ファンクラブ作成アプリの「CHIP」がクローズへ

「スマホアプリから誰でも簡単にファンクラブを作れるサービス」として、2018年8月のローンチ直後から何度か紹介してきた「CHIP」。同サービスが明日5月25日をもって提供終了となる。

運営元のRinacitaではすでに先日サービスのクローズを発表済み。25日の13時にファンクラブへの新規加入やコンテンツの閲覧・投稿など全てのファンクラブ機能を終了する予定。6月7日にアプリの運用を停止するとともに、申請された売上金の振込をするとしている。

上述した通りCHIPはスマホからファンクラブをサクッと作れるアプリ。ファンクラブ名やテーマ画像、説明文などいくつかの項目を設定するだけでいいという手軽さがウリで、簡単なものであれば2〜3分で作成できる。

設定した月額会員費の90%がアーティストに還元され、10%がCHIPの収益となる仕組み。リリースから約3ヶ月で約2600個のファンクラブが生まれ、ユーザー数も2万人を突破。具体的な数字については非公開とのことだけれど、2019年4月末時点ではユーザー数は4万人を超え、1000万円以上の金額をアーティストに支援することができたという。

クローズの背景についてはRinacita代表取締役の小澤昂大氏が自身のnoteで言及しているが、大きくは以下の3つがポイントになったそうだ。

  • (特に支援するファン側のユーザーに対する)課題設定が甘かったこと
  • 「あらゆる人が夢に向かって挑戦できるサービス」という本来の目的からズレが生じてしまったこと
  • 課題を再定義した際に、CHIPを軌道修正するよりも新規のプロダクトを開発した方が良いと判断したこと

小澤氏に話を聞いたところ3月にはアプリのアップデートを始め、Android版の開発や人気クリエイターとのタッグ、プロモーションの強化に向けた計画も進んでいたそう。シリーズAの資金調達なども検討する中で一度方向性を深く整理した結果、上記の理由からクローズを決断したという。

「個人としても思い入れのあるサービスであり、毎日のように使ってくれるクリエイターの方や投稿を楽しみにしてくれてるファンの方もいて、潰したくないという気持ちも強かった。最後までできれば残したいという思いはありましたが、中途半端に続けるのはユーザーさんにとっても良くないと考え、クローズを決めました」(小澤氏)

Rinacitaでは今後CHIPとは別の形で“個人を後押しするような”サービスを開発していく計画だ。

ファンクラブ作成アプリ「CHIP」で音声や動画での投稿が可能に

RINACITAは3月1日、ファンクラブ作成アプリ「CHIP」(チップ)のアップデートを発表した。今回のアップデートにより、音声や動画を投稿できるようになる。

CHIPは簡単に自分のファンコミュニティを作成できるサービス。リリースから半年で3600グループを超えるファンクラブが開設されており、YouTuberやイラストレーターなどさまざまなジャンルのクリエイターやアーティストが活動しているという。現在はiOS版のみだが、3月中にはAndroid版もリリースされる予定だ。次回以降のアップデートでは、コンテンツ部分での機能開発のほか操作面も改善を進めていくとのこと。

RINACITAは2018年3月設立のスタートアップ。2018年11月にEast Venturesと複数の個人投資家から総額4600万円を調達し、プロダクトの開発体系を強化しつつ、ブランドの構築に力を入れてきた。

“ファンクラブの民主化”目指す「CHIP」が4600万円を調達、開設されたファンクラブ数は2600個に

ファンクラブ作成アプリ「CHIP(チップ)」を運営するRINACITAは11月21日、East Venturesと複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額4600万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に株主として加わった個人投資家はヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏、ペロリ創業者の中川綾太郎氏、nanapi創業者の古川健介氏、Vapes代表取締役社長の野口圭登氏、Candle代表取締役の金靖征氏、AppBrew代表取締役の深澤雄太氏と匿名の個人が1名。

RINACITAは過去にSkyland VenturesとEast Venturesからも資金調達を実施していて、今回はそれに続く調達となる。

3ヶ月で約2600個のファンクラブが開設

“ファンクラブの民主化”という紹介をしている通り、CHIPはスマホアプリから誰でも簡単にファンクラブを作れるサービスだ。

最初にテーマ画像を1枚設定した後は、ファンクラブの名前と説明、月額会員費、会員証のデザインなどを選ぶだけ。作るだけなら2〜3分もあればできる。テキストや画像の投稿、コメントなどを通じてアーティストとファンが交流を楽しむ場所になっていて、会員費の90%がアーティストに還元され、10%がCHIPの収益となる仕組みだ。

2018年8月5日のリリース後にSNSなどでちょっとした話題を呼び、約2週間で約1.3万人がユーザー登録。1700個ほどのファンクラブが開設され、実際に1400人が何らかのコミュニティに“CHIP”(課金)した。

RINACITA代表取締役の小澤昂大氏によると「今は一旦落ち着いたフェーズ」とのことで、確かにペース自体は落ちているものの、約3ヶ月が経過した現在もファンクラブ数が2600個、登録ユーザー数が2.2万人、課金ユーザー数が2700人と伸びている。

左からトップページ、CHIPの公式ファンクラブページ、ファンクラブの追加プラン作成画面

ただし現時点でCHIPを使ってできることはまだまだ限定的。「ローンチしてからの2〜3ヶ月はバグの修正や本当に最低限必要な機能を整備していた状態」(小澤氏)で、基本的にはアーティストがテキストや画像を投稿し、それに対してコミュニケーションをとるシンプルなプラットフォームだ。

直近では複数のプランを設定して金額や投稿の内容を変えられる機能や、入会できるファンの上限を設定できる機能、画像を複数枚投稿できる機能などが追加。11月からはより本格的なアップデートに向けた開発を進めていて、今回調達した資金も主にプロダクト強化に向けた人材採用などに用いるという。

現在はiOS版のみとなっているが、来年春ごろまでを目安にAndroid版とWeb版をローンチする方針。並行して(1)投稿できるコンテンツの種類を拡大(2)今までよりも本格的なファンクラブページを作れる機能の追加(3)アーティストと個人によるダイレクトメッセージ(DM)機能の追加 という3つを軸にアップデートを進めている。

投稿できるコンテンツに関しては動画や音声への対応を進める計画。今はテンプレートから選ぶ仕様になっている「ファンクラブの会員証」をカスマイズできる仕組みや、外向けにファンクラブサイトをデザインできる機能など、アーティストの世界観を反映しやすい環境も整える。

双方の交流を深めるという点で、DMの機能なども用意していく予定。なおDMについては全員が対象というよりは少人数限定の上位プランで特典として提供するなど、アーティストが範囲を選択できる仕様を検討しているとのことだ。

初期コストを気にせず、誰でも気軽にファンクラブを作れる場所へ

CHIPをローンチしてからの数ヶ月で「予想以上に多くの人に初期から使ってもらえ、多くの発見があった」と話す小澤氏。同様のサービスやオンラインサロンを含め“個人をエンパワーメントするサービス”が増えてきてはいるけれど、CHIPとしてはよりファンクラブに寄せていきたいという思いが強くなったという。

そのきっかけのひとつが「実際にCHIPを出してからファンクラブは『トップレイヤーのアーティストしか作れない』ということに改めて気づいた」ことにあるようだ。

「初期コストがかかるため、大手の事務所でもそれに見合った成果が見込めなければ簡単には作らない。結果として駆け出しの人達はもちろん、一定数のファンがいて良い作品を作っているアーティストでもファンクラブを持っておらず、収益化やファンとの交流の仕方に悩んでいるケースも多い。そんなアーティストが初期コストとかを気にせず、気軽にファンクラブを作れるようにしたい」(小澤氏)

とはいえ、ほとんど名も知られていないようなアーティストが熱狂的なファンを獲得したり、活動資金を確保したりできる場所を確立するには、解決しなければいけない課題も多い。

実際にCHIPを眺めてみても、多くのファンを集めているコミュニティはまだまだ一定数。もちろん試しに開設されたものもあるのだろうけど、ファンの数が0人や数人のものも少なくない。現在はSNSなどで影響力を持ちすでにフォロワーを抱えているユーザーが、そのパワーをCHIPでも発揮しているような状況にも見える。

これは他のサービスも抱えている問題かもしれないけれど、小澤氏も「その点は今後も試行錯誤を続けていきたい。まずは使いやすさなどで価値を感じてもらえるように改善をしていきつつ、『もともとのフォロワーが少ない人でもCHIPに来れば新たなファンがつく』『CHIPを開けば応援してみたいと思えるアーティストが見つかる』ような仕組みを模索していく」と話していた。