QuantumScapeが株式を売却し全固体電池の生産資金調達、市場価値を高める

逆さ合併により上場企業となったわずか数カ月後、QuantumScape(クオンタムスケープ)は、全固体電池のパイロット生産ライン拡張の資金を得るために株式を発行した。

QuantumScapeが規制当局向けの提出書類に記した内容によれば、1300万株の売却(引受人がオプションを行使すれば195万株が上乗せされる)による純利益は、1株あたりの公募価格を59.34ドルと想定した場合、8億9500万ドル(約97兆円)になると思われる。価格は米国時間3月24日に市場が閉じてから確定するとBloombergは伝えている。この資金はQS-0と呼ばれる大規模な予備パイロット生産ラインの建設と、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)との合弁事業の一環として作られる大型生産工場QS-1の建設の一部に使われる。

公募を開始してから数時間は投資家たちの反応は思わしくなく、価格は開始時点から13パーセント以上も下落した。この市場の反応は、公募の突然の発表に動揺してのことと考えられる。ちょうど6カ月前、QuantumScapeは特別買収目的会社(SPAC)のKensington Capital Acquisition Corp(ケンジントン・キャピタル・アクイジション)との合併に合意した。当時QuantumScapeは、合併によって7億ドル(約760億円)以上を調達できると話していたが、これには株式の私募(PIPE)5億ドル(約540億円)が含まれている。この資金調達は、Fidelity Management & Research CompanyとJanus Transactionという機関投資会社に支えられていた。

QuantumScapeは、この数年間、電気自動車の航続距離を飛躍的に伸ばし、高速充電を可能にする次世代技術である全固体電池の開発を密かに行っていた。同社は早くから、Kleiner PerkinsやKhosla Venturesといった高名なベンチャー投資企業の注目と資金を集めていた。Volkswagenがこの絵に乗ってきたのが2012年のことだった。同自動車メーカーはQuantumScapeに、2020年の2億ドル(220億円)を含む合計3億ドル(約325億円)の投資を行っている。この追加資金により、両社の共同開発は加速したと、Volkswagen Group Components(フォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツ)の会長Thomas Schmall(トーマス・シュモール)氏は当時話していた。

VolkswagenとQuantumScapeの提携の核心は、その合弁事業にある。それは2018年に発表された、全固定電池技術の開発と、開発後の商用規模での生産を目指すという内容だ。両社は、全固体電池の産業レベルでの生産ができるパイロットプラントの建設計画を公表した。そしてQuantumScapeは、Volkswagenから2億ドルの投資を受けたわずか4カ月後の2020年9月、Kensington Capital Acquisition Corpとの合併に合意したことを発表した。

QuantumScapeは2021年、カリフォルニアの予備パイロットプラントを20万平方フィート(約1万8600平方メートル)拡張し、生産能力を高め計画があることを発表している。同社の計画がうまくいけば、QS-0と呼ばれる予備パイロット生産ラインは、公表されている2倍以上の生産能力を持つことになる。QS-0の目的は、QuantumScapeが全固体電池の開発、テスト、システム調整、大量生産に向けた生産工程の確立のために使う予定の大量なサンプルを作ることにあると同社は話している。

予備パイロットラインは、Volkswagenとその他の自動車OEMメーカー、さらには他業種の潜在顧客向けに、十分な量の試作品を生産することにもなっている。QuantumScapeは、2021年後半にはQS-0の長期リースを確実にし、2023年には試作品の生産開始を予定している。

QuantumScapeはさらに、Volkswagenとの合弁事業で21GWhのバッテリー生産ラインを構築する計画も立てている。

「この公募による収益は、QS-0の拡張版の建設、QS-0の運営、QS-1 Expansion(エクスパンション)プラント建設の合弁事業経費、合弁事業で想定される負債の補てん、運転資本および一般の企業目的の自己資本割り当てへの、十分な資金供給を目的とするする」と同社は提出書類に記している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:QuantumScape全固体電池フォルクスワーゲン

画像クレジット:QuantumScape

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)