リファラル採用を人事部任せではなく企業文化に、リフカムがスタートアップ特化の新サービス

拡大期のスタートアップにとって「自社にあった優秀な仲間を採用できるかどうか」はその後の成長スピードに大きな影響を与える重要なポイントだ。

TechCrunch Japanでは日々国内スタートアップの資金調達ニュースを紹介しているけれど、起業家にその使徒を聞いても多くの場合「エンジニアを中心とした人材採用の促進」や「組織体制の強化」という答えが返ってくる(“プロダクトの拡充”なども、突き詰めていくとそのための人材採用だったりすることが多い)。

近年採用のカタチが多様化し様々な概念も生まれている中で、社員の繋がりを生かした「リファラル採用」は多くのスタートアップが取り組む手法の1つではないだろうか。

本日10月16日にベータ版が公開された「Refcome Teams」はまさにスタートアップのリファラル採用にフォーカスして、そこにまつわる課題を解決するプロダクトだ。

飲食店とスタートアップではリファラル採用の毛色が異なる

Refcome Teamsを簡単に説明するとスタートアップ向けの「リファラル採用に特化したタレントプール」ということになるだろうか。このプロダクトを手がけるリフカム代表取締役の清水巧氏は「Salesforceのタレント管理版」という表現をしていたが、これがわかりやすいかもしれない。

まずは社員みんなの繋がりをベースに候補者のプールを作り、各候補者に対するアクションの履歴や転職意向などのステータスをプロダクト上で管理していく。その上でSlackなどと連携することで適切なメンバーに通知が届き、現場が主体となってチーム一丸でリファラル採用を進めていけるようにサポートする。そんなプロダクトだ。

リファラル採用サービスはすでにいくつも存在する中でRefcome Teamsはどんな特徴を持つのか。それについてはリフカムがこのプロダクトを開発するに至った背景を紹介するのが1番良さそうだ。

リフカムの主要プロダクト「Refcome」。人事担当者からメールやアプリで送られてきた専用ページを友人に転送するだけで簡単に紹介できる

リフカムは2016年7月にリファラル採用を活性化させるサービス「Refcome」をリリース。約2年強の間に、飲食店やサービス業を中心に累計約850社で活用されてきた。特に近年はすかいらーくグループや吉野家といった大手飲食チェーンへの導入が進んでいる。

ただ清水氏の話では一口に「リファラル採用」と言っても、飲食店やサービス業におけるリファラル採用とITベンチャー・スタートアップにおけるリファラル採用では若干毛色が異なるようだ。

「飲食店では特にアルバイト採用で重宝されていて、“スカウト”のような機能を使ってフランクに知り合いに声をかけることが多く、時間軸も短期的なものが多い。一方でスタートアップにおけるリファラル採用は、優秀なエンジニアの知り合いを『数ヶ月、数年かけて口説く』といったように長期スパンで時間をかけながら進めていく。違う使い方やニーズに対して同じプロダクトを提供していることに関して、徐々にもやもやするようになった」(清水氏)

そもそもリフカムは創業当初に「Combinator」というスタートアップの仲間集めを支援するプロダクトをやっていたこともあり、清水氏もこの分野で事業を展開したい気持ちが強かったそう。それを踏まえた時に「何より自分たち自身が今のRefcomeをヘビーユースできていなかった」ため、スタートアップにフォーカスした新たなサービスを作ることを決断したという。

リフカムが創業当初に手がけていた「Combinator」

スタートアップが抱えるリファラル採用3つの課題

リファラル採用支援サービスを手がけるということもあり、以前から自社採用についてはリファラル経由での割合が1番多かったという清水氏。とはいえ「この課題に対してしっかりアプローチできていればもっと上手くいっていたと思う」という3つのポイントがあるそうだ。

1つ目がリファラル採用の依頼をしても、多くのメンバーは「優秀かつ転職を考えている人にしか声をかけない」ということ。優秀な人であるほど当然引く手数多であり、すでに他社で活躍していることも多い。本来はそういう人材にも中長期的にアプローチをしていくべきだが「リファラル採用に協力して」と言われただけでは、社員も候補者としてリストアップしづらい。

実際リフカムの社内でも同様の課題が発生していたため「まずは一旦タレントリストに追加してくれるだけでいい」と伝え方を変えてみたところ、リストに追加される候補者の数自体が一気に増えたという。

2つ目のポイントが「タレントプールに追加した候補者の管理が大変」だということ。特に数が増えてくるとエクセルやスプレッドシートで動向を記録していくのは困難。リフカムでも「(候補者が)気づいたら転職している」「社員の知り合いなのにエージェントから紹介されてしまう」という自体に陥っていたようだ。

「社内で試したところタレントプールに約250人の候補者があがり、そこから4人採用に繋がった。ただ後々調べてみると少なくともそのリストの中で20人以上転職していて、もっと多くの仲間を採用できるチャンスがあったことがわかった」(清水氏)

そして3つ目のポイントが「会社規模が大きくなるとリファラルの協力率が下がる」ということ。リフカムが80社にアンケートをとってみたところ、特に企業間で差が出るのが社員20〜30名以上になるタイミングなのだそう。「具体的に人事部ができるタイミング。それまでは全員が採用に積極的でも、人事部ができると『採用は人事がやってくれる』という状況に陥りがち」だという。

この3つのポイントでつまずかないようにサポートするツールこそが、Refcome Teamsだ。

社員全員参加型のでリファラル採用プラットフォーム

現時点でのRefcome Teamsの機能を整理しておくと以下がメインとなる。

  • メモリーパレス機能 : 人事も知らない人脈を発見しタレントプールを作成
  • コラボレーション機能 : 候補者のステータスを全員で管理し関係性を構築
  • アラート機能 : 候補者の転職意向の変化や社員のネクストアクションをアラート
    • カルチャー機能 : チームの頑張りを可視化

中でも候補者をリストアップする「メモリーパレス」は核となる機能。実はメモリーパレスというのは米国の著名VCセコイアキャピタルが投資先に推奨しているリファラル採用手法の名称だ。

この手法では「高校時代の友人で特に優秀な人を3人教えてください」といった形で各メンバーに候補者をリストアップしてもらう。これを高校、大学、インターン時代、社会人1社目、と時系列で実施していくことからメモリーパレスというらしい。

Refcome Teamsの場合は若干仕様が異なるが、大枠は同じだ。まず最初に管理者がプールに追加してほしい候補者の条件を選択する。たとえばセールスorエンジニア、新卒or中途といったものを想定してもらうといいだろう。その条件に合わせて「前職のセールスメンバーで優秀な人を3人教えてください」などの質問が自動で生成され、各社員に届く。

社員は受け取った質問に該当する知人をSNSなどの繋がりをベースにリストアップすればいい。清水氏によるとだいたい各メンバーあたり10人ぐらいの候補者が出てくるそうで、社員数が30人規模の企業であれば、約300人のタレントプールができるようなイメージだ。

プールに新たなメンバーが追加されると、該当する部門のリーダーにSlackで通知が届く仕組み。各候補者ごとのページで「この人気になるから話聞いてきてくれない」と社員に依頼したり、候補者に対するアクションや進捗を一括で管理していくことができる。

「リファラル採用は本来営業と同じで最終的なゴールの手前に『今月何人の候補者をプールに追加できたか』『何人に具体的なアクションができたか』といった細かいKPIがあるはず。一連の状況や進捗を可視化し、人事部任せではなく全員で管理しながら効果的なアクションができるようになる」(清水氏)

清水氏がこのプロダクトを「Salesforceのタレント管理版」と表現していたのも、まさに上記のような理由からだ。営業と同様に、仲間集めにおいてもCRMのような仕組みを浸透させていきたいそう。候補者の前段階の人を“prospect(プロスペクト)”と呼ぶことから、そういった人材との関係性を構築できる「PRM(プロスペクトリレーションシップマネジメント)」という概念を広げていきたいということだった。

「1人3役」から「1人適役」のリファラル採用へ

Refcome Teamsは社員数1人につき月額3000円の定額モデルで提供していく計画。すでに30社で導入が決定していて、約半数ではすでに運用も始まっている。まだタレントプールを作っていく段階の企業が多いが「こんな優秀な人と繋がっているならもっと早く教えてよ」と、今のところはこれまで社員からあがってこなかった繋がりに気づけるようになったと評判も良いそうだ。

