「思いつき」をShazamのように広範な知識ベースと検索、照合、整理してくれるメモアプリ「Weavit」

同名の新しいアプリで「Shazam for your thoughts(あなたのインスピレーションをShazamのように検索)」しようと試みるWeavit(ウィービット)。同社はボタンを押すだけで自分の考えをすばやくメモツールに取り込み、それをより広範な知識ベースのコンテンツと照合するという、今までになかった手段をユーザーに提供する。Weavitアプリでは、メモを連絡先、会議、トピック、その他のウェブリンクにリンクさせ、アイデアや思いつきを、構造化して整理しなくても、書き留めておくことができる。

Weavitの創業者によると、これは脳の働きに似ている、という。

共同創業者であるKomal Narwani(コマル・ナルワニ)氏は次のように説明する。「私たちの頭の中にあるアイデアは、いずれもまったく構造化されておらず、すでにあるノートには収まりません」「思いついたことを吐き出し、機械に整理してもらえば、後からその情報を取り出し、きちんと整理し直すことができます」。

このアプリでは、アイデアをタイプ(あるいは口述)してWeavitのデータベースに入力する。

アプリは自然言語処理(NLP)技術を用いて、メモの中の特定の項目を、人や場所、イベントなど、アプリにすでに存在するトピックにリンクさせる。例えばCESで誰かに会ったと入力すると、「CES」はイベントとして認識され、「CES」が含まれる他のコンテンツにリンクされる(Weavitは6000万以上のWikipediaのトピックに接続され、このようなリンクをサポートしている)。さらに、メモに出てくる人を特定し、その人の会社、過去に会った場所や会議などにリンクさせることもできる。

画像クレジット:Weavit

このような自動リンクにより、自分の既存の知識をベースにしてアイデアを書き留めることが容易になる。Weavitはハッシュタグや@メンションなどの一般的なツールもサポートしているので、必要に応じて手動でリンクさせることも可能だ。

Weavitの共同創業者、Emmanuel Lefort(エマニュエル・ルフォート)氏は、過去の銀行勤務の経験からこのメモアプリのアイデアを思いついた。銀行では、営業担当者が顧客に金融商品を販売する際、パーソナルネットワークの中にある潜在的な情報を十分に利用できていなかった。そこで同氏は、CRM(顧客関係管理)ツールに入力しなくても、自動的に情報を結びつけることができる手段があれば面白いかも、と考えたのだ。

まだ初期段階にあるWeavitでは、ユーザーのコンテンツを社内のような分散型ネットワークに接続することはできない。これはもっと長期的な目標である。

その代わり、Weavitのアプリに記録されたものはすべて非開示で暗号化されている(データは転送中も暗号化されるという)。

Weavitは今のところiOS版のみ。まだテストの初期段階で、アクセスコードを持つユーザーだけが利用できる。

このアプリを試したいTechCrunchの読者は、コード「braincrunch」を使ってほしい。

画像クレジット:Weavit

Markdownベースの知識管理ツールであるRoam ResearchObsidianのような、グラフデータベースを搭載した(あるいはグラフデータベースに似た)ツールがある中で、ナルワニ氏によると、Weavitはより親しみやすいアプリとしてニッチを埋めることができるという。これらの生産性アプリは、より複雑で強力である反面、特に技術的な知識を持たない一般のユーザーにとっては複雑で導入が難しい。これに対し、Weavitは、仕事や研究に関するメモだけでなく、おすすめの映画や子供の先生の名前、後で見たい特定のテーマに関するウェブサイトなど、日常的な情報を記憶し、整理してリンクしてくれる。

2020年、WeavitはFluxus Ventures(フルクサスベンチャーズ)が主導したシードラウンドで125万ドル(約1億4000万円)を調達。香港を拠点に6人がフルタイムで活動している。

最低限の機能だけを備えたアプリのプロトタイプは2021年から公開されていたが、同社はユーザーからのフィードバックをもとにアプリを再編成して、2021年12月に再ローンチした。つまり、現在公開されているバージョンは、まだApp Storeに公開されてから数週間しか経っていない。同社によると、新バージョンのWeavitは、最初の10日間で1500件のサインアップを獲得したという。

Weavitチームはウェブアプリにも取り組んでいて、ブラウジング中に画像やウェブページをキャプチャするChromeの拡張機能が間もなくリリース予定。自分の考えやアイデア、インスピレーションだけでなく、ウェブ上のコンテンツも収集できるようになる。チームはAndroidアプリも開発中である。

画像クレジット:Weavit

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Apple MusicはShazamの技術でDJミックス内の楽曲に対しきちんと使用料を払おうとしている

Apple Music(アップル・ミュージック)は米国時間9月10日、DJミックスの作成に関わるすべてのクリエイターを個々に適切に特定して支払いを行うプロセスを作成したことを発表した。Apple Musicは、Appleが2018年に4億ドル(約439億5000万円)で買収した音声認識アプリShazam(シャザム)のテクノロジーを使用して、メジャーならびに独立レーベルと協力して、ミックスに登場するDJ、レーベル、アーティストの間でストリーミングロイヤルティを公正に分配する方法を考案しようとしている。これは、DJミックスが関係するすべてのクリエイターに対して長期的な金銭的便益を提供して、他のアーティストが繰り返しクリエイターの作品を利用して制作した場合でも、クリエイターに報酬が支払われるようにすることが狙いだ。AppleはShazamのテクノロジーの初の大がかりな統合として、その価値を認めているようだ。

これまでは、YouTube(ユーチューブ)やTwitch(トゥィッチ)などのライブストリーミングプラットフォームは、他のアーティストの曲の使用を著作権侵害としてフラグ付けする可能性があったため、DJがミックスをオンラインでストリーミングすることは困難だった。アーティストは、ライブセット中にDJが曲を再生されたときにはロイヤリティを受け取る権利があるが、ダンスミュージックの場合には、さまざまな曲を編集して混ぜ合わせて認識できないものにすることができるため、事情はさらに複雑になる。

Apple Musicは、2020年と2021年のトゥモローランドのデジタルフェスティバルのセットを含め、すでに何千ものミックスをホストしている、だがビルボードが6月にそれを指摘していたものの、今回の技術を正式に発表したのはこのタイミングになった。この発表の一環として、Studio !K7のDJ Kicksアーカイブが同サービス上で展開され始め、ファンは15年以上市場に出ていなかったミックスにアクセスできるようになる。

DJのCharlotte de Witte(シャーロット・デ・ウィッテ)氏は「Apple Musicは、ミックスにトラックが含まれているアーティストと、それらのミックスを作成しているアーティストに公正な料金を提供できるような連続ミックスを提供する最初のプラットフォームです。これは、誰もが公平に扱われる正しい方向への一歩です」と、Appleを代表する声明の中で述べている。「オンラインミックスを再び提供できることに、言葉ではいえないほど興奮しています」。

画像クレジット:Apple Music

ダンスミュージックファンにとって、DJミックスをストリーミングできる機能は画期的であり、Apple MusicがSpotify(スポティファイ)と競争するのに役立つだろう(SpotifyはAppleのポッドキャスティングの利用者を上回り、有料サブスクリプションで業界をリードしている)。Apple Musicはロスレスオーディオや空間オーディオを導入し、クラシック音楽チャンネルを買収したにもかかわらず、まだSpotifyには追いつけていない。だがDJミックスの追加によりさらに別のユニークな音楽機能が追加されることになる。

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だがApple MusicがDJロイヤルティの難問へ果敢に切り込んだとしても、パンデミックを乗り越えて生き残ったライブミュージシャンやDJの間で起こっている、より広範な危機に必ずしも対処できるわけではない。

Mixcloud(ミックスクラウド)のようなプラットフォームでは、DJが事前にライセンスされた音楽を使用してセットをストリーミングし、収益化を行うことができるが、Apple MusicのDJミックスにはユーザー生成コンテンツは含まれない。Audible Magic(オーディブル・マジック)と提携しているMIDiA Research(ミディア・リサーチ)は、ユーザー生成コンテンツ(UGC) が、リップシンクのTikTok(ティクトク)であれSoundcloud(サウンドクラウド)DJミックスであれ、音楽を使用するオンラインコンテンツが、今後2年間で60億ドル(約6589億8000万円)を超える価値のある音楽業界の金鉱になる可能性があることを発表した。しかし、Apple自身はまだUGCに投資していない。個人は、Soundcloudの場合のような、個人のミックスをプラットフォームにストリーミングをアップロードすることはまだできない。6月のビルボードレポートによると、Apple Musicは、プラットフォームが結合されたトラックの70%を識別したときのみ、ミックスをホストする。

Apple Musicは、ロイヤルティが正確にはどのように分割されるかについての質問には答えなかったが、これはミュージシャンたちがデジタル環境の中で生計を立てる方法を再考するための小さな一歩に過ぎない。

これらの革新はアーティストに報酬を与える役には立つものの、ストリーミングロイヤルティは、ミュージシャンがお金を稼ぐ方法のごく一部しか占めていない。Appleはミュージシャンに1回のストリームごとに1セント(約1.1円)を支払うが、Spotifyのような競合他社はそれよりもはるかに少ない額しか支払っていない。このことから、UMAW(ミュージシャンと関連労働者組合)は、3月にJustice at Spotify(Spotifyに公正さを)という名前のキャンペーンを開始した。これは、Appleと同じく1回のストリームあたり1セントの支払いを要求するものだ。しかし、特にプラットフォームからのストリーミングに対するわずかな支払いを考えると、ライブイベントはミュージシャンにとって不可欠なもののままだ。もちろん、パンデミックはツアーに対して良い影響を与えていない。さらに追い打ちをかけるような情報だが、2016年にエレクトロニックミュージック協会は、ダンスミュージックプロデューサーたちがライブパフォーマンスと認定されないまま使用された作品から1億2000万ドル(約131億8000万円)のロイヤルティをもらうことができなかったと推定している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Amanda Silberling、翻訳:sako)

アップルがShazamKitでAndroidも含む開発者にアプリのオーディオ認識機能を提供

Apple(アップル)は2018年に、音楽認識アプリShazamの4億ドル(約437億8000万円)の買収を完了した。そして今回はShazamのオーディオ認識能力を、ShazamKitという形で開発者の手に渡そうとしている。この新たなフレームワークでAppleのプラットフォームAndroid双方の開発者が、Shazamの大きな楽曲データベースと、さらに開発者が録音したオーディオによる独自のカスタムカタログも利用して、音楽を認識できるアプリを作成することができる。

すでに多くの消費者が、ボタンを押すと今聴いている楽曲を教えてくれるだけでなく、歌詞を確認したり、楽曲をプレイリストに加えたり、音楽のトレンドを調べたりすることもできるモバイルアプリShazamのことをよく知っている。2008年にローンチしたShazamは、Appleが買収したときすでに、App Storeにおける定番アプリの1つだった。

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Appleは、Shazamを単なる音楽識別ユーティリティとしてだけではなく、もっと良い使い方に導こうとしている。新たなShazamKitにより、開発者はShazamのオーディオ認識能力を利用して独自のアプリ体験を生み出すことができる。

新しいフレームワークは、3つの部分で構成されている。まずShazamカタログ認識は、開発者が楽曲認識機能を自らのアプリに追加する。カスタムカタログ認識は、任意のオーディオに対するオンデバイスのマッチングを実行する。3つ目は、ライブラリの管理だ。

Shazamのカタログ認識は、Shazamを代表するほど非常にポピュラーな機能だ。その環境でかかっている楽曲を認識して、そのタイトルやアーティストといった楽曲のメタデータを取り出す。ShazamKitのAPIは、楽曲のジャンルやアルバムの図柄など、その他のメタデータも返す。また、オーディオのどの部分がマッチしたのかも教えてくれる。

楽曲を照合する際、Shazamは実際には楽曲そのものを照合するわけではない。その代わりに、シグネチャーと呼ばれる非可逆的な表現を作成し、それと照合する。この方法により、ネットワーク上に送信する必要のあるデータ量が大幅に削減される。また、シグネチャーを使って元の楽曲を復元することはできないため、ユーザーのプライバシーも保護される。

Shazamのカタログは何百万曲もの楽曲で構成されており、クラウドでホストされ、Appleによってメンテナンスされている。新しい曲が利用可能になると、定期的に更新される。

ユーザーが開発者のサードパーティ製アプリを使用してShazamKitによる音楽認識を行う場合、Shazamライブラリに曲を保存したいと思うことがあるかもしれない。これはShazamアプリにインストールされているか、音楽認識コントロールセンターモジュールを長押しすることでアクセスできる。ライブラリはデバイス間でも同期される。

Appleは、認識した曲がこのライブラリに保存されることをアプリがユーザーに認識させるよう提案している。ライブラリへの書き込みに特別な権限は必要ない。

画像クレジット:Apple

一方、ShazamKitのカスタムカタログ認識機能は、Shazamの音楽カタログではなく、開発者の音声を認識することで、アプリ内で同期したアクティビティやその他のセカンドスクリーン体験を作り出すことができる。

これにより、生徒がビデオレッスンに沿って学習する教育アプリで、レッスンの音声の一部が生徒のコンパニオンアプリでのアクティビティの開始を促すことができる。また、お気に入りのテレビ番組を見ながら、モバイルショッピングを楽しむことも可能だ。

ShazamKitは現在、iOS 15.0以上、macOS 12.0以上、Mac Catalyst 15.0以上、tvOS 15.0以上、watchOS 8.0以上でベータ版が提供されている。Androidでは、ShazamKitはAndroidアーカイブ(AAR)ファイルの形で提供され、音楽やカスタムオーディオにも対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)