SnapchatのCEOの妹が文章と音声だけのポルノサイトをスタート

ポルノから写真や動画をなくしたら、新しい利用者を獲得できるだろうか?Caroline Spiegel(キャロライン・シュピーゲル)氏の初めてのスタートアップであるQuinnは、想像力による大人の娯楽を目指している。彼女の兄でSnapchat CEOのEvan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)氏は、この何年間ずっと、彼のアプリはセクシーな会話をするためだけのものではないと訴え続けてきた。その一方で、キャロライン氏は、セクシーなメッセージと音声専門のウェブサイトを立ち上げようとしている。現在、22歳で大学4年生の彼女は、4月13日にQuinnをオープンするとTechCrunchに伝えた。そこは「嫌らしさを減らし、もっと楽しくしたPornhubの女性専用版」だと説明している。

TechCrunchでは、まだ荒削りな状態のQuinnのプライベートベータ版を覗いてみた。キャロライン氏が私たちに明かしたところによれば、現在すでに、100万ドル近い資金を調達しているという。しかし、次世代の行動パターンを研究し、その結果を応用して彼らが好む製品を生み出した兄の成功例があるために、Quinnの支援に熱心になる投資家が現れてもおかしくない。彼女が逆張りに出たのは事実だ。Quinnには写真が一切ない。

キャロライン氏はこう説明している。「このサイトには視覚コンテンツがありません。音声と文章だけです。すべてがオープンソースなので、利用者はコンテンツや物語などを投稿できますが、掲載する前に、すべて私たちがチェックします」。コンピューター科学を専攻する彼女は、スタンフォード大学で出会った、Greta Meyer氏を含む3人の女性とチームを組んでQuinnを開発している。彼女たちは、大学卒業後にロサンゼルスに転居する予定だ。

彼の理想の彼女の名前がQuinnだったんです

Quinnのアイデアは、深刻な個人的必要性から生まれた。「スタンフォードの3年生のとき、私は食欲不振と、その影響による性的機能不全に陥ったため、休学を余儀なくされました」とキャロライン氏は話す。「私は、性的機能不全の治療法を調べまくりましたが、食品医薬品局が認可した性的機能不全の治療薬は、男性用には30種類もあるのに女性用はゼロでした。がっかりです」

女性たちの間に、いまだに女が快楽を求めることを恥ずかしがる気持があるため、それを与えてくれる製品が欠如しているのだと彼女は考えた。たしかに、ポルノサイトは山ほどあるが、女性用にデザインされたものは少ない。画像に頼らないサイトとなると、さらに少ない。キャロライン氏によれば、写真や動画は体型のコンプレックスを招きかねないが、文章と音声だけなら、誰でもそのシーンの主人公になりきれるという。「視覚情報を使ったポルノサイトのほとんどは、男性の視線を釘付けにするためのものです。主流のポルノの物語はどれも同じ。理想的な女性の体型というひとつの考えに自分をはめる必要はありません」。

その概念が、Quinnというこのスタートアップの企業名に合致している。それは、彼女と仲の良い男友だちが思いついたものだという。「彼は理想の彼女と出会ったと言っていました。その子の名前がQuinnだったんです」

キャロライン氏はRedditとTumblrにへばり付き、Quinnの最初の作家になってくれる人を探した。Redditは文章と過去のコンテンツへのリンクが主体になっているが、そこで展開されているのは変態的な小説や音声コミュニティーだった。Tumblrが12月にポルノを禁止すると、アダルトコンテンツの作家が大量に仕事にあぶれることになった。「私たちの音声コンテンツは、ガイド付きマスターベーションやセックスの盗み聞き、そして朗読です。文字通り、それがすべてです。人それぞれ、自分のリズムがある。でしょ?」とキャロライン氏は、ちょっとエロく笑った。

ブランドを確立するために、Quinnはソーシャルメディアでインフルエンサーキャンペーンを展開している。「快楽を得るのは悪いことでないと、人々にわからせるのが狙いです。自慰行為をカッコイイものにするのにしようとすれば、ハードルはかなり高くなります。そこで私たちは、罪悪感を取り払うことを目指しました。男性よりも、もっと気楽になれるように」。

ビジネスモデルのための調査を行ったところ、キャロライン氏は、若い女性たちにはポルノに金を払うことを恥ずかしがる傾向があることを知った。そこで、Quinnは広告を出すことにした。これは、商業上の機会をもたらすものでもある。利用者にヌード写真やハードポルノの動画を送りつけたりしないため、他のポルノサイトには広告を出しづらかったスポンサーを呼び込める可能性があるのだ。

エヴァンは「とても協力的」

収益が出始めるようになるまで、Quinnは100万ドル弱の資金に頼ることになる。出資者についてはキャロライン氏は明かしていないが、兄ではないと明言している。「兄は私の人生において最高に重要な人間で、いつでもよき相談相手です。私が思いつく限りでは最高のアドバイスをくれます。しかし、それ以外の面で特別に頼ることは決してありません」と彼女は言う。「兄は特に恥ずかしいとは思っていません。とっても協力的です」

「競争相手が大勢います」とキャロライン氏が素直に認めているように、Quinnはできる限り士気を高める必要がある。老舗のPornhub、コンテンツ投稿サイトのMake Love Not Porn、Redditのような自然発生的なコミュニティーなどだ。500万ドルを調達した音声ポルノのスタートアップのDipseaは「胸躍る競争相手」だと彼女は言っている。だが彼女は、こうも話している。「私たちは、もう少しエロチックに振れていますが、彼らの使命を大いに支援します」と。かなり友好的だ。

Quinnの最大のライバルは、旧式ながらよく制度化されたウェブサイトのLiteroticaだろう。ウェブ解析サービスなどを提供しているSimilarのウェブランキングによれば、人気アダルトウェブサイトの第60位、全ウェブサイト中の閲覧数順位は631位であり、月に5300万ヒットを記録している。しかし、ウェブ1.0時代のフォーラムの外観そのままでありながら大量の通信量を誇っているLiteroticaの現状を見れば、Quinnにも大きなチャンスがあると思われる。規則によって、Quinnはネイティブなモバイルアプリを公開できないため、生き残るためにはウェブサイトに全力を傾けるしかない。

しかし、キャロライン氏にとって他社との競争よりも大変なのは、女性たちにQuinn式のポルノを試してもらうよう説得することだ。「男性にとって自慰行為は先天的なものですが、女性には『やってもやらなくても生きて行ける』ものだという観念があります。Quinnは、製品を作るのと同時に、市場も作らなければなりません。そこが怖い部分です」とキャロライン氏は話す。しかし、彼女は次第に高揚してこう話した。「でも、なんと言ってもそこが面白いのです。私が見込んでいるのは、こういうことです。チョコレートを食べたことがない人は何も知りません。しかし、一度食べたら熱望するようになります。ほとんどの女性は、直接的なむき出しの快感を味わったことがありません。(しかし私たちが彼女たちにそれを教えることができれば)それが私たちの力になります」

とりわけ重要なのは、「すべての女性に、それがなんであれ、想像の世界に手を伸ばす権利があることをわかって欲しい」というQuinnの願いだ。「いい気持ちになる資格があるかないかではありません。これを使うためにピラティスをする必要はありません。毎日、正しい食生活に気を遣う必要もありません。私たちの製品の利用には、なんの資格もいりません。私たちの使命は、女性たちに、もっと自分の体と触れ合ってもらって、めちゃくちゃいい気持ちになってもらうことです。快楽と、よいバイブがすべてなのです」

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)