Ryzen Pro 4000採用で32GBメモリー搭載可能、13.3型「ThinkPad X13 Gen 1(AMD)」

Ryzen Pro 4000採用で32GBメモリー搭載可能、13.3型「ThinkPad X13 Gen 1(AMD)」

携帯性もパフォーマンスも妥協しないというコンセプトで人気があるレノボ・ジャパンの「ThinkPad X」シリーズ。そのラインナップにAMD製CPU「Ryzen Pro 4000」シリーズを搭載した「ThinkPad X13 Gen 1(AMD)」が加わった。13.3インチの液晶ディスプレイを搭載しながら質量が約1.28kgに抑えられており、自宅でのテレワークはもちろん、出先にも気軽に持ち運んで使用できる。今回は、その実機を試用できたので、使用感や実力を紹介していこう。

レノボ・ジャパンの13.3型ノート「ThinkPad X13 Gen 1(AMD)」

レノボ・ジャパンの13.3型ノート「ThinkPad X13 Gen 1(AMD)」

ThinkPadシリーズの伝統的なデザインを踏襲

ThinkPad X13 Gen 1(AMD)は、13.3インチの液晶ディスプレイを搭載したクラムシェル型のノートPCだ。マットブラックを基調にしたシンプルな筐体や天板にあしらわれた斜めのロゴ、赤いアクセントカラーなど、パッと見で「ThinkPad」と分かる伝統的なデザインを踏襲している。

本体サイズは幅311.9mm、奥行き217.2mm、高さ16.9mmで質量は約1.28kg(質量は構成により異なる)。13.3インチのノートPCとしては比較的コンパクトなほうだ。天面も底面もフラットで凹凸(おうとつ)が少ないため、細身のバッグにもスムーズに収納できるのがありがたい。

ThinkPadといえば頑強さも特徴のひとつだが、ThinkPad X13 Gen 1(AMD)も12項目の米軍調達基準に準拠した品質テストをクリアしており、過酷な環境でも安心して使用することが可能だ。

天板の左上にはThinkPadのロゴが配置されている。「i」のドットが赤く光るのも従来通り

天板の左上にはThinkPadのロゴが配置されている。「i」のドットが赤く光るのも従来通り

フットプリントは幅311.9mm、奥行き217.2mmと比較的コンパクト

フットプリントは幅311.9mm、奥行き217.2mmと比較的コンパクト

底面も凹凸の少ないフラットなデザインになっている

底面も凹凸の少ないフラットなデザインになっている

ThinkPad X13 Gen 1(AMD)のディスプレイは4種類が用意されており、予算や用途に合わせて選択可能だ。

ThinkPad X13 Gen 1(AMD)のディスプレイは4種類が用意されており、予算や用途に合わせて選択可能

このうち、ThinkPad Privacy Guardは視野角を狭めて覗き見を防ぐ機能。電車のホームや座席、カフェなど、人の目が気になる環境で使用する機会が多い場合に役に立つ。

今回はPrivacy Guardもタッチパネルも搭載していないノーマルなフルHD液晶ディスプレイを採用したモデルを試したが、色再現性や階調表現力はかなり高い。IPS方式のパネルということもあって視野角が広く、斜めから見ても色や明るさの変化が少ないのも好印象だった。

ちなみに液晶ディスプレイは180度まで開くことができ、打ち合わせなどで相手に画面を見せながら説明したいときなどに便利だ。

試用機は、IPS方式のフルHD液晶ディスプレイを搭載していた。発色がよく、一般的なノートPCの液晶だとくすみがちな原色の赤や青、緑もあざやかに再現された

試用機は、IPS方式のフルHD液晶ディスプレイを搭載していた。発色がよく、一般的なノートPCの液晶だとくすみがちな原色の赤や青、緑もあざやかに再現された

液晶ディスプレイは180度まで開くことができる。視野角が広いため、開ききった状態でも画面が見やすい

液晶ディスプレイは180度まで開くことができる。視野角が広いため、開ききった状態でも画面が見やすい

ThinkPadならでは、タイピングしやすいキーボード

キーボードはキーピッチが約19mmで、モバイルノートPCとしてはキーストロークも深め。また、キーの下辺がゆるいカーブになっていて押さえやすいなど、タイピングのしやすさを考慮した作りになっている。キーは高級感はあまりないものの打鍵音が小さめで、静かな場所でも作業しやすく感じた。

キーボードは標準的な配列でキーピッチ、キーストロークともに余裕があってタイピングしやすい

キーボードは標準的な配列でキーピッチ、キーストロークともに余裕があってタイピングしやすい

キーボードの中心付近に赤いTrackPointが搭載されているのもThinkPadならでは。個人的にはあまり使用しないのだが、文章を書いている途中でカーソルを移動する場合など、手の位置をあまり動かしたくないときには重宝する。

キーボードの中央に赤いTrackPointが、その手前にクリックボタンが搭載されている

キーボードの中央に赤いTrackPointが、その手前にクリックボタンが搭載されている

タッチパッドはクリックボタン一体型で指の滑りがよく、カーソルの移動やジェスチャーがスムーズ。その右横のパームレストには指紋認証センサーも搭載可能。試用機は指紋認証センサーも搭載していたが、指を当てるだけでパスワード入力なしにログインできるのはやはり便利だ。

タッチパッドはクリックボタン一体型。操作スペースはそれほど大きくないが、ジェスチャーはやりやすい

タッチパッドはクリックボタン一体型。操作スペースはそれほど大きくないが、ジェスチャーはやりやすい

オーダー時のカスタマイズでは、指紋認証センサーを選択することも可能。タッチパッド右横に搭載される

オーダー時のカスタマイズでは、指紋認証センサーを選択することも可能。タッチパッド右横に搭載される

USB 3.1 Gen2 Type-C、USB 3.1 Gen1、HDMIとインターフェースは充実

ビジネス向けノートPCということもあり、インターフェースは充実している。本体左側面にはUSB 3.1 Gen2 Type-C×2、イーサネット拡張コネクター、USB 3.1 Gen1、HDMI、マイクロホン/ヘッドフォン・コンボ・ジャックが、本体右側面にはUSB 3.1 Gen1ポートが搭載されている。イーサネット拡張コネクターには、オプションのThinkPad イーサネット拡張ケーブルをつなぐことで有線LANを利用することが可能だ。

本体左側面にはUSB 3.1 Gen2 Type-C×2、イーサネット拡張コネクター、USB 3.1 Gen1、HDMI、マイクロホン/ヘッドフォン・コンボ・ジャックが搭載されている

本体左側面にはUSB 3.1 Gen2 Type-C×2、イーサネット拡張コネクター、USB 3.1 Gen1、HDMI、マイクロホン/ヘッドフォン・コンボ・ジャックが搭載されている

本体右側面にはUSB 3.1 Gen1ポートが搭載されている

本体右側面にはUSB 3.1 Gen1ポートが搭載されている

イーサネット拡張コネクターにはオプションのThinkPad イーサネット拡張ケーブルをつないで有線LANを使用することができる

イーサネット拡張コネクターにはオプションのThinkPad イーサネット拡張ケーブルをつないで有線LANを使用することができる

また、本体背面にはmicroSDメディアカードリーダーも内蔵されている。トレイに装着するタイプで抜き差しがめんどうなので、スマホとデータをやり取りする用途にはあまり向かないが、セカンドストレージ代わりに使うには便利そうだ。

本体背面にはmicroSDメディアカードリーダーを搭載

本体背面にはmicroSDメディアカードリーダーを搭載

microSDメディアカードリーダーはトレイ式。少々脱着がめんどうなので、頻繁にカードを抜き差しするような用途にはあまり向かない

microSDメディアカードリーダーはトレイ式。少々脱着がめんどうなので、頻繁にカードを抜き差しするような用途にはあまり向かない

なお、カスタマイズでワイヤレスWANを選んだ場合はここにSIMカードも装着できる(2020年11月21日時点、直販サイトでは「WWANは現在販売休止中です」となり選択できない)。

このほか、ディスプレイの上部には720pで撮影できるウェブカメラも搭載している。カメラには、レンズ部分を物理的に隠して撮影できなくするThinkShutterも装備されており、盗撮などの心配が少ないのはうれしいポイントだ。

ディスプレイ上部のウェブカメラ。物理的なシャッターを備えており、盗撮などの被害を防ぐことができる。直販サイトでは、カメラなしや、IRカメラ付きも選択できる

ディスプレイ上部のウェブカメラ。物理的なシャッターを備えており、盗撮などの被害を防ぐことができる。直販サイトでは、カメラなしや、IRカメラ付きも選択できる

Ryzen Pro 4000シリーズの実力は?

ThinkPad X13 Gen 1(AMD)は、プロセッサーにAMDのRyzen Pro 4000シリーズを採用しているのが大きな特徴になっている。直販サイトでは、AMD Ryzen 7 PRO 4750U、AMD Ryzen 5 PRO 4650U、AMD Ryzen 3 PRO 4450Uの3種類から選択することが可能だ。

今回の試用機には、そのうちミドルモデルのAMD Ryzen 5 PRO 4650Uが搭載されていた。そのほか、主な仕様は次の通り。

試用機の主なスペック

  • プロセッサー:AMD Ryzen 5 PRO 4650U (6コア12スレッド/最大4.0GHz)
  • グラフィックス:AMD Radeon グラフィックス(CPU内蔵)
  • メモリー:8GB(PC4-25600 DDR4 SDRAM)
  • ストレージ:256GB SSD(M.2、PCIe-NVMe)

Ryzen Pro 4000シリーズは7nmプロセスのZen 2コアを採用しており、前世代に比べてマルチスレッド性能が大幅にアップしている。また、インテル製CPUに比べてCPU内蔵グラフィックス機能のパフォーマンスが高いのも特徴だ。

実際、CPU性能やPCの総合力をチェックするベンチマークテストでは、普段使いはもちろんのこと、負荷の高いクリエイティブ系アプリも十分快適に利用できる結果になった。グラフィックス系のベンチマークも好スコアで、軽~中程度の重さのゲームなら十分快適にプレイすることが可能だ。

CINEBENCH R20では、マルチコアが2386pts、シングルコアが454ptsという結果に。マルチスレッド性能が非常に高いことが分かる

CINEBENCH R20では、マルチコアが2386pts、シングルコアが454ptsという結果に。マルチスレッド性能が非常に高いことが分かる

PCの総合力をテストするPCMARK 10では、基本性能を示すEssentials、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivity、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationのいずれもが快適さの目安となる3000を上回った

PCの総合力をテストするPCMARK 10では、基本性能を示すEssentials、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivity、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationのいずれもが快適さの目安となる3000を上回った

グラフィックス性能を測る3DMARKでは、ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマークテスト「Time Spy」が960、同DirectX 11テストの「Fire Strike」が2676、統合型グラフィックス向けDirectX 12テストの「Night Raid」が11054、ミッドレンジPC向けテストの「Sky Diver」が9849という結果に。インテルUHDグラフィックスに比べると倍近いパフォーマンスになっている

グラフィックス性能を測る3DMARKでは、ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマークテスト「Time Spy」が960、同DirectX 11テストの「Fire Strike」が2676、統合型グラフィックス向けDirectX 12テストの「Night Raid」が11054、ミッドレンジPC向けテストの「Sky Diver」が9849という結果に。インテルUHDグラフィックスに比べると倍近いパフォーマンスになっている

ドラゴンクエストX ベンチマークソフトはフルHD、標準品質で「とても快適」という評価に

ドラゴンクエストX ベンチマークソフトはフルHD、標準品質で「とても快適」という評価に

ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、フルHD、標準品質で「快適」という評価になった

ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、フルHD、標準品質で「快適」という評価になった

ストレージの性能をCrystalDiskMarkでチェックしてみたところ、PCIe接続のSSDを採用しているだけあって、シーケンシャルリード(1MiB Q8T1)が3500MB/s超と高速。実際、OSの起動やアプリの起動なども非常にスムーズだった。

SSDは4レーンのPCIe 3.0で接続されており、シーケンシャルリードが3500MB/s超と非常に高速

SSDは4レーンのPCIe 3.0で接続されており、シーケンシャルリードが3500MB/s超と非常に高速

バッテリー駆動時間は最大13.9時間(公称、JEITA2.0)となっているが、バッテリーベンチマークソフト「BBench」での計測では7時間42分という結果になった(電源モードは「より良いバッテリー」に、明るさは40%に設定し、BBenchは「60秒間隔でのWeb巡回」と「10秒間隔でのキーストローク」にチェックを入れて満充電状態から自動休止するまでの時間を計測)。

公称値にはおよばなかったものの、これだけ動作するなら、電源につながず使う場合も比較的安心して作業に集中できそうだ。

付属のACアダプターは45W出力のもの。比較的コンパクトで本体と一緒に持ち歩いてもあまり邪魔にはならない

付属のACアダプターは45W出力のもの。比較的コンパクトで本体と一緒に持ち歩いてもあまり邪魔にはならない

コストパフォーマンスに優れるビジネスモバイルノートPC

ThinkPadらしい質実剛健なボディにAMD Ryzen Pro 4000シリーズを搭載し、携帯性とパフォーマンスを両立させたThinkPad X13 Gen 1(AMD)。直販サイトでは最小構成のスタンダードモデルが10万1838円(税込、通常販売価格18万3810円にeクーポン適用後の価格)となっており、コストパフォーマンスの高さも大きな魅力になっている。

キーボードやインターフェース、液晶ディスプレイなど、細部の作りも丁寧なので、実用性重視で長く使いたいというユーザーにはオススメしやすい。高品質なビジネスノートPCを探している人や、テレワークを機に買い替えを考えている人には、ぜひ注目してほしい製品だ。

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価格8万円のRyzen 3 4300Uノートの実力は?「ASUS VivoBook Flip 14 TM420IA」レビュー

価格8万円のRyzen 3 4300Uノートの実力は?「ASUS VivoBook Flip 14 TM420IA」レビューASUS JAPANの「VivoBook Flip 14 TM420IA」は14インチのフルHDディスプレイを搭載する2in1ノートPCだ。最大の特徴は、AMDの第3世代Ryzenモバイルプロセッサーを搭載している点。Ryzen 3 4300U搭載の最安モデル「TM420IA-EC163T」は実売8~9万円程度と手頃な値段でありながら、APU性能は1世代前のCore i7 Uシリーズに相当する。上位のRyzen 7 4700Uであれば、さらに高い性能を期待していいだろう。コストパフォーマンスに優れるミドルレンジクラスの2in1だ。

ASUS JAPANの14インチ2in1ノートPC「VivoBook Flip 14 TM420IA」。AMDの第3世代Ryzenモバイルプロセッサーを搭載

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下位のRyzen 3と上位Ryzen 7のみに対応。Ryzen 5モデルが存在しないのはなぜか?

VivoBook Flip 14 TM420IAのラインナップは、Ryzen 3 4300U搭載の下位モデル(TM420IA-EC163T)、Ryzen 7 4700U搭載+WPS Office Standard Editionのモデル(TM420IA-EC147T)、そしてRyzen 7 4700U搭載でMicrosoft Office Home & Business 2019が付属するオフィス付きモデル(TM420IA-EC147TS)の3種類だ。

Ryzen 3モデルはOSがWindows 10 Home SモードでUWPアプリ(ストアアプリ)しか利用できないが、Sモードを解除すれば一般的なデスクトップアプリも利用できる。Sモードの解除は無料で行なえるので、利用用途に応じて対応していただきたい。

  • Microsoft Office H&B搭載モデル:AMD Ryzen 7 4700U+Radeon Graphics、8GBメモリー、512GB SSD。Microsoft Office Home and Business 2019。型番TM420IA-EC147TS。直販価格税抜11万8000円
  • Ryzen 7+WPS Office 搭載モデル:AMD Ryzen 7 4700U+Radeon Graphics、8GBメモリー、512GB SSD。WPS Office Standard Edition。型番TM420IA-EC147T。直販価格税抜9万9819円
  • Ryzen 3搭載モデル:AMD Ryzen 3 4300U+Radeon Graphics、8GBメモリー、256GB SSD。型番TM420IA-EC163T。直販価格税抜8万728円
今回試用したRyzen 3 4300U搭載の下位モデルは、OSがWindows 10 Home Sモード。そのままではUWPアプリしか利用できないが、Sモードを解除すれば一般的なデスクトップアプリを利用できる

