映像解析AIを民主化するフューチャースタンダードが4億円を調達

映像解析AIプラットフォーム「SCORER(スコアラー)」を展開するフューチャースタンダードは5月6日、複数の投資家を引受先とする​第三者割当増資により約4億円を調達したことを明らかにした。

既存投資家のインキュベイトファンドなど複数のVCのほか、2018年9月に発表したSCORERパートナープログラムのパートナー企業であるTISや東洋通信工業らから資金調達を実施。事業面での連携を強化するほか、地方企業へのサービス展開やプロダクト基盤のアップデートに取り組む。

今回フューチャースタンダードに出資した企業は以下の通り。なお過去にも紹介している通り、同社では2016年1月に1.3億円2017年7月に2.1億円を調達済みで、今回のラウンドを含めた累計の調達額は約7.3億円になる。

  • TIS(パートナー企業)
  • 東洋通信工業(パートナー企業)
  • インキュベイトファンド
  • スパイラル・ベンチャーズ・ジャパン
  • AGキャピタル
  • ハックベンチャーズ
  • 広島ベンチャーキャピタル
  • その他社名非公開の投資家

フューチャースタンダードは2014年3月の創業。当初より映像解析AIをより簡単に利用できるようにする基盤技術の開発に取り組んできた。

同社が展開するSCORERの特徴は、カメラや映像に関する最新の解析技術をブロックのように組み合わせることで、映像解析システムを開発する難易度やコストの負担を大幅に削減すること。ユーザーはこのプラットフォームを活用することで、ゼロから開発環境やアルゴリズムを構築せずともAIを活用した映像解析を始められる。

SCORERは交通量解析や視線・顔検知、異常検知など様々な用途で活用できる

以前「カメラで顔を検知するとLINEで通知してくれるようなアプリであれば15分程度の時間で作れる」と紹介したが、現場(エッジ)での映像データ収集と解析向けの「SCORER Edge」に加えて2017年12月にはクラウド版の「SCORER Cloud」をスタート。

同サービスでは「解析したい映像を選択」「解析アルゴリズムを選択」「解析結果を確認・出力」という3ステップのみで手軽に映像解析AIを利用できる環境を整えた。

同社によると2018年には約25社の企業がSCORERを導入。半数以上がリピート利用に至っていて、サポートしたプロジェクトを50件以上に及ぶそう。TISや東洋通信工業を始め、パートナープログラムに申し込んでいる企業に関しても約15社ほどまで増えているという。

2018年9月にロボットプラットフォーム分野における協業を発表したTISとはすでに共同開発に取り組んでいるほか、東洋通信工業ともSCORERを活用した各種サービスのインテグレーションにおいて、協業を開始済みだ。

今後は地方のパートナー開拓にも取り組みながら、地方企業のAI活用サポートや地方発の映像解析AIサービス創出を目指す計画。調達した資金は人材採用や新サービスの立ち上げ・展開強化に用いる方針で、パートナー企業向けにセミオーダー型の映像解析AIパッケージ「SCORER Ready」の提供も予定しているという。

たった15分で顔検知アプリが作れる――映像解析システム開発基盤「SCORER」が2.1億円調達

映像解析システムの開発プラットフォーム「SCORER」などを提供するフューチャースタンダードは7月4日、スパイラルベンチャーズテックアクセルベンチャーズ、および既存投資家を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額2.1億円を調達したと発表した。

フューチャースタンダードが手がけるSCORERは、映像解析技術を使ったプロダクト/サービスの開発を簡易化する開発プラットフォーム。SCORERの特徴は、映像データの生成、クラウド上での映像データの保存、映像解析技術の利用、解析データの分析・保存などの機能群を一元的に管理できる点だ。

「すでにある機能を仕入れて、使い易くする」

実装済みの機能の例として、オムロンの年齢推定、NECの表情認識、SENSETIMEの人流解析などがある。SOCRERではこれらの機能がモジュールとして用意されていて、ユーザーはそれらの映像解析技術を利用したサービスをスピーディーに構築することができる。また、同社が提供しているRaspberry Pi 3用の「SCORER SDK」を利用すれば、ブラウザで完結する開発環境を整えることが可能だ。

SCORERで提供される基本機能は無料で利用できる。同社は今後、一部のオプション解析や一定期間以上のデータの保存に課金することでマネタイズしていく。

フューチャースタンダード代表の鳥海哲史氏は、「カメラで顔を検知するとLINEで通知するというようなアプリであれば、15分程度の時間で作ることができる」と話す。

「私たちがやらないことは、解析アルゴリズムを自分たちでつくること。人の検知などのアルゴリズムは世の中にたくさん存在していて、ある意味ではコモディティ化している。そのため、私たちが提供する価値は、すでに存在するものを仕入れて、それを使い易くするということだと思っている」(鳥海氏)

映像解析技術を自製せず、他社がすでにつくりあげたものを使う。だからこそ、ある技術が陳腐化したとしても、SCORERは新しく生まれた技術を”仕入れる”だけでいい。

しかし一方で、そのようなビジネスモデルの参入障壁は低くなってしまうことも事実だろう。それについて鳥海氏は、「私たちは2年かけて映像解析アルゴリズムを集めてきた。他社が同じことをやろうとしても、同程度の時間がかかるだろう」と語る。「どれだけ早くエコシステムを構築するかが鍵となるでしょう」(鳥海氏)

他社との共同開発

もう1つのマネタイズ手段、およびプラットフォームの認知度向上の手段として、フューチャースタンダードは他社と共同のプロダクト/サービス開発も行っている。

その例が、カメラ映像を利用した屋外広告の効果測定だ。表示回数やクリック回数で簡単に効果測定できるWeb広告とは違い、これまでの屋外広告の効果測定では、最寄り駅の乗降人数、広告を視認できる高速道路の流入量、広告周辺の交通量調査などのアナログなデータを利用するしかなかった。

そこで、フューチャースタンダードは看板・ディスプレイ施工大手のクレストと手を組み、カメラ映像を解析してデジタルサイネージや屋外広告の効果測定を行う「Esasy(エサシー)」を2016年2月に発表した。

たとえば、屋外広告の効果測定を行う場合、屋上に設置したカメラの映像を解析し、横断歩道で待っている人数、彼らの顔の向きなどを解析する。これにより、従来の方法よりも精度の高い効果測定を行うことが可能だという。

この他にも、フューチャースタンダードは以下のような共同プロダクト/サービス開発を行っている:

  • TISとの協業で、工場向け導線解析ツールの開発・導入支援を実施
  • スパリゾートハワイヤンズにおける、プール内安全確認映像解析システムの開発
  • 東京大学との共同研究として、空家物件の各種情報(騒音レベルや日当たりなど)を可視化するデバイスを提供

フューチャースタンダードはこのような共同プロジェクトを通してSCORERの利便性や開発スピードの速さをアピールすることで、プラットフォームの認知度の向上を図るという。

2014年創業のフューチャースタンダードは、これまでにインキュベイトファンドなどから1.3億円を調達している。