ミシガン州で自動運転車専用道路を建設へ、ホンダやトヨタ、GM、フォードなども協力

Alphabet(アルファベット)傘下のSidewalk Labs(サイドウォーク・ラブス)からスピンオフした次世代インフラ開発のSidewalk Infrastructure Partners(サイドウォーク・インフラストラクチャー・パートナーズ)は、最初の大きなプロジェクトとなるコネクテッド自動運転車専用の道路を開発する子会社「Cavnue」(キャブニュー)の立ち上げを発表した。

Cavnueはミシガン州を起点として、Ford、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoなどのパートナーと協力して、今後の標準となる物理面およびデジタル面のインフラ開発に取り組む。コネクテッド自動運転車をパイロットプロジェクトとしてではなく、米国のハイウェイ、フリーウェイ、州間道、市街地道路で走らせるために必要なインフラを検討する。

Cavnueが着手するのは、ミシガン州デトロイトのダウンタウンとアナーバーの間の40マイル(約64km)で、この区間が自動運転車専用道路の対象となる。同社の構想は、最終的に自動シャトル、バス、トラック、自家用車のために設計された道路を数多く建設することだ。

「Cavnueが40マイルの道路のマスターデベロッパーとなる」とGretchen Whitmer(グレッチェン・ホイットマー)ミシガン州知事は8月13日にSidewalk Infrastructure Partnersとの共同発表で述べた。

「我々が今取ろうとしている行動は、家庭、ビジネス、そして経済全体にとって良いことだ。世界を動かす州、ここミシガンでは、未来の自動車をテストして展開する土台となるインフラを構築する最初の一歩を踏み出した」とホイットマー氏は声明で述べた。「すべてのミシガン人が子供達を車で安全に学校へ送り迎えできるよう道路を再開発する一方、明日の道路への布石となるスマートインフラの構築にも取り組む」。

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「デトロイト・アナーバー・コリドー(回廊)」にはミシガンアベニューと州間道94号線沿いにウェイン郡とウォッシュノー郡のコミュニティが存在し、ミシガン大学、デトロイトメトロポリタン空港、ミシガン中央駅などがある。Sidewalk Infrastructure Partnersの声明によると、この区間には最大12の「オポチュニティーゾーン」が用意され、コミュニティや中小企業がこの地域の産業、技術、学術のハブにアクセスできる予定だ。

プロジェクトの第1フェーズでCavnueは「モビリティと電化の未来室」やミシガン交通局などのミシガン州の多数の政府機関と協力し、約2年にわたり実行可能性とデザインの検討を行う。

プロジェクトの第1フェーズの最初の仕事として、道路設計の商業的、技術的な実行可能性を検討する。Cavnueの声明によると、コネクテッドバスと、バンやシャトルなどのシェアモビリティビークルが道路を最初に利用する。その後、貨物車や自家用車などのコネクテッド自動運転車に対象が拡大される。

主なパートナー

Bill Ford(ビル・フォード)氏は2018年、Cavnueが建設を提案したのと同様のコネクテッド・コリドーを構想していた。Ford(フォード)のコークタウンイノベーションハブを、アナーバーからデトロイトへの回廊沿いの経路の東端拠点として考えていた。フォードはCavnueのプロジェクトの主要なパートナーとなった。

Cavnueは他にも多数のパートナーに頼る。ミシガン大学のCAV(Connected and Automated Vehicle)研究センターとMcity Test Facility、交通研究所(UMTRI)、その他の回廊沿いの施設や米国モビリティセンターなどだ。

「ミシガン・セントラル駅(のプロジェクト)における私のビジョンは、明日の交通問題を解決し、すべての人のモビリティアクセスを改善するオープンモビリティイノベーションのための場所を作ることだった」と同氏の名を冠した自動車会社の会長を務めるフォード氏は声明で述べた。「コネクテッド・コリドーを作ることで、ミシガン州はより通信でつながり(Connected)、自律的で電化が進んだ未来を作るリーダーとしての地位を確立する。コミュニティ、経済的利益、そしてミシガン南東部全体にスマートインフラを構築することの重要性を認めてくれた州に感謝する」。

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ハンドルを握る人間によるミスが米国における死因のトップだ。ミシガン州では過去10年間で自動車の死亡事故により1万人が亡くなった。Cavnueのパートナーでもあるフォード、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoのような企業は、コネクテッド自動運転車が死者を減らし、通勤に費やす時間を削減できると主張している。

Cavnueのミッションが包括的なものになっているのは、自動運転車の商業展開が業界で当初考えられていたよりはるかに遅いと認識されていることの裏返しだ。同社はGoogle(グーグル)本社でのイノベーションイベントから生まれた。レベル5の自律性(人間の介入を必要としない完全自動運転車)は、短期で達成できる機会というよりは未来志向の人達のコンセプトであると思われていた。

自律性に関する研究開発を続けるために必要な数十億ドル(数千億円)の投資を正当化するために、企業には短期的に応用できる対象が必要だ。応用には物理​​的なインフラが必要となる。

新型コロナウイルスの時代にあって、ライトレールシステム(路面電車)やその他の大量輸送ソリューションが使われなくなり渋滞が増える心配を抱える自治体にとって専用レーンは、自律型公共交通機関には新しい収入源を、企業には大規模なパイロットプロジェクトの一部として自動システムを安全にテストする機会を提供できるのかもしれない。

一部の計画担当者が考えていたことの1つに、ライトレールの代わりとしての自動シャトルの使用と、よりダイナミックなソリューションの可能性があった。需要に応じて稼動する台数を調節し、ルートを共有することで効率が向上し、目的地に到達するまでの時間を短縮できる。

資金は、技術を検証する場を得る自動システムメーカーが提供する可能性がある。最終的には、高度な運転システムを備える車を所有する個人が、レーンにアクセスして公共輸送車両の間の空きスペースを使うために対価として支払う可能性もある。

例えば、道路を使いたい人は10ドル(約1070円)を払った上で、自分の車を自律モードにすることが考えられる。公共交通機関と民間の配達車両が優先されるだろう。道路を使うには自動運転機能を備えていることを証明する必要があるかもしれない。

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新しいサービスはこれまでにない種類の官民パートナーシップによって運営されるかもしれない。新しいレーンが生み出す公共料金の金額によって結果を評価する。Cavnueのような企業は車両を調達し、インフラを構築する。道路への投資を担い、許可された自動運転対応車へアクセス権を売る権利を得る。

これがミシガン州で機能するなら、州議会のリーダーの一部は計画の全米普及を推進するつもりだ。

「ミシガンはモビリティの新しいフロンティアの最前線にいる。わが州には自動車メーカー、サプライヤー、エンジニア、大学、試験施設が密集している。彼らが我々の移動手段を一変させるような交通手段の開発を進めている 」とミシガン州選出の上院議員Gary Peters(ゲイリー・ピーターズ)氏は語る。「この発表はミシガン州が自動運転車の研究開発の中心であり続けるための大きな一歩だ。私は連邦レベルで引き続き働き、こうした革新的な(そして命を救う)技術を安全に導入する連邦レベルのフレームワークを開発する」

だが投資が理にかなっていると誰もが確信しているわけではない。

「(可能性がはっきりしない)灰色のインフラへの莫大な投資だ。これは大きなインフラプロジェクトだ」と、プロジェクトについて話す権限がないため匿名を希望したインフラの専門家は述べた。「想定が偏っている。設計が偏っており、想定する利用方法が偏っている。専用レーンは交通の専門家が提唱しているものではない。自動運転車で働いており、それが採用されることに既得権を持つ人々の声のみが反映されている」

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(翻訳:Mizoguchi

グーグル子会社スマートシティ開発のSidewalk Labsがトロント事業から撤退

Sidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)はトロントのプロジェクトから撤退する。同社が米国時間5月7日、短い声明文で発表した。

