クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能を提供開始

クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能「Senses Insight」を提供開始

クラウド営業支援ツール「Senses」(センシーズ)提供のマツリカは8月17日、AIによる営業案件の受注予測機能「Senses Insight」の提供を開始した。

Sensesとは、カード形式で感覚的に案件管理ができるSFA(Sales Force Automation。営業支援システム)。蓄積した情報からAIが営業の成功・失敗事例を解析して、いつ・誰に・何を・どのように行うかを支援する。データ入力負荷が低い点や、フェーズ別に個人の強み・弱み分析が可能といった特徴を用いて、情報蓄積の文化醸成やデータを活用した人材育成など、営業チーム変革へのアプローチを可能にする。

新機能のSenses Insightは、Sensesに蓄積された営業データから、各案件ごとの受注(成約)確率を予測・提示する機能。日々の営業活動を入力することでAIが利用企業ごとの最新データを学習し続け、より精度の高い案件の見極めや、リスク検知が可能になる。これにより、オンラインの営業下でも、ロジカルかつ持続的な営業戦略の構築やコミュニケーションが実現できるとしている。先行導入を行ったサカエでは、AI予測の正答率が80%という結果になったという。

クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能「Senses Insight」を提供開始

昨今の新型コロナウイルス対策として急増するテレワークによる営業活動では、対外的な商談などに限らず、対内のコミュニケーションに関しても、オンラインベースの新しい手法の確立が求められている。

まだ正解がないオンラインの営業活動では、対面ベースのコミュニケーション方法を変える必要があるとし、自分たちで学び、検証・改善の施策を打っていくための「データ」が非常に重要という。組織内でデータを蓄積していくことで、場所・時間にとらわれず、部署内でのフィードバック、属人化の解消、チーム全体での情報・ナレッジの共有が可能になるとしている。

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写真右からマツリカ共同代表取締役 黒佐英司氏、飯作供史氏

クラウド営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供するマツリカは10月30日、DNX Ventures、NTTドコモ、SMBCベンチャーキャピタル、いよぎんキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、9月13日時点で3.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズBラウンドに当たる。同社は今後、協業先や提携先、VCなどから追加調達を実施し、シリーズ全体では総額約5億円を調達して、年内に本ラウンドをクローズする予定だ。

マツリカは2015年4月の設立。マツリカが提供するSensesは、共同代表を務める黒佐英司氏が前職のユーザベース時代の経験を踏まえ、営業の「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」という営業支援ツールだ。

Sensesは、カード形式で直感的に案件管理ができるクラウド型のSFA/CRMシステム。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanなど、メールやカレンダー、名刺管理の外部ツールと連携し、情報を再入力せずに一元管理できる。またAIを活用して、蓄積された情報から営業の成功・失敗事例を解析。営業担当者にいつ・誰に・何を・どのように行動すればよいか、次の行動をサジェストしてくれる機能を持つ点が特徴だ。

利用料金は「Starter(スターター)」プランが月額2.5万円(1ユーザーあたり5000円)から、「Growth(グロース)」プランが月額10万円(1ユーザーあたり1万円)から。ほかに導入支援やデータ解析、セールスコンサルティングなどのサポートメニューを含む運用プランが設定されている。Sensesは2019年10月現在、利用企業数は1300社を超え、利用継続率は98%という。

今回の資金調達は、2016年4月のシードラウンドでの約5000万円の調達、2017年8月のシリーズAラウンドでの約1.3億円の調達に続くもの。マツリカでは、調達資金を機械学習・深層学習による営業行動予測や売上予測などのモジュール強化に充てるとしている。また、出資者であるNTTドコモ、いよぎんキャピタルとパートナーシップ協議を進め、地方展開の強化も図る考えだ。

インサイドセールス向け通話記録ツール「pickupon」正式提供開始、「Senses」と連携

この数年、日本でもインサイドセールスは有力な営業手段として普及してきた。従来のフィールドセールスと比べて対面のための移動や会議室確保などのコストを省くことができ、効率のよい営業活動が進められるとして注目されるインサイドセールス。だが、効率アップの副作用として「大量のやり取りを記録することになり、情報共有の時間や手間がかかる」「正確な一次情報が共有できない」といった課題が浮上している。

今日9月11日、正式提供開始が発表された「pickupon(ピクポン)」は、インサイドセールス向けに開発されたAI搭載クラウド電話だ。電話の通話内容を音声認識を使ってテキスト化。さらに通話の中で重要なポイントをAIが自動で要約(ピックアップ)して、SalesforceなどのSFAに入力することが可能だ。通話によるやり取りを記録するコストの削減、正確な一次情報と要点の共有を支援する。

pickuponを開発するpickuponは、正式提供と同時にマツリカが展開するクラウド型営業支援ツール「Senses」との連携も発表した。pickuponは同日、エンジェルラウンドで複数の投資家から総額2000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

インサイドセールスの情報共有コスト低減を目指した「pickupon」

pickuponの創業は、同社代表取締役の小幡洋一氏が岐阜県の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)で、メキシコ人のカンパニャ氏らとともに進めていた研究プロジェクトに端を欲する。プロジェクトでは、HCI(Human-Computer Interaction)、身体拡張、メディアアート、インテグラルデザインなどを領域横断的に研究。卒業後、一度はWeb制作会社に入社した小幡氏だったが、カンパニャ氏との研究がOpen Network Labの第16期プログラムに採択されたことを機に、2018年2月に会社を設立した。

小幡氏は「情報共有のコストを下げることで、人類はここまで進化してきた」とプロダクト開発の根底にある思想について語る。「声によるやり取りから文字の発明、印刷の登場、画像や映像の複製、そしてインターネットの普及、検索システムの登場。これらは情報を共有するコストを下げるテクノロジーだ。こうしたテクノロジーが現れると、人間の進化のスピードは爆速で上がる」(小幡氏)

そうした“人類に寄与するような”テクノロジー、サービスを開発したいと考えていた小幡氏。「究極の理想は『攻殻機動隊』に出てくるタチコマ(自律行動するAI搭載の多脚型戦車。複数台が並列処理で情報を共有する)」という小幡氏は、その世界へたどり着くために「まずは情報共有のコストが大きくて困っている人たちの課題を解決しよう」と考え、インサイドセールス領域に着目した。

ちょっと“タチコマ”からの飛躍が大きいような気はするが、確かに「フィールドセールスより効率がよい」とされるインサイドセールスも、営業活動をきちんと進めるためには質のよい情報共有が求められる。そこではツールとしてSalesforceのようなSFAプロダクトが使われるのが一般的だ。しかし、効率やサポートの質を求めて電話業務を増やすことで顧客とのコンタクトポイントが増え、ツールへの入力量も多くなり、かえって効率性を下げてしまうという課題が生まれる。

「ここで情報共有の負の面が大きくなってしまうことに、ユーザーインタビューを通じて気づいた」と小幡氏は説明する。「特に事業が立ち上がったばかりのゼロイチフェイズだったり、提案型販売が求められるような難易度の高い商材を扱っていたりする場合は、顧客からのヒアリングの難易度も高く、ひいては情報共有の難易度も高くなる」(小幡氏)

そうした顧客の「情報共有の負」を解決するプロダクト、すなわち、インサイドセールス領域でのやり取りの入力コストを下げ、正確性を担保するプロダクトとして、pickuponは開発された。

pickuponでは音声認識による通話内容のテキスト化に加えて、顧客のニーズ・課題、怒っているかどうかなどをセンテンス単位でAIが抽出。通話の重要な部分が要約されるため、やり取りの内容を把握しやすくなるという。

プロダクト思想も一致した「Senses」との連携

インサイドセールスを支援するツールにはさまざまなものが出ているが、小幡氏はpickuponを「既存のツールとはキャラクターが違い、ユーザーも違う」プロダクトだと見ている。

クラウド電話の領域では「MiiTel(ミーテル)」がAIによる電話対応の可視化など、pickuponと似た機能を持つが「セールスがどう話したかに注目していて、いい感じに営業トークができるようなトレーニングに使われるのがMiiTel。これはトークスクリプトが確立していて、商材も固まっているところに向いている」と小幡氏は分析する。

対してpickuponは「顧客が何を発言したかに着目し、顧客が困っている部分は何か、センテンスをピックアップするといった使い方をする。商材をゼロイチから売る場合や、現在のセールスアプローチをドラスティックに変えたい場合などに適した、発見のツールだ」(小幡氏)と位置付ける。

マツリカのクラウド型SFA、Sensesとの連携により、SensesのGrowthプラン以上とpickuponを両方使うユーザーは、簡単な連携設定だけで通話の内容をSensesへ自動入力でき、顧客情報の自動取り込みも利用できる。pickuponではほかのツールとの連携も計画しているが、小幡氏は「Sensesとの連携は特別なものだ」と話している。

「Sensesはプロダクトとしてのフィロソフィが近く、ずっと勝手に“先輩”だと思っていた。ユーザーヒアリングをしていると、情報共有のコストに苦しみ、各社のSFAを導入しても『担当者がきちんと入力してくれない』と困っている企業は大変多い。Sensesはそうした企業にアプローチしていて、近い課題を解決しようとしている」(小幡氏)

マツリカ共同代表の黒佐英司氏は「Sensesはグループウェアや名刺管理ツールなど、幅広い連携が考えられるプロダクトだが、CTI(Computer Telephony Integration)システムとの連携はまだなかった。また、我々自身の営業活動を効率化するためにも、そうしたツールを探していた」と話しており、pickuponについて「いろいろなツールを使ってみて検討していたのだが、pickuponはターゲットとする顧客属性やフィロソフィのようなものが近いのではないかと感じた」と連携に至った経緯について説明している。

「思想はプロダクトをつくっていくので、重要だ。そこの部分が合致しているというのは、連携決断のひとつの大きな要素だった。自社の中でも使いたいツールだったというのも重要なポイント。ほかのツールと比較して音声の品質や、技術力が高いと感じた。少ないリソースの中で、速いスピードで進化し、開発されている。将来を考えたときに心強いと考えた」(黒佐氏)

小幡氏は「Sensesのユーザーと僕たちのプロダクトの相性はよいはずだ」と考えている。連携によりまずは「Sensesユーザーのうち、CTI領域で困っている人たちをこの半年ぐらいで幸せにできるよう、成果を出していきたい」と語る。

小幡氏は「将来的には、すべての情報をなめらかに共有するものをつくりたい」と話している。「対面の発話によるやり取りを共有するのは大変だとまだ思われている。CTIシステムで経営基盤をつくった上で、対面のやり取りを共有するためのプロダクトづくりに進みたい。そのプロダクトを人類にとってのタチコマ的な存在にしていき、最終的には人類がタチコマのようにやり取りできるようになればと思う」(小幡氏)

現場主義SFA「Senses」運営のマツリカが総額1.3億円を資金調達、中規模企業向け新プランも提供開始へ

クラウド型営業支援ツール「Senses」を提供するマツリカは8月21日、第三者割当増資による総額約1億3000万円の資金調達実施を発表した。引受先はDraper Nexus Venturesアーキタイプベンチャーズニッセイ・キャピタルの3社。

Draper Nexus Venturesとアーキタイプベンチャーズは、2016年4月のシードラウンドでも約5000万円をマツリカに出資済み。今回の出資に伴い、Draper Nexus VenturesのManaging Directorで、セールスフォースベンチャーズの元日本投資責任者を務めていた倉林陽氏が社外取締役に就任する。倉林氏はテラスカイSansanなどへの投資実績も持つ人物だ。

現場営業の目線にこだわって作ったSFA「Senses」

マツリカは2015年4月の設立。共同代表を務める黒佐英司氏は「NewsPicks」でおなじみのユーザベースで、経済情報検索サービス「SPEEDA」の販促・保守、営業・マーケティング戦略の立案・執行を担当していた。もう1人の共同代表である飯作供史氏も、ユーザベースで技術統括執行役員としてプロダクト運営、製品開発に携わっていた。

黒佐氏は、マツリカで営業支援ツールを手がけることにしたきっかけについて、こう話す。「ユーザベースにいた当時、上場準備に伴って営業やマーケティングの人員が増える中、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)ツールを入れたいということで導入を検討したが、既存のツールではしっくり来なかった。何がかというと、現場にメリットがない点だ。管理者にとってはメリットがあるのだが、現場の営業担当にとっては『入力させられる』ツールになっている。BtoBツールとはいえ、実際に使うユーザーに価値が届いていないのは、もったいないなと感じていた」(黒佐氏)

そうして開発されたのが、クラウド型SFA/CRMツール、Sensesだ。案件や顧客の管理、レポーティング機能など、既存のSFA/CRMツールが持つ基本的な機能に加えて、「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」と黒佐氏は言う。「これまでのツールとの違いはまず、入力しやすく使いやすい、という点。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanとの連携機能があって、メールやカレンダーなどの情報を自動で取り込めるので、入力の手間を省き、簡単に情報をためることができる。UI/UXについても、3〜4クリックを費やしていたところを1〜2クリックで操作できるようにするなど、画面にとことんこだわった」(黒佐氏)

また「たまった情報を記録するだけでなく、活用できるようにした」点も、現場目線を重視した結果だと黒佐氏は続ける。「AIを使った情報解析で、担当者に次の行動を提案する機能を搭載した。過去の案件から似たような例で成功した行動をサジェストしてくれる」(黒佐氏)

Sensesは、2016年4月にサービスを公開し、2017年初からはより本格的にサービスを展開。現在、有料の基本プランとして「スタータープラン」を1ユーザーあたり月額5000円で提供し、利用企業数は100社に届く勢いだという。そしてマツリカでは今回の資金調達と同時に、中規模以上の企業を対象にしたアップグレードプランとして、「Growthプラン」の提供を発表している。

Growthプランでは、AIでのデータ解析機能を強化。現場担当者の次の行動をアシストするスタータープランの機能に加え、部門全体での売上や成約数などの目標達成に対するアラートを通知するなど、経営管理サイドのニーズにも応える機能を準備しているそうだ。また、営業担当が一定数以上となる中規模企業を想定し、営業組織の階層化にも対応する予定だという。

Growthプランは、まずは2017年内にベータ版として提供を開始。2018年には本格展開を行う予定だ。黒佐氏は「今後、スタータープランに代わる主力サービスに育てていきたい」と述べている。

「SMB向けのSFAとして競合と戦っていく」

今回の資金調達の目的について、黒佐氏は「まずは開発に投資する。現在開発中のGrowthプランを仕上げていくことと、既存ユーザーが増える中、新規機能だけでなく、サービスの安定運用に向けてもリソースを割いていく」と話している。また、営業、マーケティングの強化も図る考えだ。「2017年初のサービスの本格展開から半年以上を経て、販売のサイクルが整ってきた。どの程度マーケティングに(費用)投下すれば、どのぐらい成果が上がる、というのが見えてきたので、いよいよ拡販体制に入り、成長速度を上げていく」(黒佐氏)

なお、中規模企業向けとしてGrowthプランの提供を予定してはいるものの、黒佐氏は「今後の競合サービスとの戦い方としては『SMB(中小企業)向けのSFAならSenses』とまず思い浮かぶようなサービスにしたい」とも語っている。「今までならSFAといえばSalesforceしか選択肢がなく、小規模の企業では導入をためらっていたかもしれない。そこでSensesを第一の選択肢として考えてもらえるようにしたい」(黒佐氏)

また、中期的には「グローバル展開も考えている」と黒佐氏は言う。「SFAは国によって違うというところがあまりなく、ローカライズもそれほど要らないので、英語化して販売することも検討している」(黒佐氏)。さらに、営業支援ツールとしてのSensesを、人事や広報部門向けにチューニングすることで、新サービスラインアップとして提供する構想もあるという。社員や採用候補者、あるいはパブリックリレーションを図るメディアなどを、社内外の“顧客”と見立ててアプローチすることを考えれば、当然の発想かもしれない。「実際、Sensesの顧客の中に、既に人事・広報部門で利用しているケースがある。意図しない使い方を、ユーザーが見つけてくれている形だ。実はマツリカでも、新規営業開拓と既存顧客管理のほかに、採用や広報でSensesを使っている。自分たちでもナレッジをためたところで、プロダクトとして出したいと考えている」(黒佐氏)