また今回リフカムではベータ版の提供開始と共に、メルカリの石黒卓弥氏とReBoost代表取締役社長の河合聡一郎氏が開発パートナーとして協力していることも発表している(河合氏はリフカムに出資もしているとのこと)。

2015年1月にジョインしたメルカリで人事企画や組織開発担当として活躍してきた石黒氏は、個人でも複数のスタートアップにて人事領域のアドバイザーを務める人物。河合氏も過去に在籍していたビズリーチやラクスルで採用領域の現場経験が豊富なほか、現在は投資先のスタートアップの社外人事を担っていたり企業向けに人事組織や採用の支援を行っていたりもする。

河合氏からは「スタートアップの成長においては『全社員が当事者となり、良いチームを創ると言う事が当然な文化』を、なるべく早い段階から築くことができるかがポイント」だとした上で、スタートアップにおけるリファラル採用や、今回のプロダクトで実現したいことに関するコメントを得られた。

「その為には自社や事業が『なぜ存在しているのか』と同じように『なぜその組織なのか』という組織創りへのビジョンやストーリーも必要です。その上で今後の組織創りにおけるテーマは『共創』だと思います。それらを理解、体現し全社員が採用活動に関与する中で、リファラルはとても相性や有用性が高いと思います」

「一方でリファラル採用は、そのプロセスにおいて『職種ごとにフィットした仲間の紹介のしやすさ』や、『適切な紹介タイミング』『入社決定できるかどうか』『候補者のDBの可視化』など、様々な課題に対する解決策が必要だと考えています。RefcomeTeamsを通じて、CRMやMAの要素を提供することにより、結果的に『仲間づくりの文化創り』のきっかけになればと思います」(河合氏)

リフカムでは今後「Refcome」と「RefcomeTeams」の2つのプロダクトを軸に様々な企業の仲間集めをサポートする計画。現在はTeamsにもかなりの開発リソースを割いているそうで、機能面のブラッシュアップなども随時実施していく予定だ。

「従来のリファラル採用は各社員が候補者をリストアップして、口説いて、入社確度がある程度高まったタイミングで初めて人事や経営陣に紹介するという『1人3役』のリファラルが中心だった。今回掲げるのは社員が候補者の追加を担当し、実際に口説いたり、クロージングするのはマネージャーや経営層が一緒に取り組んでいくという『1人適役』のリファラル採用。この文化を作っていくのは自分たちにとっても大きなチャレンジになる」(清水氏)

約100社のリファラル採用支援で培った知見を活用、リフカムがアナログなサポートを加えた新サービス

社員の人脈を良質な人材の採用に活用する、リファラル採用。特にアメリカでは積極的に取り入れられてきたと言われている手法だが、近年は日本でも少しずつ広がり始めている。

こ関連ツールもいくつかでてきていて、TechCrunch Japanでも何度か紹介したクラウドサービス「Refcome(リフカム)」もまさにそのひとつ。提供元のリフカムは2016年7月から同サービスを通じて、これまでに約100社のリファラル採用を支援してきた。

そのリフカムが2月15日より新たなサービスを始める。リファラル採用の制度設計から施策案の作成、運用代行までを一貫してサポートする「Referral Success Partner」だ。

リファラル採用は思っているより難しい

Referral Success Partnerをシンプルに表現すれば、「リファラル採用に関するアナログなコンサルティングサービス」となるだろうか。

これまでRefcome、Refcome Engage(2017年4月にリリースした社員のエンゲージメント測定ツール)とクラウド上で完結するサービスを提供してきたリフカム。同社がこのタイミングであえてアナログな事業を始めるのは、約1年半に渡ってこの領域に取り組む中で見えてきた気づきがあるという。

「『リファラル採用は思っているよりも難しく、一筋縄ではいかない』というのがこれまで事業をやってきて感じていること。リファラル採用の立ち上げにおいては、システムによって効率化するだけでなく、どのように社員を巻き込んでいくのか、どのような施策を実施していくのかといったアナログなサポートこそが成功に大きく関わることがわかってきた」(リフカム代表取締役の清水巧氏)

