音響共鳴技術を使った肺機能モニタリング機器を開発するRespira Labs、3.2億円を超える投資と助成金を獲得

2021年、最初の製品を世界に発表した呼吸器ケアを専門とする医療技術企業のRespira Labs(レスピラ・ラブズ)は、肺機能とその変化を診断する音響共鳴技術の開発を継続するために、100万ドル(約1億1600万円)の資金調達と180万ドル(約2億900万円)の助成金を獲得することに成功した。新型コロナウイルス感染症や、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息などの肺疾患を持つ患者にとって、肺機能とその変化を追跡することは非常に重要なことである。

今回のプレシードラウンドは、ラテンアメリカを中心とするバイオテック投資会社のZentynel Frontier Investments(ゼンティネル・フロンティア・インベストメント)が主導し、アカデミックインキュベーション投資会社のVentureWell(ベンチャーウェル)、ミッションを重視したインパクト投資会社のImpactAssets(インパクトアセッツ)、そして米国およびラテンアメリカのエンジェル投資家数名が参加した。同社は調達した投資に加えて、Small Business Innovation Research(中小企業技術革新研究プログラム)、National Science Foundation(全米科学財団)、National Institutes for Health(米国国立衛生研究所)から、さらに180万ドルの助成金を獲得した。

Respira Labsは現在、フロリダ州とカリフォルニア州で30名の患者を対象とした予備試験を行っており、今後数年以内に製品のFDA(米国食品医薬品局)認証取得を目指している。同社が開発を進めているのは、マイクを使って肺機能を検出する、ウェアラブルで非侵襲的な肺機能モニタリング機器だ。

同社はこの技術で3つの特許を取得しているが、中でも重要なのは、人体に投射された圧電信号(パルスや音など)を分析して、肺の共振周波数や、音が身体にどのように吸収され、反射され、変化するかを明らかにするという技術だ。すばらしいことに、この信号は肺活量、肺に溜まった空気の量、COPDの有無などを調べることができるのだ。

「私たちは、競争の激しい分野で躍進できることに胸を躍らせています。また、私たちの使命と技術に深い関心を寄せてくださる組織に感謝します」と、Respira Labの創設者兼CEOであるMaria Artunduaga(マリア・アルトゥンドゥアガ)博士は述べている。「当社には、世界中で肺の問題を抱える何百万人もの人々の生活を改善できる可能性があります。これは早期発見が重要であり、私たちの技術は人々が問題をより早く発見し、生命を脅かすような危険な状況を回避するために役立ちます」。

「我々にとって、Respira Labsのようなビジョンとリーダーシップを持つ企業に投資できることは名誉なことです。同社のラテンアメリカにおけるバックグラウンドと専門知識は、当社の方針と完璧にマッチしています」と、Zentynel社のジェネラルパートナーであるCristian Hernández-Cuevas(クリスティアン・エルナンデスクエヴァ)氏は述べている。「Respira Labsのように、洗練された厳密なやり方で、音響の観点から肺機能のモニタリングに取り組もうとしているところは他にないと、我々は確信しています。これはポストコロナの世界で成長し続けるであろう巨大な市場への扉を開くものです」。

Respiraは製品開発の強化に取り組んでいるが、今回の資金調達はそれをさらに加速させることだろう。加速させる(アクセラレート)といえば、同社はMassachusetts Medical Device Development Center (マサチューセッツ医療機器開発センター)のアクセラレーターとバイオテックインキュベーターの参加企業に選ばれたことを筆者に明かした。

画像クレジット:Respira Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

RespiraのウェアラブルSylveeは肺の健康状態をモニター、COPDや肺機能低下を検知

この数年、身体のあらゆる側面を測定するウェアラブル製品が登場しているが、肺活量の測定はそれら他の側面よりも難解だ。Respira Labs(レスピラ・ラボ)が開発した「Sylvee」は、肺機能を継続的に測定するまったく新しいウェアラブルデバイスだ。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息患者をはじめ、一時的に肺機能が低下している人に最適だ。特に、肺機能に影響を与えるあのパンデミックが思い浮かびあがるだろう。

Sylveeは、胸郭の下部に装着する製品で、息を吹きかけなくても簡単に継続的に肺機能を評価できることを約束している。このパッチにはスピーカーとマイクが内蔵されており、音響的な共鳴の変化を測定する。同社によるとこれは、肺機能検査の基本である肺気量の変化をよく表しているとのことだ。

使われている技術は非常に巧妙だ。Sylveeは、スピーカーからノイズを発生させ、その発生した音をマイクで測定する。空洞があると音の質が変わるという理論で、ドラムセットのドラムヘッドを叩いた後に、綿や羊毛、液体を詰めて同じように叩いたときと同じだ。私は医者ではないが、肺の中には一般的に空気腔があるものと思われる。このウェアラブルは、収集したデータをもとに、肺の容積、容量、流量、そして空気の滞留を測定する。

「確立された科学では、低周波音を使って空気のとらえ込みを90%以上の精度で測定できることがわかっています。慢性閉塞性肺疾患患者と健常者では、音響共鳴スペクトルに明らかな違いがあります。慢性閉塞性肺疾患、新型コロナウイルス(COVID-19)、喘息の患者数は1億人を超え、高齢化も進んでいるため、肺機能を遠隔で正確にモニターし、問題を早期に発見して深刻な事態を回避することは、命を救うことにつながります。私たちの目標は、異常を早期に発見し、自宅での早期治療を可能にし、患者さんが自らの健康を管理できるようにすることです」。とRespira Labの創設者兼CEOであるMaria Artunduaga(マリア・アルトゥンドゥアガ)博士は説明してくれている。

Sylveeは、胸郭に装着して使用する。肺の健康状態を判断するために、音を出し、肺の共鳴をとらえる(画像クレジット:Respira Labs)

製品名のSylveeは、慢性閉塞性肺疾患を患い、発見できずに症状が悪化して亡くなったアルトゥンドゥアガ博士の祖母にちなんで名づけられている。

「このデバイスは、呼吸器系の患者が避けなければならない、急性の悪化の早期診断と管理を容易にしてくれます。私たちは、医師や患者に重要な情報を提供することで、より早い段階で治療法を切り替え、入院を防ぐことができます。これは私の祖母に起こったことです。彼女は慢性閉塞性肺疾患を患っていましたが、突然症状が悪化し、敢えなく亡くなってしまいました。私は、恐ろしくも、一般的なこの結果をきっかけに、医師としてのキャリアを捨て、このSylveeの開発に専念しました」とアルトゥンドゥアガ博士は述べている。

Respira Labsは、米国内外で500人以上の患者を対象とした大規模な試験を実施することで、空気のとらえ込み測定精度を90%にすることを目標としている。また、2022年後半には有名なジャーナルに論文を発表する予定だ。このデバイスは現在試作中で、今後18カ月以内にFDAの認可が下りる予定だ。

画像クレジット:Respira Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)