「2年半にわたり、キーサイド地区開発の実現に情熱を注いできた。実際、我々はウォーターフロントにスタッフ30人を擁するオフィスを置くなど、時間や人材、リソースをトロントに投資してきた」とSidewalk Labsの最高責任者であるDan Doctoroff(ダン・ドクトロフ)氏はブログに書いた。「しかし前例のない経済不透明性が世界やトロントの不動産マーケットを覆っていて、真に包括的で持続可能なコミュニティを構築するためにWaterfront Torontoとともにこれまで練り上げてきた計画の根幹部分を損なうことなく12エーカー(約4万8500平方m)のプロジェクトを財政的に存立させることが極めて困難になった」。

Sidewalk Toronto(サイドウォーク・トロント)には多くの新テクノロジーをテストする場としての役割があった。未来の都市をいかに構築(または再構築)するか、その中心にデータ収集を据えたやり方で都市インフラを作り直すためのものだ。初めからプロジェクトは全監視システム問題の壁にぶつかった。この問題は、Sidewalk Labsが親会社のGoogleとデータを共有するという事実によりいっそう大きなものになった。

トロントのプロジェクトを棚上げするという決断はSidewalkにとってかなりの逆風となる。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)による世界経済の後退を考えた時に予想されるべきことではあった。

「このプロジェクトの継続は止めたが、現在の衛生的な危機で将来のために都市を再設計することの重要性を認識した」とドクトロフ氏は声明文に書いている。「我々が過去2年半築いてきたアイデアは都市が抱える大きな問題、特にアフォーダビリティと持続可能性における取り組みに大きく貢献すると確信している。これは必要不可欠な社会的努力であり、Sidewalk Labsはそこに貢献するために取り組みを続ける」。

Sidewalk Labsはこれまで援助してきた、あるいはスピンアウトした内部イニシアチブのサポートを続けるとドクトロフ氏は述べている。ここには、次世代都市プラニングツールのReplica、 Sidewalk Infrastructure Partners、インフラ投資ファンド、都市コミュニティでのヘルスケアサービスを再設計する試みCityblockなどが含まれる。

Sidewalkはまた、これまで支援してきたロボティック家具のOri Systems、リサイクル企業のAMP Robotics、電気のモニター、管理ツールであるVoltServerのサポートも続ける。

Sidewalkはこれまでに、高層ビル向けの新たな建設材料や都市開発のためのデザインツール面で画期的な成果を出してきた。

「キーサイド地区のプロジェクトは我々にとって重要なものだった。今回の決断は難しかった。このプロジェクトに関わった多くのトロントの人々、そしてコミュニティグループや市民リーダー、地元の住人から受けたサポートに感謝している」とドクトロフ氏は書いた。「Sidewalk Labsはトロントの多様性、成長、チャンスに惹かれ、その思いはステップを経るごとに確たるものになった。トロントは、テクノロジーにおけるイノベーションで世界の中心となっている都市の1つであり、今回の決断はその事実を打ち消すものではない」。

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(翻訳:Mizoguchi

カナダ・トロントで集合住宅向けに本気のゴミのリサイクル試験が始まる

中国が世界中からのゴミの受け入れを停止してから約1年が経ち、各都市で廃棄物処理の取り組みが進む。かつて中国は世界の都市ゴミの70%を受け入れていた。中国による新しい政策は、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの都市がゴミ処理の新しい方法を見つける必要があることを意味する。トロントは、埋め立てまたは廃棄されるリサイクル可能な物や有機物の量を、2026年までに70%削減する目標を掲げている。

とはいえ、都市に共通する1つの問題が目標達成を困難にしている。アパートやマンションなどの集合住宅では、廃棄物をリサイクル可能なものと埋め立てに回すものにしっかり分別するのが難しいのだ。

Sidewalk Labs(サイドウォークラボ)とその投資先であるAMP Robotics(AMPロボティクス)は、トロントで250戸が入るアパートの住民にリサイクル習慣に関する詳細情報を提供するパイロットプログラムに取り組んでいる。「集合住宅はごみの分別が非常に難しい」。Sidewalk Labsのサスティナビリティ担当アソシエイトディレクターであるEmily Kildow(エミリー・キルドー)氏は話す。

