国際物流クラウド「Shippio」がシリーズAで10.6億円を資金調達

B2B向け国際物流のスタートアップShippioは11月11日、シリーズAラウンドで総額10.6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Shippioは、オンラインで輸出入の発注・管理ができる「デジタルフォワーディング」事業を展開する。海上、航空、陸送、通関といった輸出入に関する手配を一貫して依頼でき、輸送状況や通関書類、連絡先などはクラウド上で一元管理することが可能だ。荷主は輸出入情報の一元化、貨物情報の可視化により生産性向上、貿易業務の負担軽減を図ることができる。

2018年12月の正式リリース後も、Shippioはプロダクトのアップデートを続けており、今年2月にはANAグループとの業務提携による航空輸送プロセス電子化・効率化の取り組みもスタート。4月にはアリババジャパングローバルB2Bサービスの海外輸送パートナーに認定されている。また7月には東京海上日動火災保険とともに、WebAPIを利用して外航貨物海上保険の申込データが自動連携するシステムを開発、保険申し込みの効率化を進めている。

サービスは2019年10月末時点で述べ108社が利用。米国・欧州・中国・ベトナムなど計30カ国を対象に輸出入業務が行われている。Shippio代表取締役の佐藤孝徳氏は、「今後、知名度のある大企業にも利用が広がるよう、接点を強化していく」と話す。調達資金を使って、展示会への出展などでタッチポイントを増やし、認知度を上げるプロモーション活動にも取り組んでいくという。

またShippioは現在、社員15名のコンパクトな組織で運営されているのだが、今回の調達資金を組織強化にも投資して「勝ちきれるチームづくりを目指す」(佐藤氏)とのこと。プロダクト面でも、顧客向け、Shippio社内のオペレーター向けのものに加えて、実際のロジスティックスを担うサプライヤーに向けたものも開発していく。現行システムでも、船舶のリアルタイムトラッキングを可能にするなど、ダッシュボードの進化にも取り組んでいくと佐藤氏は述べている。

国土交通省のデータによれば、全世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は、2006年で4億168万だったものが、2016年には6億142万と、約1.7倍に増加している(単位は国際標準規格の20フィート・コンテナを1、40フィート・コンテナを2とする「TEU」)。佐藤氏は「貨物のトランザクションが増える一方、日本では少子化で物流に従事できる人の数は限られていく。このギャップをテクノロジーで埋める取り組みを、今の時点からやっていく。島国日本が貿易立国として、これからも成立する基盤を作りたい」と語る。

「デジタルフォワーディングは総合格闘技。テクノロジーに詳しくなければならないことはもちろん、各種法令や規制にも精通し、国をまたいでそれぞれのレギュレーションに対応していかなければならない。だが、疲弊している日本の物流を、テクノロジーを使ってアップデートしていきたい」(佐藤氏)

今回の調達ラウンドに参加した企業は以下の各社だ(★は新規株主)。

国際物流クラウド「Shippio」がANAと実証実験、航空輸送にもサービス展開へ

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は2月6日、ANAグループで国際輸送サービスなどを担うOCS、および航空物流のANA Cargoと共同で、国際航空貨物輸送のプロセス電子化・簡易化に取り組む実証実験を開始すると発表した。実施は2018年度中を予定している。

Shippioは、ウェブ経由で国際輸送の見積もりとドア・ツー・ドアの輸出入手続きができるプラットフォームで、2018年12月にプロダクトを正式リリースした。これまで海上輸送を中心にサービスを開発・提供してきたが、実証実験により、航空貨物にもサービスを展開。まずは、荷主が、航空貨物輸送の価格をスピーディに把握できる仕組みや、最適な輸送手段の選択、輸送貨物の動静管理ができるツールの検証・提供を図っていく。

また今後、実証実験のステップが進んだところで、輸出入データの蓄積と分析により、データを活用したさらなるサービス開発や、デジタルフローの確立、3社間でのデータ連携などを進めることも視野に入れている。

Shippio代表取締役の佐藤孝徳氏は、「海上輸送と航空輸送では、輸送スピード、価格、運ぶ荷物の種類も異なっている。これまでは海上輸送のイメージが強いShippioだったが、大手航空会社と組むことで国際航空輸送の分野にも取り組んでいく」とコメント。「物流量の増加や労働人口減少を背景とした物流×テクノロジーによる効率化が加速することが予測される中、確かな実績とオペレーションを持つANAグループと、最新のロジスティクステクノロジーを提供する我々の取り組みが、よりよい日本、そして世界の国際物流の一助になるようチーム一同尽力する」としている。

また、Shippioのサービスを通じて荷主から依頼のあった海外向け航空貨物を、ドア・ツー・ドアで発送手配するOCSは、「物流とテクノロジーの融合は当社の重点分野であり、今後の物流業界を大きく変えるチャンス」として「顧客への新たな価値の提供を主眼にこの実証実験に参画した。当社の国際物流におけるノウハウと海外160以上の拠点をフルに活用し、協働していきたい」(OCS 経営企画部 部長 田之上圭克氏)とコメントしている。

貨物の空港間輸送を担当するANA Cargoは「サプライチェーンのさらなるグローバル化や越境ECの拡大などにより、今後も航空貨物需要が大幅に拡大することが想定される。デジタリゼーションであらゆる顧客に、より身近に利用される仕組みが必要だ」として、「今回の取り組みを通し、Shippioのサービスをしっかりとサポートしていきたい。多くの顧客に同サービスを利用してもらえれば」(ANA Cargo 業務企画部 副部長 湯浅大氏)とコメントを寄せている。

誰もが簡単に輸出入できる世界を目指す「Shippio」正式版リリース、1.9億円の調達も

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は12月3日、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得し、サービスを正式版としてリリースしたことを発表した。これにより、既存のウェブ上の見積もりと輸送管理機能に加え、物流事業者として輸出入の荷主から「荷物を預かって運べる」サービスとなる。

またShippioはプロダクトの正式リリース発表と同時に、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を完了したことも明らかにしている。

2016年6月設立のShippio(旧社名サークルイン)は同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択され、YJキャピタル、East Venturesからの出資を受けた。その後、500 Startups Japan、YJキャピタル、East Venturesを引受先として、2017年5月に数千万円規模の資金調達を実施

今回の資金調達はそれに続くもので、500 Startups Japanグロービス・キャピタル・パートナーズDBJキャピタルYJキャピタルEast Venturesのほか、個人投資家2名が第三者割当増資の引受先となっている。

Shippioは設立以来「輸出入の取引をもっと身近に」することを目指して、国際物流手配の自動化、クラウド化に取り組んできた。

Shippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏は「物流はサプライチェーンが長く、関わるプレイヤーが多い業界」といい、前回調達からの動きについて「デジタルによる効率化をどこからスタートする(のがより効果的)か、検討してきた」と振り返る。

国際物流のプレイヤーは、出荷を行うシッパー(荷送人・荷主)、実際の運送を行うキャリア(運送事業者)、そして荷主から荷物を預かり、キャリアを手配して、シッパーとキャリアの間で運送を取り次ぐフォワーダー(貨物利用運送事業者)の大きく3つに分かれる。

Shippioは2017年8月、フォワーダー向けにオープンベータ版を公開。2018年6月には輸出入の荷主向けにも「WEB取次サービス」をリリースし、見積取得・依頼機能の提供を開始した。

ベータ版ユーザーは、中国、東南アジア、ヨーロッパとの間で、EC商品や家具、加工食品、日本酒、ワインなどさまざまな商品の輸出入取引を、海上・航空貨物の両方で行っている。深圳の工場から部品を指定の倉庫へ運送したり、フランスからワインを輸入したり、といった例があるそうだ。

ベータ版運用の感触について、佐藤氏は「利用者にはスタートアップも多い。すると小口貨物での利用が多いので『航空貨物だと高そう』といって船便にすることも多いのだが、比べてそうしているわけではなかったりする。船便会社も航空便のレートを知らないし、航空便の会社も船便のレートは知らない。Shippioは両方の数字を持っているので、本当に最適な輸送ルートの提案ができた」と話している。

また「国をまたぐ輸送を誰に頼めばいいのか、わからないというユーザーも多く、間口を広く持つのは重要だなと感じた」とも述べている。

このベータ版から、「間口を広く」して、誰もが輸出入の運送を頼める正式版サービスができるまでに、Shippioにはひとつ壁があった。Shippioを各国との輸出入手続きをドア・ツー・ドアで行えるサービス、すなわち「荷物を預かって運べる」サービスとするためには、フォワーダー(貨物利用運送事業者)としての許可を国土交通省から得る必要があったのだ。

佐藤氏によれば「スタートアップに外航運送の領域で免許を与えるという事例が、国土交通省にとっても新しいものだった」とのこと。「いろいろとヒアリングや交渉、調整を進めてきた」結果、第一種貨物利用運送事業者の登録と第二種貨物利用運送事業者の許可取得ができたという。

既存の見積もり取得、輸送管理のプラットフォームとしてだけでなく、物流事業者として実際に輸出入貨物が扱えるようになったことで、ユーザーはShippioに輸送依頼の発注ができ、また同じプラットフォーム上で輸出入の煩雑な手続きや管理を一元化することが可能になった。

輸送手段(船舶・航空など)の選択画面。

ステータス管理画面。

海外では、テクノロジーを活用した国際物流「デジタルフレートフォワーディング」のサービスとして、Flexportなどが既にあるが、今回の許可取得で「日本でも、見積もりからオペレーションまで一貫して、デジタルフレートフォワーディングのサービスを提供することができるようになった」と佐藤氏は話す。

調達資金の使途について、佐藤氏はその「オペレーション」の強化を進めると述べている。「物流事業にはオペレーションが必要。例えば船便やトラックの手配、輸出入業務に不慣れな顧客への対応など、数多くの業務がある。デジタルフレートフォワーディングの初期立ち上がりに必要な体制を作っていく」(佐藤氏)

また、プロダクトとしてのShippioについてもさらに機能を拡充していく、と佐藤氏。「安心してウェブで法人向けの貨物を国際輸送できる仕組みづくりを行う」と話している。「物流は建築業などと似ていて、大マーケットである一方、関係者が多いためにデジタル化が進まなかった分野だ。人手不足が進んでいる中で、やり方を変えていかなければ」(佐藤氏)

Shippioのメンバーと投資家。前列左から3人目がShippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏。

日本発の国際物流のクラウドサービス「shippio」を手がけるサークルイン、500 Startupsほかから資金調達

個人輸入ではなく事業として、海外の良いものを安く輸入したい、あるいは日本の海外ウケするグッズを輸出したい、というときに案外ハードルとなるのが、船便・航空便の手配や貿易事務の煩雑さ。従来、こうした手続きや管理は、メールや電話、表計算ソフトを駆使して行われてきたが、慣れない言語での交渉や大量の貿易書類の管理が必要で、結構めんどうなものだ。その国際物流手配や管理などをWeb上で一括して行えるサービスが「shippio(シッピオ)」だ。

shippioを開発・提供するサークルインは5月8日、500 Startups JapanYJキャピタルEast Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は非公開だが数千万円規模と見られる。サークルインは2016年6月設立で、同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択されている。今回、YJキャピタル、East Venturesからは、Code Republic(プログラム採択企業は、一律でプレ1億円のバリュエーションで700万円の出資を受け入れる必要がある)に続く追加調達となる。

shippioで行えるのは、コンテナ船や航空貨物便などの見積もり・ブッキングといった物流手配や、専用のダッシュボードを使った輸送状況の確認・管理、貿易書類のクラウドでの作成・管理など。サークルイン代表取締役社長の佐藤孝徳氏によれば、当初は中堅規模の国際物流事業者や商社・メーカーの物流部門などを対象顧客として想定しているとのことだ。料金体系は月額課金を基本とするが、将来的に取り扱い件数が多くなった場合には、通関件数に応じた従量課金の追加も検討するという。shippioは現在ベータ版の事前登録を受付中で、正式公開は2017年6月中旬を予定している。

佐藤氏は今回の調達により、エンジニアの採用、プロダクトの強化を図ると話している。佐藤氏と、サークルイン共同創業者で代表取締役副社長の土屋氏は、三井物産の出身。「サプライチェーンの長さやプレーヤーが多いことなど、2人とも日本の物流の苦労についてはよく分かっているつもり」と佐藤氏は言う。「海外ではFlexportHavenといった、国際物流をテクノロジーで効率化するクラウドサービスがあるが、日本ではまだ海運・空運の課題をテクノロジーで解決するサービスはない。shippioはまずは、既存の国際物流の現場で大変な思いをしている人を助けるための業務支援からスタートしたい。ゆくゆくは、みんなが自由に貿易できるインフラを提供できればと思う」(佐藤氏)

(左からYJキャピタル 堀新一郎氏、East Ventures 衛藤バタラ氏、サークルイン土屋隆司氏、佐藤孝徳氏、500 Startups Japan 澤山陽平氏、James Riney氏)