ツイッターがSlack対抗のメッセージングサービスQuillを買収、チームはDM機能開発に取り組む

Twitter(ツイッター)は新CEOの下、広告ベースのオープンエンドな消費者によるメッセージ投稿からさらに事業を多様化するために、今後の展開を示唆するような買収を行った。Twitterは、ビジネスに特化したメッセージングサービスQuill(クイル)を買収した。Slack(スラック)などへの対抗と、人々のTwitter利用維持を目的としている。

買収条件は開示されていない。Quillは、Sam AltmanやIndex Venturesなどの出資者から約1600万ドル(約18億円)を調達し、2021年2月にステルス状態から登場した。Slackの欠点を指摘し、Salesforce(セールスフォース)に買収されたことで勢いを増したSlackに対抗する製品を開発しようとした勇敢さはさておき、Quillの最大のセールスポイントは、スタートアップコミュニティの多くの人々が賞賛する、Stripe(ストライプ)の元クリエイティブディレクターであるLudwig Pettersson(ルードウィヒ・ペターソン)氏が設立したことだ。

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Twitterの広報担当によると、Quillは今回の買収の対象にはならず、アプリとしての活動は終了するとのことだ。しかし、Quillのチームは、TwitterのExperience部門に加わり、メッセージングツール、特にTwitterのダイレクトメッセージ(DM)の開発に取り組むことになっている。またTwitterによると、ペターソン氏はプロダクトマネージャーの役割を担い、Oji Udezue(オジ・ウデツエ)氏が率いるConversationsチームに所属する。

DMは、Twitterウォッチャーにとって長い間関心の的だった。多くの人はTwitterがいつ、どのようにしてDMをより独立した製品、そして可能なビジネスラインに発展させようとするのか関心を寄せてきた。特に、近年はメッセージングアプリの大ブームがあり、他の多くのオープンエンドのソーシャルメディア・プラットフォームがダイレクトメッセージのビジネスを強化する動きがあったためだ。

今、Twitterはビジネスラインを多様化する動きを活発化させているが、もしかしたらこの買収はその機会になるかもしれない。

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Quillにとってはほろ苦いエンディングだ。前述したように、Quillは社会人にはコラボレーションとコミュニケーションが必要だが、気晴らしを犠牲にしてはいけないという主張をし、それを解決するためにまったく新しい製品を構築して規模を拡大しようとする大胆さを持っていた。しかし、この分野への新規参入を成功させることは、他の多くの大金持ちやプラットフォームを独占する企業が積極的に展開していなかったとしても、困難なことだった。Quillは才能と野心に満ちたチームを結成した。それゆえに、彼らのIPと人材が次に何に活用されるか、見る価値がある。

ペターソン氏も仲間に加わるかどうかTechCrunchは問い合わせており、情報が入り次第、この記事を更新する。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

気が散らないメッセージングアプリ「Quill」、どこからともなく現れSlackに迫る勢い

Slackが2013年に公開した統合しやすくGIFにも対応したチャットプラットフォームは職場のコミュニケーション風景を瞬く間に一変させた。それから10年と経たずに、最初は大きな成長と利用増、次いで大規模なVCラウンドとバリュエーション既存プラットフォームとの物議を醸した競争、その後の上場Salesforceによる277億ドル(約3兆20億円)の買収で、同社はビッグテックの仲間入りを果たした。こうしたサイクルが一巡した現在、Slackを震撼させているQuillの視界は良好だ。

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米国時間2月23日、どこからともなくQuillという新しいアプリが静かに公開された。ウェブの他、MacOS、Windows、Linux、Android、iOSで利用できる。

QuillはSlackのようなメッセージングアプリで、職場の同僚の間で業務の状況を連絡しあったり、プロジェクトについて話し合ったりできる。そして(またもやSlackと同じように)料金プランにはフリーミアムサービスと、1ユーザーあたり月額15ドル(約1626円)でより多くのメッセージ履歴とストレージを利用できる有料プランがある。企業向けのプランも用意されるようだ。

Slackとは違って(という意味が暗に込められているように思えるが)、Quillは気を散らさずに済む方法でメッセージを伝達する。そのため相手に時間をかけさせず、集中力やエネルギーを奪うこともない。Quillは自らを「集中している人たちのためのメッセージングサービスと謳っている。

Quillには同僚とのチャット、チャンネルの作成、他のアプリとの統合、ビデオや音声による会話など、Slackと同じ機能がたくさんあるが、私の同僚が冗談でいうには「Slackに似ているけど、こっちのほうがカラフル!」だそうである。他にも、文字通り気を散らさないことに焦点を合わせるような機能を備えている。

「毎日何千件ものメッセージをチェックしないと遅れをとってしまうような状況にほとほと嫌気がさしていて、それまでの対面のコミュニケーション方法のさらに上を行いくチャットの手段を構築したのです」。とQuillnoはそのウェブサイトに記載している。「より良く考えられたチャット手段。それがQuillです」。