建物の所有者と廃棄物運搬業者と協力して、Sidewalk Labsは廃棄物をCanada Fibers(カナダファイバー)の繊維原料回収施設に送る。そこで、Canada Fibersの従業員とAMP Roboticsがゴミを分別する。Sidewalkは廃棄物をさらに細かく選別してデータを取り、アパートの住民に対しSidewalkがどんなリサイクルの取り組みをしているのか説明する。Sidewalkは、3カ月にわたり2週間ごとに、ゴミ分別のコツをアパート全体に対し電子メール、オンラインポータル、掲示板を通じて伝える予定だと話す。

住民にとってはリサイクルできるもの、できないものをより適切に扱うための機会であり、Sidewalk Labsはこの情報が住民の習慣改善に役立つと考えている。ゴミが監視・選別されることを望まない場合、プログラムをオプトアウト(拒否)できる。

Sidewalkの仮説が正しければ、同様の問題に直面している他の都市にも使える技術だ。同社はまた、AMPのゴミ監視に伴うプライバシーに関する懸念を理解している。そこで市と協力して「責任あるデータ使用評価プロセス」をすでに作成し、収集するデータを匿名化し、廃棄物の種類に関するデータのみを収集することを住民に保証する。

「原料回収施設とAMPが収集する個人情報を含まない廃棄物データは、Sidewalk Labs、アパートの住民、建物の所有者が共有する」と同社は述べた。「パイロットプログラム終了時に、Sidewalk Labsは個人を特定できない集計データに基づきレポートを公開する」。

画像クレジット:Ernesto r. Ageitos / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Google関連会社のSidewalk Labsがトロントのスマートシティプロジェクトで前進

Googleの親会社であるAlphabet(アルファベット)の子会社のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)が、トロントにあるウォーターフロントの1区画を網羅するスマートシティ開発の壮大なビジョンを提案してから2年間、プロジェクトは論争と批判に悩まされてきた。

世界で最も革新的なテクノロジー企業の子会社が、トロントのキーサイド地区の12エーカー(約4万9000平方m)でプロジェクトを進めている。持続可能性に配慮した設計と都市計画に組み込むテクノロジーの最先端の考え方を実証する場にするという。その同じテクノロジー企業が、検索およびマッピングテクノロジーによって、我々の生活をデジタル面(と物理的な面)からほぼ完全に掌握できる一企業によるパノプティコン(英国の哲学者ベンサムが考案した、中央の塔から全体を一望できる円形刑務所になぞらえている)の開発に重要な役割を果たしている。

トロントの市民が生活する人工的な環境に同社が何の制約もなくアクセスできてしまうのは行きすぎではないかと、トロントだけでなく世界中のプライバシー擁護団体の多くが考えている。

抗議の声があまりに大きくなってきたため、プロジェクトは困難な状況に陥っているようにもみえた。Sidewalk Labsによれば、ひるがえって同社の存在意義が問われかねない事態になりそうだった。トロントでの仕事は早くも同社の輝かしい成果になるはずだったからだ。テクノロジーを人工的な環境に統合することで住民に利益をもたらすことが実証できればば、それは大きな成果だ。

だがWaterfront Toronto(プロジェクトを監督する規制機関)がSidewalk Labsと契約を締結し、プロジェクトは前進することになった。契約によって同社の開発範囲を制限するとともに、トロントの国会議事堂に隣接する12エーカーの区画の建設で同社が各監督機関としっかり連携するよう担保した。

「Waterfront Torontoの理事会による本日の決定に勇気づけられた。Waterfront Torontoと重要な問題について歩調をあわせるに至ったことをうれしく思う。Waterfront Torontoおよび政府のパートナーとして革新的で誰も排除しない地域社会を築きたい」とSidewalk LabsのCEOであるDan Doctoroff(ダン・ドクトロフ)氏は声明で述べた。

同社は前進させるために重要な点で譲歩した。同社が6月に提出した当初計画では、入札対象の12エーカーを超えて開発範囲を拡大する用意があった。 土地のリードデベロッパーになることも狙っていた。ここに至ってSidewalk LabsはWaterfront Torontoのカウンターオファーに同意し、開発は市が当初「ベータサイト」に指定していた12エーカーに制限されることになった。

さらに同社がWaterfront Torontoに歩み寄り、Waterfront Torontoがデベロッパーを選ぶ公的調達プロセスを主導することにも同意した。最終的にはSidewalk Labsがインフラの設計と建設を主導することもなくなり、今後はWaterfront Torontoが進めることになった。

「トロントで2年間、2万1000人以上の住民と協力して計画を立ててきた。我々は次回の公開協議やその先の評価プロセス、また世界で最も革新的な地域社会の建設計画を続けられることを楽しみにしている。我々はここトロントで誰も排除しない地域社会を形にすべく取り組んでいる。通勤時間を短縮し、住宅をより手に入れやすい価格にし、新しい雇用を創出し、地球がより健康に暮らせる場所になるよう新しい基準を作ることができると考えている」。

Sidewalk Labsとトロント市の合意に含まれておらず出口が見えない問題の1つが、同社が集めるデータだ。同社は意図をもって新たなコミュニティを作る。その住民と訪問者のデータを同社は間違いなく収集することになるが、そのデータがどう扱われるのかについて合意できていない。

データのプライバシーがプロジェクトの最大の懸念の1つだった。同社はある時点で、キーサイドでのデータ収集を分析、承認する独立した諮問機関を置くことを提案した。だが同社と諮問機関のアドバイザーらが対立し、専門家の一人として関与していたAnn Cavoukian(アン・カブキアン)博士が仕事から離れることになった。カブキアン氏はどんな組織であれデータは収集する前に匿名化すべきだと考えていたが、Sidewalk Labsは第三者のためにそのような約束をする意思はなかった。

データ収集に懸念があっても、都市計画の実験にはメリットがある。テクノロジーの力で建設、発電、エネルギー効率、交通管理、電気通信などの効率性を改善すれば、他の開発でも使えるロードマップが作れるかもしれない。それはいいことだが、そういった進歩は個人のプライバシーをさらに損なってまで達成すべきものではない。

Sidewalk Labsがトロントにその針をしっかりと通すことができれば、テクノロジーで先を行くコミュニティのキルトを世界中で織り成すチャンスがいよいよ高まることになる。

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(翻訳:Mizoguchi)

都市のデータ収集ツールのReplicaがSidewalk Labsから独立

Sidewalk Labsが作ったReplicaは、都市部における人の動きをマッピングするデータ収集ツールだ。このReplicaが会社として独立した。Sidewalk Labsは、Googleの親会社であるAlphabetが所有するスマートシティテクノロジー企業だ。

新会社のReplicaを率いるのはNick Bowden(ニック・ボーデン)氏で、同社は米国時間9月12日にシリーズAで1100万ドル(約11億9000万円)を調達したことも発表した。このラウンドではInnovation Endeavors、Firebrand Ventures、RevolutionのRise of the Rest Seed Fundが投資した。今回の資金は、現在13人いる従業員の増員、新しい都市への拡大、テクノロジーへの投資にあてられ、Replicaの成長を加速させる。

ReplicaとSidewalk Labsの関係は継続される。Sidewalk LabsとInnovation EndeavorsがReplicaの取締役会に加わる。

Replicaの本社はカンザスシティで、エンジニアリングのオフィスはサンフランシスコに置かれる。そして、さらにいくつかの地域で事業を始める計画だ。同社はすでにカンザスシティ、ポートランド、シカゴ、サクラメントと連携しており、年内にさらに連携する都市が増える。

Replicaのツールは、2年前に始まったModel Labというプロジェクトから生まれた。Model Labは、都市が抱える問題を解決する方法としてのモデリングを研究するプロジェクトだ。Replicaのツールは、一部のプライバシー擁護者からは怒りを買っている。Replicaは、最初のうちは世界中の公的機関と話をして、そこで使われているデータやプロセス、ツールを知ることに集中した。

その結果、次のようなことがわかった。同社によれば、公的機関は交通と土地活用の関連や相互依存性を理解するために必要な情報をすべて持っているわけではない。したがって都市内の人の動きに関する全体像を完全には把握しておらず、公的機関は土地をどう活用するか、どんな交通機関がどこに必要かを決定できる状況になっていない。Replicaのプランニングツールは、こうしたことを踏まえて作られた。

ボーデン氏は次のように書いている。「誰が、どんなふうに、なぜ通りを利用しているかといった疑問に答えることは、交通網を作り、効率的で持続可能な土地活用を考える上で不可欠だ。しかし都市計画のために現在利用できるリソースは、都市部での人の動きを分析するには不十分だ」。

Replicaのモデリングツールは、個人を特定しないモバイルの位置情報データを使って、人々がどのように、いつ、なぜ移動しているかの全体像を公的機関に提供する。移動のモデルは、人口統計データのサンプルを使って作成された人工的な集団と照合され、実際の人口を統計的に幅広く表す新しいデータセットが作られる。その結果、プライバシーに配慮しつつ、公的機関にとってはきわめて有用なモデルになるとボーデン氏は言う。

ボーデン氏は米国時間9月12日に公開したブログで、プライバシーに関する懸念を鎮静化しようとしている。ブログでは、データは「個人を特定しない」、つまり個人の位置情報データは特定されないことを強調している。Replicaは個人の移動に関心を持っているのではなく、モデリングツールは移動パターンを発見し理解するために使われるという。

ボーデン氏はこう書いている。「このため、我々は個人を特定しないデータのみを使用する。その後このデータは、移動の行動モデル、つまり基本的には特定の場所における移動を表すルールのセットをトレーニングするために使われる」。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Alphabet傘下のSidewalk Labsが公共モニターの可視化を推進

都市部のテクノロジー開発を手がけるAlphabet傘下のSidewalk Labsはいま、スマートシティのためのサイネージを新たに作り直そうとしている。そうしたサインは交通の流れを管理したり、都市部のランドマークまでの道を案内したりするためのものではない。市民がモニターされているとき、その事実を市民に知らせるようデザインされている。

この計画は、ニューヨークやトロントで導入されようとしているテクノロジーに人々が慣れることを推進しようとする試みの一環だ。

世界的にみると、センサーやデータ管理、予測テクノロジーを都市で展開する契約の入札は、数十億ドルとまではいかなくても何千万ドルという額になり、Sidewalk Labsはこのことをよく知っている。Sidewalk Labsのプロジェクトは最も野心的なスマートシティ向けのセンサーネットワークテクノロジー展開で、同社はまた激しい批判に直面してきた。

ゆえに、少なくとも部分的に批判を和らげる試みとして、Sidewalk Labsは監視やモニターをより透明性のあるものにすることを提案してる。

「デジタルテクノロジーは常に我々の周りにあるが、それらは往々にして目に見えない。都市部で移動するとき(通勤とか)、あなたはCCTVや交通カメラ、乗り換えカードリーダー、自転車走行レーンのカウンター、Wi-Fiアクセスポイント、ドアを開けるセンサーなどを目にし、それらすべて1つの街角で見るかもしれない」とSidewalk Labsで「パブリック部門アシスタントディレクター」の肩書きを持つJacqueline Luは書いている。

Luはまたテクノロジーが便利な一方で、そうしたテクノロジーが集めるデータをめぐっては、誰がデータを集めていて、そのデータが何の目的で集められるのかなど、透明性があまりないとも指摘する。

ボストンやロンドンのような都市ではすでに都市部でテクノロジーが使用される時を明確に示すようになっている。しかしSidewalk Labsは、テクノロジーが使われていることを市民によりわかりやすく示すサイネージシステムの構築に取り組むデザイナーや都市設計者を集めた。

Image courtesy of Sidewalk Labs

2013年にさかのぼるが、米国の連邦取引委員会は、モバイルプライバシーの暴露を要求した時、そうしたタイプのインディケーターの開発を求めた。しかしそれは、複数の企業がかなりぼんやりとしている専門用語がたくさん盛り込まれた大量の下書きを書くだけに終わったようだ。

Sidewalkでのゴールは透明性だ同社が提案するプランの著者は語る。

「どのように、そしてなぜデータが集められて公共で使われるのかを人々は知っておくべきだ、と我々は固く信じている。そしてまた、デザインとテクノロジーはこうした理解を促進することができるとも信じている。そうした理由から、公共におけるデジタルの透明性とはどのようなものになるのかを想像するコラボプロジェクトに乗り出した」とLu氏と彼女の共同著者でデザイナー主任のPatrick Keenan氏、法務アソシエイトのChelsey Colbertは書いている。

例としてSidewalkは、同社のNuminaテクノロジーの存在を人々に喚起することになるかもしれないサイネージの考えられるデザインを紹介した。

エリア内での動きを追跡するためにデジタルレコーディングとアルゴリズム的に向上したソフトウェアを使用しているセンサーからのデータを記録し、分析し、そして送信することで、このテックは交通パターンをモニターする。こうしたセンサーは信号の支柱に搭載され、ワイヤレスでデータを送る。

何はともあれ、すでに公共スペースをモニターしている悪用を意図していないカメラほどひどいものにはならない(こうしたカメラは簡単に監視ツールに変えられる)。

六角形のデザインは、テクノロジーの目的、展開している企業、使用の理由、テックが極秘の情報を集めているかどうか、さらなる情報を得るためにスキャンできるQRコードを示している。

問題は、こうした公共での実験では、オプトアウトする簡単な方法がないことだ。Sidewalk Labsがトロントで進めているプロジェクトは仰天するようなデザインの妙技と、監視キャピタリズムの神聖視のどちらも含んでいる。公共スペースを民間部門に引き渡すという決定がなされれば、あるいはセキュリティのためのプライバシーを犠牲にするという決定がなされれば、それらを後に覆すのは難しい。今日のテクノロジーに関する最も顕著な問題であり、予想外の結果を伴うことも考えられる。

関わる組織がテクノロジー使用の結果を全体として考慮していなければ、テクノロジー展開についての情報は十分ではない、ということになる。

イメージクレジット: JuliarStudio / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

公園など公共施設の現状調査をクラウドソーシングで行うGoogle系アプリ

Googleと同様にAlphabet(アルファベット)子会社で都市計画をサービスとして提供するSidewalk Labs米国時間3月29日、公共施設観察アプリのCommonSpaceをローンチした。公園の管理者や有志のコミュニティメンバーなどが、このアプリを利用して身近な公共施設に関する観察や所見を入力してまとめ、それらを何らかの活動に結びつけていく。

あるスペースに関心を持った人たちが、そのスペースのためのウェブ上のポータルを作る。まとめ役(オーガナイザー)はその研究事業のパラメータを定義し、何のためにどんなデータを集めるのかを説明する。そしてメンバーはシフト制のグループに分かれて、データを記録していく。目標は、人びとがさまざまな公共のスペースをどのように利用しているのかを発見し、今後の整備事業につなげていくことだ。

SidewalkのシニアエンジニアであるAnanta Pandey氏がブログでこう言っている。「このアプリはデータを、オープンなデータ規格のPublic Life Data Protocol形式で記録するから、いろんな公共施設のデータと比較できる。CommonSpaceアプリで集めたデータは、視覚化や分析を行うツールに容易にエクスポートできる。コミュニティや施設の管理者は、それらのツールの出力を見て、一定のパターンを発見したり、問題点を見つけたり、今後必要な整備事業のための予算獲得説得用の証拠を得ることができる」。なお、Public Life Data Protocolは、ニューヨークの都市計画研究所のGehl Instituteとその創設に関わった市町村や民間パートナーにより策定された。

ただし公共施設のために集めるデータやパラメータにはプライバシーに関わるものもある。Sidewalk Labsはこの問題に関して、それはPrivacy by Designに準じており、とくに、CommonSpaceの視野に入った傍観者や見物人の個人情報は収集しない、と言っている。

昨年の秋にトロントの公園でパイロットテストを行ったこのアプリは、今ではAndroidiOSの両方で利用できる。

画像クレジット: Sidewalk Labs

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Alphabetのスマートシティ子会社Sidewalk Labsはトロントのパイロット事業にやる気満々

Alphabetのスマートシティ部門子会社Sidewalk Labsは、トロント市と協力して新しいコミュニティの企画を手伝っているが、現時点ではまだ何も決まっていない。まず12か月の準備期間中にプロジェクトを練り、関係部門全員の合意のもとにスタートする。ただしそれは、Sidewalkの具体的な起用/利用法が決まるまで指をくわえて1年待つ、という意味ではない。

