【コラム】フェイスブックのスマートグラスはGoogleのミスを乗り越える可能性が高い

Facebook(フェイスブック)は先日、ユーザー視点の動画を撮影できる待望のウェアラブルサングラスを発表した。この新製品に対して、多くの人たちから嫌悪的反応が寄せられているのはもっともだが、それにもかかわらず今回のローンチでFacebookが下した決断の1つにより、Google Glass(グーグル・グラス)が失敗した点を乗り越える可能性が高い。

Facebookは、ビジネススクールのカリキュラムを参考にしてRay-Ban(レイバン)と提携することで、効果的なアプローチを行った。新人のプロダクトマネジャーは、この教訓を忘れてはならない。

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このことをよく理解するためには、まず、Google Glassを見直す必要がある。それは2011年に、一部のユーザーのみを対象としたプロトタイプとして発売された。ベータ版を発表する際の当時のGoogleのアプローチと同様に、ユーザーは1500ドル(約16万6000円)を支払って、この未来のように見え、そして感じさせるデバイスで、遊んだり試したりした。

Google Glassは、Time Magazine(タイム・マガジン)のその年のベスト発明品に選ばれたにもかかわらず、問題が山積みで、まさに未完成の製品だった。これまでに多くの人が、Google Glassの主な失敗は、明確なユースケースを持たずに新しい技術を発表した典型例だとコメントしている。Google Glassで人は一体何をするのだろうか?

またデザインは自社で行い、マーケティングは共同創業者であるSergey Brin(セルゲイ・ブリン)氏が、シリコンバレーからファッションウィークまで、あらゆる場所で着用している姿を見せながら、意図せずして広報活動を行った点も、Google Glassのローンチのまた別の重要な側面だ。実際、Googleは成功の波に乗って、予想されていた新しいおもちゃを提供したものの、結局明確な用途は示せていなかった。

さて2021年9月初旬に時間を進めよう。Facebookは新しいウェアラブルサングラスを発表したが、すぐにそして繰り返しGoogle Glassと比較され続けている。誰もが気になっているのは(隣の人が勝手に私を録画していないかということ以外に)、Facebookの試みがGoogle Glassのように大失敗してしまうのではないかということだ。しかし、サングラスのトップメーカーであるRay-Banと提携し、最も認知度の高いブランドの1つであるWayfarer(ウェイファーラー)を実際のウェアラブルとして採用したことが、Facebook版の成功につながる可能性がある。

Facebookは起業から10年以上が経過しているが、多くの大規模テクノロジー企業と同様に、自社のプラットフォームを時代遅れにしないためには、必然的に製品やサービスにおけるイノベーションの先端を探らなければならない。つまり、Facebookが検討する製品の立ち上げの多くは、リスクがあったり未知の状況というだけではなく、そもそもあらかじめ知り得ない世界へ進む必要があるのだ。何が違うのか?

Facebookをはじめとする多くのテクノロジー予測者が直面している問題は「Knightian uncertainty」(ナイトの不確実性)と呼ばれるものだ。1921年、Frank Knight(フランク・ナイト)博士が、リスクと不確実性の重要な違いを強調する研究を発表した。たとえばリスクとは、Facebookが2022年の広告収入の市場シェアもGoogleより高く保ち続けるために収益をいかに管理できるかなどだ。

両社ともに収益の成長は記録しているので、過去のデータを活用して、将来をかなり正確に予測することができる。ここで重要なのは、そうした予測のツールには強みがあり、それが意思決定に活かされているということだ。

だがこの状況と、Facebookのグラスが成功するかどうかを比べようとしても、これらはまったく違う状況なのだ。どのような歴史的記録を探すことができるだろう。1年目のApple Watch(アップル・ウォッチ)のような需要があるのだろうか?それとも、MicrosoftがiPod(アイポッド)に対抗しようとしたZune(ズーン)のようになるのだろうか?要するに、この製品の需要は不可知なのだ。そして不可知の状況に対する予測にはほとんど価値がないということだ(これがナイトの不確実性と呼ばれているものでもある)。

では、なぜFacebookには成功する可能性が残されているのだろうか。なぜなら、Facebookはもはやスタートアップではないものの、そのチャンスを広げるために起業家としての重要な手法を活用したからだ。つまり、Facebookグラスのローンチに際して、Ray-Banと提携するという効果的なアプローチを行ったことだ。

Googleが人々が求めているものは何かに想像力を巡らせて、新しいメガネのデザインを発明しようとしたのに対し、Facebookはすでにある程度定着しているデザインを活用した。企業や起業家が新しい製品やサービスを立ち上げようとして、予測ツールが上手く働かないときに、結果をコントロールするためには共同作業が重要になる。起業家が自分でコントロールできる、あるいはコントロールできる側面を活用することを促すこうした起業家の手法は、エフェクチュエーション(Effectuation)と呼ばれる。

そのためには、自分が何者であるか、何を知っているか、誰を知っているかから始める必要がある。Facebookは、人々がどんなメガネを好むかを予測したり、そうしたメガネのマーケティングを自ら学ぶのではなく、市場最大手であるRay-Banのノウハウを活用することを選んだ。

Facebookは、新製品の重要な不確実性を回避する手助けのできるパートナーを見つけて、不可知の世界へと踏み出したのだ。それだけでも、成功の可能性は高くなる。

結局のところ、新しい消費者製品のイノベーションは、信じられないほど不確実(リスクではない)で、ほとんどのものが失敗するだろう。つまり、たとえRay-Banとパートナーシップがあったとしても、他の多くのパラメータによって簡単に失敗する可能性があるということだ。しかしFacebookは、優れた起業家のように、今回の製品のローンチに際して重要な起業家的アプローチを活用することで、成功の可能性を高めようとしているのだ。

編集部注:本稿の執筆者Ashish Bhatia(アシシュ・バティア)氏は、ニューヨーク大学スターン校の経営学と起業家学の特任准教授であり、ビジネス、テクノロジー、起業家学の学士課程のアカデミックディレクター

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フェイスブックのスマートサングラス、撮影を知らせるLEDライトが非常に「小さい」と欧州当局が懸念

画像クレジット:Lucas Matney/TechCrunch

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(文:Ashish Bhatia、翻訳:sako)

フェイスブックのスマートサングラス、撮影を知らせるLEDライトが非常に「小さい」と欧州当局が懸念

Facebook(フェイスブック)を監督する欧州のプライバシー当局は、同社が現在販売している「スマート」Ray-Banサングラスについて懸念を示している。このサングラスには口頭での合図で写真やショートビデオを取ることができるカメラが搭載されている。

アイルランドのデータ保護委員会(DPC)は現地時間9月17日、ユーザーがビデオを撮るときに光るサングラス搭載のLEDインディケーターライトが、サングラスをかけている人に撮影されていることを他の人に知らせる効果的な方法であることを証明するようFacebookに求めた。

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イタリアのプライバシー当局GaranteはすでにFacebookのスマートグラスを疑問視しているが、Facebookが欧州本部を置いているアイルランドは同社を監督する当局として並外れた役割を担っている。

Facebookは1年前、AR(拡張現実)スマートメガネ製作に向けた道のりにおける「次のステップ」と表現したものを発表した。その際、初期製品にはARは搭載されないと述べたが、高級メガネ大手Luxottica(ルクソティカ)との複数年にわたる提携を発表した。「スマート」メガネに次第に機能を増やしていくことを意図していたようだ。

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FacebookのRay-Banブランドの第1弾の商品は9月初旬に発売された。一見、ほぼ普通のサングラスのようだが、5MPのカメラ2つをフロント部分に備え、ユーザーはこれらを使って目にしているものののビデオを撮って、Viewという新しいFacebookアプリにアップロードできる(サングラスはフレーム内部にスピーカーも搭載し、ユーザーは音楽を聴いたりコールを取ったりもできる)。

このサングラスのフロント部分にはLEDライトもある。これはビデオを撮影しているときに光る。しかし、DPCが「とても小さい」インディケーターと呼ぶものは、人々に自分が撮影されているリスクを警告するのには不十分なメカニズムであることを欧州の当局は懸念している。

Facebookはこのサングラスが引き起こしうるプライバシーのリスクを評価するための包括的な実地テストを行ったことを示していない、とも付け加えた。

「スマートフォンを含む多くのデバイスが第三者を撮影できることは受け入れられている一方で、通常カメラやスマホは撮影しているときにデバイスそのものが目に見え、ゆえに撮影されている人にその事実を知らせています。メガネでは、撮影中にとても小さなインディケーターライトが光るだけです。インディケーターLEDライトが撮影を周囲に知らせる有効な方法であることを確認するために、包括的な実地テストがFacebookあるいはRay-Banによって行われたことをDPCとGaranteに証明していません」とDPCは述べている。

Facebookの主要EUデータ保護当局は続けて、同社に「LEDインディケーターライトが目的にかなうものであることを実証し、この新しい消費者向け製品があまり目立たない撮影を引き起こすかもしれないことを大衆に警告するための情報キャンペーンを展開する」ことを求めている、と話す。

質問するためにFacebookに連絡を取った。

同社の広報担当はTechCrunchに次のように語った。「新テクノロジーについて、そしてそれがどのように機能するか、人々が疑問を抱えていることを当社は承知しており、また当社がこの会話の一部に入っていることは重要です。この新テクノロジーがどのようなものなのか、そしてコントロールについて人々が理解できるよう、 当社の主要監視当局であるアイルランドのDPCを含め、当局パートナーと協業します」。

同社はまた、スマートサングラスの発売に先立ってDPCとやり取りしたと主張し、また今後もやり取りを続けると述べた。加えて、サングラスにはオフのスイッチもあると指摘した。

アイルランドの当局は、発売前にスマートサングラスのデータ保護コンプライアンスに関してFacebookから概要説明があったことを認めたが、副委員長のGraham Doyle(グラハム・ドイル)氏はプロダクトの機能についての相談はなかった、と述べた。

「夏にデータ保護要件コンプライアンスについての概要説明と詳細の提供がありましたが、製品の開発についての相談はありませんでした(Facebookが我々のところにきたときにはデザインと機能の開発はすでに終わっていました)、とドイル氏は述べた。

「メガネのオペレーションと実地テストに対処するために、他のDPA、我々自身、そしてGaranteと情報、特に懸念について共有しました」。

スマートサングラスは9月初旬に発売された。米国での価格は299ドル(約3万3000円)だ。現在アイルランドとイタリア、そして英国でも販売していることをFacebookは明らかにした。

ここ数年、同社は規制当局の懸念を受けて、欧州でのプロダクト立ち上げを一部を延期してきた(あるいは中止したりした)。ここには顔のタグ付け機能が含まれる(これは後に別の形で再導入された)。

同社の欧州でのデートサービス展開も9カ月以上ずれ込み、DPCによる介入後に一部を変更して導入された。

また、Facebook所有のメッセージプラットフォームWhatsApp(ワッツアップ)が欧州でFacebookとデータ共有することにも制限がかけられている。こちらも規制当局介入の結果だ。欧州では多量のデータがまだWhatsAppからFacebookへと流れているが縮小してはいて、Facebookに対する数多くのプライバシーに関する苦情は欧州で調査中だ。これらの調査の結果はまだ出ていない

2021年9月初めにアイルランドのDPCは(欧州のGDPR法のもとで)Facebookに対する初の制裁を発表し、利用者への十分な説明を怠ったとしてWhatsAppに2億6700万ドル(約290億円)の罰金を科した。しかしDPCはFacebookや同社の傘下企業に対する複数の苦情についてはまだ調査を続けている。

2021年1月にアイルランド当局は、Facebookの欧州から米国へのデータ移送に対する2013年の苦情を「速やかに」解決することに同意してもいる。こちらもまだ結論は出ていない

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

【レビュー】フェイスブックのスマートグラス「Ray-Ban Stories」は「おもちゃ」レベルを超えている

このFacebook(フェイスブック)初のスマートグラスは、Facebook製品のようには感じられない。

Facebookのロゴが刻印されていたり、小さな文字でその名前がシリアルコードの横に印字されていたりもしない。この製品は「Facebook Stories」でも「Ray-Ban(レイバン)のFacebook Stories」でも、あるいは「FacebookとのコラボレーションによるRay-Ban Stories」でもないのだQuest 2やPortalのような他のFacebookデザインハードウェアとは異なり、このRay-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)は、まるで同社がヒットのためのユースケースを正確に知っていたかのように、より自己認識し抑制されていて、余計なことをしようとするのをやめたもののように感じられる。

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アイウェア大手の仏EssilorLuxottica(エシロール・ルクソティカ)と提携して作られたこのメガネは、Facebookがこれまで販売したものの中でも最も基本的なデバイスだ。できることも限られている。写真や動画を撮ることができ、電話をすることができ、そして音楽を聴くことができるだけだ。そう、それだけだ。しかし、フレームのアームに埋め込まれたニアイヤー(耳近傍)スピーカーを使ってオーディオを聞けるようにしたことで、これらは5年前に出荷されたSnap(スナップ)のSpectacles(スペクタクルス)よりもはるかに実用的なデバイスとなった。

左はレイバンの従来型のWayfarers(ウェイファーラー)と右はスマートグラスのRay-Ban Stories Wayfarers(画像クレジット:Lucas Matney)

ではこのデバイスの機能と、日常での使用感について少し掘り下げてみよう。

299ドル(約3万2900円)のRay-Ban Storiesの特徴の1つは、ほとんど目立たないように着用できることだ。周りの人たちはおそらく、わずかに大きめのサイズよりも、カメラに気づく可能性の方が高いだろう。それはすでに革命的な進歩で、Spectaclesが実際に乗り越えることができなかった「おもちゃ」のレベルを超えることが実現している。標準のWayfarer(ウェイファーラー)デザインのフレームが平均よりも厚いことを考えると、レイバンとのパートナーシップは特に好ましいものだ。

周囲の人が気づく可能性が高いのは、メガネのフレームをタップしてメガネを制御するときだ。右側のアーム上のボタンを押すと30秒の動画が撮影され、長押しすると写真を撮ることができる。また「Hey Facebook、take a video(ヘイ、フェイスブック。ビデオを撮影)」という音声コマンドを使うこともできるし、写真撮影時にも同じことができる(とはいえ、私は公共の場で近くの誰かがこの言葉をいうのを耳にするのが心地良いかどうかは疑問だ)。またかなり控えめな印ではあるが、カメラが映像をキャプチャしている最中は、小さなLEDライトが点灯する。

画像クレジット:Lucas Matney

メガネの写真と動画の品質は中程度だが、デバイスのサイズを考えると、十分に許せるレベルだ。2つの5MPカメラは、2592×1944ピクセルの写真と1184×1184ピクセルの正方形フォーマットの動画を撮影することができる。品質は10年ほど前のスマホカメラ並みのようで、まだまだ改善の余地があることは明らかだ。アップロード中に行われる携帯電話での後処理によって、写真の画質が改善される。露出が高くなって暗い場所がある程度明るくなり、ややポップなものとなる。

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カメラを2つ持つことで、写真に3D効果を追加することができるが、現時点ではフィルターは優れたものではなく、正直なところそれほどでもない。できれば、Facebookにはこの先ソフトウェアにもう少し投資して欲しいが、写真の品質がかなり低いことを思うと、最初に2台のカメラを搭載した理由を完全には理解できない。

また、メガネを使用するには、View(ビュー)という名の新しいFacebookのアプリにリンクする必要がある。これは基本的に、外部デバイスからメディアを携帯電話にアップロードするためのシンプルなメディアビューワーアプリだ。このアプリを使って、写真やビデオをカメラロールに保存したり、FacebookやInstagram(インスタグラム)に共有したりする前に、すばやく編集することもできる。

画像クレジット:Lucas Matney

オーディオはおそらくこのメガネの中で最も興味深い部分だ。このニアイヤー(耳近傍)スピーカーは、静かな空間ではその品質に驚かされるが、騒がしい環境にいると不満を感じるだろう。Facebookにとって残念なことは、ほとんどの屋外スペースは多少なりとも騒がしいし、サングラスはほとんど屋外で使用されるものだということだ。いざというときには屋外で音楽を聴くために使うこともできるだろうが、正直なところ自分のAirPodsをすぐに置き換えられるものとは思えない。このオーディオは、通話などのローファイなアクティビティに向いているが、屋外を歩いているときには3つのマイクアレイがバックグラウンドノイズを拾いすぎるという問題もあった。

バッテリーの寿命はかなり厳しいが、ケースでバッテリーを充電することもできる。これは、メガネを保管するのにも最適な場所だ。ケースは少しかさばるものの、Facebookはレンズを保護するためのマイクロファイバーポーチも別に提供している。Facebookによれば、6時間のオーディオ連続使用が可能で、それ以外の場合には「終日」の使用が可能だという。

奇妙なことだが防水性はもちろん防滴性も備わっていない。これは、サングラスとしては優れた品質とは思えない。これは、厚いフレームのサングラスがスマートグラスのデザインにとってより理に適っていることを示す一方で、この製品が実際には屋内向けであることを示している。

画像クレジット:Lucas Matney

本製品はFacebook初のハードウェアではないが、そこに会社の成熟の歴史を見ることができる。

本製品はAR / VRデバイスではないが、Ray-Ban Storiesのデザインの中に、Oculus Goから生まれたオンイヤーオーディオ、Gear VRを彷彿とさせるタッチパッドインターフェース、Questで最初に採用されたシンプルで抑制されたオーディオコントロールなど何世代にもわたるOculus製品を垣間見ることができる。今回のハードウェアは、長年に渡って徐々に認識は高まってきたものの、基本的にはVRに無関心な人々に販売することから学んだ機能と教訓を凝縮したものだ。

一方Facebookには、マスコミで敵の機嫌をとり、平均的なインターネットユーザーからは大いなる不信を獲得してきた歴史がある。同社はこれまでそのメッセージを台無しにし、その過程でブランド名を毀損してきたその歴史もわかっている。それらがおそらく、今回Facebookのブランドをほとんど目立たせないデザインにつながったのだろう。確かにRay-Ban Storiesには批判者が出てくるだろうが、Facebookが機能性を保守的にして、将来を見越したパッシブセンサーをあまり多く搭載しないよう選択したことは、彼らに有利に働くだろう。

Facebook Viewアプリはシンプルなものであり、またFacebookはStoriesを使用してキャプチャされた写真や動画は広告には使用されないと説明している。とはいえ、2013年のGoogle Glassのデビュー以来、私たちは確かに長い道のりを歩んできたものの、顔にあるカメラは、公共の場でのプライバシーに関しては依然として不快感を覚えさせる。このデバイスは間違いなくその話を大いに再燃させるだろう。

画像クレジット:Lucas Matney

そうした議論はさておき、私の最も強調したいポイントは、 Ray-Ban Storiesが非常に重要な製品のように感じられるということだ。これは、顔に装着するウェアラブルというアイデアを実際に販売する製品なのだ。

メガネはスマートにデザインされていて、目立たないように着用できる。だが、Facebookがそのような野心的なフォームファクターを実現するために多くの犠牲を払ったことは明らかだ。このメガネは正直なところ特に何かをうまくこなせるわけではない。写真と動画の品質はかなり劣っているし、インフレームスピーカーは屋外でのパフォーマンスが低く、通話体験も最も快適とはいえない。299ドル(約3万2900円)という価格は、この第一世代製品を一部の人に売り込むことを難しくするかもしれない。とはいえ、今回Facebookは、拡張現実の未来への道のりの足がかりとなることを繰り返し示してきた製品に対して、ほぼ正しい妥協をしたと思う。

FacebookのRay-Ban Storiesと、私が持っていた旧来のRay-Ban 2140 Wayfarersを並べてみた(画像クレジット:Lucas Matney)

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画像クレジット Lucas Matney/TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

Facebookがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月9日朝、待望のスマートグラス分野への進出を発表し、アイウェア大手の仏EssilorLuxottica(エシロール・ルクソティカ)と提携したスマートグラス「Ray-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)」を発売した。

このスマートグラスは、一般消費者向けに販売されている製品の中では最も薄型のものの1つで、ユーザーは、搭載された2つの5MPカメラで写真やビデオを撮ったり、フレーム内のスピーカーで音楽を聴いたり、電話を受けたりできる。完全な機能を利用するにはiOSまたはAndroidデバイスに接続する必要があるが、ユーザーは数百枚の写真や数十本のビデオを撮影してスマートグラスに保存し、その後にメディアをFacebookの新しいアプリ「View」を使って携帯電話に転送できる。このツインカメラにより、ユーザーはアプリにアップロードした画像やビデオに3D効果を加えることができる。

この軽量なフレームには革製のハードシェル型充電ケースが付属しており、重さは50g以下だ。バッテリー駆動時間は「丸1日」とされているが、TechCrunchがこのフレームをレビューした結果、その通りだった。

ユーザーは、写真やビデオを撮影するための「キャプチャー」ボタンやオンオフスイッチなど、いくつかの物理的なボタンでフレームを操作することができる。また、右テンプルのタッチパッドでは、スワイプによる音量調整や電話への応答などの操作を行える。また、搭載されている白色LEDが光ることで、周囲の人に動画の撮影中であることを知らせる。

なお、このメガネは防水・防滴仕様ではない。

FacebookのスマートなRay-Ban Storiesと、私のクラシックなRay-Ban 2140 Wayfarersを並べてみた(画像クレジット:Lucas Matney)

Ray-Ban(レイバン)の3つの定番スタイルから選べるこのスマートサングラスは、多くのカラーとレンズの組み合わせがある。Ray-Ban Storiesは、処方箋レンズにも対応している。価格は299ドル(約3万3000円)からで、偏光レンズと調光レンズのオプションは、より高い価格帯となる。

ちなみにこのスマートグラスには、競合するSnap(スナップ)の最新のSpectaclesプロトタイプのような、デジタルARコンテンツを見ることができるレンズ内ディスプレイは搭載されていない。

関連記事:SnapがARグラス「Spectacles」の新世代バージョンを発表

2020年9月に開催されたAR・VRに特化した開発者会議で、Ray-Banとのパートナーシップと製品に関する初期の詳細を発表したFacebookにとって、今回の発表は大きな意味を持つ。同社は、このデバイスが同社のARの野望のための足がかりであり、世のユーザーにハイテクメガネのアイデアを知ってもらうための取り組みであることを示唆していた。

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは製品の発表ビデオでこう語った。「Ray-Ban Storiesは、電話が生活の中心ではなくなり、デバイスと対話するか、周りの世界と対話するかを選択する必要がなくなる未来に向けた重要なステップです」。

画像クレジット:Lucas Matney

編集部注:北米とオーストラリア、英国など欧州の3カ国で当初リリース。日本での発売時期は今のところ未定。

関連記事:フェイスブックの次期新製品は待望の「レイバン・スマートグラス」

画像クレジット:Lucas Matney / TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックの次期新製品は待望の「レイバン・スマートグラス」

好調なFacebookのビジネス、その中心はデジタル広告だが、同社はVR以外のハードウェアにも意欲を燃やしている。最新の決算発表の場で、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、次の製品はRay-Ban(レイバン)のスマートグラスになるだろうと述べた。

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Facebookの共同創設者であるマーク・ザッカーバーグ氏は「このメガネは象徴的な形状をしており、とてもすてきなことができます。だからこそ私は、多くの人にこのメガネを手にしてもらい、将来の完全なARグラスに向けて前進し続けることに興奮しています」と述べた。

Facebookのサングラスは、2019年から噂になっていた。当時、情報筋がCNBCに語ったところによると、FacebookはレイバンのオーナーであるEssilorLuxottica(エシロールルックスオティカ)と協力して「Orion」というニックネームのARアイウェアを開発しているという。このメガネは、電話を受けたり、情報を確認したり、さらにはライブストリームを配信したりすることができる、スマートフォンの本格的な代替品として宣伝されていた。必然的にこのメガネは、Snapのスマホと連動するSpectaclesではなく、Google Glass(Luxotticaとの共同開発)と比較された。2020年、Facebook Reality LabsのVR担当副社長であったHugo Barra(ウーゴ・バッラ)氏は、このメガネが2021年に登場することを認めていた。しかしそれ以降、ほとんど音沙汰がない。

Facebookにとって、このメガネは未来への鍵を握っています。ザッカーバーグ氏は、仮想現実(VR)と並んで、拡張現実(AR)は「メタバース」の構築に不可欠だと述べている。将来、Facebookは、VRやARを使ってさまざまなソーシャル体験間を「テレポート」できるような、共有された生き生きとしたプラットフォームに変化していくだろう、とザッカーバーグ氏は説明している。

関連記事:ザッカーバーグ氏は110兆円規模のフェイスブックを「メタバース」企業にすると投資家に語る

「メタバース」という言葉は、シリコンバレーや未来学者の間で流行している最新のバズワードだ。この概念は10年以上前から存在していましたが「Fortnite」や「Roblox」などのマルチプレイヤーゲーム制作プラットフォームが大ヒットしたことで、注目を集めるようになっている。今週初めには、Microsoft(マイクロソフト)のSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、同社の決算説明会で「エンタープライズ・メタバース」について言及している。

Facebookにとって、メタバースは単なる流行ではありません。ザッカーバーグ氏によると、同社は数十億ドル(数千億円)を投じて、Facebookのユーザーとデジタル広告で構成される「シェアードユニバース」を構築しようとしている。それを実現するためには、より多くの人々に同社のコンピューティングハードウェアを購入してもらう必要があるという。そのため、それらのデバイスをより手頃な価格で提供することを計画している。

ザッカーバーグ氏は「私たちの使命は、できるだけ多くの人々にサービスを提供することです。ですから、私たちが行うすべてのことをできるだけ手頃な価格で提供し、できるだけ多くの人々に利用してもらい、その中でデジタル経済の規模を拡大していきたいと考えています」。

Facebookが開発を進めているとされるハードウェアは、サングラスだけではない。複数の報道によると、Facebookは、携帯電話回線を内蔵し、取り外し可能なディスプレイを搭載したスマートウォッチを開発しているという。当初は、スマートウォッチが最初に発売されると考えられていたが、ザッカーバーグ氏には別の計画があったようだ。

編集部注:本記事はEngadgetに掲載されている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Facebookマーク・ザッカーバーグメタバーススマートグラスレイバン仮想現実拡張現実

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(文:Saqib Shah、翻訳:Katsuyuki Yasui)