科学への貢献を求めるクラウドファンディング?! DNAの損傷具合を数値化して健康対策を行うExogen Bioが、Indiegogoにて血液データの提供を要請

自己データを数値化することによる健康管理(quantified health)の動きはますます発展していきそうな様子だ。さまざまなフィットネスバンドがライフスタイルに応じた形で利用され始めており、いろいろな場面で測定、記録、分析、健康状態分析などに利用されている。適用範囲はほぼ無限というほどに広く、大いに稼げる商品分野として成長を続けている。

そのような中、アメリカからExogen Bioという新しいスタートアップが登場してきた。自分でDNAの損傷具合をチェックして、データに基づく健康管理の一助としようとするものだ。

DNAの損傷というと、ずいぶん恐ろしく聞こえるが、しかし実のところすべての人の持つDNAは頻繁に損傷しているのだ。細胞レベルでの自然な劣化というものもある。もちろん損傷の度合いというのは人それぞれによって異なる。食習慣や運動レベル、環境有害物質と接する頻度などによっても違いが出てくる。

つまり、個人的なDNAの損傷具合をチェックしたい場合、同年齢で、生活環境も近い人と比較した方が、状況をわかりやすく把握できるようになる。こうした「近しい」人とのデータ比較を大規模に行うことで、他の人と違うライフスタイルがDNAの損傷に有意な影響を及ぼしているのかどうかを確認できるようになる(とくに何か身体に悪いことをしていなくても、年を取ることでDNAは損傷していく)。そうしたデータを把握することで、DNAに悪い行動を控えることができる可能性もある。

Exogen Bioの主な狙いは、DNAの損傷具合を数値化することで、損傷をもたらす原因を突き止めるサポートをしようというものだ。

Exogen Bioは調査方法を進化させ、一度に大量の試料からすばやくDNAの損傷具合を数値化するためのシステムを作り上げた。従来は研究機関にてひとつずつ検査を行っており、非常に時間も人手もかかり、また広い範囲での比較などが難しいものとなっていた。

さらに、Exogen Bioの技術では、採取する血液の量を従来より減らし、採血後、直ちに処理をしなくてもよくなった。これにより血液採取キットを各個人に送って、そして研究機関に送り返してもらってから分析を行うということが可能になっている。

「今回の実験は、科学実験のクラウドソース化ともいうべきものです」とExogen Bioの共同ファウンダーであるJon Tangは言っている。「科学調査の予算が減らされる傾向にある中、研究者自身も効率的な研究を行うための方法をいろいろと考え始めているのです」とのこと。

必要となる大量のデータをクラウドソーシングを活用して集める今回のような仕組みを、Exogen Bioでは「Citizen Science Project」(市民サイエンスプロジェクト)と命名したそうだ。価値ある調査を行うために、多くの人を巻き込んだ分析が必要となる中で考え出された手法だ。多くの人に「市民研究者」という立場で研究に参加してもらおうとするものだ。滅菌した道具を用いて家庭で血液を採取し、それを保存容器に入れてExogenに送り返して分析を行う。

クラウドソーシングを活用したこのアプローチにより、Exogenとしては有益でかつ商用にも利用できるDNAの損傷調査データベースを構築したい考えだ。そしてやがてはDNA損傷のホットスポットマップなども作ろうとするわけだろう。またDNA損傷の様子と、特定の病気との関連性などが明らかになってくることも考えられる。

「今回のクラウドファンディング・キャンペーンを通して、DNA損傷と特定の病気との関連性を明らかにすることができれば、病院での検査に活用してもらうきっかけになると思いますし、また病の診療に用いるためのFDA認可を得ることに繋がると思うのです」とTangは発言している。「コレステロールテストと同じくらいの気軽さでDNA検査ができるようにし、検査のために頻繁に利用してもらえるようなツールとして育てていきたいと思っているのです」。

