのは内容の質もよりも著者とBooktropeプラットフォームとの適合性だ。世の中には内容はお粗末、レビューでも手ひどく批判されているにもかかわらずどこからかファンが湧いて出てベストセラーになった本がたくさんある。

「読者公衆は別に文学的価値判断を必要としていないと思う」とSearsは言う。Booktropeのアプローチは編集者や発行者は控えめなフィルターの役割を果たし、本の価値はできるかぎり読者自身に判断させるというものだ。

いずれにせよ、申し込みがBooktropeに受け入れられた場合、著者は完成した原稿を送付する。Booktropeは運営するオンライン・マーケップレイスでそのプロジェクトに関心を持つ編集者、デザイナーを募る。チームが集まれば、Booktropeが提供するオンライン・ツールで編集、制作が行われる。著者はチームに報酬を直接には支払う必要はなく、著者印税の一部を提供することを約束すればよい。著者はポケットマネーを負担せずにすみ、チームには本の売上に貢献しようとするインセンティブが与えられるわけだ。

BooktropeはScribdなどと同様、印刷版とデジタル版の両方をAmazon、現実の書店、定期購入のブッククラブなどさまざまな流通経路で販売する。現在Booktropeを利用する著者は以前にセルフ・パブリッシングを試したことがあり、その結果に満足できなかった人たちが多いという。一方、編集者、デザイナーは出版業界で働くフリーのプロが多い。

Booktropeは利益の30%を手数料として徴収し、残りの70%を著者と編集製作チームで分け合う。その比率はチーム内の合意によって決定する(Shearが強調したところによると、ここでいう利益とは本の売上から直接の制作費用を差し引いた額であり、Booktrope自身のいわゆる「一般管理費」は含まれていないという)。

SearsとShearによると、Booktropeをスタートさせたのは3年近く前になるが、実際に運営を開始したのはもっと最近でRobertsが参加してオンライン・システムが構築されてからだという。Booktropeはすでに400冊弱を出版し、合計250万部を販売した。

画像: Brenda Clarke/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


電子書籍は2018年に紙を越えられるか


PricewaterhouseCoopers(PwC)のアナリストたちは、近々電子書籍が出版社の稼ぎ頭の座を印刷書籍から奪い取るだろうと(またも)予測している。これは何を意味しているのか? 要するに、電子本が普及し価格が安定すれば、ユーザーはパルプよりもビットに多くの金を費やすだろうということだ。その結果起こる変化は、印刷本にとどめをさすことになる。

NYT か作ったこのグラフは、米国における電子本のシェアが、2018年にわずかに半数を越えることを示している。

本当にそうなるのか?私は2018年という数字は買っていない。第一に、
The Digital Readerも指摘しているように、PwCは毎年毎年何度も何度も同じ予測を出している。なぜか? いつかは正しくなるからだ。

正直なところ、私は米国で電子本が印刷本を越えるのはもっとずっと早いと思っていた。 数字は依然として印刷本が電子本を上回り、ヨーロッパではまだまだ印刷が主流だ。しかし、安い電書リーダーが普及すればそれも変わるだろうし、世代の問題もある。子供や高年齢層 ー 書籍市場を支える読者たち ー がまだ印刷書籍を読んでいることは、 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、『トワイライト』、『ハリーポッター』の古書が大量に流通していることが証明している。しかし、親たちが子供を寝かしつけるのにタブレットを使うようになるにつれ、固執層の前半は近く崩壊すると私は感じている。高年齢層についても、祖父母や親たちが子供のKindleに馴染むにつれ、数字は減少していくだろう。

紙の本はいまもありふれている。電子本が「勝つ」ためには、印刷本が崇拝の対象になる必要がある。私は電子出版が驚くべきツールの数々を著者に提供したことを理解している書籍愛好家の一人として、最近Cory Doctorowの新刊『Information Doesn’t Want To Be Free』をハードカバーで買った。なぜ紙版を買ったのか理由を思い出せないが ー たぶん私がAmazonを注意して見ていなかったからだろう ー 美しい装丁の本を手にして、カバーが表紙から少しずれるのを見ながら、きっちりとしたページをめくるたびに時が刻まれていくことには、きっと何かがあるのだろう。しかし、インディー作家のひとりとして、遠からず私は電子本の体験をもっとロマンチックなものに変えることかできるだろう。われわれは今2つの世界に捕らえられている。新しい方はまだ準備が整っていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


クリスマスを前に戦争は終わった―HachetteとAmazonがKindle版価格設定問題で和解

メリー・クリスマスと叫ぶのにはまだ少し早いが、例の戦争は終わった。AmazonとHachette Book Groupはeブックと印刷本の販売に関して「複数年にわたる合意」に達したという。この合意によれば、Hachetteはすべてのeブックに関して価格を自由に設定できる。 ただしHachetteは「低い価格に対してよりよい販売条件を得られる」という。つまりHachetteは自分で価格を設定できるが、無茶な設定をしなければ得をするらしい。

AmazonのKindle担当副社長、David Naggarはプレスリリースで、「今回の合意に、Hachetteが価格を引き下げればメリットがあるようなインセンティブの仕組みを導入できたことを嬉しく思っている。これは読者、著者をともに大きく利するものだと信ずる」と述べた。

新たな合意によるeブックの価格設定は2015年から適用となるが、AmazonはHachetteのタイトルに対する制裁をすぐに中止するという。制裁を受けていたHachetteの本は再び「目立つようにプロモーションされる」ようになる。

簡単に言えば、AmazonはHachetteに価格設定権というアメを与えたわけだ。しかしHachetteがAmazonの価格ルールに従えばメリットがあるような仕組みが導入されたことは大きな効果があるだろう。HachetteがAmazonに対して独占的な低価格でKindle版を提供すればAmazonストアのショーウィンドウの目立つ位置に飾ってもらえる、ということなのだろう。Hachetteは価格設定の自由を手に入れはしたが、やがてこれも「悪魔との契約」だったと考えるようになるかもしれない。 

画像: Stephen Woods/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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AmazonのクラウドライティングサービスWriteOnは読者と作者のコミュニティ、Wattpadなどにも対抗

Amazonが、クラウドエディティング/ライティングサービス(crowd-editing and -writing service)WriteOnを非公開ベータで立ち上げた。Kindle Author Forums上の発表によると、このサイトは、“読者と筆者が対話をしながら良いストーリーを作っていったり、すぐれたストーリーをさらに良くしていく”ための場だ。

読者は、招待コードX9RJTE9Hでここからベータに参加できる。

このサービスでは、まず著者がストーリーやその部分的な章を自分の著者ページにアップロードする(ぼくのページはここ)。すると、好評のストーリーが徐々にランクの上の方へ上がっていく。

今日の発表声明から引用しよう:

自分の作品を磨きたい人や、フィードバックのスキルを研ぎ澄ましたい人、あるいは熱心な読者や筆者のグループを見つけて参加したい人のためのコミュニティを構築します。しかも、まだベータ状態の新しいKindleプロジェクトの、今後の内容や方向性について、あなたが介入し手助けすることもできます。それはちょっとした実験であり、一種の出たとこ勝負であり、そして参加者全員に楽しい時間を過ごしていただきたいと願う試みです。参加は、完全に自由です。作品を投稿するにあたり、契約義務のようなものはまったくありません。ですから、いつでも取り下げることができます。ただ、みんなの力で良い作品を作りたいという願いや、ほかの人の作品を良くしていくために自分も参加したいという熱意だけが、このプロジェクトを支えます。https://writeon.amazon.com/を訪ねて、X9RJTE9Hを入力し、この助け合いの場に参加してください。

このサービスは夏から始まっていたが、広く知られるようになったのはThe Digital Readerのおかげだ。まだ機能が少なくて、ブログに毛が生えた程度のもののようだが、すでに多くのインディー作品がアップロードされている。

この種のサービスはほかにもあるが、けっこうトラフィックを稼げるサイトだろう。Wattpadなんかは、ユーザ数が数百万、すでに数百万ワードの作品がアップロードされた、と言っており、成功例もある。Amazonは同社のKindle Worldsサービスでインディーのライターたちに取り入ろうとしていた。それは、ファン・フィクションをアップロードして公開するという、奇妙なシステムだった。しかしWriteOnは、オリジナルのフィクションや短編など、もっとふつうの著作をねらっているようだ。

Amazonはすでに、インディーにとって重要な場の一つだ。でもこれまでは、彼らのコミュニティがなかった。WriteOnを手始めとする今後の取り組みによって、その穴をうめていくのだろう。どこまで良質なコミュニケーションが行われるか、それが今後の見ものだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Amazonでは5分に1冊新しい本が出る

Claude Nougatというライターが書いたおもしろい記事によると、U.S. AmazonのKindle Storeには8月16日現在で約340万種の本(とアプリ)があり、1時間に12種ずつ増えている。1時間に12ということは、えーと、5分に一つだ。そしてたぶん、その多くはインディーの本だ。

よーく考えてみよう。

楽観主義の人にとっては何も問題ないが、わずかでも悲観主義の人にとっては、考えさせられる数字だ。Nougatはこう書いている:

“ある程度成功している自費出版の著者にとっても、ライター人生は厳しいものである。われわれ、その他大勢はいったいどうなるのか?

それはつまり、新人が一人現れるたびに彼/彼女を呑み込んでしまう本の津波なのだ!”

この津波は、もっとメジャーな本も呑み込む。合衆国の五大大手出版社は、Amazonのドアの前で立ち止まる。これだけたくさんの本から選べるのだから、有名出版社の本のKindle版に14ドル99セントも払うのはもったいない。99セントの、あるいは無料の、いろいろな本を試した方が楽しい。有名出版社の本はプロが念を入れて作っている、という主張はもちろんある。しかしそれも、急速に変わりつつある。

インディーの出版物は今ものすごく人気があり、中にはロボットが書いているものもある。あっという間に10万種の本を書いたロボットもいる。ロボットがいようといまいと、ジャンクの多い世界だから、レビューやランク付けがますます重要だ。そしてランクやレビューに頼るようになると、多くの人びとがせいぜい上位100ぐらいしか検討しない。101番目以降は、忘却の彼方へと消え去る。

インディーの100万長者ですら、楽ではない。ヴァンパイア小説で数百万ドルを稼いだAmanda Hockingも、今では本を無料または安くせざるをえなくなり、ランクはぐっと下降した。Hugh HoweyのDustはAmazonという本の大神殿で800位にいるが、それは実質、340万種のビリにいるのと等しい。

ライターであることは、ますます難しい。インディーのための出版ツールが本の出版を容易にし、Amazonは彼らに道を開いた。でもAmazonの稼ぎでボートを買ったり、生活を支えていくことは、奇跡以外ではありえない。不可能ではないが、でもあなたが大津波に飲み込まれてしまう理由が340万ある(1時間に12ある)。奇跡を起こす秘訣は、このノイズに打ち勝つことだが、それはいつの時代にも、人が何かを書くことの高貴な目標だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Amazon Unlimitedに出版ビッグ5が参加しない理由

Amazon Unlimitedは、本のNetflixと評された。これは、Netflixが、低予算インディーズ作品の山と、いくつかの主要小スタジオの作品からなるという意味である限りは正しい。実は、Amazonの新しい9.99ドル読み放題サービスには、「商業出版社ビッグ5」の本が含まれていない。Amazonが口をつぐんでいる話題だ。

私はAmazoに説明を求めているが未だに回答はない。しかし、Unlimitedのリストにある人気作品を見渡せば、いずれも、小さな出版社 ー 「小さな」は相対的表現 ー あるいは独立系作品であることがわかる。例えば、 Life Of Piの発行元は、Mariner Booksで、ここは教育系出版社、Houghton Mifflin Harcourtの傘下だ。Michael LewisのThe Flash Boysは、W. W. Norton & Companyから出ている。そして目玉作品のHarry Potterは?これを所有するのはPottermore Limited、J K Rowlingのビジネスベンチャーだ。要するに、大物たちは参加していない。

実際、主要出版社の多くは、他のパートナーの開発と投資に必死だ。 例えば、Oyster Booksは、このアンチAmazon感情の恩恵に預かっているし、Zola Booksのように、出版インサイダーらが出資した会社もある。これらのサービスが実を ー 現金を ー 成らせられるかどうかは、別問題だ。

インディーズ作家の一人として私は、Amazonがロングテールのためにしていることは重要だと知っている。自分の本を[試して」みる人たちからお金をもらえるのはすばらしいことだ。しかし、Amazonの行動にまつわる騒動はまだ終わっていない。Hachetteとの戦いは収まる様子がなく、今やビッグ5は、Amazonが味方であるより、はるかそれ以上に敵であることに気づき始めている、全体的に見て、Unlimitedの人気作品に関する見通しは明るくない。しかし、Netflixが実証したように、少数の大ヒット作品を前面に掲げ、そこそこ人気のタイトルを無限リストに加えることは、堅実なビジネスモデルだ。

ついでだが、Unlimitedは電子デバイスでの読書を探求したい子供たちにとって、実に有難いサービスだ。例えば私の息子は、Minecraftの電子書籍をすでに数十冊ダウンロードしており、著者はロボットか小学生らしい。一冊など、全編がインターネットから集めてきたMinecratf用語から成っていた。ちなみに、彼はまだハリーポッターを読もうとしない。無料なのに。

この事実は、ビッグ5をためらわせるにちがいない。もしAmazonが一儲けすることができなければ、富は広く分散されることになり、Oprah Book Club受賞作品の著者たちも実入りは少なくなるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ブログのように簡単な個人出版プラットホームTablo、KindleやiBookで再出版もできる

21歳のAsh Daviesが作った個人出版プラットホームTablo.ioが、Y CombinatorのパートナーKevin HalePaul Reiningから40万ドルを調達した。Tablo.ioは、テキストのYouTubeと呼ばれるWattpad的な個人出版サイトだが、ルックスはずっと良い。それに、ここで作った作品を、AmazonやiBooksであらためて再出版することも簡単にできる。

Daviesはこう言う: “ぼくはブロガーだったから、何かをタイプして[Publish]ボタンをクリックすることに慣れっこになっていた。でもこれからは、まだ無名の著者たちに創作と共有と読者につながる場を提供したいと思った。Tabloで本を出版することは、ブログをパブリッシュすることと同じぐらい簡単で、しかも作品が完成したら、すでに読者がそこにいるんだ”。

このサービスは今、およそ100か国の著者たち約10000名が利用している。各著者のプロフィールもあり、また読者を招待して作品の評価について彼らをフォローすることもできる。このサービスのインタフェイスはとてもなめらかで使いやすく、ブックエディタの画面でテキストを入力したら、それをすぐにパブリッシュ/出版できる。本の各章はこのサービスの中の‘ポスト’(投稿)として扱われ、ユーザがそれらを読んだり、会員登録をしてアップデートの通知をもらったりする。

インディー出版のためのツールはすでにいろいろあるが、Daviesは良いデザインと使いやすいインタフェイスで人気を得たいと考えている。なかなか魅力的な取り組みだし、今回のシード資金でさらに細部を磨くことができるだろう。なお、今このサイトが無料で提供している超常現象を扱ったおとぎ話は、とても楽しい。

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Amazon、Hachetteの著者に「交渉が決着するまでeブック売上の100%を支払う」と提案

AmazonはHachetteとの戦争が長引く中で新しい手を打ってきた。New York Timesによれば、AmazonのKindleコンテンツ担当副社長、DavidNaggarはHachetteの一部の著者に向けて「交渉が決着するまで売上の100%を著者に払う」と提案するメールを送ったという。このメールはAmazonの宿敵、AuthorsGuildにも転送された。

Naggarのメールにはこうある。

Hachetteとの交渉が長引く中、これに巻き込まれた著者が不利益を被っていることをわれわれは認識している。特に新人、中堅の著者に与える影響が深刻であることに留意している。しかしHachetteはわれわれの提案に対してなかなか反応せず、交渉を進展させようという意欲に著しく欠けている。Hachetteがこの態度を劇的に改めない限り、交渉は非常に長引くだろう。

Hachetteが同意するなら、この交渉が続く期間中、Hachetteの著者はAmazonが販売するeブックの売上の100%を受け取ることにするようわれわれは提案する。AmazonとHachetteは双方ともに、新たな合意に達するまでの期間中、eブック売上からの利益を放棄するものとする。

これと同時に、AmazonはHachetteの印刷版書籍の在庫、販売価格についてもすべて従来のレベルに戻す。また近刊書の予約受け付けも再開する。

この書簡に対してAuthors Guildは「著者を助けると見せかけてHachetteを骨抜きにしようとする企みだ」とブーイングしている。しかしAmazonが出版社を必要とする度合いよりも出版社がAmazonを必要とする度合いの方が大きい。主にAmazonの支援によって、インディー出版社は質量ともに四半期ごとに急成長しつつある。インディー出版社が既存の巨大出版社を追い越す日も近いのではないか。

出版社に対する著者の感情も厳しくなっている。先週、ミステリー作家のRobert Chazz Chute はAuthors GuildのAmazonに対する頑な態度について「Amazonは市場で競争に勝っているに過ぎない。これを独占と呼んで非難するのは奇妙だ」と批判した。

Amazonが著者が失っている収入の埋め合わせをするのは正しい。しかしこれがAmazonにできる最良のことかといえばもちろんノーだ。しかし両者とも簡単には引き下がらないだろう。SF作家のコリー・ドクトロウが論じたように、出版社は海賊行為を恐れるあまり、最大、最強の海賊、ジェフ・ベゾスに権利を預けてしまった。出版社が2000年代にeブックにDRMを設定することを決めたとき、われわれがAmazonの鉄の腕に囲いこまれるという運命が決まってしまった。AppleでさえAmazonからわれわれを救い出すことはできなかった。

いずれHachetteは妥協を余儀なくされるだろう。Amazonの支配力は一層増すに違いない。Authors Guildはまたもやイノベーションに歯ぎしりして食ってかかるチャンスを得るだろう。そうした中で割を食うのはいつも著者だ

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


eブックの価格と販売量を分析する―英米で大きな傾向の相違があった

編集部:この記事は本の比較サイト、LuzmeのファウンダーRachel Willmerの寄稿

読者はeブックにいくらなら払ってよいと考えているだろうか? 9.99ドル? 0.99ドル? 逆に売る立場だったらどうだろう?

 昨年、Luzmeは大量のeブックの販売データを入手して分析を試みた。以下に私が興味を感じた結果を紹介したい。決して包括的な分析ではないが、議論を始める材料になるのではないかと期待している。

対象はAmazonで2013年にLuzmeを経由して販売されたAmazonのeブックの実際の価格である。

アメリカ市場

アメリカ市場のデータについては10ドルを基準としてグラフ化してみた。

グラフはそれぞれの価格帯で何冊売れたかを表している


価格の安いほうの端でいちばんたくさん売れており、価格が高くなるにつれて次第に減少している。しかし10ドルの部分に局所的な山がある。

10ドルの山を別にすればだいたい予期されたとおりの結果だ。ただし意外だったのは10ドル以上の高価格帯のeブックの売れ行きだった(この点については後で触れる)。

では価格帯別の売上高を見てみよう。

ここでは9-10ドルの価格帯の山がもっとはっきり見える。これはおそらく版元側が10ドルという価格を適正と考えて値付けしていることの表れだろう。.

イギリス市場

ところがイギリス市場の様子はアメリカとまったく異なる。こちらも6-7ポンド(おおよそ10ドルに相当)を中心に正規化してある。

イギリス市場では、1ポンド以下(主として0.99ポンド)の価格帯の販売量が断然多い。価格に反比例して販売量は減少していき、5ポンド(7.50ドル)以上では全くといっていいほど売れていない。


売上高についても同様で、5ポンド以下の価格帯が大部分を占める。

10ドル以下の価格帯で大部分の本が売れていることについて理解は難しくない。

Luzmeのユーザーにインタビューした結果では、大きく2つのカテゴリーが存在することがわかった。一つは毎週のように新しい本を買う熱心なユーザーで、どんな本であれその時点で安い本を好む。もう一つは層は特定のジャンルの本に関心を持つユーザーで、そう頻繁に本を買うわけではないが、値段はあまり気にせず欲しい本があれば買う。

しかしそれにしてもアメリカとイギリスではこれほど差があるのだろう?

イギリスではAmazonと新規参入したeブック・プロバイダとの間に激烈な価格競争がある。以前はソニーとNookだったが、現在はSainsburysが主要なライバルだ。以前はソニーが0.2ポンドの特別価格で攻勢をかけていた。現在では安売りは00.99ポンドが主流のようだ。

これに対してアメリカではNetflix、Spotifyなどeブック市場への新規参入組は定額(サブスクリプション)モデルで既存のライバルに挑戦している。

要約

Luzmeから見た2013年の意外なeブック事情

アメリカ

  1. アメリカではeブックは1ドルから10ドルまでのどの価格帯でもほぼ同じように売れている。
  2. 売上冊数がもっとも多いのは1-2ドル。
  3. 売上高がもっとも多いのは9-10ドル。
  4. 100ドル以上の高価な特別版も売れている

イギリス

  1. アメリカと様相が大きく異る
  2. 5ポンド(7.5ドル)以上のeブックはほとんど売れていない。
  3. 売上冊数がもっとも多いのは1ポンド以下。
  4. 売上高がもっとも多いのも1ポンド以下。
  5. 高価な特別版が売れている様子はほとんどない。

ちなみに、

  1. Digital Signal Processing in Power System Protection and Controlは134.84ドルもする!

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独立系書店がカムバック中―町の本屋を殺したのはそもそもAmazonではない

一見不思議なことが起きている。独立系の書店がカムバックしつつある。その理由が興味深い。電子書籍の台頭が書店に打撃を与えたという話は毎日うんざりするほど見聞きする。しかしここでは別の要素が働いているようなのだ。

下のグラフはAmerican Booksellers Associationのデータなので独立系書店だけの動向を見るにはやや不向きだが、全体像を理解するには便利だ。過去10年間でみると、2005年くらいまで独立系書店は憂慮すべきスピードで減少を続けた。ところがその後減少は底を打ち、やがて上向きになって、2010年ごろから増加に転じている。

しかしこのデータを見ただけでも書店を殺した犯人がAmazonではないことが分かる。実は小規模な独立系書店を殺したのは大規模書店チェーンだった。そもそもKindleが最初に登場したのは2007年で、書店数の減少が底を打った後だ。The Digital ReaderのNate Hoffelderはこう書いている。

重要なのは1995年から2002年にかけて書店の減少が急激だった時期にAmazonはこれというほどの規模になっていなかったという点だ。つまり独立系書店を殺したのはAmazonではない。その栄誉は〔この時期に拡大を続けていた〕Burns& NobleやBordersのような大型チェーン店に帰せられるべきものだ。

私は印刷物を売る書店はまだ泥沼を脱してはいないが、将来に十分な希望があると考えている。レコード音楽の登場がコンサートを殺さなかったのと同様、著者も読者と直接コミュニケーションができる場所が必要だ。書店は地域の本好きな人々のコミュニティーのハブとなれるし、著者との交流イベントの舞台ともなれる。また書店がeブックの販売から何らかの利益を上げる方法があれば(私はあると信じている)それも助けになるだろう。

現在多くの書店は「本も売っているコーヒーショップ」になっている。これは便利だし、書店というエコシステムの活性化に重要な役割を果たしている。そして最近の巨大書店チェーンの破綻は、本の選択やアドバイスに優れた能力のある独立系の書店の成功のチャンスを大きく広げるものだ。

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KindleのDRMを1ページずつ外していくレゴ・ロボット

「レゴを通じて体制に抵抗する」シリーズの新しい事例として、われわれはKindle本を1ページずつめくり、コンピューターにeインク画面の写真を撮るよう指示してOCR処理を行い、完全DRMフリーのテキストを作るロボットを紹介する。早い話、これは知能的複写機であり、理論的には、完全に合法だ。

ウィーン工科大学のPeter Purgathoferが作ったこのプロジェクトは、実用的技術というよりはアート作品なので、この計画がThe Pirate Bayに登場することを期待してはいけない。Purgathoferは、本の貸し借りや転売に関するAmazonの当初の約束は破られ、出版業界もAmazonと歩調を合わせるように著作権法を強化していると信じている。「このDIY Kindleスキャナーは、Jeff Bezosが一度は守ったが、後に取り上げたわれわれの権利の消滅を反影したアート表現だ。これはまた、DRMの無益さを訴える声明でもある」とPurgathoferは書いている。

「これは私がプライベートな時間に個人として行ったプロジェクトであり、私の個人的見解を反映したものであることを留意していただきた。これはウィーン工科大学における私の仕事ではないと考えている」。

このプロジェクトは、公正使用の原則の下にコンテンツの撮影を許しているDMCAの「アナログ・ホール」と呼ばれるカテゴリーに属すものだ。撮った写真をコンピューターに入れた段階で少々怪しくなるが、デジタル著作権法では合法だ。それにほら、レゴだし。
via BB

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(翻訳:Nob Takahashi)


Amazon、独自のコミック出版、Jet Cityをローンチ―ニール・ステーヴンスンやジョージ・R・R・マーティンが参加

Amazonが今度はMarvelとDCに挑戦するようだ。今日(米国時間7/9)、Amazonはコミック専門の新しいインプリント〔出版事業のブランド〕をローンチするとプレスリリースで発表した

ブランド名はJet City Comicsで、ニール・スティーヴンソン(Neal Stephenson)のSymposiumが最初の出版物となる。今年中にジョージ・R・R・マーティン(George R. R. Martin)原作のコミックも刊行される。また2014年にはディストピアものSFのWoolがグラフィックノベルとしてシリーズ化される。

当面Amazon Jet CityはSFとファンタジーという手堅い分野を専門にするようだ。強力なオリジナル・シリーズを揃えるMarvelコミックスやDCコミックスを直接脅かすような存在ではないが、これはおそらく他の分野へ進出するための地ならしなののだろう。

今回のJet Cityの他に、Amazonの既存のインプリントとしてはMontlake Romance(ロマンス)、Day One(短編、新人作家)、Skyscape(青少年向け)などがある。 Amazonは独自出版事業の拡大に全力を挙げている。今回は著名SF作家の作品でJet Cityを立ち上げたが、急速にオリジナル作品(Amazonのセルフ出版事業からの作品の採用が有望だろう)によってタイトルを拡充していくはずだ。

中長期的に見ると、Amazonの新しい出版ブランドはコミックや小説の出版にとどまらず、オリジナル・ビデオやグッズなどとのタイアップ事業にも役立つだろう。Amazonはメディア関連事業のあらゆる分野に進出して独自の環境を建設する考えだ。そうなれば著作権も一元的に管理できるし、利益を確保するのに非常に好都合だ。

またこれはKindleコミックでもあるので、Kindle Fireの普及にも役立つし、他のプラットフォームでの電子書籍販売も促進できる。デジタル・コミックスはcomiXologyなどがリードする急成長分野だ。Amazonの参入で競争は激化するだろう。ともあれJet Cityから出版される作品がどんなレベルであるかを早く見てみたい。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+