今回試用したRyzen 3 4300U搭載の下位モデルは、OSがWindows 10 Home Sモード。そのままではUWPアプリしか利用できないが、Sモードを解除すれば一般的なデスクトップアプリを利用できる

個人的に興味深いのは、第3世代Ryzenモバイルの中でも特に人気の高いRyzen 5 4500Uが使われていない点だ。単にAPUの供給不足から採用を見送った可能性もあるものの、筆者としては他社製品との兼ね合いによるものではないかと考えている。

あくまでも憶測に過ぎないが、同じRyzen搭載の14インチ2in1で異様に安い某社製品とのバッティングを避けたのではないだろうか。VivoBook Flip 14 TM420IAは、競合しないRyzen 3+8GBメモリーの組み合わせを選び、マイクロソフトへのライセンス料金が安いSモードを採用することで、他社製品にはないコスパの高さを実現している。下位モデルとはいえ、パフォーマンス的には十分高性能なので、まずはこのモデルから検討するといいだろう。

コンパクトかつ落ち着きのあるデザイン

VivoBook Flip 14 TM420IAの外観は、落ち着きのあるスマートな印象だ。ディスプレイの開閉が多く高い強度が必要な2in1タイプであるため多少厚みを設ける一方、野暮ったさをなくしスッキリとまとめている。仕上がり部分ではハイエンドクラスほどの高級感はないものの、この辺りは値段の手頃さとのバランスをどうとらえるかだろう。

ミドルレンジクラスの2in1としては標準的な仕上がりで、ビジネスシーンやプライベートでも違和感なく使えるに違いない。本体のフットプリントは幅324×奥行き220mmで、A4サイズ(幅297×奥行き210mm)よりコンパクトなため、取り回しやすい点もうれしい。

本体カラーはビスポークブラック。「ビスポーク」(bespoke)とは「あつらえた」や「特製の」というニュアンスのファッション用語。実際の色合いは濃いメタリックな紺色という印象だ

本体カラーはビスポークブラック。「ビスポーク」(bespoke)とは「あつらえた」や「特製の」というニュアンスのファッション用語。実際の色合いは濃いメタリックな紺色という印象だ

高い強度が求められる天板は、剛性に優れるアルミ素材製。質感は高いが指紋が目立つ

高い強度が求められる天板は、剛性に優れるアルミ素材製。質感は高いが指紋が目立つ

パームレストと底面カバーは樹脂製。Enterキーのみサイドが蛍光イエローで塗られている

パームレストと底面カバーは樹脂製。Enterキーのみサイドが蛍光イエローで塗られている

ベゼル幅は左右7.5mmで上部12.3mm、下部22.5mm。上下がやや太いのはディスプレイフレームの強度を確保するため

ベゼル幅は左右7.5mmで上部12.3mm、下部22.5mm。上下がやや太いのはディスプレイフレームの強度を確保するため

フットプリントは幅324×奥行き220mm。A4サイズ(幅297×奥行き210mm)よりもひと回り強大きい程度で、14型としてはコンパクトだ

フットプリントは幅324×奥行き220mm。A4サイズ(幅297×奥行き210mm)よりもひと回り強大きい程度で、14型としてはコンパクト

高さは公称値で18.2mm、実測で17.9mm。ゴム足を含めた設置時の高さは19.6mm。フットプリントが小さいぶん、設置時にはそれなりの厚みを感じる

高さは公称値で18.2mm、実測で17.9mm。ゴム足を含めた設置時の高さは19.6mm。フットプリントが小さいぶん、設置時にはそれなりの厚みを感じる

重量は公称値で1.55kg、実測で1.568kg。電源アダプターを含めると実測1.714kg。14型としてはやや重いが2in1なのである程度の重さは仕方がない

重量は公称値で1.55kg、実測で1.568kg。電源アダプターを含めると実測1.714kg。14型としてはやや重いが2in1なのである程度の重さは仕方がない

14インチのフルHDディスプレイはやや暗いながらも自然な色合い

ディスプレイは14インチで、解像度は1920×1080ピクセルのフルHD。タッチ操作と別売りの「ASUSPen」によるペン入力に対応している。安いIPSパネルでは赤みが弱いのだが、VivoBook Flip 14 TM420IAでは色のバランスに違和感がない。ただしコントラストがやや低く、画面が暗い印象を受けた。とはいえ、普通に作業するぶんには問題なく使えるだろう。

画面サイズは14インチで解像度は1920×1080ピクセル。スケーリングは150%で、デスクトップの文字がやや大きく表示される

画面サイズは14インチで解像度は1920×1080ピクセル。スケーリングは150%で、デスクトップの文字がやや大きく表示される

映像は自然な色合い。エントリー~ミドルレンジノートPCで見られる赤みの弱さが感じられない一方、ややコントラストが低い

映像は自然な色合い。エントリー~ミドルレンジノートPCで見られる赤みの弱さが感じられない一方、ややコントラストが低い

画面がやや暗く感じるものの、作業や映像の視聴には支障のないレベルだ

画面がやや暗く感じられるものの、作業や映像の視聴には支障のないレベル

キーボードはストロークが浅く、軽いタッチで入力する人向き

キーボードはバックライトなしの日本語配列で、テンキーは搭載していない。キーピッチは実測18.6~18.8mmで、一般的なキーボードの標準値である19mmよりもわずかに狭いが違和感はなかった。配列はいい意味で標準的。強いていうなら左のCtrlキーがやや小さく感じる程度だ。

キーストロークは平均1.2mmと若干浅い。普段から軽いタッチで入力する人なら違和感なく使える反面、押し込むようにしてタイプする人には物足りなく感じるだろう。打ち下ろすように入力するとタイプ音がパチパチと響くので、軽い力でのタイピングを心がけたい。

キーボードはテンキーなしの日本語配列。バックライトには非対応

キーボードはテンキーなしの日本語配列。バックライトには非対応

蛍光イエローで縁取られたEnterキーがやや大きめ

蛍光イエローで縁取られたEnterキーがやや大きめ

ディスプレイを開くとキーボードが傾くリフトアップ機構を採用。手首を自然な角度にキープしたまま作業できる

ディスプレイを開くとキーボードが傾くリフトアップ機構を採用。手首を自然な角度にキープしたまま作業できる

キーを押した瞬間に固めのクリック感があり、軽いタッチでもタイプ音がカクカクと聞こえる。ストロークも浅いので、軽いタッチで入力する人向きだ

キーを押した瞬間に固めのクリック感があり、軽いタッチでもタイプ音がカクカクと聞こえる。ストロークも浅いので、軽いタッチで入力する人向きだ

据え置き利用でもしっかり使えるインターフェース構成と各種機能

USB端子は合計3ポートで、うち1ポートがType-Cだ。Type-CはUSB PDによる給電や映像出力には非対応で、データ通信のみにしか利用できないのは残念。映像出力はHDMI端子のみで、メモリーカードスロットはmicroSDに対応。あとはヘッドホン端子や盗難防止用のセキュリティースロットなどに対応している。端子類の数と種類は多くないものの、PCとして普通に使える構成だ。

生体認証機能は指紋センサーのみ。スピーカーは比較的高音質で、ビデオ会議には問題なく利用できる。PCとしてしっかり使える機能を備えているといっていいだろう。

左側面は盗難防止用のセキュリティスロットとUSB 2.0

左側面は盗難防止用のセキュリティスロットとUSB 2.0

右側面は電源ボタン、microSDカードスロット、ヘッドホン端子、USB 3.1 Gen2 Type-C、USB 3.1 Gen2、HDMI、電源コネクター

右側面は電源ボタン、microSDカードスロット、ヘッドホン端子、USB 3.1 Gen2 Type-C、USB 3.1 Gen2、HDMI、電源コネクター

タッチパッド右上に指紋センサー

タッチパッド右上に指紋センサー

ディスプレイ上部には92万画素ウェブカメラ

ディスプレイ上部には92万画素ウェブカメラ

スピーカーはサウンドの解像感が高く、シャカシャカとした高音域のノイズが少ない。ノートPCとしては高音質で、ビデオ会議は音声通話はもちろんライトな音楽鑑賞にも向いている

スピーカーはサウンドの解像感が高く、シャカシャカとした高音域のノイズが少ない。ノートPCとしては高音質で、ビデオ会議は音声通話はもちろんライトな音楽鑑賞にも向いている

Ryzen 3 4300U搭載モデルながら、ハイエンドクラスのパフォーマンス

ここからはVivoBook Flip 14 TM420IA Ryzen 3モデルのベンチマーク結果を交えながらパフォーマンスを解説しよう。なおOSがUWPアプリのみ利用可能なWindows 10 Home Sモードであるため、通常のレビューとは一部評価方法が異なる点をあらかじめご了承いただきたい。

CPU性能を計測するCINEBENCH R20では、第10世代Core i5/i7を上回るスコア

CPU性能を計測するCINEBENCH R20では、ノートPC向けCPUとしては優秀な結果となった。試用機で使われているRyzen 3 4300Uは、第3世代Ryzenモバイル4000シリーズにおいてエントリー向けの位置づけながら、第10世代のCore i5やCore i7を上回るスコアが出ている。第11世代のCore i7-1165G7には及ばなかったものの、Ryzen 7 4700U搭載の上位モデルであれば易々と上回るだろう。

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH R20」の結果

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH R20」の結果

スタンダード/モバイルノートPC向けCPUとの性能比較

スタンダード/モバイルノートPC向けCPUとの性能比較

ゲームやプロクリエイター向けソフトは厳しい

グラフィックス機能としては、APU内蔵のRadeon Graphicsが使われる。内蔵タイプのため外付けGPU(ディスクリートGPU)ほどではないものの、インテル系CPU内蔵のUHD / Iris Plusよりも高性能だ。ゲーム内のベンチマーク機能を試したところ、解像度と画質をグッと下げればなんとかプレーできるレベルだった。上位のRyzen 7 4700U搭載モデルであれば多少は改善されるはずだが、それでもゲームやプロクリエイター向けソフトを快適に扱えるほどではないだろう。

レースゲーム「Forza Horizon 4」のベンチマーク結果。1280×720ピクセル最低画質で平均67.2FPSであれば、そこそこ快適にプレーできる

レースゲーム「Forza Horizon 4」のベンチマーク結果。1280×720ピクセル最低画質で平均67.2FPSであれば、そこそこ快適にプレーできる

1920×1080ピクセルの最低画質では平均41.4FPSという結果に。シーンによっては多少のカクつきがあるが、プレーできないレベルではない

1920×1080ピクセルの最低画質では平均41.4FPSという結果に。シーンによっては多少のカクつきがあるが、プレーできないレベルではない

256GB SSDのアクセス速度計測は、公称値に近い結果

VivoBook Flip 14 TM420IA Ryzen 3モデルのストレージは、256GBもしくは512GBのNVMe SSDだ。試用機で使われていた256GB SSDはSK hynixのBC501で、公称スペックではシーケンシャルリードが1600MB/秒、シーケンシャルライトが780MB/秒。アクセス速度計測では公称値に近い結果が出ているので、サーマルスロットリングは発生していないと考えていいはずだ。