「また、CTスキャンやレントゲン撮影などの際に、何らかのミスによって放射線を多く浴びてしまうことのないようにチェックするためのツールとしても利用できるのではないかと考えています。ローレンス・バークレー国立研究所での研究成果を受けて、そうした目的でも使えるようにしているのです」。

ところで、Exogen Bioに血液サンプルを提供する利用者(市民研究者)が、見返りとして得ることのできるものはなんだろうか。Exogen Bioが利用者に提供するのはDNAの損傷具合についてのデータだ。利用者としては、自らがExogen Bioがビジネスに利用するためのデータを提供しつつ、かつ追加料理金を支払って分析データをみせてもらうということになる(Exogen Bioの各種設備を使って、優秀なスタッフにデータを分析してもらい、それをわかりやすく提示してもらうことに料金を支払うということになる)。

血液サンプルをExogen Bioに送れば、セキュアな接続環境を通じてDNAの損傷具合を示すデータを閲覧することができる。かかる費用は送付する血液データ1単位毎に99ドルということになっている(3日間にわって3度採取した血液を送る)。アメリカ国外からの利用の場合は124ドルだ。但し、この99ドルの検査によってわかるのは「現時点での損傷率」であり、食事やエクササイズの影響を確認するということはできない。

比較データを入手したい場合、費用は179ドル(アメリカ国外からは204ドル)となる。これにより血液サンプルを採取するためのキットが2セット送られてくるので、負荷の高い運動前後の比較のため、あるいはカーボバックローディング・ダイエットの身体への影響などを確認することができる。

ファミリーパックも用意されているので、数百ドルで家族の健康をチェックしてみたいという人は、そちらを使ってみると良いだろう。

Exogen Bioは、現在Indiegogoにてクラウドファンディング・キャンペーンを行っているところだ。既に5万ドル分の参加者目標は達成している。健康を意識する人々の興味をひいているのは間違えのないところだ。

本記事(英文)が執筆された時点では、370人以上から63,700ドルの資金が集まっているが、同時にExogen Bioはシード資金の出資者も探しているところだ。Indiegogoでの成功も、出資者の興味をひくのに役立つことだろう。

クラウドファンディングを科学分野に用いるというのは確かに面白い試みだ。但し、利用者側は試料と金銭を提供し、それによりExogen Bioはビジネスで活用できるデータを蓄積していくという仕組みに、メリット面でのアンバランスを感じるという人はいるかもしれない(ちなみにIndiegogoのページには「血液サンプル提供者のデータは、個人が特定できない形にして研究用途での利用を行います。研究成果は商取引に活用される場合もあります」と記されている)。この仕組みがどのように発展していくのかは興味深いところだ。

また、DNAの損傷に繋がる原因にはさまざまのものが考えられる。したがって、1度限りの検査では、誤って特定の生活習慣について有害であるという評価をしてしまうこともあり得る。

「私たちの提供する分析結果が、最初から完璧なものであるわけではない点についてはよくわかっています」とTangは言う。同社のキットは提供され始めたばかりで、まだ他の利用者との比較検討などが十分に行えない。「しかしこれまでに100人以上の人のデータを採取しています。そしてデータベースは成長し続けています。データベースが大きくなれば、他のデータと比較することにより、より正確な分析を行うことができるようになるのです」。

「コレステロールテストの場合、分析で得られるデータ自体に大きな価値が認められるようになっています。それはこれまでに蓄えられた知見により、コレステロール値と循環器系の疾患に相関関係が認められているからです。DNAの損傷具合の検査についても、そのレベルにまで到達することがひとつの目的です」とも述べている。

「但し、まずはDNAテストで得られる各データがそれぞれどのような意味を持つことになるのかをきちんと定義していくことが最初のステップとなります。そのために、より広く人々からのデータを集めることを目的としてクラウドソーシングの活用を行っているのです。どのような状態であれば損傷具合が高く、あるいは低く、はたまたノーマルであるのかというところからデータを蓄積していく必要があるのです。そして、損傷具合が高いケースについて、それがどのような病気に結びつく可能性があり、あるいはまたどういった環境要因ないし生活習慣から生じるのかを分析していく必要があるのです」とのこと。