今日(米国時間11/2)トロントで行われたGoogle主催のGo Northカンファレンスで、Sidewalk LabsのCEO Dan Doctoroffが説明したところによると、トロント市のウォーターフロントQuayside(‘波止場’)地区にスマートシティのモデルを作る計画は準備段階だが、Sidewalkが今ただちに同地区に実装を開始できることもいくつかある。

Sidewalkはそれらの実装をもっと早めたいとして市と協議中で、それらには渋滞緩和策や、ニューヨーク市にオープンしたばかりのパイロット的診療所をモデルとするヘルスケア施設/サービスの実験などがある。Doctoroffによると、渋滞対策の方は同じくウォーターフロントの一部であるQueens Quay地区が対象になる。

またDoctoroffによると、同社が開発した“交通流量のモデル作りのための新しいコンセプト”は、行政の公共交通担当部門にとって今すぐにでも有益であり、トロントでも比較的早く実装可能、という。

しかしこういったアイデアはすべて、トロントのPort Lands区画内のQuaysideと呼ばれる12エーカーの土地片の、長期的な開発計画だけに固有のものではない。むしろDoctoroff自身は、これらの比較的小規模なパイロット事業のタイミングに言及して、“これらは今すぐにでも着手できる”、あるいは少なくとも、“比較的早期に開始できる”、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

米運輸省とAlphabet傘下のSidewalk Labs、新公共交通とWi-Fiネットワーク構築で協力

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米国運輸省Sidewalk Labsは、公共交通機関の監視および管理システムを作ることを目的としたプログラム、Flowを発表した。

SidewalkはAlphabet(Googleの親会社)の子会社で、都市が交通量の多い地区や、公共交通機関の不足している部分を見つけるための分析プラットフォームを開発した ― すべて収集した匿名データから作成した交通パターンに基づいている。

その情報を元に、ソフトウェアが相乗り、新たな輸送手段、あるいは交通の経路変更を提案してコミュニティーの利便性を高める、と声明に書かれている。

Sidewalk Labsによると、Flowテクノロジーは、市民がどこへ移動したいか、どうすれば目的地に効率よく、公平かつ安全に移動させられるかを都市が理解する手助けをするもので、スマートシティー・チャレンジの決勝に残った都市には無料で提供される。

プログラムは、Sidewalkが同社の無料Wi-Fiおよび交通キオスクネットワーク、LinkNYC計画を、全米の都市に広める方法の一つでもある。

LinkNYC計画と同じく、Sidewalk Labsはキオスクのネットワークが、都市のリアルタイム環境に関する有用なデータを提供すると考えている。

同社の展望によると、キオスクは無線インターネットを、環境を持たない人々に提供し、交通パターンを検知することよって、都市は道路状況に合わせてリアルタイムでパターンを調整できる。いずれはこの技術によって、無人走行車が市中を走るための経路作成もできるようになるだろう。

交通以外にも、こうしたセンサーハブは、大気質や天気、さらには歩行者の移動パターンの収集にも使える。

「恵まれないコミュニティーが技術と革新を活用できるようにすることは、スマートシティー・チャレンジの重要課題だ」とAnthony Foxx運輸長官が声明で言った。「高度な技術とコンセプトを取り入れることによって、デジタル格差をなくし、職とのつながりを強化し、移動の物理的障壁を取り除くことによって、国じゅうのコミュニティーを強くすることができる。Sidewalk Labsとの提携によって、都市は市民との結びつきを強め、移動手段を改善することで、変化し続ける輸送問題に都市が対応するのを手助けできる。

プレスリリースで、Sidewalk LabsのCEO、Dan Doctoroffは、輸送手段の不公平は社会の移動性を妨げると語った。

「現在の道路の維持に苦闘している今、解決策はさらに道を作ることではない」とDoctoroffは言った。「だからわれわれはスマートシティー・チャレンジのファイナリストである7都市と組んで、輸送協調プラットフォーム “Flow” を開発した。」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook