セルフケアに焦点を当てた音声ソーシャルネットワークQuiltが3.7億円調達

音声ソーシャル1.0の時代が本格的に到来しつつある。これまでポッドキャストやClubhouse(クラブハウス)がリードしてきたこの分野に、他の音声ソーシャル系スタートアップの参入が相次いでいる。ウェルネスとコミュニティに焦点を当てた音声ソーシャルネットワークであるQuilt(キルト)は、Mayfield Fund(メイフィールド・ファンド)が主導するシードラウンドで350万ドル(約3億7000万円)を調達。同ファンドのRishi Garg(リシ・ガーグ)氏が取締役会に参加している。

Quiltは、Ashley Sumner(アシュリー・サムナー)氏が設立したコミュニティプラットフォームとしてスタートした。当初は、同じ地域に住む他の人を自宅に招くという形式だった。サムナー氏はNeueHouse(ノイエハウス)の創設チームの一員であり、物理的な空間を通してコミュニティを構築することにキャリアを費やしてきた。何千ものQuiltの会話が人々の家で交わされていたが、それも2020年3月に新型コロナウイルス感染が発生する前のこと。結果として、このスタートアップは存亡の危機に陥いることになった。

サムナー氏はただちにQuiltをZoomに移行したが、ビデオチャットでは対面で行われている魔法を完全に獲得することはできないとすぐに気づいた。また、Quiltを特別なものにしていた種類の会話を促進するには、ビデオチャットは適切な媒体ではないことも立証された。

彼女は新しいQuilt 2.0となる音声アプリの開発に取り組み、2021年1月末にApp Storeで公開した。

Quiltでは、誰でも会話のための部屋を作ることができ、話したいテーマを説明するテキストを1行か2行ドロップするだけでいい。このアプリはウェルネスに焦点を当てており、部屋を次の3つの異なるカテゴリーに分けている。1つ目はスピリチュアルや個人開発(瞑想、占星術、ヒューマンデザインなどを中心とした会話)、2つ目はキャリアと目的(「目的とリンクさせることが非常に重要でした。これはネットワーキングイベントではありません」とサムナー氏は述べている)、そして3つ目が、人間関係、セックス、家族についてだ。

画像クレジット:Quilt

このプラットフォームは、コンテンツ制作者と消費者の間で、エンゲージメントレベルのバランスを取ることに特に力を入れている。Quiltによると、ホストの98%が他のホストの会話に参加し、ユーザーの50%以上が会話の中で発言しているという。

20年近く新興メディアと関わってきたガーグ氏は制作者、消費者、そして「傍観者」のエンゲージメント比率が、メディアや製品の選択によって、ソーシャルソーシャルプラットフォームごとにどれだけ違うかということについて語っている。

「YouTubeでは、有名な数字は、1%が制作者、9%が積極的に参加している人、そして90%が見ているだけの人でした」とガーグ氏はいう。「Twitterでは、興味深いことに10%、30%、60%でした。Clubhouseなどでは、平行化がすでに起こっているのが見られます。それは有名人を中心にした構図です。Quiltについて私たちが興奮したのは、誰でも部屋を始めることができるということでした。実際、私たちは消費者から制作者になるまでの道のりに注目しました。Quiltではユーザーがルームを作ったりホストを始めたりするまでが、他のどのソーシャルメディアプラットフォームよりも短いのです」。

それを可能にしているのは、Quiltコミュニティ内の規範によるところが大きいと彼はつけ加え、セレブリティ主導のプラットフォームやトップヘビーなプラットフォームではハードルがあると述べている。消費者はコミュニティによって設定された基準を見て、自分は十分に有名ではない、もしくは貢献できるほど大きなコミュニティを持っていないと感じてしまうとガーグ氏はいう。

「Quiltの魔法の1つは、誰もが人に何かを提供できるだけの何かを持っていると感じることができることです」とガーグ氏は説明する。「有名人だけで構築されたエコシステムよりも、はるかに拡張性が高く、脆弱性が低いと思います」。

Quiltは初期の頃からの存続率も高いようで、登録者の80%が毎週会話に戻ってきているという。同社はまた、会話の約60%は計画的に宣伝された「イベント」ではなく、自然発生的に始まっていると述べている。

サムナー氏によると、Quiltは広告による収益を得るつもりはなく、フリーミアムを採用するという。

今回のラウンドには、既存の投資家であるFreestyle VC(フリースタイルVC)のJenny Lefcourt(ジェニー・レフコート)氏や、Upside Partnership(アップサイド・パートナーシップ)のKent Goldman(ケント・ゴールドマン)氏とChristina Hunt(クリスティーナ・ハント)氏をはじめ、Houseparty(ハウス・パーティ)のCEOであるSima Sistani(シマ・シスターニ)氏、The Mini Fund(ザ・ミニ・ファンド)の創設者で元Discord(ディスコード)のCMOでもあったEros Resmini(エロス・レスミニ)氏、元Knotel(ノーテル)のマーケティング責任者であるAllison Stoloff(アリソン・ストロフ)氏などの新規投資家も参加している。

Quiltのチームは現在8人で構成されており、そのうち50%が女性、25%が黒人以外の有色人種である。20%がLGBTで、10%がノンバイナリーだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:QuiltSNS資金調達音声ソーシャルメディア

画像クレジット:Quilt

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hirokazu Kusakabe)