クラウド人材管理サービス「カオナビ」運営会社にリクルートが資本参加

日本のHR Tech分野のスタートアップにまた、新たな動きがあった。顔写真が並んだインターフェイスが特徴のクラウド人材管理サービス「カオナビ」。3月27日、リクルートホールディングスが、サービスを運営するカオナビ社の発行済み株式の一部をRSIファンド1号を通じて取得し、持分法適用関連会社としたことが明らかとなった。取得価額等については公表されていない。

カオナビは、社員の実績や評価を、顔写真を切り口にした独特のインターフェイスで一元管理できるクラウドサービスだ。初期費用無料、月額3万9800円と低価格から利用でき、直感的な画面で経営陣や現場の管理職にも使いやすい点をウリにしている。

2012年にサービスを開始し、現在では日清食品HD、テルモ、トゥモローランド、サイバーエージェント、VOYAGE GROUPなど、大企業からスタートアップまで400社以上の企業へ導入。「顔と名前が一致しない」という単純だがありがちな課題の解決や、人事情報の一元化などの利便性が評価されているという。

今回の資本参加を通じて、リクルートとカオナビ社では、HR Tech領域での事業提携の検討・協議を開始するとしている。カオナビ社では「引き続きIPOを目指す方向性には変わりない。事業会社系のファンドに出資いただくことで、より成長を加速させることができると期待している」としている。

人事、社員、その友人を繋ぐリファラル採用ツール「Refcome」——Combinatorが正式公開

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

Combinatorは7月12日、リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を正式リリースした。Combinatorでは2015年8月に予約受付を開始し、クローズドベータ版としてサイバーエージェント、コロプラ、GMOメディア、オープンハウスグループのアサカワホームなど20社に限定してサービスを公開していたが、今後は全ての企業が利用できる。またCombinatorでは、2015年1月から12月にかけて、シード系VCとエンジェル起業家1人(いずれも非公開)から約1150万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

Refcomeは、企業のリファラル採用を支援するサービス。効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

人事担当者には、社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能などを提供。実施しているリファラル採用の施策は専用のダッシュボードで一元管理でき、施策の効果測定などが可能だ。また社員には、友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供。自動生成されるテキストを使って、FacebookやLINE、メールなどで手軽に友人を招待できる。招待された社員の友人には、「特別な招待ページ」と呼ぶ登録フォームを用意。PCやスマートフォンから必要事項を入力すればすぐに採用のエントリーができる仕組みを提供する。これらの機能により、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用を実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。

社員の知人や友人を紹介・推薦してもらう「リファラル採用」は米国では主流な採用手法として認知が進んでおり、最近では日本でも注目が集まっている。まだ属人的ではあるが、企業がリファラル採用に取り組むことも増えてきた。

しかし、採用担当者からすれば課題も残る。これまでのリファラル採用の施策は人事、社員、社員の友人という3者のコミュニケーションコストがかかりすぎてしまう傾向にあったのだ。その結果、社員が友人の紹介に協力的になれずに終わるということも少なくない。Refcomeではそんな課題を解決するため、煩雑な作業を一元管理するとしている。

Refcomeの利用イメージ

Refcomeの利用イメージ

失敗体験がサービスを生んだ

煩雑な社員紹介のプロセスをシンプルにしたRefcome。そのサービス開発には、Combinator代表取締役である清水巧氏の”事業の失敗経験”が大きく関わっている。

MOVIDA JAPAN(当時)からシードマネーを調達し、2014年1月からスタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を展開していた清水氏。だが同年11月、Combinatorは資金難に陥り、事業が立ち行かなくなってしまった。

「自分が起業しようと思ったときに、創業メンバーの仲間集めにすごく苦労したんです。その経験から、創業メンバーのマッチングができるサービスがあれば起業家が増えると思いサービスを立ち上げました。ただ、当時は全く売上を意識できていなくて……」(清水氏)

事業を継続していくのか、撤退するのか——迷った末に清水氏は事業の継続を選択。Combinatorのユーザーを対象にした採用イベントを開催し、売上を立てようとした。

「一度、オフィスなどは全て解散し、地元の石川県に帰って今後のことを考えました。株主の方とも相談しながら考えた結果、自分の失敗は”やりきった失敗”ではないと思ったんです。(起業前に就職していた)Sansanの寺田さん(代表取締役社長の寺田親弘氏)からも『お前はまだまだ骨が細い。きちんと積み上げていくことが大切だ』という言葉をもらい、もう一度挑戦したいと思いました。見栄やプライドは捨て、愚直に採用イベントでマネタイズすることに決めました」(清水氏)

2015年1月から半年間、何度も採用イベントを開催した。石川で企画までを仕込み、イベント直前に深夜バスで東京に向かい、イベントが終わればまた石川に戻る…そんなことを繰り返してなんとかキャッシュも回るようになってきた。そこであらためて、清水氏は本当に挑戦したいことを自問自答した。

「起業家が旗を掲げて仲間が集めるだけでなく、社員全員が仲間集めをできないか。今、勢いのあるスタートアップは社員全員が採用活動をやっている。であれば、その世界をサービスによって実現できないか、と考えたんです」(清水氏)

そんな思いからRefcomeの事前予約ページを公開したところ、1カ月で約150件の事前応募があったという。手応えを感じた清水氏は、そこから営業資料とプロトタイピングツールで作成したサービスのイメージを持ち、応募企業に対して営業をかけていった。企業のニーズを受けてサービスをブラッシュアップしていった結果、サイバーエージェントでの導入が決定。そこから約3ヶ月間、技術顧問の加瀬正喜氏、SanSanの同僚だった中森恭平氏と協力し、急ピッチで開発を進行。なんとか、導入に間に合わせたという。

「Combinator」のトップページ

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導入企業ではすでに採用実績も

サイバーエージェントでは導入から2カ月で150人の応募者の獲得に成功。実数は非公開だが、複数人の採用実績もできた。実は筆者にも、サイバーエージェントの友人から特別選考の連絡(当時はRefcomeだと全く知らなかった)が来ていた記憶がある。友人からダイレクトに連絡が来るというのは企業からの連絡よりも嬉しい気持ちになったし、応募ページの記入は1分ほどですごく簡単だったのが印象的だったこともあり、応募率が上がるのではないかという感想を持った。実際、サイバーエージェント以外の企業でも一定の実績が出はじめているという。

一方で、会社の風土によっては応募者の獲得が難しいケースもあるそう。この点は社員のモチベーション向上施策など、コンサルティングも行っているという。

Combinatorでは2016年中に導入企業100社を目指す。現在の導入企業はIT企業がほとんどだが、今後は代理店とも連携し、アパレルや医療など、リファラル採用の文化がある業界への導入を進めていく。

リクルートがドイツのQuandooを271億円で買収–EUで飲食店予約サービスを展開

リクルートホールディングスの海外大型買収があきらかになった。同社は3月5日、EU圏で飲食店予約サービス「Quandoo」を展開するドイツのQuandooを買収したと発表した。

リクルートでは、2014年10月に100%出資のコーポレートベンチャーキャピタル「合同会社RGIP」を通じて発行済株式総数の7.09%を取得していたが、今回新たに92.91%の株式を取得。100%子会社化した。買収価格は271億1000万円(アドバイザリー費用5億6000万円を含む)。

Quandoo2012年の設立。ドイツからスタートし、EUを中心に急速に事業を展開。現在高級レストランからローカルダイニングまで13カ国6000 店以上が導入している。ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、トルコ、ポーランドでは、予約可能店舗数ナンバーワンのサービスだという。2014年12月期の売上高は429万ユーロ、純利益は 974万1000ユーロの赤字となっている。同社のこれまでの資金調達やファウンダーなどの情報はCrunchBaseも参考にして欲しい。

リクルートによると、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスの5カ国における飲食店のオンライン予約数は、まだ電話予約等の総予約数の約16%でしかないそうだ。そのため、今後大きな成長が予測されるとしている。そこでRGIPを経由して投資を実行したが、同社の持つ営業オペレーションやシステムの価格優位性・機能的利便性とリクルートグループの事業運営ノウハウの融合がビジネスの発展に有効であると確認できたため買収に至ったと説明している。


初期Gunosyライクなエンタメ特化型キュレーションアプリ「KOLA」

リリース当初の「Gunosy」は、自分好みのニュースが集まることをセールスポイントにしていたが、自分がフォローしたアーティストのニュースや動画が毎日届くキュレーションアプリ「KOLA」(コーラ)はそのエンタメ版のようなアプリだ。18日にバージョンアップしてレコメンデーションエンジンを搭載し、「ちょっと驚きのあるアーティスト」を推薦するようになった。その精度はアプリを使い込むほどに高まるのだという。KOLAは2014年1月、リクルート内の新規事業コンテストの一環でベータ版が公開された。好評だったことから継続開発し、このたび正式版のリリースとなった。現時点ではiPhoneアプリのみだが、Android版とiPad版も順次公開する。

レコメンデーションエンジンは、アプリで過去に閲覧したニュースや、自分と同じアーティストをフォローしている別のユーザーのフォロー情報を参考にして、オススメのアーティストのニュースを届ける。当然、似たような嗜好のユーザー同士であれば分かりやすいレコメンドになるが、「少し遠いけどもしかしたら好きかも」といったアーティストがオススメされる感じに近いのだろう。具体的には次のようなイメージだ。

KOLAは自分がフォローしているアーティストのニュースや動画を届けるタイムラインに加えて、ユーザー全体に人気のある「話題のニュース」も配信している。話題のニュースのコンテンツ自体は全ユーザーで同じだが、ユーザーの興味がありそうなニュースは拡大表示されるようなUIとなっている。例えば、ももいろクローバーZをフォロー中のユーザーには、ファン層が近い「でんぱ組.inc」のニュースを拡大表示している。

レコメンドエンジン以外でベータ版からアップデートした要素としては、コンテンツ配信の対象となる芸能人が、当初の邦楽アーティスト中心の約1500組から、洋楽アーティストやタレントを含む約10万組に拡大。これに伴い、コンテンツのニュースソースも5媒体から15媒体に増えた。ニュースは「ナタリー」や「Barks」などのエンタメサイトが含まれている。

現時点でマネタイズは考えていないが、年内にもネイティブ広告を導入するという。