清水氏によると、プロダクトの観点ではリファラル採用は「エンゲージメント」「採用広報」「タレントプール」「リファラル」という4つの工程にわかれる。そして成果を出すためには最終工程のリファラルの部分だけでなく、すべての段階が上手く機能している必要があるという。

エンゲージメントについては以前紹介したとおり、リファラル採用に協力的な店舗の社員はエンゲージメントが高いという結果もでているそう。この工程については上述したRefcome Engageで見える化している。

一方でリファラル採用を加速させるストーリーの掘り起こしや社内外への発信(採用広報)、対象となる候補者のリスト作り(タレントプール)についてはこれまで十分に対応できていなかったという。

「(リソースの問題もあったが)もう少し早い段階から顧客の内部に入って密にサポートできていればと思う部分もある。これまでもリファラル採用やリフカムに興味をもってもらったものの、制度設計を自社でやるリソースやノウハウがないという理由で受注に繋がらなかったケースもあった」(清水氏)

100社のサポートを通じて培ったノウハウやデータをフル活用

今回スタートするReferral Success Partnerは、これまでリフカムが蓄積してきたデータやナレッジを活用して、リファラル採用の立ち上げから運用が自力で回るまでの3ヶ月をサポートするサービスだ。

清水氏の話では、これまでRefcomを通じてリファラル採用で成功した会社には共通点があり、いくつかのパターンに分類できるそう。専属スタッフが立ち上げの段階から顧客に伴走することで、「どのパターンにはまりそうか、どのような施策が最適か」を社内のキーマンを巻き込みながら一緒に考えていく。これがReferral Success Partnerの特徴だという。

長期的には採用広報やタレントプールの工程に関するサービスを独立で提供することも視野に入れている。直近ではRefcomのアプリ版もリリースする予定だ。

リフカムでは「蓄積したデータ、ノウハウの活用」「専属スタッフのサポート」「クラウドツールを活用した工数削減」という3つのアプローチで、企業のリファラル採用の活性化を目指す。

なおリフカムは2017年11月に伊藤忠テクノロジーベンチャーズやDraperNexusなど複数VCから約2億円を調達している。

リファラル採用支援「Refcome」提供元が約2億円調達――1年で登録社員数10倍、アルバイトにも活用

リファラル採用を支援するクラウドサービス「Refcome(リフカム)」を提供するリフカム(Combinatorから社名変更)は11月6日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ及び既存株主のDraperNexus、Beenext、ANRIを引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金で現在伸びているアルバイト領域への展開に力を入れていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化、さらには新サービスの開発にも取り組んでいく。なおリフカムは2016年10月にも伊藤忠テクノロジーベンチャーズを除く3社から5000万円を調達している。

1年間で登録社員数が10倍、アルバイト・派遣領域で利用が拡大

Refcomeは2016年7月にリリースされたリファラル採用を活性化させるクラウドサービス。人事と現場の社員双方の負荷を減らし、リファラル採用に取り組みやすい環境をサポートすることがウリだ。具体的には人事担当者が社員へ募集内容を周知できる機能や協力してくれた社員を把握できる機能、社員が友人に会社の紹介をしやすい機能などを備える。

2016年10月時点で2700人だった登録社員数は1年間で10倍越えの3万人に増え、月次の売上高も15倍へと成長した。リフカム代表取締役の清水巧氏の話では、この1年でIT企業だけでなく飲食チェーンやアパレル、不動産など導入企業の幅が広がったという。合わせてわずか10%だったアルバイトや派遣での利用比率が1年間で40%に増えるなど、正社員以外の利用も増えたそうだ。

アルバイトや派遣の採用でRefcomeの利用が増えてきた理由はどこにあるのだろうか? その背景のひとつには「離職率の問題」があると清水氏は話す。

「ある飲食店では採用したアルバイトの3人に1人が入社から2週間以内に辞めてしまうということがあった。その1人を採用するのにも求人媒体を使うと7〜8万円かかるということもあり、そもそも辞めない人をなるべく安く採用したいというニーズが強くなっている。リファラル採用の場合は友人が社内にいるため社内になじみやすいこともあり、問い合わせが増えてきた」(清水氏)

アルバイトの募集においても、たとえば「友人紹介キャンペーン」など、これまでもリファラル採用的な施策は行われていた。ただ時代の変化とともにほとんどの人がSNSを使うようになり「リファラル採用」という概念や、それを支援する仕組みも整い始めている。「おそらく5年前では少し早かった。外部環境が追いついてきてちょうどいいタイミングになってきている」という清水氏の話も頷ける。

従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動

清水氏にこの1年の変化についてもう少し詳しく話を聞くと「従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動させて提案できるようになったこと」と「事例が増えてナレッジが蓄積されてきた結果、提案できる施策が増えたこと」がサービスの成長につながっているという。

リフカムは2017年4月、アンケート結果を基に社員のエンゲージメントを可視化できる「Refcome Engage(リフカムエンゲージ)」をリリースした。リリース時にも話があったが、リファラル採用がうまくいくかどうかは、従業員のエンゲージメントが大きく影響するのだという。

たとえばある飲食チェーンではリファラル採用に協力的な店舗と非協力的な店舗があり、双方で従業員のエンゲージメントを測定したところ、協力的な店舗はエンゲージメントも高いという結果が出たそうだ。そこでまずはRefcomeの導入企業を中心にRefcome Engageを提案。双方のツールは連動しているため、エンゲージメントの測定結果からリファラル採用の施策設計までをシームレスに行えるようにした。

また1年以上をかけて様々な企業のリファラル採用をサポートする中で、ナレッジが蓄積されより効果的な提案ができるようになったきている。

「たとえば100名規模のITベンチャーで人事から全社的に人材紹介の依頼をしても効果が薄い一方で、事業部長など現場のトップから依頼をするようにしただけでうまく機能するようになった事例がある。規模や業種によっても最適な手法は異なるため、フォローアップする体制を強化してきた」(清水氏)

清水氏が前職のSansan時代にカスタマーサクセス部門に携わっていた経験もあり、リフカムでは初期からカスタマーサクセス(CS)に力を入れていてきた。年間の解約率は10%未満とのことで、現在もCSドリブンで新たな機能や施策が生まれているという。

採用から組織作りまでを一気通貫するHRサービスへ

今回の資金調達を踏まえて、リフカムではアルバイト採用領域を中心にIT業界以外への展開をさらに進めていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化も引き続き進めていく。

そしてその先には新たなサービスや機能を加えることで、リファラル採用システムを超えて組織作りまでをサポートするシステムへ拡張することを構想しているという。

「リファラル採用を推進していると中には今すぐ転職することは考えていない人もいる。そのようなタレントをデータベース化できるものなど、さらに川下のサービスも作っていく。もともと『採用を仲間集めに』をミッションに、リファラル採用を通じて良い会社を作るサポートをすることが目的。RefcomeやRefcome Engageに新サービスも加えることで組織作りまでを一気通貫でできるようにすることで、ミッションの達成を目指したい」(清水氏)

リファラル採用ツール「Refcome」のCombinatorがBEENEXTなどから5000万円の資金調達、開発・サポートを強化

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を手がけるCombinatorは10月6日、BEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを引受先とした総額5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

7月にリリースしたRefcomeは、効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能、そして友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供することで、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用が実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。正式公開から3ヶ月で、すでに約30社9000人に利用されているという。

screenshot_667同社は今回調達した資金をもとに、開発および営業・サポート体制を強化。リファラル採用の支援だけでなく、より良い組織創りのヒントが得られるプロダクトの開発を目指すとともに、サポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル採用の施策を支援できるようにするとしている。

「Incubate Camp」での優勝が資金調達の契機に

Refcomeの正式公開から3カ月で資金調達を実施したCombinator。その経緯には7月15日、16日に開催されたスタートアップとベンチャーキャピタリストの合宿「Incubate Camp」が大きく関わっている。

「BEENEXTからの投資はIncubate Campが開催される前に決まっていたのですが、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersからの投資はIncubate Campでの結果があったからこそ、決まったのではないかなと思っています」(Combinator代表取締役の清水巧氏)

Incubate Campはシードラウンドの資金調達およびサービスリリース済みで、さらなる事業成長を目指して資金調達を希望するスタートアップとVCが一堂に会し、2日間で事業アイデアを磨きあげる合宿イベント。今回参加した17社のスタートアップの中で、Combinatorは最も高い評価を獲得。その結果も相まって、3社のVCから資金を調達することができたという。

3人の投資家と一緒に戦おうと思ったワケ

もちろん、Incubate Campに参加していたVCは数多くいる。様々な選択肢が用意されている中、なぜCombinator代表取締役の清水巧氏はBEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersの3社から投資を受けることにしたのだろうか?

「BEENEXTは前田ヒロさんがいたからです。前田ヒロさんには、スタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を立ち上げた頃から事業の相談に乗ってもらってたんです。その経験もあって、今回資金調達の相談をしに行ったら、その場で快諾していただけて。前田ヒロさんは起業家と一緒になって事業をつくっていくことに強みを持っている方だと思っているので、僕自身、一緒にRefcomeをつくっていきたいと思っていました」(清水氏)

清水氏自身、Refcomeはプロダクトマーケットフィットの少し前の段階と話しており、”事業・組織づくり”の観点から前田ヒロ氏が所属するBEENEXTを選択した。ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを選んだ理由もそれぞれある。

「Draper Nexus Venture PartnersはIncubate Campでメンタリングを担当してくれたこともあるのですが、パートナーの倉林陽さんがSaaSの領域に強く、BtoBサービスのグロースの方法に精通していた方だったので、その方法を教えてもらいたいと思いました。ANRIの佐俣アンリさんはCombinatorの創業時から相談に乗ってもらっていて、僕のことをすごく理解してくれ方だと思っていました。また、すごくビジョナリーで大変なときも背中を押してくれるので一緒に戦っていきたいと思いました」(清水氏)

組織課題も解決できるようなサービスに

実際、3カ月間サービスを走らせることで見えたこともある。それはリファラル採用のハードルを下げられたこと。リファラル採用の導入・運用の簡略化させることで、「リファラル採用って何から始めて良いかわからない」という人事担当者の悩みに答えることはできた。

しかし、一方で「ツールを導入すればリファラル採用が上手くいく」と思っている企業も一定数出てきたという。その原因は、リファラル採用を運用していくための仕組みづくりができていないことにあるので、今後、清水氏はRefcomeを社員満足度や組織課題を可視化できるようにし、より良い組織づくりのヒントが得られるプロダクトにしていくそうだ。

また、企業によって最適なリファラル採用の手法が異なることもわかったため、カスタマーサポートの採用を強化。導入企業のサポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル施策を支援できる基盤を整えていく。

「3カ月間サービスを運用していく中で、リファラル採用の導入ハードルを下げることはできたかなと思っています。ただし導入後、リファラル採用が定着していない企業も多くある。もちろん、リファラル採用の導入・運用の簡略化も継続して行っていきますが、リファラル採用をきちんと運用できるよう、組織づくりもサポートできるサービスにしていきたいと思っています」(清水氏)。Combinatorでは2016年中の導入企業100社を目指す。

人事、社員、その友人を繋ぐリファラル採用ツール「Refcome」——Combinatorが正式公開

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

Combinatorは7月12日、リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を正式リリースした。Combinatorでは2015年8月に予約受付を開始し、クローズドベータ版としてサイバーエージェント、コロプラ、GMOメディア、オープンハウスグループのアサカワホームなど20社に限定してサービスを公開していたが、今後は全ての企業が利用できる。またCombinatorでは、2015年1月から12月にかけて、シード系VCとエンジェル起業家1人(いずれも非公開)から約1150万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

Refcomeは、企業のリファラル採用を支援するサービス。効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

人事担当者には、社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能などを提供。実施しているリファラル採用の施策は専用のダッシュボードで一元管理でき、施策の効果測定などが可能だ。また社員には、友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供。自動生成されるテキストを使って、FacebookやLINE、メールなどで手軽に友人を招待できる。招待された社員の友人には、「特別な招待ページ」と呼ぶ登録フォームを用意。PCやスマートフォンから必要事項を入力すればすぐに採用のエントリーができる仕組みを提供する。これらの機能により、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用を実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。

社員の知人や友人を紹介・推薦してもらう「リファラル採用」は米国では主流な採用手法として認知が進んでおり、最近では日本でも注目が集まっている。まだ属人的ではあるが、企業がリファラル採用に取り組むことも増えてきた。

しかし、採用担当者からすれば課題も残る。これまでのリファラル採用の施策は人事、社員、社員の友人という3者のコミュニケーションコストがかかりすぎてしまう傾向にあったのだ。その結果、社員が友人の紹介に協力的になれずに終わるということも少なくない。Refcomeではそんな課題を解決するため、煩雑な作業を一元管理するとしている。

Refcomeの利用イメージ

Refcomeの利用イメージ

失敗体験がサービスを生んだ

煩雑な社員紹介のプロセスをシンプルにしたRefcome。そのサービス開発には、Combinator代表取締役である清水巧氏の”事業の失敗経験”が大きく関わっている。

MOVIDA JAPAN(当時)からシードマネーを調達し、2014年1月からスタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を展開していた清水氏。だが同年11月、Combinatorは資金難に陥り、事業が立ち行かなくなってしまった。

「自分が起業しようと思ったときに、創業メンバーの仲間集めにすごく苦労したんです。その経験から、創業メンバーのマッチングができるサービスがあれば起業家が増えると思いサービスを立ち上げました。ただ、当時は全く売上を意識できていなくて……」(清水氏)

事業を継続していくのか、撤退するのか——迷った末に清水氏は事業の継続を選択。Combinatorのユーザーを対象にした採用イベントを開催し、売上を立てようとした。

「一度、オフィスなどは全て解散し、地元の石川県に帰って今後のことを考えました。株主の方とも相談しながら考えた結果、自分の失敗は”やりきった失敗”ではないと思ったんです。(起業前に就職していた)Sansanの寺田さん(代表取締役社長の寺田親弘氏)からも『お前はまだまだ骨が細い。きちんと積み上げていくことが大切だ』という言葉をもらい、もう一度挑戦したいと思いました。見栄やプライドは捨て、愚直に採用イベントでマネタイズすることに決めました」(清水氏)

2015年1月から半年間、何度も採用イベントを開催した。石川で企画までを仕込み、イベント直前に深夜バスで東京に向かい、イベントが終わればまた石川に戻る…そんなことを繰り返してなんとかキャッシュも回るようになってきた。そこであらためて、清水氏は本当に挑戦したいことを自問自答した。

「起業家が旗を掲げて仲間が集めるだけでなく、社員全員が仲間集めをできないか。今、勢いのあるスタートアップは社員全員が採用活動をやっている。であれば、その世界をサービスによって実現できないか、と考えたんです」(清水氏)

そんな思いからRefcomeの事前予約ページを公開したところ、1カ月で約150件の事前応募があったという。手応えを感じた清水氏は、そこから営業資料とプロトタイピングツールで作成したサービスのイメージを持ち、応募企業に対して営業をかけていった。企業のニーズを受けてサービスをブラッシュアップしていった結果、サイバーエージェントでの導入が決定。そこから約3ヶ月間、技術顧問の加瀬正喜氏、SanSanの同僚だった中森恭平氏と協力し、急ピッチで開発を進行。なんとか、導入に間に合わせたという。

「Combinator」のトップページ

「Combinator」のトップページ

導入企業ではすでに採用実績も

サイバーエージェントでは導入から2カ月で150人の応募者の獲得に成功。実数は非公開だが、複数人の採用実績もできた。実は筆者にも、サイバーエージェントの友人から特別選考の連絡(当時はRefcomeだと全く知らなかった)が来ていた記憶がある。友人からダイレクトに連絡が来るというのは企業からの連絡よりも嬉しい気持ちになったし、応募ページの記入は1分ほどですごく簡単だったのが印象的だったこともあり、応募率が上がるのではないかという感想を持った。実際、サイバーエージェント以外の企業でも一定の実績が出はじめているという。

一方で、会社の風土によっては応募者の獲得が難しいケースもあるそう。この点は社員のモチベーション向上施策など、コンサルティングも行っているという。

Combinatorでは2016年中に導入企業100社を目指す。現在の導入企業はIT企業がほとんどだが、今後は代理店とも連携し、アパレルや医療など、リファラル採用の文化がある業界への導入を進めていく。