256GB SSDのアクセス速度

256GB SSDのアクセス速度

YouTubeの1080p動画を連続再生し、バッテリー駆動時間を計測

バッテリー駆動時間についてはYouTubeの1080p動画を電源オプション「最も高いパフォーマンス」で連続再生し続けたときの駆動時間を計測したところ、6時間ちょうどでバッテリー切れとなった。ネットにアクセスし続ける重めのテストなので駆動時間はやや短めだが、実際の作業では丸1日使うは十分持つと思われる。

コストパフォーマンスの高い2in1ノートPC

2in1ノートPCは利用シーンに合わせてさまざまなスタイルに変形できるという点で便利だ。プライベートでの利用はもちろんのこと、最近は相手に画面を見せながらプレゼンできるPCとしてビジネスシーンでも人気が高い。

性能が高いモデルは価格もそこそこ高めだが、コスパに優れるRyzenを搭載したVivoBook Flip 14 TM420IAならインテル製CPU搭載機種よりも安価な上に高性能だ。2in1ノートPCの導入を検討している方は、ぜひこの機会にVivoBook Flip 14 TM420IAを検討していただきたい。

価格はミドルレンジでも性能はハイエンドクラスのVivoBook Flip 14 TM420IA

価格はミドルレンジでも性能はハイエンドクラスのVivoBook Flip 14 TM420IA

ASUS VivoBook Flip 14 TM420IA

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いま、AMDがアツイ。

いや、AMD製プロセッサーが物理的に熱いのは今に始まったことではない。ここで指摘しているのは、ユーザーからの視線が熱いということだ。デスクトップPC向けのRyzenシリーズはいうに及ばず、ノートPC向けのRyzenモバイルシリーズは今や搭載機種が入手困難な状況にまで陥っている。メーカーの中にはすでに9月の時点で、出荷は2021年明け以降と公表しているケースもあるほど。欲しくても手に入りにくい状況なのだ。

人気の理由は、高いコストパフォーマンスにある。以下のグラフは、現行世代CPUのベンチマークスコアをまとめたもの(データは筆者計測の平均値)。TDP 45WのグループではRyzen 7 4800HがインテルのCore i7/9 Hシリーズを大きく上回っており、TDP 15WのグループでもRyzenシリーズがCore iプロセッサーUシリーズを上回っている。それでいてPC本体の値段はCore iプロセッサー搭載機種よりも安いとなれば、Ryzen搭載機を選ばない理由がない。

ノートPC向けCPUのベンチマーク結果。Ryzen 5 4600Hについては筆者未計測のためグラフには含めていない

ノートPC向けCPUのベンチマーク結果。Ryzen 5 4600Hについては筆者未計測のためグラフには含めていない

ハイパワーな据え置きノートPCとしてオススメしたい15.6型ノート「Bravo-15」

今回取り上げるエムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の「Bravo 15」は、Ryzen 5 4600H/Ryzen 7 4800Hを搭載する15.6型ゲーミングノートPCだ。店頭想定価格はRyzen 5+Radeon RX 5300M搭載の下位モデルで税込13万2800円、Ryzen 7+Radeon RX 5500M搭載の上位モデルで税込15万9800円。ゲーミングノートPCとしては標準的な値段だといっていい。

だがCPU性能で見ると、30万円クラスの機種で使われているCore i9-10885Hを大きく上回っている。もっともBravo 15はGPUがエントリークラスなので、単純に価格だけでハイエンドクラスの機種と比較すべきではない。しかしGPUの性能差やそのほか諸々の要素を差し引いたとしても、なかなか魅力的なモデルに見えるのではないだろうか。

スタンダードノートPC向けのRyzenモバイルUシリーズが入手困難な現在、比較的入手しやすいRyzenモバイルHシリーズを選ぶのはアリだ。ゲーミングノートPCとしてはもちろん、ハイパワーな据え置きノートPCの候補としてもオススメしたい。

今回試用した製品は、エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の15.6型ノートPC「Bravo-15-A4DDR-056JP」。Ryzen 7 4800H+Radeon RX 5500M搭載の上位モデルだ。メモリーは最大64GBを搭載可能

今回試用した製品は、エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の15.6型ノートPC「Bravo-15-A4DDR-056JP」。Ryzen 7 4800H+Radeon RX 5500M搭載の上位モデルだ。メモリーは最大64GBを搭載可能

重厚感のある外観デザインを採用

ゲーミングPCというと、LEDイルミネーションによる派手な外観をイメージする人は多いだろう。確かにデスクトップPCではいまだにその傾向は強いが、最近のノートPCは以前ほど光らなくなっている。コスト削減のためかLEDイルミネーションが受け入れられなかったのかは分からないものの、筆者個人としては落ち着いてゲームをプレーしたいためこの傾向はありがたい。

Bravo 15も、比較的落ち着いた外観デザインを採用している。本体カラーは深みのあるブラックで、表面にはうっすらとしたヘアライン加工。ボディは樹脂製であるものの、重厚感のあるルックスだ。唯一ゲーミングノートPCらしいのは天板のエンブレムと、赤く光るキーボードバックライト程度だろう。この程度の装飾であれば、普通のノートPCとあまり変わらない。

本体カラーはブラック

本体カラーはブラック

天板はヘアライン仕上げ。MSIのエンブレムは鏡面仕上げながらも派手さは控えめだ

天板はヘアライン仕上げ。MSIのエンブレムは鏡面仕上げながらも派手さは控えめだ

パームレストはアルミ製のブラック。キーの側面が赤く塗られている

パームレストはアルミ製のブラック。キーの側面が赤く塗られている

バックライトは赤一色のみで、明るさの調整が可能

バックライトは赤一色のみで、明るさの調整が可能

フットプリントは幅359×奥行き254mm。B4サイズ(幅364×奥行き257mm)よりもわずかに小さい程度

フットプリントは幅359×奥行き254mm。B4サイズ(幅364×奥行き257mm)よりもわずかに小さい程度

公称値では高さは21.7mm、実測では22mm。ゴム足を含めた設置時の高さは26.5mm。やや厚めの印象だ

公称値では高さは21.7mm、実測では22mm。ゴム足を含めた設置時の高さは26.5mm。やや厚めの印象だ

ベゼル幅は左右7.2mm、上部18.6mm、下部25.8mm。左右は細いが上下がやや太い

ベゼル幅は左右7.2mm、上部18.6mm、下部25.8mm。左右は細いが上下がやや太い

重量は公称値で1.96kg、実測で1.949kg。ゲーミングノートPCとしては軽い

重量は公称値で1.96kg、実測で1.949kg。ゲーミングノートPCとしては軽い

付属の電源アダプターは702g。かなり大きい

付属の電源アダプターは702g。かなり大きい

Ryzen 7搭載上位モデルは、144Hzの高リフレッシュレート対応液晶ディスプレイを採用

液晶ディスプレイのサイズは15.6インチで、解像度は1920×1080ピクセル。ゲーミングノートPCとしては、スタンダードなスペックだ。リフレッシュレートはRyzen 7モデルが144Hzで、Ryzen 5モデルが60Hz。リフレッシュレート60Hzというと、テレビや据え置きゲーム機でも使われているので違和感はないが、144Hzでは画面のなめらかさがまったく違う。ゲームで遊ぶ機会が多そうなら、ぜひRyzen 7搭載の上位モデルを選んでいただきたい。144Hzの画面を見たあとで60Hzの画面を見ると、自分が今までカクカクの画面を見ていたことに気が付き、必ず驚くはずだ。

ゲームをプレーしない人にとっても、高リフレッシュレートの画面は効果があるだろう。あくまで筆者の体感と断っておくが、スクロールやウィンドウのドラッグ時に画面がカクカクしないぶん、眼が疲れにくく感じるのだ。普段の作業を快適にこなせるに違いない。

画面サイズは15.6インチで解像度は1920×1080ピクセル

画面サイズは15.6インチで解像度は1920×1080ピクセル

ディスプレイは光沢なしのノングレア。映像は自然な色合いで視野角も広い

ディスプレイは光沢なしのノングレア。映像は自然な色合いで視野角も広い

上位のRyzen 7モデルは144Hzの高リフレッシュレートとAMD FreeSyncに対応。画面の見やすさは上位モデルのほうが格段に上だ

上位のRyzen 7モデルは144Hzの高リフレッシュレートとAMD FreeSyncに対応。画面の見やすさは上位モデルのほうが格段に上だ

標準的なキーボードながら、ややクセがある配列やキーストロークを確認しておきたい

キーボードはテンキーなしの日本語配列だ。配列にややクセがあるものの、ゲームへの影響はほとんど感じられなかった。しかしEnterキー周辺がやや窮屈で、特に右上の「¥」キーと右下の「_(アンダーバー)」キーがかなり小さい。プログラミングなどで多用する人には、少し使いにくい可能性がある。

Bravo 15のキーボード

Bravo 15のキーボード

Enterキー周りがやや窮屈。右端に特殊キーが縦に並んでいるのも特徴的だ

Enterキー周りがやや窮屈。右端に特殊キーが縦に並んでいるのも特徴的だ

キーピッチは19mmで標準的なサイズ、キーストロークは平均1.08mmだった。押した瞬間に固めのクリック感があるものの、ストロークが浅くて若干の物足りなさを感じる。ただしゲームにおいてはアクチュエーションポイント(スイッチの認識点)にまで短時間で達するので、キーの反応に優れる効果があるかもしれない。

手応えは感じられるもののストロークが浅く、わずかに物足りなさを感じる。タイプ音はカタカタと聞こえるがうるさくはなかった

手応えは感じられるもののストロークが浅く、わずかに物足りなさを感じる。タイプ音はカタカタと聞こえるがうるさくはなかった

インターフェースとして、USB 3.2 Gen1×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×2採用

周辺機器接続用の端子類はUSB端子が4ポートでうち2ポートがType-C、そのほかは映像出力用のHDMIと1000BASE-T対応の有線LAN、ヘッドホン端子など。種類は多くはないものの、構成としては標準的だといえる。ただしUSB端子が右側面にしかないため、USB接続のゲーミングデバイスを複数使う際はケーブルの取り回しが面倒かもしれない。ひとつもで左側にあれば取り回しが楽になるだけに、この点は少々残念だ。

左側面は電源コネクターとHDMI

左側面は電源コネクターとHDMI

右側面はヘッドホン端子、USB 3.2 Gen1×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、有線LAN、セキュリティースロット。TypeC端子はデータ通信のみで充電と映像出力は非対応

右側面はヘッドホン端子、USB 3.2 Gen1×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、有線LAN、セキュリティースロット。TypeC端子はデータ通信のみで充電と映像出力は非対応

ゲーミング性能自体はエントリークラス

ここからはBravo 15のRyzen 7モデルについて、ベンチマーク結果を交えながらパフォーマンスを解説しよう。

CPU性能を軽装するCINEBENCH R20では、ノートPC向けCPUとしては最高クラスの結果となった。同じRyzen 7 4800Hの平均値をやや下回ったものの、大きな影響のない範囲だ。ゲームはもちろん、動画編集やRAW現像、高度なデータ処理などでも活用できるだろう。

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH R20」の結果

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH R20」の結果

ゲーミングノートPC向けCPUとの性能比較

ゲーミングノートPC向けCPUとの性能比較

グラフィックス機能としては、外付けGPU(dGPU)のRadeon RX 5300MまたはRadeon RX 5500Mが使われている。いわゆる「オールAMD」な構成だ。Radeon RX 5500M搭載の試用機で3D性能を計測するベンチマークテストを行なったところ、エントリー(入門)クラス相当の結果となった。ただし同じエントリークラスであるNVIDIAのGeForce GTX 1650よりもパフォーマンスは上で、GeForceシリーズでいえばエントリーとミドルレンジの中間相当をイメージするといいだろう。値段もエントリークラスなので、そのぶんコスパに優れているわけだ。

DirectX 12の処理性能を計測する「3DMark Time Spy」の結果

DirectX 12の処理性能を計測する「3DMark Time Spy」の結果

ゲーミングノートPC向けGPUとの性能比較

ゲーミングノートPC向けGPUとの性能比較

DirectX 11(フルHD)の処理性能を計測する「3DMark Fire Strike」の結果

DirectX 11(フルHD)の処理性能を計測する「3DMark Fire Strike」の結果

ゲーミングノートPC向けGPUとの性能比較

ゲーミングノートPC向けGPUとの性能比較

ゲーム系ベンチマークテストでは、やや重い程度のタイトルであれば問題なくプレー可能という評価が出ている。ただし処理の重いタイトルについては解像度や画質をガッツリ落とさなければ厳しいようだ。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」はフルHDの最高画質で平均72.5FPS。処理の重いレイド時には多少カクつくかもしれないので、画質を少し下げれば快適に楽しめるだろう

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」はフルHDの最高画質で平均72.5FPS。処理の重いレイド時には多少カクつくかもしれないので、画質を少し下げれば快適に楽しめるだろう

「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」は最高画質で「普通」の評価。画質をかなり落とせば、なめらかな動きで楽しめるはずだ

「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」は最高画質で「普通」の評価。画質をかなり落とせば、なめらかな動きで楽しめるはずだ

512GB SSDのアクセス速度計測結果。速度も容量も十分だ

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夜間にゲームで遊ぶなら、排気音の大きさを意識したい

「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」実行中における本体の熱を計測したところ、ゲームでよく使うWASDキー周りは42度前後だった。温度としてはそれほど高くはないものの、指先にやや熱を感じる。キーボード以外の部分、例えばキーボード上部のスペースや電源アダプターは意外と高温になるため、不用意に触れないほうがいい。

キーボード面の温度

キーボード面の温度

電源アダプターはかなりの高温になるので注意

電源アダプターはかなりの高温になるので注意

簡易騒音計で駆動音を計測したところ、53.4dB(デシベル)とかなりうるさく感じた。「50dB」は「家庭用エアコンの室外機(直近)」、「60dB」は「走行中の自動車内」などと例えられる。ヘッドセットなどを付ければ気にならないものの、深夜は周囲への配慮を意識したほうがいい。

背面側の排気口

背面側の排気口

左側面にも排気口が用意されている

左側面にも排気口が用意されている

なお、標準収録の設定ユーティリティ「MSI Dragon Center」の「Cooler Boost」機能を有効にすると、空冷ファンを最大出力にした状態で利用できる。本体内部は効果的に冷却されるものの、駆動音は59.8dBと非常にうるさい。ここまでになると、部屋の外に音が漏れている可能性が高いので、利用する際は注意が必要だ。

標準収録の設定ユーティリティ「MSI Dragon Center」

標準収録の設定ユーティリティ「MSI Dragon Center」

ゲーム以外でも活用できるハイパワーノートPC

ベンチマーク結果をご覧いただくとお分かりの通り、MSIのBravo 15のCPUパフォーマンスはとにかく素晴らしい。インテルの第10世代Core iプロセッサーは陳腐化してしまったといっていいだろう。これで価格が13~15万円台とは驚きだ。インテルは第11世代で巻き返しを図ると思われるものの、Ryzenシリーズと同等の価格に抑えられるかという点に疑問が残る。あくまでも筆者の予想だが、コストパフォーマンスの面では、しばらくRyzenシリーズが優位なのではないだろうか。

これだけ高性能であれば、ゲーム以外の用途でも活用できる。動画編集はGPU性能が影響するものの、CPU依存が高いRAW現像や高度なデータ処理/数値演算などでは大いに役立つはずだ。CPUパフォーマンスを重視する人は、まずBravo 15からチェックしていただきたい。

Ryzen 7 4800H+Radeon RX 5500M搭載、オールAMDのゲーミングノート「Bravo 15」

「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」: © 2010 – 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」: © 2016-2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. LOGO ILLUSTRATION:©2016 YOSHITAKA AMANO

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Bravo 15AMDRadeon RX 5000MRyzen Mobile 4000レビューMSI