例えば「構造化チャンネル」では、チャットをウォーターフォール式のスレッドで表示せずに、さまざまな会話を1つのチャンネルの中にスレッドとして表示する。アプリの自動ソート機能は、今参加しているアクティブな会話をそうでない会話よりも上に表示してくれる。通知の制限があるため、集中しなければならないものを差異化することができる。例えば送信者は設定を変更して(!!を使って)、これは重大なメッセージなので相手に応答してもらいたい、と知らせることができる。ビデオチャットではテキストメッセージのまま継続できるサイドバーも自動的に有効になる。

業務外のソーシャルなチャット用に別のチャンネルを作ることもできる。またすでに開始した会話を操作できる機能もある。開始済みの会話をスレッドに再キャストして、すばやくメッセンジャーに返信できる。簡単でわかりやすいやり方で重要事項をチャンネルの一番上にピン止めできるし、会話が開始された後で新しいスレッドを作れるのに加えて、チャンネルやスレッド間でメッセージを移動することも可能だ。

また、SMSや電子メールを使ってQuillのチャットを操作することもでき、Slackのように、他のアプリの通知機能をプロセスに統合する機能も提供されている。

まだ、音声チャンネル用のClubhouse風の機能や、エンド・ツー・エンドの暗号化、コンテキストベースの検索(キーワード検索はすでに利用可能になっている)、ユーザープロファイルといった機能の追加も準備中だ。

「高負荷」を管理する

このアプリは3年近くの間秘密裏に開発されていた。プロジェクトには日の目を見ないものもあるだろうが、このアプリは成り立ちとコンテクストがひと味違っていたのだ。

まず初めに、QuillはStripeの元クリエイティブディレクターであるLudwig Pettersson(ルートヴィヒ・ペッターソン)氏が創設した。同氏が手がけた決済会社の主力製品とプラットフォームが持つシンプルさは高く評価されていた(このシンプルさは後にサービスの代名詞になり、商業的な拡大にひと役買った)。

同氏が関わっていたことで、Quill開発の取り組みは多少なりとも注目を集めたかもしれない。Slackといくつかの巨大な、Microsoft(マイクロソフト)やFacebook(フェイスブック)など資金力のあるライバルたちに完全に占拠されていたかのように見えた状況にあって、Quillはまだほんの構想に過ぎなかった時期に、すでにシードラウンドで200万ドル(約2億1680万円)をSam Altman(サム・アルトマン)氏(当時Y Combinatorの責任者だった)とGeneral Catalystから調達していた。

次いで、同社はIndex VenturesのSarah Cannon(サラ・キャノン)氏が主導したシリーズAで1250万ドル(約13億5480万円)を調達し、合計の調達額は1450万ドル(約15億7150万円)となった。TechCrunchが当時報じたように、同社のシリーズAの時価総額は6250万ドル(約67憶7400万円)に上った。

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これに加えて、Quillの誕生とペッターソン氏とチームのメンバーがアイデアを思いついた背景にはこんな話がある。聞いた話によると、アイデアのそもそもの発端はメッセージングアプリが持つ、特にSlackのような職場のコミュニケーションツールが与えてくれるコミュニケーションのマジックをかたちにすること、ただしよくありがちな気が散るようなやり方やフラストレーションの溜まるやり方はしない、ということだった。

2018年の時点ですでにSlackはビッグな製品であり、時価総額は70億ドル(約7623億円)を超え、数百万人ものユーザーがいた。しかしながら、生産性とは真逆であると評する人も徐々に増えつつあった。「起きているすべてのことをSlackで追跡するのは大変な作業で、注意が散漫になってしまいます。ネットワーク効果があるためSlackはパワフルになったけれども、そもそも高負荷システムとしてデザインされたわけではありませんでした」。Quillの噂を初めて聞いた2018年に、何か知っているかアルトマン氏に尋ねたとき、同氏はそのように答えた。同氏は当時、Y CombinatorとOpenAIの両方で責任者を務めていた。

Stripe、後にOpenAI(Stripe退職後の1年間を過ごした)でのペッターソン氏の仕事ぶりに「衝撃」を受けたとアルトマン氏はいう。ペッターソン氏が「Slackのより優れたバージョン」を作ろうと提案すれば、もうそれは「信頼できるアイデア」なのであって、たとえ製品の影もかたちもなくても十分に支援するに足るものだったからだ。

気を散らさないことに力を入れているアプリが今日、ファンファーレを奏でることなく粛々と公開されるのは何とも似つかわしい。これで十分用が足りるのだから、もう宣伝に注意を奪われることはないでしょう?とでもいうようだ。

いずれにせよ、これから同社がどのように勢いを増していくのかに注目したい。すでにTechCrunchは今回の投資に関するサラ・キャノン氏へのインタビューをIndexに打診し、回答を待っているところだ。ペッターソン氏へのインタビューも試みているが、2018年の8月にアプリの噂を聞きつけて以来ずっと同氏への取材を試みてきたことから、(今回の話も)期待薄であるとお知らせしなければならない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Quillメッセージングアプリ

画像クレジット:Quill

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)