「ちなみにコレステロール検査についても、繰り返し調査をすることで得られるデータには深みが増していきます。ライフスタイルの変遷などを踏まえてでたーの分析をしていくことで、循環器系疾患に備えるために最適なコレステロールレベルを知ることができるようになるのです。私たちの検査についても、幅広いライフスタイルの人々のデータを集めることで、真に役立つ知見を得ていきたいと考えています」。

「最終的には個人で自分のデータを分析し、分析結果に応じた対応ができるようにすることが目的です。DNAの健康を保つことで、加齢による身体の不調を減じることができると考えています」。

尚、Tangは、Exogenについて「直ちに」何らかの成果を生み出すものとは考えないで欲しいとも述べている。今回のクラウドソーシングの活用から、すぐにも「適切な行動パターン」のようなものが提示されるわけではないとのことだ。

「DNAに影響を及ぼす要因というのは非常に多くのものがあります」とTangは説明している。「個々のデータの分析を行い、それを多くの人と照らし合わせることで正確な分析を行うことができるようになります。科学技術顧問として動いてくれるチームと連携しつつ、効果的な分析を行うのに必要なデータを集めようとしているところなのです」。

「Indiegogoを通じた試み以外にも、広い範囲からデータを集めようとする活動を行っています。とにかく有意なデータを見つけるためには多くのデータを集めて分析する必要があるのです」。

昨年には、ベイエリア周辺で試験的な調査も行っている。100人少々の人からデータを集めて、そこで得られたデータを分類整理して、今後のデータ集積の方法を探ったのだ。

「小さな規模での実験でしたが、この規模のデータセットでもDNA損壊に繋がる要因を見て取ることができます。たとえば予測していた通り、加齢により損壊の程度はあがっていきます(もちろんこれは従来から言われていたことではあります)。そしてこうした損壊が老化や、その他の老齢による病に結びついているのです」。

「また、4名の人は癌を患っていました。彼らは同年代の人と比べて、DNA損壊の程度がかなり大きくなっていました。ここに挙げた例は小規模の試験的調査から予見通りの結果が得られたということを示すものです。これはすなわち、Exogen Bioのテストにより、DNA損壊の程度をきちんと把握することができ、そしてそれにより病気に対応する手段を探ることのできる可能性があるということを示すものです」とも述べている。

Exogen Bio – How Damaged is Your DNA? from Exogen Biotechnology on Vimeo.

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(翻訳:Maeda, H


Fitwallは、厳しすぎず、緩すぎないエクササイズを約束するトレーニングジム

多くの熱心なトレーニングジム初心者の決意は長続きしない。ひとつの問題は、初心者は頑張りすぎて、鍛えられすぎた筋肉が復活する前にジムのメンバーをやめてしまう事だ。一方で、ブラッド・ピット似のキャラクターたちは、汗をかく事もなく未熟な状態でトレーニングを終えてしまう。もっと運動できることを知らないからだ。Fitwallは、カリフォルニア州サンディエゴに出来た新しい数値化型ジムで、全員が正確にやるべき強さのトレーニングをすることをモットーにしている。

メンバーは全員心拍モニターを装着し、横に置かれたiPadで目標心拍数を見ながら重力ベースの運動を行う。上のビデオに、TechCrunchサンフランシスコ本社前で、私が移動型Fitwallを試しているところが映っている。

「メンバーは常にリアルタイムでモニターされている」とFitwallのCEO Josh Weinsteinは言う。彼には、ユタ州エデンで行われたSummit Series Outsideカンファレンスで初めて会った。Fitwallのヘッドコーチ、Clifton Harskiによると、初心者は「大抵の場合、やりすぎるために長続きしない。トレーニングは激しくやるべきだが、そのための準備が整うまではやるべきではない」という。私が汗まみれでワークアウトする姿を上のビデオで見てほしい。

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(翻訳:Nob Takahashi)