軍用自動運転車両開発Robotic Researchが約258億円調達、商用分野に進出

過去20年間にわたり米国防総省向けにオンロードおよびオフロードの自律走行車を開発してきた自動運転技術企業のRobotic Research(ロボティック・リサーチ)が、シリーズAラウンドで2億2800万ドル(約258億円)を調達した。同社は、SoftBank Vision Fund 2とEnlightenment Capitalがリードした今回のラウンドで得た資金を商業分野での事業構築に使う。

Crescent Cove Advisors、Henry Crown and Company、LiDAR企業のLuminarもこのラウンドに参加した。

Robotic ResearchのCEOであるAlberto Lacaze(アルベルト・ラカゼ)氏によると、同社の商用部門ブランドのRR.AIは現在、AutoDriveと呼ばれるあらゆる車両で使える自動運転キットを米国、カナダ、オーストラリア、欧州、サウジアラビアの道路を走っている約150台の大型輸送バス、大型長距離トラック、ヤードトラックに搭載している。今後は規模の拡大が課題となる。

Robotic Researchはこれまで、米陸軍や海軍のトラックを自動化してきた。地図に載っていない、GPSも良い通信機能もない、そして道路も整備されていない地域で活動するトラックだ。また、同社の自律走行スタックには、ステレオやStructure from Motion(一連の2D画像から3D構造を推定するレンジイメージング技術)など、通常の商用自律走行車が使用しないセンサーも追加されている、とラカゼ氏は話す。その結果、悪天候の道路で自動運転トラックを走らせることをいまだに恐れている競合他社よりもRobotic Researchは優位に立っていると考えている。

「ほとんどの人は、ロボティクスを魔法のようなソフトウェアだと思っています」とラカゼ氏はTechCrunchに話した。「実際には、ロボティクスは切手収集のようなものです。滑りやすい道路や埃にまみれ線が見えない道路など、さまざまなエッジケース(特殊な問題をともなう可能性がある状況)を集めなければなりません。私たちはたくさんの切手を集めました。ある意味、軍事用アプリケーション向けの一般的な日が、商業用アプリケーションのエッジケースです」。

RR.AIはすでにその技術を広く展開していて、今回の資金提供は特に商用アプリケーションの拡大と産業化を目的としている、とラカゼ氏は話す。

Robotic Researchは2020年、コネチカット州交通局との契約を獲得した。この契約では、長さ40フィート(約12メートル)の電動バス3台を自動化し、CTfastrakの回廊を走行させる。計画は、自動化されたバス高速輸送ライン、バス隊列走行、精密なドッキングへとスケールアップしていく。バスはレベル4の性能を持っているが、安全のために人間のオペレーターが乗車するとラカゼ氏は説明する(SAE、自動車技術者協会の定義では、レベル4の自律性とは人間の介入を必要としないが、特定の条件下でのみ動作可能なシステムを指す)。

トラック輸送の分野では、RR.AIはカナダの製材所と協力して丸太の運搬を行っているが、米国関連の大きな発表を間もなく行うとしている。また、数カ月以内に農業分野でのパートナーシップも発表する予定だ。

RR.AIの市場戦略は「low hanging fruits」、つまり規制が少ない、あるいは規制を回避しやすい分野に焦点を当てることだ、とラカゼ氏はいう。

カメラ、LiDAR、レーダーなど、自動運転に必要なセンサーはまだ非常に高価なため、大型で耐久性の高い車両に搭載することで、センサーのコストを長期的に償却することができると指摘した上で「現コストでのセンサーを使って生産し、利益を生み出せるような分野に取り組みたいと思っています」と同氏は話す。

「オートノミー分野で創業以来、利益を出し続けている企業は、おそらく当社だけでしょう。それができたのは、小さな市場に専念してきたからですが、その間、そうした市場が現在の収益をもたらしてくれました。2025年までトラックの配備を待つ必要がないので、より早く成長し、より早く走行距離を伸ばせます」。

将来ロボットタクシーで運用することはRR.AIにとって問題外ではないとラカゼ氏はいう。同社の戦略は、規制環境が改善され、センサーのコストが下がるのを待ってから、新たな分野に進出するというものだ。しかし、RR.AIが快適な産業で規模を拡大しようとするとき、市場には十分な数の自動車が存在しないかもしれない。

「自社で自動車を生産していないため、自動車メーカーの生産に頼っています」とラカゼ氏は話す。「我々は、規制の観点から今すぐ配備することが理に適っている地域で利用可能な車両を見つけるために、あらゆる手段を用いて慎重に検討しています」。

画像クレジット:Robotic Research

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi