食材流通のプラネットテーブルが1億円の資金調達、サービス提供エリア拡大へ

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食材・情報取引プラットフォーム「SEND(センド)」を展開するプラネット・テーブルがサイバーエージェント・ベンチャーズ、セゾン・ベンチャーズなどから総額約1億円の資金調達を実施した。払い込みは2015年12月、バリュエーションや出資比率は非公開。なお同社は2015年3月にGenuine Startupsと個人投資家から3500万円のシードマネーを調達している。

プラネット・テーブルが提供するSENDは日本全国にいる特徴を持った農畜産水物生産者と、そんな生産者が手がけたこだわりの食材を使いたい飲食店の直接取引を実現するプラットフォーム。取引に関わるオペレーションや保管(東京・渋谷の同社オフィスには業務用冷蔵庫が並んでいる)、配送までを自社でカバーする。また生産者・飲食店間の取引データをもとに需給を予測。流通量の最適化を進めている。2015年8月にローンチし、これまで広尾や恵比寿、六本木など東京都心部の飲食店に限定してサービスを提供してきた。

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現在、約230の生産者(ただし季節により変化。常時数十の生産者が食材を販売)と約200の飲食店がプラットフォームに参加している。プラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏によると、「想定よりも速いスピードで成長している。単価もリピーターも増える傾向にあり、特に9月に畜産物の取り扱いを始めて以降は月額20万円を超える店舗もある」(菊池氏)という。ただしSENDでは流通量が多いものではなく、こだわりの生産物に特化する方針であり、「飲食店の仕入れのすべてを補うのではなく、全体3分の1程度をSENDを通じて提供したい」と説明する。

プラネット・テーブルでは今回の資金調達をもとに営業および開発体制の強化を進めるほか、食料生産支援に向けたサービスを提供していくとしている。また西東京や横浜、千葉など、提供エリアについても拡大する予定。パートナーシップによる地方進出も進めて、2016年度には飲食店1000店舗の利用を目指す。

ちょっと気になったのが提供エリアの拡大について。同社はこれまで、トラックを自社で保有し、配送までを行ってきたという。ではサービス拡大に伴って今度はトラックの数を増やして自ら「物流会社」になろうということなのだろうか? 菊池氏はそれを否定した上で、「例えば飲食店への配送は通常午後2時〜4時くらいが基準になる。その時間帯に稼働していない冷蔵倉庫やトラックも少なくない」とだけ語った。

ここからは僕の想像でしかないが、同社が狙っているのは——毎度おなじみのバズワードで恐縮なのだけれど——「シェアリングエコノミー」の領域だろう。先日ラクスルが発表した物流サービス「ハコベル」のように、リソースの余っている倉庫なりトラックなりをネットワーク化していくのではないか。このあたりは今後また話を聞いてみたい。

プラネット・テーブルでは、食に関するQ&Aサービス「FoodQ」を2015年6月にリリースしているが、こちらについても近くリニューアルする予定だ。

「食料需給のミスマッチを解決する」肉や野菜の直接取引プラットフォーム「SEND」が正式オープン

左からプラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏、StartupTechnology代表取締役社長の菊本久寿氏

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6月に紹介したプラネット・テーブルの食材・情報取引プラットフォーム「SEND(センド)」。これまで試験的に一部ユーザーにげんていして提供してきたこのサービスが8月25日に正式オープンした。今後は広く利用希望の生産者や飲食店を募集。承認制で順次サービスを提供していく。

SENDは特長やこだわりのある食材を持つ生産者と、そんな食材を使いたい飲食店のシェフをつなぎ、オンライン上で直接取引を行うプラットフォームだ。取引だけでなく、トラック(現在は1台。間もなく2台目を導入予定)による配送や倉庫での保管についても同社が担当する。当初は広尾や恵比寿、六本木などを中心に、客単価5000円以上で食材にこだわる飲食店をターゲットにサービスを展開する。試験運用時には約30件の生産者と約60店舗の飲食店らがサービスを利用している。取り扱うのはおもに肉と野菜。今後はラインアップを拡充する予定だが、鮮魚については扱う予定がないという。

前回の記事でも紹介したが、SENDはもともとプラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏が「食料需給のミスマッチを解決する」という考えのもとにスタートしていることもあり、取引される食材にも特徴があるという。

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通常であれば野菜などは色やサイズなどの規格を分けて梱包し、発送するのが一般的だが、生産者はそれをまとめてSENDに送れば、同社の倉庫(オフィス内に業務用冷蔵庫が並んでいる)にてサイズ等を振り分け、需要に合わせて最適なかたちで飲食店に配送するといった仕組みをとっている。

また生産者は自身のプロフィールや商品をSENDに登録できるだけでなく、SENDが飲食店サイドからの要望をヒアリングし、「こんな野菜が欲しい」といったリクエスト情報を知ることができる。

飲食店サイドは、あらかじめ住所等を登録しておけば、生産者が登録した食材を選択し、発注量の個数を入力するだけで商品を注文できる。「これまでは紙に数量を書いてFAXで発注していた。同じように個数を入れるだけ。シェフは『電話、FAXより楽でないと嫌』と言っていたが、SENDなら冷蔵庫の前で食材を見ながらスマホで発注できる」(菊池氏)

冒頭では「直接取引」と紹介したのだが、厳密に言うと少し違うところがある。実はSENDでは、プラットフォーム上の流通データを分析して直近の発注量などを予測しており、事前に生産者に発注を行っている。そのため、現在サービスを提供している都心エリアであれば、シェフが注文した食材を当日、もしくは翌日の指定時間に届けることが可能だという。

なおSENDはポケットコンシェルジュやCyta、Rettyなどのサービス開発経験があるStartupTechnology代表取締役社長の菊本久寿氏が“社外CTO”として開発を担当している。「 スタートアップの我々には、この難しいテーマに取り組めるエンジニアチームを雇うコストはなかった。 それであれば サービス要件定義までは我々が担当し、その先はただの外注ではなく、フェアな関係でトップクラスのエンジニアやチームに開発をお願いしようとなった。エンジニアを社内で1から教育していれば時間はかかったが、テストを含めて2カ月でサービスを提供できるまでになった」(菊池氏)

左からプラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏、StartupTechnology代表取締役社長の菊本久寿氏

左からプラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏、StartupTechnology代表取締役社長の菊本久寿氏

 

食材流通スタートアップのプラネット・テーブル、食に特化したQ&Aサービスを公開

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東京・渋谷にあるスタートアップのプラネット・テーブル。ウェブを使った食の流通プラットフォームを開発するこの会社のオフィスには、業務用の冷蔵庫が並んでいる。

「食の物流と情報を可視化したプラットフォームを作りたい」——プラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏はそう語る。菊池氏は外資系金融機関やコンサル、投資ファンド等を経て、独立。農林水産省のファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の立ち上げにも関わった人物。2014年5月にプラネット・テーブルを設立し、2015年3月にはGenuine Startupsおよび個人投資家から3500万円の資金を調達している。

肉や野菜に特化した取引プラットフォームを展開

プラネット・テーブルが最初に取り組んだのは、食材・情報取引プラットフォーム「SEND(センド)」だ。SENDは、生産者と飲食店舗間での直接取引をを実現するプラットフォームだ。ただ取引をする「市場」の機能を持つだけでなく、配送や倉庫での保管も自前で行っているのが特徴だ。冒頭に書いたオフィス内の業務用冷蔵庫もその一部。現在東京近郊の約40の生産者と50の店舗が試験的にサービスを利用しているという。

ちなみにSENDはFAXやメール、電話で注文を受け付ける、というところからサービスをスタート。現在はレスポンシブデザインのウェブサービスを開発しており、間もなく正式にサービスインする予定。今後は大阪をはじめとした大都市圏や海外でのサービス提供も視野に入れている。

菊池氏は「人口が増えている一方で、食料の生産環境は減っている。もっと作るということも大事だが、一方ではものすごく捨てているという現状もある」と、食料需給のミスマッチについて語る。これを解決するために、ITを使って鮮度の高い情報(消費者のニーズ)を取得し、生産者がそれに合わせて食料を作れる環境を作っていきたいのだという。同社が「食材取引プラットフォーム」ではなく、「食材・情報取引プラットフォーム」とうたう理由はここにある。

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話を聞いて八面六臂の鮮魚流通のプラットフォームを思い浮かべたのだが、SENDは肉と野菜に特化したサービスとなっており、鮮魚は取り扱わないだという。

Q&Aサービスで食べ物への理解を広げる

そんな同社がSENDの次に提供するのが、食をテーマにしたAndroid向けQ&Aアプリの「FoodQ」だ。

FoodQは食べ物に関する質問を投稿、回答できるQ&Aサービス。回答者には食のスペシャリストが数十人参加するということなので、高度な質問にも回答が期待できるという。サービスは匿名で利用可能で、将来的には質問や回答の検索機能、ポイントによるインセンティブなども導入する予定している。

Q&Aサービスと言えばYahoo!知恵袋やOKWaveといった巨人がいる領域。だが菊池氏は「『例えば有機野菜ってすべて安全なのか』『東京で人気のトマトは何か』という質問と、専門家による回答が集約されている場所はない。肝心なのは(専門的な質問に)『答えられる』ということだと思っている」と強みを語る。「まずは気軽に使ってもらって、それで食べ物への理解を広げていきたい」(菊池氏)

今夏には、FoodQの内容をベースにしたメディアも立ち上げる予定だ。「メディアはコミュニケーションツール。マーケティングコストという程度で認識している」との話だったが、SENDのサービス拡張にあわせて、食のECを展開するといったことも検討しているという。