SalesforceがVlocityの創業者デビッド・シューマイヤー氏を新しいSalesforce Industries部門のCEOに任命

Salesforce(セールスフォース)がVlocity(ブロシティ)を2月に13.3億ドル(約1460億円)で買収すると発表したとき、それは両社にとって理にかなった取引だと受け止められた。そして米国時間6月1日、同社は買収手続きが完了したことと、VlocityのCEOだったDavid Schmaier(デビッド・シューマイヤー)氏がSalesforce Industries(セールスフォース・インダストリーズ)という新しい部門のCEOに指名されたことを発表した。

Vlocityは、メディアやエンターテインメント、ヘルスケア、政府機関などに対する業界固有のCRMツールを、Salesforceプラットフォーム上に構築してきた。Salesforceも独自の業界ソリューションを開発してきたが、産業特化ツールに専念した部門を持つことで、さらなる市場機会が生み出される。

シュマイヤー氏は、この新しい部門を、個別業界に焦点を当てたアプローチの価値に基づいた同社の取り組みとして捉えている。

「VlocityがSalesforce Industriesと呼ばれる部門の一部となることで、業界固有のソリューションをお客さまに提供できる、Salesforceの中でも大きなグループとなります。お客さまのデジタル化と全く新しいやり方での仕事を支援することになるのです」とシューマイヤー氏はTechCrunchに語った。

Salesforceの社長でCOOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏がシューマイヤー氏のボスとなる。新しい部門を発表したブログ投稿の中で、テイラー氏は最近のテクノロジーソリューションの多くの側面と同様に、業界の焦点は企業のデジタルトランスフォーメーションの支援にあると語っている。パンデミックの中で、私たちの目の前で世界が変化するにつれて、企業は業務をオンラインに移行することを余儀なくされている、そしてSalesforceはそれを必要とする顧客に、さらに具体的なソリューションを提供したいと考えているのだ。

「あらゆる業界の企業が、かつてないほどデジタルトランスフォーメーションの必要性に迫られています。そして多くの企業がデジタルファーストで、どこからでも仕事ができる環境構築の計画を加速しているのです。Salesforce Customer 360とVlocityを使用することで、お客様は特定のニーズに完全に合わせて調整されたツールとエキスパートによるガイダンスだけでなく、最先端の業界プラットフォームを利用できるようになるのです」とテイラー氏は述べている。

シューマイヤー氏は、彼の会社のツールはすでにSalesforceの上に構築されているので、通常このような買収のあとで組織統合のために行わなければならない苦労をすることなく、すぐに全力で走り始めることができると語る。

「私は30年のキャリアの中で、さまざまな合併や買収に携わってきましたが、今回のものがこれまで経験したものの中で最もユニークなケースでした。なぜならこれまでに構築した6つの業界向けアプリケーションが、どれも既に100%Salesforceプラットフォームの上に構築されていたからです。つまり、製品は既に100%Salesforce対応済ということで、これは本当に驚くべきことなのです。これにより、統合がはるかに簡単になりました」と彼は語った。

プラットフォームが既に利用されていることを考えると、Salesforceが引き続き新しい部門で開発を続け、長期にわたってアプリケーションを追加していく可能性は高い。「私たちはいまや基本的に、Salesforceの中に業界向け開発を行うためのプラットフォームを持っているのです。したがって、この産業クラウドプラットフォームのおかげで、新しい業界向け開発を行うためのコストは、最初に業界向け開発を行うためにかかった費用に比べれば、ほんのわずかなものにできるのです。ということで、私たちは新しい業界向けの開発を行っていく機会を探っている最中ですが、本日の時点ではまだ発表できる準備が整っておりません。手始めに、私たちは今回の組織を立ち上げました」とシューマイヤー氏は語る。

同社は先週木曜日(米国時間5月28日)に記録的な四半期を報告したが、次の四半期への見通しが投資家を驚かせ、金曜日の株価は下落した (記事執筆時点の米国時間6月1日時点では0.77%上昇)。とはいえ、会社はその業績に甘んじることなく、Salesforce Industriesのような部門を設置することで、個別業界や他の可能な収益源に対処するための、より集中した方法を提供しようとしている。

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(翻訳:sako)

Dropboxの上場予定価格は16-18ドル、時価総額100億ドルには届かず――別途Salesforceが1億ドル出資

先月、上場準備中であることを発表したDropboxは、今日(米国時間3/12)、証券取引委員会に提出したS-1書式をアップデートし、売出し価格を改定した。DropboxはNasdaqに上場して1株当たり16ドルから18ドルで3600万株を売り出す。18ドルの場合、売却総額は6億4800万ドルとなる。ティッカーシンボルはDBXが予定されている。

またDropboxは新たなインテグレーション・パートナーとなったSalesforceに対して株式で1億ドル分を売却すると発表した。時期は上場の直後で、1株当たり価格は「上場売り出し価格に準じる」という。

上場の正確な期日は明らかにされていないが、今月末となるはずだ。

上場時のDropboxの時価総額は上場プレミアムを考慮すると70から80億ドルになるとみられる。 これはテクノロジー企業として昨年のSnap以来の大型上場となる。しかしDropboxが2014年に3億5000万ドルのベンチャー資金を調達した際の会社評価額、100億ドルには届かない模様だ。

Dropboxはその将来性と共に上場が他のテクノロジー系大型上場のいわば風見鶏となるものして各方面から注目されている。この中でSpotifyはすでに上場を準備中だが、Airbnbのように上場に関してまだ何も発表していない大型スタートアップもある。

もちろんDropboxのようなクラウド・ストレージと宿泊の共有経済(Airbnb)や音楽ストリーミング(Spotify)では全くビジネスモデルが異なるので比較は無理だという意見もある。特にSnapが上場後大きな株価下落―30%以上―によって投資家に手痛い損害を与えたことを考えればDropboxの上場にも慎重にならざるをえないかもしれない。

しかしプラスとして、Dropboxはクラウド・サービスというコンセプトを一般ユーザーに拡大したパイオニアだという点が考えられる。モバイルの急速な普及、端末アプリの軽量化、インターネット接続の高速化といった要素によりユーザーがデータをローカルデバイスから追い出ししクラウドに保存する傾向が一気に強まった。これらのトレンドを追い風として、現在Dropboxには180カ国以上に5億人のユーザーがいる。

マイナスの面は、この5億人のうち、有料メンバーが1100万しかいないという点だ。2017年の売上は11億ドルと発表されている。これは216年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから十分にアップしているものの、依然としては利益を出すまでに至っていない。2017年の赤字額は1億1200万ドルだった。

ただし2016年の赤字額は2億1000万ドル、2015年は3億2600万ドルだったから大きく改善されている。しかしDropboxには無料ユーザーを有料ユーザーに転換するための効果的なプランがあるのかというのは重要かつ緊急性の高い疑問だ。これは黒字化を待つために投資家はどれくらいの期間忍耐を続けられるかという問題と関連する。

この点、Salesforceが自社サービスにDropboxをインテグレーションすると同時に1億ドルを出資するというのはこの上ない信任投票といえるだろう。またDropboxが設定した上場売り出し価格が控えめであることも信頼性を高めている。Salesforceは顧客関係管理をクラウド化するサービスだ。ティッカーシンボルをCRMとしてもいいくらいだし、ロゴにはブルーのクラウドがあしらわれている。スタートアップから出発して現在は確固たる大企業の地位を築いている。

SalesforceがDropboxと密接な関係を築くことになったのは短期的にDropboxのビジネスモデルにとって有利な材料なのはもちろんだが、中長期的にはDropboxにイグジットの可能性を与えるかもしれない。Salesforceはクラウド・ストレージ・サービスにおいて重要な地位を築こうと年来努力してきた

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+