Evernoteの名前が反政府調査ロビーグループのウェブサイトから静かに消えていた

2013年、いわゆるPRISMプログラムの下、テック企業8社がユーザーのデータを米国国家安全保障局(NSA)に渡していたことを糾弾された。NSAの告発者であるEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏がリークした政府の高度機密書類によって明るみに出た。その6カ月後、そのテック企業らはReform Government Surveillance(政府による情報収集の改革)という名前の同盟を結成。名前が示すように、政府調査に関する法律の改訂を立法者に働きかけるのが目的だ。

狙いは単純だった。立法者に対し、標的となる脅威の監視方法を制限し、米国人の個人データを底引き網的に収集するのではなく、企業に大局的状況を提供し、ユーザーデータ提出に関する一種の秘密命令について、企業が透明性を保てるよう要求することだ。

Reform Government Surveillance(RGS)の創立メンバーはApple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、LinkedIn(リンクトイン)、Microsoft(マイクロソフト)、Twitter(ツイッター)、Yahoo(ヤフー)、およびAOL(エーオーエル、後のVerizon MediaでTechCrunchの親会社[今のところ])の8社で、後にAmazon(アマゾン)、Dropbox(ドロップボックス)、Evernote(エバーノート)、Snap(スナップ)、およびZoom(ズーム)がメンバーに加わった。

ところが2019年6月のある日、EvernoteがRGSウェブサイトから説明もなく消えた。さらに奇妙なのは、そのことに2年間誰も気づかなかったことで、Evernote自身でさえ知らなかった。

「当社のロゴがReform Government Surveillanceウェブサイトから削除されていたことは知りませんでした」とEvernoteの広報担当者がTechCrunchのコメント要求に答えて語った。「私たちは今もメンバーです」。

Evernoteは2014年10月に同盟に参加した。PRISMが最初に世間にさらされてから1年半後のことだが、この会社はリークされたスノーデン文書に名前が載ったことがなかった。それでもEvernoteは強力な仲間として、RGSによる行政調査法改訂の要求活動はリークされたNSA文書に名前が載った企業以外からも支持を得ていることを示した。EvernoteはRGSの一員であること、および「政府による個人の監視と個人情報のアクセスを規制する慣行と法律を整備する」努力を支持していることを最新の透明性レポートでも表明している。このことからもRGSウェブサイトから名前が消えた謎はいっそう深まった。

TechCrunchは他のRGSメンバー企業にも、Evernoteが削除された理由を知っているかどうか尋ねたが、返信がなかったかコメントを拒んだか、思い当たらないかのいずれかだった。あるRGSメンバー企業の広報担当者は、さほど驚いていない。なぜなら企業が「業界団体を出入りする」のはよくあることだからと語った。

Reform Government Surveillance同盟のウェブサイト。Amazon、Apple、Dropbox、Facebook、Google、Microsoft、Snap、Twitter、Verizon Media、およびZoomのロゴが並んでいるが同じくメンバーであるEvernoteはない(画像クレジット:TechCrunch)

たしかにそうかもしれない。企業はいずれ自分のビジネスに役立つかもしれないロビー活動によく参加する。政府による情報収集は、シリコンバレーのビッグネームが一致して大義を支持している稀な難問だ。実際、テック企業の中には自社ユーザーに対する政府調査の増加を公かつ積極的に擁護しているところもある。なぜなら自分たちの使っているサービスにプライバシー強化を要求しているのはユーザー自身だからだ。

結局Evernoteが消えた理由は驚くほど穏やかなものだった。

「Evernoteは長年のメンバーですが、過去数年はあまり活動していなかったため、ウェブサイトから削除しました」とRGSの代理を務めているワシントンDCのロビー業者であるMonument Advocacy(モニュメント・アドボカシー)がメールで説明した。「貴社の質問は当組織内に新たな会話を生むきっかけになりました。今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします」。

MonumentはRGSの設立初期に調査法改訂のロビー活動を行うために雇われて以来、ずっとこの件に関わっている。OpenSecrets(オープンシークレット)の調査によると、同社は2014年以来これまでに220万ドル(約2億4000万円)をロビー活動に費やしている。具体的には、愛国者法、外国諜報活動偵察法(FISA)など議会で検討中の法案を変更するよう議員に働きかけているが、結果はまちまちだ。RGSは、愛国者法に基づくNSAの情報収集を縮小する米国自由法案を支持したが、NSAに米国外在住外国人の情報を収集する権利を与えるFISA第702条に対する反対運動は失敗した。702条は2018年に再承認され6年延長された。

2020年RGSはほとんど活動がなく、大西洋横断データフローの重要性に関する声明を1件発行しただけだった。米国EU間のデータ移動は、テック企業が懸念する最新の重要問題であり、現地当局が監視できないヨーロッパのユーザーはサービスから削除される恐れがある。

声明には「RGS加盟企業は自社サービスを利用している人々のプライバシーを守り、個人データを保護することを約束します」と書かれ、Amazon、Apple、Dropbox、Facebook、Google、Microsoft、Snap、Twitter、Verizon Media、およびZoomのロゴが入っているがEvernoteの名前はない。

同盟の力はメンバーの力そのものであり、ウェブサイトからEvernoteを削除したが今でもメンバーである、というのは結束した企業共同体が高らかに発信するメッセージではない。そもそもテック大企業たちの間で最近見られるものではないが。

関連記事:米政府による顧客データ要求の3分の1が秘密保持命令をともなう、マイクロソフト幹部が乱用に警鐘

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Evernote透明性Reform Government Surveillance / RGSプライバシー個人情報NSA

画像クレジット:Frederick Florin / AFP / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook