人材紹介エージェント支援のSCOUTERがROXXに社名変更、パーソルなどから3.7億円を調達

人材紹介エージェントのためのサービスを提供するSCOUTER(スカウター)は7月1日、総額約3億7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。また同日、社名変更も発表。新たな社名はROXX(ロックス)となる。

今回の資金調達の出資者はパーソルキャリアおよびSMBCベンチャーキャピタルで、パーソルが約3億円を出資する。パーソルとROXXは今後、事業でも連携していく方針だ。

写真左からパーソルキャリア代表取締役社⻑ 峯尾太郎⽒、ROXX代表取締役 中嶋汰朗氏、パーソルキャリア執⾏役員 岩⽥亮⽒

データとツールでエージェントコストを下げ人材流動化を支援

ROXXは、個人が副業で人材エージェントとしてヘッドハンティングを行うためのサービス「SCOUTER」、そして中小規模の人材紹介会社をターゲットにしたクラウド求人データベース「SARDINE(サーディン)」を展開してきた。

個人向けのSCOUTERは、ソーシャルヘッドハンティングサービスとして2016年4月にサービスを開始。TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルでファイナリストに選ばれたプロダクトだが、現在はサービスを休止している。

一方、2018年5月に正式リリースされた中小法人向けのSARDINEは、求人データベースと業務管理ツールのクラウドサービスだ。月額利用料のみ、成功報酬に対する手数料が不要で約2000件の求人が利用できる。この料金設定により、小規模エージェントから好評を得ており、現在は、200社近いエージェントがSARDINEを利用しているという。

以前から、ROXX代表取締役社長の中嶋汰朗氏は「成果報酬を100%還元すれば、エージェントはインセンティブが高い(年収が高い)求人を優先するのではなく、転職者本人が希望する求人を選択してプッシュすることになるので、選択をねじ曲げず、マッチング率も高められる」と話していた。

中嶋氏は「求人流通システムを拡充し、中途採用市場の人材流動化をさらに支援したい」という。

人材紹介の成果報酬は一般に、紹介者の年収をベースに何%、と決められるため、年収が高い人を紹介すれば、エージェントへの報酬額は高くなる。人材紹介業では、実は求職者と求人がなかなかマッチしないため、エージェントが1件の紹介にかける時間、すなわちコストがかさむ傾向にある。そこで大手業者では、コスト率を下げるために年収の高い人材しか紹介案件として扱えない、という状況が生まれる。かといって、求人に合った人材が紹介できなければ、また決定率は下がり、コスト率は上がって悪循環となる。

一方、今はダイレクトリクルーティングが簡単に行える時代。能力が高い人材ほど、SNSなどさまざまなルートを使って、自力で求人にたどり着きやすくなっている。エージェントの力が求められるのは、むしろ自分の力だけでは転職が難しい、年収が低い層の求職者だと中嶋氏はいう。

中嶋氏は「エージェントのコストを下げ、転職に当たってサポートがほしい人たちの人材紹介決定率を上げていくことで、年収が低い層の人材も流動化しやすくなる」と話している。業務管理ツールの提供とデータの蓄積により、その決定率アップを狙う。

業務管理ツールについては、SARDINEユーザーには無料で提供。またデータについても、月に4000件近い案件紹介により、蓄積が進む。

「例えば『金髪NG』という採用基準があったとして、実は髪色の判断にもグラデーションがある。『A社の場合、どこからが茶髪としてOK』なのか、求人票ベースだと分からない。そうした『どのラインまでは受かり、どこで落ちたのか』をデータベース上で情報蓄積することで、エージェントの紹介確度を上げられる」(中嶋氏)

今回のパーソルとの提携により、さらに求人・求職者の案件増が見込まれ、またパーソルグループが有する人材プールを活用してエージェントが仕事をしやすくなる、と中嶋氏は期待を寄せている。

「中小エージェントはこれまで、大手企業からの求人を取ることができなかった。パーソルにはその接点がある。SARDINEへ大手の求人案件を供給してもらうことで、企業側もこれまでマッチングできなかった層の求職者と出会うことができるようになる」(中嶋氏)

「今後、副業を探す人のための人材紹介や、新卒紹介にも取り組む予定」という中嶋氏。「さまざまなサービスで小規模の人材紹介会社をエンパワーメントしていくつもりだ。全国展開や正社員以外の雇用形態にサービスを広げることも視野に入れている」と語っている。

「ちゃんと仕事をしてきた人が評価を引き継げるように」

ROXXではSARDINEのほかに、4月より月額制のリファレンスチェックサービス「back check」をクローズドベータ版として、事前登録のあった約200社へ提供開始している。

日本ではまだなじみがないリファレンスチェックだが、欧米企業では応募時に提出が必須となっているところもあるほど浸透しており、最近、外資系企業や大手ベンチャー企業の採用で取り入れが始まっている。「書類や面接で見える情報だけでは本人が部署に合うかどうか、業務の得意不得意はどこか、といったことまで分からないので、リファレンスはあったほうがいい」と中嶋氏はいう。

back checkは「人事の課題にも対応したもの」と中嶋氏。従来の短時間の面接では分かりにくい、採用候補者の適性や経歴、実績などの評価を、上司や同僚、顧客など、候補者のこれまでの働きぶりをよく知る第三者から得る仕組みだ。

リファレンスチェックの実施頻度に応じて月額費用で利用可能なback checkは、従来の調査会社によるチェック費用から比べると、およそ10分の1とかなり安価に利用できる。職種に応じて質問を自動生成し、設問はカスタマイズすることも可能だ。リファレンスは企業が複数の推薦者を企業が指定し、候補者本人から依頼して取るシステムとなっている。オンラインで完結することもあって、推薦者の回答率は93%。平均4営業日で回答を得られているという。

「転職する人が増え、フリーランスをはじめ、働き方が多様化する中で、履歴書や職務経歴書だけで採用を判断することが難しくなってきた」と中嶋氏はいう。短時間の面接の場では、候補者のこれまでの細かい業務内容まで追えないことも多い。また“よそ行き”モードで来る候補者の仕事への姿勢を、その場で判断するのも難しいことだろう。それを複数の目線から詳細に情報収集できることは、実は候補者にとってもメリットがあると中嶋氏は説明する。

「最近、面接では不採用となった候補者が、リファレンスチェックで合格したケースも出てきた。特別に優秀な上位2割の人や明らかにNGな下位2割の人は、企業も採用・不採用の判断がしやすいが、真ん中の6割の人を書類と面接だけで判断するのは困難だ。リファレンスチェックを行うことで、カルチャーフィットや相性などの面で『ウチに合うか』も分かる。候補者にとっても、なじまない組織に無理やり入るリスクを避けられる上、実績の裏付けを出せることでプラスになる」(中嶋氏)

「back checkにデータが蓄積されれば、ゆくゆくは企業ごとに入社後の活躍の可能性も見ることができるようになるだろう」という中嶋氏。近く予定されている正式公開後、まずは1万社の利用を目指す。「今回の調達資金もback checkの開発、強化に充て、よりサービスを伸ばしていきたい」と中嶋氏は述べている。

中嶋氏は「ちゃんと仕事をしてきた人が、次の会社にもキチンと評価を引き継げるように、そしてエージェントが求職者の意思決定を支援できるように」と目指す採用のあり方について話しており、back checkとSARDINE双方向での利用拡大と、求人・人材情報の質向上を図っていく構えだ。

副業ヘッドハンティングのSCOUTERが新サービス、次は人材紹介業の業務効率化

副業ヘッドハンティングサービスの「SCOUTER」などを提供するSCOUTERは1月22日、人材紹介会社向けの業務管理システム「SARDINEクラウド業務管理」をリリースした。

TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルにも登場したSCOUTER。個人が副業としてヘッドハンターとなり、知人などを企業に紹介して報酬を得られるサービスの「SCOUTER」が創業以来のメインサービスだ。その後、同社は新サービスとして2018年5月には求人データベースの「SARDINE」をリリースしている。

SARDINEを利用することで、人材紹介会社はSARDINEに掲載された1000社以上の求人データベースにアクセスし、効率的に人材紹介ができる。SCOUTERに支払うのは月額利用料だけで、人材紹介会社は紹介料の100%を受け取ることができるのが特徴だ。SARDINEはこれまでに100社以上の企業に導入されている。

しかし、SCOUTERは人材紹介会社向けにSARDINEの営業を進めるなかで、彼らが抱える課題に気づくことになる。求職者の個人情報や求人情報の管理だ。SCOUTERによれば、それらの情報は多くの企業でいまだに紙やエクセルで管理されており、情報共有の遅れや、選考のリードタイムの長期化といった問題が発生しているという。

そんななか開発されたのが、今回リリースされたSARDINEクラウド業務管理だ。同サービスでは、求職者の情報や面談記録、求人情報、応募後の選考状況などをクラウド上で一括管理できる。求職者が受けた面接の結果や、これから来る選考の日程などもワンクリックで表示できることが特徴だ。

求職者の管理画面のUIは、タスク管理サービス「Trello」のようないわゆる「かんばん方式」を採用。各求職者が今どのフェーズにいるのかを一目で確認できる。

SCOUTERはSERDINEクラウド業務管理を完全無料で提供する。そのことから、同サービスは単体で収益を得るという位置づけのものではなく、SERDINEなど他の自社サービスの導入の足がかりとなる「プロモーション用プロダクト」のような立ち位置なのかもしれない。

これまでにSCOUTER、SARDINEシリーズ、2019年1月にベータ版をリリースしたレファレンスチェックサービスの「back check」など、人材紹介業界に関連するサービスを数多く開発してきたSCOUTER。同社はプレスリリース上で、「SARDINE(サーディン)クラウド業務管理だけでなく、全サービスを通して約20,000事業所の約90%を占める小規模人材紹介会社を包括的に支援できるよう事業展開して参ります」とコメントしている。

副業ヘッドハンティングのSCOUTERが人材紹介会社向けサービス「SARDINE」を提供開始

個人が副業で、知人や友人などの身近な転職希望者を企業に紹介して報酬を得られる——ソーシャルヘッドハンティングサービス「SCOUTER」はユーザーが人材エージェントとして登録する、というちょっと変わった切り口の人材紹介サービスだ。このサービスを運営するSCOUTERが5月29日、個人ではなく人材紹介会社が求人情報を利用できる、月額制の法人向けサービス「SARDINE(サーディン)」を正式リリースした。

2016年4月のSCOUTER運営開始から、約2年。SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏によると、「スカウター」と呼ばれる個人の紹介者(ヘッドハンター)は順調に増えていて、審査応募数では約9000人となっているとのこと。求人を掲載する法人も約1000社となり、幅広い業界の大手からスタートアップまで求人がそろう。

そうした中、副業でなく本業として人材紹介を行っていた元エージェントや現役エージェントにも、スカウターとして登録するユーザーが現れてきた、と中嶋氏は話す。

有料職業紹介、つまり人材紹介を行う事業所は日本全国で約2万カ所。有効求人倍率が増え続け、紹介免許の許可基準が緩和されたこともあって、さらに増加が見込まれる。そして、そのうちの約85%が従業員数10名以下の小規模事業者と言われている。

しかし、中小規模のエージェントでは求人がそろえられず、転職希望者に紹介できる案件がないケースも多いという。そうした中小エージェントから「SCOUTERを会社で使いたいという要望が出てきた」と中嶋氏。しかしSCOUTERでは紹介者が得られる報酬は転職者の年収の5%に限られる。このため、法人向けにより高い報酬が得られるサービスが求められていた。

新サービスのSARDINEは「月額利用料のみ」「紹介手数料は100%還元」というモデル。毎月利用料を支払えば、SCOUTERと共通でサービス上に掲載されている約1000社の求人を、自社が抱える求人と同様に転職希望者に紹介することが可能になる。

「紹介免許の取得が容易になったことで、人材紹介会社は個人や小規模にシフトし、数も増えている。ただし、どこも同じような業務になっていて、求職者が分散している。SARDINEではクラウドサービスとして個人・小規模業者を一カ所に集めることで、管理コストを減らすことができる」(中嶋氏)

特に中小規模の紹介会社では、求人開拓のリソースが不足していることが課題となる、と中嶋氏は言う。「求人開拓をしなくてもいい、集客しなくてもいい、となれば、その分の時間を企業と求職者のマッチングに充てることができる。アナログ作業も多い業界だが、面談以外の時間を無くせば、人と向き合う時間が増え、求職者に満足いくサポートもできる。結果として採用される確率も高くなり、求職者の満足度も高くなる」(中嶋氏)

SARDINEでは、これまでSCOUTERで蓄積したノウハウをもとに、選考管理に関する機能もエージェントへ提供。面接スケジュールの調整や選考結果のメール・電話連絡などのアナログ作業を削減できるようにしている。

また求人を行う企業にとってのメリットも増える。「求人をサービスに載せるだけで、SCOUTERに加えて複数の紹介会社から一括で紹介を受けることができるので、効率的に採用ができるようになる」(中嶋氏)

SARDINEと同じように中小規模のエージェントと企業をマッチングするサービスでは、groovesが運営する「Croud Agent(クラウドエージェント)」などがあるが、これらのサービスでは月額課金に加え、成約時に成功報酬の30%を利用料として支払うことになっている。

SARDINEは月額利用料のみで利用できる。月額利用料は公表されていないが、3カ月に1人紹介が成立すれば収益化できる金額だということだ。SARDINEはこれまでにクローズドベータ版として、数十社の人材紹介会社向けに運用されていたのだが、既に1000万円を売り上げたところも出ているという。

中嶋氏は成果報酬を100%還元することで「エージェントがインセンティブが高い求人を優先するのではなく、転職者本人が希望する求人を選択してプッシュすることになるので、選択をねじ曲げず、マッチング率も高められる」と話す。

さらに成果報酬の還元でエージェントの利用が増えれば、データの集約・蓄積も進むと中嶋氏は考えている。「求人、エージェントをひとまとめにすることで、紹介数が増え、紹介が増えることでフィードバックがたまり、紹介の精度が上がる。レジュメが蓄積されるだけでは、採用されるかどうかはハッキリわからないが、選考が進めば情報がたまる。そうしたデータはSCOUTERでも共通で使える。利用が増えて、情報がアセットとしてたまるのが我々としては理想だ」(中嶋氏)

サービス名のSARDINEはイワシを意味する。イワシは群れで泳ぐことで生存確率を高め、泳ぐエネルギーを節約できるとも言われる。中嶋氏は「SARDINEは小規模な紹介会社をグループ化して、個の力を集めて大手にも対抗しうる存在となることを目指している」と言う。

「紹介が多く情報が集まる大手と中小エージェントとの差は開きっぱなしだった。しかし小さいからこそきめ細かくできる、というクオリティもある。(クラウドサービスは)中央集権的ではあるけれど、集まる情報を使って、大手だからできていたことを小さいところでもできるというのが大事。それで格差を埋めることができる」(中嶋氏)

「小さなエージェントがビジネスとして成立することで、求職者にも選択肢を提供できる。そのために(成果報酬を手数料に入れない)サブスクリプション型に振り切った」と中嶋氏は、新サービスで求職者へのメリットも増えると話す。

「サービスを通して、どの人がどの分野で成約率が高いかといった、エージェントに関する情報も持つことができ、それを求職者に提供できる。いいことをやっているエージェントに次の仕事が来るように、適切な評価軸を提供することも大切」(中嶋氏)

中嶋氏は「サービスはプロダクトを作る力と、企業の人事担当に営業して説明する力、両方がないと成り立たない。2年間のSCOUTER運営を通じて、そのバランス感覚がわかってきた」と話している。

SCOUTERとSARDINE双方で相互協力も進め、人材紹介カテゴリーでトップを取っていきたい、という中嶋氏。そのために「エージェントが仕事をしやすいように効率化し、データを活用しつつ、求人が集まり、求人が集まれば紹介も増える、といういい循環を作っていきたい」と語った。