複数の時間帯にまたがるグローバルなプロダクトチームための非同期ビデオチャット「PingPong」

パンデミックの初期から、ビデオチャットがこれから大流行することは誰の目にも明らかだった。

過去数カ月にわたり投資家たちは、特殊なニッチを対象とするビデオスタートアップに投資をしてきた。常時動いているオフィス監視用や、チーム全員が参加する長いミーティングではなく、大量のミニ通話を奨励するものなどだ。パンデミックが収まり始め、多くのスタートアップがハイブリッドなオフィス形態を模索するようになると、一部の者たちは逆に完全にリモートなワークフォースを目指すようになり、そのための新しいツールも必要になる。

たとえばY Combinatorの先のクラスでローンチしたPingPongは、ワークフォースのための非同期型ビデオチャットアプリを開発している。先日デビューしたスタートアップの中から、TechCrunchが気になる4社をピックアップしたが、PingPongはその中の1社だ。

同社の売りは、リモートチームが時間帯の違いを超えて、遅れることなく協調して仕事するためには、Slackやメールではない何かが必要だということだ。ZoomでのコミュニケーションはSlackの全社的ポストよりも企業文化をうまく伝えることができるが、完全にリモートなチームが複数の大陸に分散して存在している場合、全社ミーティングは端から不可能だ。

PingPongのサービスは、現在のところSlackのアドオンで、リモートのプロダクトチームが協力、コミュニケーションをとりながら、仕事を行っていくというものだ。ユーザーは自分の短いビデオを撮影、それをスタンドアッププレゼンテーションの代わりに共有し、それぞれが相手の進捗を自分の時間に合わせることができる。PingPongは、テキストではなく非同期の動画を使って、リモートのブレストやデザインレビュー、バグの報告などができるよう望んでいる。

PingPongのCEOであるJeff Whitlock(ジェフ・ウィットロック)氏は「Slackに代わるためには、まだやるべきことがたくさんあります。今はSlackとの協調の方が大切です。しかし、現在の若者が消費者生活の中でやってることを彼らが就職した企業でもできるようになることが長期的なビジョンとなります。私たちが2000年代にInstant Messengerを使っていて、職場に入りました。それがまさに、Slackが目をつけたポイントでした。これからの5年間では、もっとリッチでもっと非同期なSlack代替プロダクトが多くの関心を集めるでしょう」。

ウィットロック氏によると、複数の時間帯の中で仕事をするリモートのプロダクトチームのために特別設計されたチャットアプリは現在、希少でニッチなものだが、今後、より共通のものになるだろうという。PingPongはユーザー1人あたりの使用料が年額100ドル(約1万1100円)となっている。

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タグ:PingPongビデオ会議slack

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Slackはテキストベース以上のプラットフォームになろうとしている、オーディオとビデオ機能追加を検討

Slack(スラック)はバーチャルの年次会議Frontiersの準備をしていた2020年10月、同プラットフォーム上での異なるコミュニケーション方法について考え始めていた。同社は恐ろしいタスク切り替えを軽減するのに多くのサービスを1カ所に集約できることで知られるようになった一方で、これまで主にテキストベースだった。

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直近では、プラットフォームと相互作用する異なる方法をもたらし得るいくつかの新しい機能の開発を開始した。CEOのStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は米国時間3月25日、元TechCrunchライターで現在はSignalFireの投資家であるJosh Constine(ジョッシュ・コンスティン)氏とのClubhouseでのインタビューでそうした機能の開発について語った。

話は仕事の将来についてで、Slackはこうした新しいコミュニケーションの方法が、ハイブリッドな仕事環境へとシフトする中で従業員がオンラインでさらにうまくつながっていられるようにサポートできるかもしれないと考えている。こうしたシフトはパンデミックによって2020年に加速した。たとえパンデミックが終焉を迎えても多くの企業がハイブリッドスタイルで働き続ける、という一致した見方がある。

手始めにSlackはビデオでコミュニケーションを取る方法を加えることを目指している。しかしZoomやMicrosoft Teamsと競う代わりに、SlackはInstagram Storiesのようなエクスペリエンスを思い描いている。

CEOによる重要な発表の社内共有、あるいは全社メールで発表されるような種の情報を考えて欲しい。インボックスをスキップしてビデオでダイレクトにメッセージを届けることができる。ソーシャルでの消費者のアプローチを真似ておりそれを企業に持ち込もうとしている。

米国時間3月24日のブログ投稿で、同社のプロダクト最高責任者Tamar Yehoshua(タマール・イェホシュア)氏は、ミーティングのエクスペリエンスというより非同期のアプローチになるとの考えを明示した。

「ビデオコミュニケーションをサポートするために、当社はミーティングをSlackでネイティブのように感じる非同期ビデオエクスペリエンスへとシフトさせる方法を試しています。この手法ではミーティングなしでニュアンスや熱意を伝えることができます」と同氏は書いた。

それはそうとして、Slackは音声でチャットする方法を作ることを決めた。バターフィールド氏がClubhouseでのインタビューでコンスティン氏に語ったように、これは本質的にSlackのために作られるClubhouse(あるいはTwitter Spaces)だ。

そう、私は常に「凡人は模倣し、天才は盗む」を信じてきました。ですので、我々は本質的にはSlackの中にClubhouseを作っているだけです。偶然手に入れることができたアイデアのように、あなたがそこにいても、いなくても会話はあり、始まりと終わりがある電話とは対照的にあなたはそうしたいときに入室したり退室したりできます。これは自発性とセレンディピティ、3分間そこにいるだけでいい会話を促進するためにすばらしいモデルですが、それらをスケジュールする唯一のオプションは30分です。ですのでClubhouseをSlackにビルトインすることを模索しています。

繰り返しになるが、同社は消費者のソーシャルなアイデアを模倣していて、同じことを達成するのにZoomミーティングや電子メール、電話といった他のツールを使うかもしれないときにあなたをSlackにとどまらせるための他の方法を探そうと、そのアイデアをビジネス環境に適用している。

バターフィールド氏はまた、他の機能もほのめかした。ボイスメールのようなものを残すことができるようにする非同期オーディオで、これは将来提供されるかもしれない。Slackの広報担当は同社がこの新機能に取り組んでいることを認めたが、詳細を明らかにする準備は整っていなかった。

2020年末のSalesforceによる270億ドル(約2兆9595億円)でのSlack買収を考えずして、これらの機能に目を向けることはできない。すべてひっくるめたときに、あなたにとって最も合理的な方法でコミュニケーションをとれるようにするツールを手にする。

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3月24日にリリースされた、組織外部の人とコミュニケーションを取るための新機能Slack Connect DMをいくつかの論争と結びつけて考えると、人々はスパムやハラスメントをコントロールできるという保証を求めており、新機能は組織の外へとコンセプトを拡大している。

Salesforceのような大企業の一部として、それらツールは組織の内外でさまざまな方法でコミュニケーションを取る方法として販売、サービス、そしてマーケティングで役に立つかもしれない。そしてSlackが2021年後半にSalesforceの一部になるときに、Slackのバリュープロポジション(顧客に提供する価値)を大幅に拡大する。

同社は新しいオーディオとビデオの機能について昨秋から口にするようになったが、それら機能の試験は2021年初めに始まった。この新機能がいつから広く使えるようになるのか、同社はこれまでのところ語っていない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Slack音声ソーシャルネットワーク

画像 クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Slackの新DM機能「Connect」はありがたいことにデフォルトでオフのオプトイン方式

Slackが2020年10月に発表したConnect機能がようやく追加されたことを知って、ちょっとしたショックを受けたのは私だけではない。自分に連絡を取る手段はすでにあまりにも多い。毎日の無数のメールに加え、Twitter(ツイッター)、LinkedIn(リンクトイン)、Facebook(フェイスブック)などで連絡が殺到しており、Clubhouseもその中に入ろうとしている。

Slackはそうではないはずだ。職場の生産性とシンプソンズのgif画像の砦であるSlackは(ほとんどの場合)安全な場所だった。米国時間3月24日に同社はConnectを追加し「7万4000以上の組織の従業員が、今や社内外を問わず、誰にでも安全にメッセージを送ることができます」 と約束した。

これは、オープンなコミュニケーションのための便利な新しいリソースだろうか?それと「Pacific Rim(パシフィック・リム)」のように、職場のチャットに終わりのない恐怖の嵐を送り込んでくる侵入者なのだろうか?もちろん、それはあなたが誰で、何をしているかに大きく左右される。TechCrunchはSlackに連絡を取り、前述の7万4000の組織に対してどの程度オープンになるのかなど、いくつかの点について説明を求めた。

以下はSlackの広報担当者からTechCrunchへの回答だ。

組織のIT管理者は、誰が機能にアクセスできるかを制御したり、チームに対してこの機能を無効にしたり、Slack Connect DMを含むすべての外部接続を監視したりすることができます。この機能を有効にすると、管理者の追加承認を必要とせずにDMを開始することができます。組織がSlack Connect DMを無効にしている場合、そのユーザーはSlack Connect DMの招待を送信または受け入れることができません。組織がSlack Connect DMの受信を認証済みの組織からのものに限定している場合、その組織のユーザーは認証されていない組織からのSlack Connect DMを受信することができません。これは、スパムやフィッシングの防止にも役立ちます。

つまり、この機能はオプトアウト(デフォルトでオン)ではなくオプトイン(デフォルトでオフ)だ。IT管理者がこの機能をオンにしない限り、ユーザーは新システムを介してDMを送受信できない。新機能の狙いの1つは、Calendly(スケジュール管理)やDocuSign(文書署名)などのサービスを通じたサードパーティーアプリの統合だ。

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タグ:Slack

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

再発明されたビジネス向けボイスメールのYacがSlackの支援を受けて約7.8億円調達

フロリダ州オーランドを拠点とし、リモートオフィス向けにボイスメッセージをデジタル化するスタートアップのYacは、新たな資金調達ラウンドで750万ドル(約7億8000万円)を調達した。

同社のサービスはGGV Capitalが率いる投資家とSlack Fundからのリターン投資により、十分な規模の新規ラウンドを獲得するなど注目を集めている。

どうやら再発明されたボイスメールには何百万ドル(何億円)もの価値があるようだ。

「会議の未来は非同期で、耳と手が自由になります」と、Active CapitalのCEO兼創設者であるPat Matthews(パット・マシューズ)氏は、約1年前にシードラウンドを発表した際に述べている。

Justin Mitchell(ジャスティン・ミッチェル)氏、Hunter McKinley(ハンター・マッキンリー)氏、Jordan Walker(ジョーダン・ウォーカー)氏が共同設立したYacは、デジタルエージェンシーのSoFriendlyからスピンアウトし、Product HuntのMaker Festivalのピッチとして開発された。同社のボイスメッセージサービスはそのイベントのスタートアップコンペで優勝し、Boost VCとその創設者である第3世代ベンチャーキャピタリストのAdam Draper(アダム・ドレイパー)氏の関心を集めた。

シードラウンドから約6カ月後、Yacは別の起業家からの紹介のおかげでSlackからの支援を受けた。ミッチェル氏によると、2020年に行われた交渉の間に両チームはYacを利用してデューデリジェンス(リスク調査)を行ったという。2020年8月にSlackが資金調達に乗り出したと発表した時点で、Yacのサービス利用者数は5000人強で、Slackと同じようにアカウントごとに課金していた。

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タグ:YacSlack資金調達ボイスメッセージ

画像クレジット:AaronP/Bauer-Griffin / Getty Images

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Slackで日本時間1月5日午前0時すぎに障害(現在は復旧)

Slackは米国時間1月4日の朝(日本時間1月5日未明)、仕事への復帰を可能な限り混沌かつ非生産的なものにすることで、休暇から仕事に復帰する社会人のために最善を尽くした。

ダウンタイムがいつから始まったのかは不明だが、米TechCrunchのスタッフの間で問題が起きたのは午前10時過ぎだった。Slack自身も東部時間午前10時14分(日本時間午前0時14分)に問題があったことを投稿している。

ダウンタイムの問題は2019年半ばに株式公開され、2020年末にSalesforceに売却すると発表したSlackにとって、目新しいものではない。TechCrunchでは、同サービスの問題を2020年、2019年、2018年そして2017年に採り上げている。

Slackが高額な売却金額のために自らを売り込んでいる最中のダウンタイムは、厄介な事態だ。ユーザーや顧客が仕事に復帰しようとしている時の障害は、ひどいとしかいいようがない。

最後に、競合するTeams製品を持つMicrosoft(マイクロソフト)の状態を紹介しよう。

【更新】Slackは米TechCrunchに以下のような声明を送っている。

当社のチームは問題を認識しており、調査を行っています。私たちは、人々がコネクションを維持することがいかに重要であるかを理解しており、すべてが通常通りに動作するように努力しています。最新のアップデートについては、@slackstatusとstatus.slack.comをチェックしてください。

【Japan編集部】日本時間1月5日午前7時30分現在、status.slack.comによると接続などシステム障害は解消されている。ただしGoogle Calendar、Outlook Calendar電子メール通知の問題が発生しているとのこと。

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タグ:Slackシステムダウン

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

277億ドルのSlack買収をめぐる世間の意見とは

先日、Salesforce(セールスフォース)とSlack(スラック)の取引が正式に発表されたが、その数字はにわか信じがたいものだった。Salesforceは270億ドル(約2兆8000億円)以上を投じてSlackを買収し、Salesforceのファミリー製品へと取り込んだ。Salesforceに欠如している重要な鍵をSlackが握っていると同社は見ており、Slackを手に入れるために驚くほどの金額を費やした理由はそこにあるという。

Slackの獲得によってSalesforceは、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が「すべてへのインターフェース」と呼び、長年熟考を重ねてきたものを手に入れることができた。同社は2010年に自社で解決しようとソーシャルツールChatterの構築を試みたものの、それが大々的に日の目を見ることはなかった。しかし、Slackでそれがついに実現することになる。

「私たちは10年以上前から常に、ソーシャルエンタープライズに対するビジョンを持っていました。弊社のCustomer 360と統合された、アプリケーションとエコシステムを備えた協同的で生産的なインターフェイスとはどのようなものなのか、という課題に特化したDreamforcesを開催したこともあったほどです」とベニオフ氏は振り返る。

皮肉にもSalesforce Parkのすぐ隣のビルにSlackの本社があるという。コラボレーションにはもってこいのロケーションである(あるいは、単にSlackを使うという手もあるが)。

Chatter から Slackへ

Battery Ventures(バッテリーベンチャーズ)のジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏によると、ベニオフ氏は何年も前からエンタープライズソーシャルに関心を持っており、今回の方法はそれに対する同氏なりの答えだという。「Chatterを覚えていますか?ベニオフ氏はこのトレンドに非常に的確でした。彼は約7~8年前にYammerをMicrosoftに奪われ(Microsoftが12億ドル/約1250億円で買収)、その後Chatterを立ち上げました。これは大きな賭けだったもののうまくいかなかった。SlackはChatter 2.0と呼んでも良いでしょう」とアグラワル氏は言う。

Tact.aiのCEO兼共同創業者であるChuck Ganapathi(チャック・ガナパティ)氏は、2009年にSalesforceでChatter製品のプロダクトリーダーを務めていた。同氏はTechCrunchに共有してくれた近日公開予定のブログ記事で、Chatterの失敗要因には様々な理由がるものの、大きな要因はやはりSalesforceがしょせんデータベース専門家の集まり以外の何者でもなく、エンタープライズソーシャルは大きく異なる分野だったからだと書いている。

「問題の多くは技術的なものでした。SalesforceはOracle(オラクル)出身者がリレーショナルデータベースを基盤に設立したデータベース中心の会社です。DBアプリケーションとChatterやSlackのような構造化されていないコミュニケーションアプリケーションは、コンピュータサイエンスの全く異なる分野であり、重複している部分がほとんどありません」と同氏は書いている。そのため、アプリケーションを正しく構築するための専門知識が欠落していた上に、当時市場には多くの類似製品が出回っていたため、Chatterが日の目を見ることはなかったのだと同氏は感じている。

しかし、Salesforceプラットフォームにソーシャルを組み込むというベニオフ氏の野心が失われることはなかった。ただ、それを実現するためにはさらに10年ほどの歳月と莫大な資金が必要だったわけだが。

相性の良し悪し

以前SalesforceでAppExchangeを運営していたOperator Capital(オペレーターキャピタル)のパートナーLeyla Seka(レイラ・セカ)氏は、SlackとSalesforceの統合には将来性があると見込んでいる。「SalesforceとSlackが一つになることで、世の中の企業がより効果的に連携して仕事をするために役立つ強力なアプリケーションを提供することができるでしょう。COVID-19によって、従業員が仕事をするためにはデータがいかに重要かが露わになっただけでなく、仕事を成功させるためにはコミュニティと繋がれることが非常に重要であるということが明確になったと思います。この2社の融合によってまさにそれが実現するのではないでしょうか」とセカ氏は言う。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)のプリンシパルアナリストBrent Leary(ブレント・リアリー)氏もその買収価格には驚きを隠せないようだが、今回の買収には、たとえそれを手に入れるために多額の金額を払わなければならないとしても、欲しいものを追い求めることを決して恐れないSalesforceの姿勢が表れていると述べている。「Salesforceはこの取引きに関して微塵の恐れもないということが分かります。彼らのプラットフォームにこの製品を追加することで大きな見返りがあると確信しているからこそ、この買収にこれだけの大金を投じるのでしょう」。

Slack側にとっては、企業のビッグリーグへの近道だろうとリアリー氏は考える。「Slackについては、AMOSS(Adobe、Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce)と競合していた立場からそのうちの1社となったわけで、またチームを組む上で最も理にかなっていたのがSalesforceだったのだと思います」。

SMB Group(SMBグループ)のアナリスト兼創設者のLaurie McCabe(ローリー・マッケイブ)氏もリアリー氏の見解に同意しており、Salesforceは価値を見出したら躊躇しないのだと話している。「今回のケースでは、Slackが非常に強力な力を発揮することになります。Salesforceは、CRMやTeamsなど成長を続けているMicrosoftのクラウドポートフォリオに対抗し、より効果的に競争することが可能になるでしょう」と同氏は言う。

今後のお金の流れ

Battery Venturesのアグラワル氏は、収益の創出がこのディールにおける全目的であり、だからこそ大きな変化をもたらすために10億ドル単位の非常に高額なプライスを支払うことも厭わなかったのだろう言う。最終的にはMicrosoftに追いつくか、少なくとも時価総額で1兆ドル(約104兆円)に到達することが目標だと同氏は予測する。

ちなみに今のところ投資家らがこの取引きを好意的に受け止めている様子はなく、株価は記事執筆時の12月3日だけで8%以上下落しており、先週の感謝祭休暇前にSalesforceがSlackに興味を持っているという噂が浮上して以来16.5%下落している。これは180億ドル(約1兆876億円)以上の時価総額の損失を意味しており、おそらく同社が期待していたような反応ではないだろう。しかしSalesforceの規模は十分に大きく、長期戦を闘う余裕があるため、Slackの助けを借りて財務目標を達成することができるだろう。

「時価総額1兆ドルに到達するためにSalesforceは今、MSFTに正面から挑まなければなりません。これまで同社は製品面ではほとんどの場合、独自のコースに留まることができました。[…]市場規模1兆ドルを達成するためにSalesforceは、2つの巨大市場での成長を試みる必要があります」とアグラワル氏は述べている。この2つとは、ナレッジワーカー/デスクトップ(2016年のQuip買収を参照)かクラウド(Hyperforceの発表を参照)のことである。同社の最善の策は前者であり、それを手に入れるために並外れた額を支払うことも厭わないだろうとアグラワル氏は言う。

「今回の買収により、Salesforceは今後数年間において20%以上の成長率を維持できるようになるでしょう」と同氏。最終的にはそれが収益の針を動かし、時価総額を上昇させ、目標達成に貢献すると同氏は見込んでいる。

注目すべきは、Salesforceの社長兼CEOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、SlackをSalesforceの製品ファミリーにしっかりと統合する計画がある一方で、スタンドアロン製品としてのSlackの底力と有用性を認識しており、それを妨げるようなことは何もするつもりはないと述べたことだ。

「基本的には、Slackがテクノロジーにとらわれないプラットフォームであり続けられるようにしたいと考えています。Slackは毎日何百万人もの人々に利用されており、地球上のあらゆるツールをつなげてくれていることを理解しています。非常に多くの顧客が独自のカスタムツールを統合しており、これを使用するチームの中枢神経系にもなっています。私たちは決してそれを変えたくはありません」とテイラー氏は述べている。

ここまで大規模な取引きの良し悪しを現時点で判断するのは難しい。テイラー氏が言うようなSlackの独立性を確保しつつ、両社がどのように調和をとっていくのか、またSlackをSalesforceのエコシステムに上手く組み込むことができるのかなどを見極める必要がある。もし両社が呼吸を合わせることができ、SlackがSalesforceのエコシステムを完成させることができるのなら、この取引が成功に終わる可能性は十分にある。しかしもしSlackがイノベーションを止め、企業の重鎮の重圧に耐えられなくなってしまったら、今回の金額は無駄使いに終わってしまうかもしれない。

どちらに向かうかは、乞うご期待である。

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タグ:Slack Salesforce 買収

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(翻訳:Dragonfly)

SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

Salesforce(セールスフォース)今週、Slack277億ドル(約2兆8850億円)で買収したとき、それはある意味でスタートアップのおとぎ話の終わりだった。Slackはシリコンバレーのスタートアップが思い描く成功のファンタジーを生きたまま体現していた。Slackはゲーム会社からスタートした(未訳記事)。同社は14億ドル(約1460億円)を調達し、評価額は0ドルから70億ドル(約7300億円)の評価額IPOを果たし、スタートアップ創業者が持つ希望リストのすべての項目をチェックした。

そして今週、突然SlackはSalesforceの一部となり、莫大な金額を市場から引き抜いた。

この取引を実現させるために裏にあった作戦を知ることはできないかもしれないが、興味深いのは、SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、今週のインタビューで、Salesforceの社長兼COOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏に接触した際、Slackを売却するつもりはないと語ったことだ。むしろ彼らはSalesforceから何かを買いたいと思っていた。

「実際、パンデミック初期の頃にブレットと話して、私たちにQuipを売る気があるかどうか聞いてみたことがある。それは私たちのためになると思っていたし、彼らの計画がどうなっているのかも知らなかったから。彼は私に連絡すると告げ、それから6カ月後に返事をくれたんだ」とバターフィールド氏はいう。

その時点で話は反転し、両社は一連の話し合いを始め、最終的にはSalesforceがSlackを買収することにつながった。

大金、大きな期待

Salesforceの観点から見ると、テイラー氏はSlackとの契約により、純粋なCRMからマーケティング、カスタマーサービス、データビジュアライゼーション、ワークフローを含む、何年もの間、拡大してきた同社プラットフォームのすべての要素を統合することができるためお金を払う価値があったとテイラー氏はいう。また、SlackがあればSalesforceは他の製品で欠けていたコミュニケーションレイヤーを得ることができる。顧客やパートナー、同僚とのやり取りがほとんどデジタルになったときに、このコミュニケーションレイヤーは特に重要になると述べている。

「私たちが本当にSlackをCustomer 360の次世代インターフェースにしたいといっているのは、これらすべてのシステムを統合するということだからです。チームが分散し、これまでなかったほどコラボレーションが重要になっている現在、どこにいても仕事ができるデジタルな世界で、これらのシステムを使ってどのようにチームをまとめていけばいいのでしょうか」とテイラー氏はいう。

バターフィールド氏は、人々が仕事の過程で何をしているのか、これらの記録とエンゲージメントのシステムの中でマシンが裏で何をしているのか、そしてSlackがどのようにして人とマシンの間のギャップを埋めるのに役立つのか、ということに自然なつながりがあると考えている。

Slackをビジネスプロセスの中心に置くことで、Salesforceのような複雑なエンタープライズソフトウェアで生じる摩擦を解消することができるとバターフィールド氏はいう。メールやリンクをクリックしてブラウザを開き、サインインして、最終的に必要なツールにアクセスするのではなく、1つのSlackメッセージに承認を組み込むことができる。

「1日に何百ものアクションがあるということは、スピードを上げる絶好のチャンスもあるということです。それがインパクトをもたらします。承認を行う担当者が時間を節約できるだけでなく、ビジネス全体の運営のスピードにも影響があります」とバターフィールド氏はいう。

Microsoftとの競合

両社とも、今回の契約はMicrosoft(マイクロソフト)との競合を目的としたものだとは述べていないが、SlackとSalesforceが力を合わせることを決めた根本的な理由はおそらくそこにある。両社は別々であるよりも、一緒にいたほうがうまくいくかもしれないが、いずれにもマイクロソフトとの複雑な過去がある。

Slackは何年にもわたってマイクロソフトと同社のTeamsと継続的な戦いを続けてきた。バターフィールド氏は2019年夏、同社がOffice 365で無料のTeamsを不当にバンドルしているとして、EUで提訴していた(未訳記事)が、同年のThe Wall Street Journalにおけるインタビューの中で、マイクロソフトはSlackにとって脅威だと考えていると語っている。誇張はさておき、2つのエンタープライズソフトウェア会社の間には緊張と競争がある。

Salesforceとマイクロソフトの間にも長い歴史がある。初期の頃は訴訟を起こしたり(Reuters記事)、2014年にSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が就任してからは、史上で激しい競争を繰り広げたり、時には仲良く一緒に仕事をしたりしていた。今回の取引では、この文脈を無視することはできない。

Battery VenturesのジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏は最近のTechCrunchからのインタビュー(未訳記事)で、今回の契約は少なくとも部分的にはMicrosoftを捕らえるためのものだと語っている。

「1兆ドル(約104兆1600億円)という時価総額を達成するためには、SalesforceはMSFTに真っ向から立ち向かう必要があります。これまで同社は製品の点ではほぼ独自のスイムレーンに留まることができています」とアグラワルはTechCrunchに語った。

バターフィールド氏は、明らかな競争相手を目にしながらも、今回の契約はライバルと競争する上で自社を有利な立場に置くためのものではないと否定した。

「少なくとも私にとって、それが理論的根拠の重要な部分だとは思いません」とバターフィールド氏は述べ、「マイクロソフトとの競争は大げさに考えられています。私たちにとっての課題は物語でした」と付け加えた。

バターフィールド氏は、企業向けIT、保険、銀行業界の大手顧客のリストを挙げているが、Slackが当初注目を集めていた開発者チームに支持されていたという物語は以前から存在していた。Salesforceの現実がどうであれ、Slackは間違いなくエンタープライズコミュニケーション分野のあらゆる企業と競争する上で有利な立場にあり、Salesforceの一部となるが、両社はまた、ある程度の分離を維持する方法を見つける必要がある。

Slackを独立性をもたせる

テイラー氏は、現在のSlackの顧客が今回の買収をどのように考えるかについて注意深く見守っていることを認識しており、Salesforceはブランドと製品の独立性を尊重する一方で、既存の同社へのフックを作成し構築する方法を見つけ、CRMの巨人がその多額の投資を最大限に活用できるようにしなければならないだろう。

それは簡単なことではないだろうが、2018年に65億ドル(約6770億円)で買収したMuleSoft(未訳記事)や2019年に150億ドル(約1兆5620億円)以上で買収したTableauといったSalesforceが最近、行った大型買収にも同じような独立性が見られる。バターフィールド氏が指摘しているように、これら2つの企業はブランドアイデンティティと独立性を明確に維持しており、Slackのロールモデルになっているとテイラー氏は考えている。

「チャットクラウドなどと呼ばれても誰も助けてくれないので、(MulesoftとTableauには)そういう独立性のレイヤーがあるということです。彼らはSalesforceのために多くのお金を払ってくれたので、私たちがすでに行ったことをもっとしてほしいと思っています」という。

テイラー氏の意見はここでは非常に重要だが、彼は確かに似たような言葉でそれを見ている。

「私たちは、開発者のための真に統合された価値の提案、真に統合されたプラットフォームを実現したいと考えていますが、同時にSlackの技術的独立性、テクノロジーにとらわれないプラットフォームとそのブランドも維持したいと考えています」と、テイラー氏は述べた。

一緒にいたほうがいい

両社は協力することで、SlackのコミュニケーションをSalesforceのエンタープライズソフトウェアの優れた能力と統合してより良いものにする可能性があると考えており、テイラー氏はSlackがワークフローと自動化で両社を結びつけるのに役立つと考えている。

「自動化について考えるとき、イベントドリブンであり、これらの長期的なプロセスについて考えます。人々がSlackプラットフォームで何をしているかを見ると、基本的にはワークフローやボットなどを組み込んでいます。SalesforceプラットフォームとSlackプラットフォームの組み合わせは、最高の自動化インテリジェンス機能を持っていると思います」とテイラー氏は述べている。

この2人が買収を進める上で直面している課題は、このような大規模買収にともなうすべての期待に応えることであり、それを成功させることだ。

Salesforceは大規模な買収を数多く経験しており、うまくいったケースもあればそうでないケースもある。両社にとって、この買収の成功は不可欠なものだ。それを確実なものにできるかどうかは、テイラー氏とバターフィールド氏にかかっている。

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タグ:SlackSalesforce買収

画像クレジット:Justin Sullivan, Stephen Lam/Getty Images; Slack/Salesforce

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Slack買収を投資家が見守る中、セールスフォースが予測を上回る成長

米国時間12月1日の市場閉鎖後、Salesforce(セールスフォース)が会計2021年度第3四半期(2020年10月31日締め)の決算を報告した(Salesforceリリース)。CRMの巨人は売上54億2000万ドル(約5660億円)を計上、前年同期から20%上昇した。純利益は10億8000万ドル(約1130億円)、1株当り利益は1.15ドルだった。

Yahoo Financeによると、アナリストは1株当り利益0.75ドル、売上52億5000万ドル(約5490億円)と予測していた。

Salesforceの株価は時間外取引で下落し、本稿執筆時点で3.6%値を下げている。値下がりの原因が第3四半期の結果なのか第4四半期のガイダンスを上方修正したためなのか、新たな2022年度予測なのか、それとも最近発表したSlack買収なのはわからない。

直近のTechCrunchの記事によると、SalesforceはSlack(スラック)を277億ドル(約2兆8940億円)の現金および株式で買収した。この件はSlackの株価に即座に影響を与え、ニュース直後に1ポイントを本日下げた後、買収の噂がリークされて以来50%近く跳ね上がった。

Slackの株主は忍耐が報われることになる。この大型買収が会社の成長を後押しするかどうかはSalesforceのリーダーシップにかかっている。

Salesforceは12月2日、会計2021年度第4四半期の売上を56億6500万~56億7500万ドル(約5920〜5930億円)と予測していることを投資家に伝えた。これは1年前の同期に比べて約17%の上昇だ。同社は2022年度第1四半期にも約17%成長すると予測している。

しかしSalesforceは、会計2022年度全体で21%の成長を見込んでいる。どうやって加速するつもりなのか?同社の予測にはSlackが組み込まれている。

会計2022年度の通年売上ガイダンスでは、Slack Technologies, Inc.買収におけるパーチェス法による会計処理による約6億ドル(約630億円)、契約見込み第2四半期後半、Acumen Solutions, Inc.のパーチェス法による会計処理による約1億5000万ドル(約160億円)、契約見込み第2四半期内の結果が含まれている。

そういうわけでSalesforceの投資家は2回の17%成長の四半期の後、投資先企業は翌年度21%成長へと加速することになる。それは企業価値277億ドルということのか?

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SalesforceがSlackを2.9兆円で大型買収

年間収益が最近200億ドル(約2兆880億円)を突破したCRMの強豪であるSalesforce(セールスフォース)は米国時間12月1日、Slackを277億ドル(約2兆8740億円)で大型買収し、エンタープライズソーシャルに深く踏み込んでいくと発表した。先週には保留中の買収の噂が浮上し、Slackの株価が急騰していた

Salesforceの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、今回の買収について言葉を濁さなかった。「これは相性抜群の縁組みです。SalesforceとSlackはともにエンタープライズソフトウェアの未来を形作り、あるゆる人々がオールデジタルで世界中のどこでも仕事ができるように、働き方を変えていくでしょう」とベニオフ氏は声明で述べた。

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏も、将来の上司に劣らず喜びを表現している。「ソフトウェアがあらゆる組織のパフォーマンスにおいてますます重要な役割を果たすようになるにつれ、私たちは複雑さを減らし、パワーと柔軟性を高め、最終的にはより高度な調整と組織の俊敏性を実現するというビジョンを共有しています。個人的には、これはソフトウェアの歴史の中で最も戦略的な組み合わせだと思っています。一緒に始めるのが待ち遠しくて仕方ありません」と、バターフィールド氏は声明で述べている。

すべての企業の、すべての従業員はコミュニケーションをとる必要があるが、Slackはそれを巧みに強化させることができる。さらに、Slackは顧客やパートナー企業との外部コミュニケーションも円滑にする。Salesforceのような企業とその製品群にとって、それは非常に有益なものになるはずだ。

最終的に、Slackは買収の機が熟していたのだ。Slackは株式公開後、2020年に入る頃にはその価値の約40%を失っていた。直近の決算報告(未訳記事)後には、同社の価値は16%下がり、Salesforceの買収がリークされる前は、1株あたりの価値が直接上場の基準価格よりも数ドル高いだけだった。2020年7月31日までの2つの四半期の間に1億4760万ドル(約154億1600万円)の純損失を計上し、Slackの魅力的でない公開評価と収益性への曲がりくねった道は、今回のような買収の標的となっていた。ここでの唯一の驚きはその価格だ。

YahooとGoogleファイナンスの両方によると、Slackの現在の評価額は250億ドル(約2兆6100億円)強で、時間外の価格変化が非常に小さいことを考えると、市場が同社にある程度効果的な価格を付けたことを意味する。Slackは、買収が明らかになる前の評価額から約48%上昇した。

また、今回の新たな買収により、Salesforceはかつてのライバルであり、時には友人でもあったMicrosoft(マイクロソフト)と肩を並べ、そして競い合う(未訳記事)ことになる。同社のMicrosoft Teamsは市場でSlackと直接競合する製品だからだ。マイクロソフトは、過去にSalesforceが今回支払う金額の数分の1でSlackの買収を断念した(未訳記事)が、ここ数四半期はTeamsを重要な優先事項としており、エンタープライズソフトウェア市場の一片たりとも他社に譲ることを嫌っている。

Slackが他の企業とは一線を画していたのは、少なくとも当初は、他の企業向けソフトウェアとの統合が可能だったからだ。これにボットやインテリジェントなデジタルヘルパーを組み合わせれば、同社はSalesforceの顧客に集中的に仕事ができる中心的な環境を提供できる可能性がある。必要なことはすべてSlackでできるからだ。

今回の買収はSalesforceにとって、2016年に7億5000万ドル(約783億円)で買収したQuipに続くものだ。QuipはSaaSの巨人にドキュメントをソーシャルに共有する方法をもたらした。Slackの買収と組み合わせれば、Salesforceは自社内のオプションであるChatter(エンタープライズソーシャルの初期の試みで現実にはまったく普及しなかった)よりも、はるかに堅牢なソーシャルストーリーを伝えることができる。

注目すべきは、マイクロソフトがSlackに興味を持っていると報じられたのと同じ2016年に、SalesforceがTwitter(ツイッター)に興味を持っていたことだ。最終的には、株主の反対を受け、ソーシャルプラットフォームの物議を醸している側面を扱いたくないということで買収から手を引いた。

Slackは2013年に設立されたが、その起源(未訳記事)は2009年に設立されたGlitchというオンラインマルチプレイヤーゲーム会社にまで遡る。このゲームは最終的には失敗に終わったが、このスタートアップは会社を作る過程で社内メッセージングシステムを開発し、それが後にSlackへと発展した。

その歴史的な成長によってSlackは非公開の間に10億ドル(約1044億円)以上を調達し、2019年の株式公開前に70億ドル(約7310億円)もの評価額を獲得した。「Glitchがユニコーンになった」ストーリーは単純に見えるものの、Slackはマイクロソフトだけでなく、Cisco(シスコシステムズ)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、さらにはAsanaやMonday.comといった企業との競争に常に直面している。

Slackにとって、公開市場への道のりは誇大広告と予想外の期待に満ちていた。同社はすでにSalesforceと同じくらい有名だった。当時、そのデビューはインディーズ会社としての長い期間の始まりだと感じられた。しかしそうはならず、その期間は巨額の小切手によって切り詰められてしまった。これが「食うか食われるか」のテック業界だ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SalesforceによるSlack買収検討との報道を受けてSlack株価が急騰中

Salesforce(セールスフォース)が人気の職場チャットSlack(スラック)の買収に関心を持っている(The Wall Street Journal記事)というニュースを受けて、Slackの株価は米国時間11月25日に急騰した。

Yahoo Financeのデータによると、Slackの株価は25%近く上昇している。この記事執筆時点でSlackの株価は36.95ドル(約3860円)で、企業価値は約208億ドル(約2兆2000億円)だ。有名な元ユニコーン企業である同社の2019年の株価は最低が15.10ドル(約1580円)、最高が40.07ドル(約4200円)だった。

逆に、Salesforceの株はニュースを受けて低調で、記事執筆時点で3.5%下げている。サンフランシスコ拠点のSaaSパイオニアであるSalesforceは買収のアイデアで印象付けることができなかったか、あるいは2019年のIPOレベルの株価に戻すことになるかもしれない買収の価格について心配されているのだろう。

CRM(顧客情報管理)マーケットにおいて確固たる地位を築き、さらに大きなプラットフォームプレイヤーになることを熱望している巨大ソフトウェア企業のSalesforceがなぜSlackを買収したいのか。メリットはあるかもしれないが、すぐにははっきりしない。メリットとしては、2社のプロダクトを互いの顧客に売り込んでさらなる成長に結びつけるというのが考えられる。Slackは急成長のスタートアップの中で幅広いマーケットシェアを持っているが、その一方でSalesforceのプロダクトは多くの大企業に利用されている。

TechCrunchは買収の可能性についてSalesforce、Slack、そしてSlackのCEOにコメントを求めている。返事があればアップデートする。

Salesforceは2016年にQuip(クイップ)を7億5000万ドル(約783億円)で買収し、これにより書類共有やコラボの機能を手に入れたが、Salesforce Chatterが唯一のソーシャルツールだ。Slack買収でSalesforceは確固たる企業向けのチャットサービスを、そして顧客とツーリングの間で多くの相乗効果を手に入れる。

しかしSlackは常に、ただのチャットクライアント以上のものだった。企業がワークフローを埋め込めるようにしているが、これはSalesforceのセールス、サービス、マーケティングなど一連のプロダクトにぴったり合うだろう。2社がともにSalesforceエコシステムの内外で協業して、スムーズで統合されたワークフローを構築できるようになる。理論上はSalesforceもできるが、2社が合体すればインテグレーションはより強固なものになるのは間違いない。

さらには、買収によりSalesforceは収入のエンジンを動かし続けるために常に求めていた確実な収入源を得ることになる、とConstellation ResearchのアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は話す。「SlackはSalesforceのプラットフォームを強化するのに良い候補かもしません。しかしさらに重要なことに、使用増とSalesforceプロダクトの『頻繁な使用』を意味しています。コラボはCRMにとってだけでなくベンダーの成長中のwork.comプラットフォームにとって大事なのです」とミューラー氏は述べた。元友達から敵になったMicrosoft(マイクロソフト)に報復する方法となるだろう、とも話した。

これはSlackがこの数四半期、マイクロソフトからかなりの砲火を浴びているからだ。レッドモントに本社を置くソフトウェア大企業のマイクロソフトはTeamsサービスの競争にリソースを注いだ。TeamsはSlackのチャットツールと、Zoomのビデオ機能に挑んおり、この数四半期でかなり顧客数を伸ばしてきた。

Slackを大規模テック企業のコーポレートホームとすれば、マイクロソフトが企業向けソフトウェア売上高のリバイアサンの下でSlackを砕くことはないかもしれない。そして時にMicrosoftの味方であるSalesforceは急成長中のSlackを拡大しつつある自社のソフトウェア収入に加えることを気にしないはずだ。

この買収の実現は、価格にかかっている。Slackの投資家は情報が漏れる前の1株あたりの価格にかなりのプレミアムを上乗せしなければ売却したがらないだろう。

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(翻訳:Mizoguchi

Slackが企業間メッセージングを容易にするセキュリティ機能を新導入、ビデオ・音声埋め込み機能も実験中

Slackは今週、Frontiersカンファレンスをバーチャルで開催中で、企業間パートナー間のメッセージをより簡単にするためのいくつかの新機能を紹介した。また、今後プラットフォームに登場する可能性のある実験的な機能についても触れた。

まずは、社外のパートナーと安全な方法でコミュニケーションを取るのに役立つ機能を紹介しておこう。共同やファイル共有など、信頼できるパートナーと密接に連携して仕事する際には、セキュリティ面で常に難しい問題に直面する。

この問題を解決するために、同社は信頼できるパートナー(Trusted Partners)という概念を作った。これにはいくつかの要素が含まれ、その1つがSlack Connect DM(ダイレクトメッセージ)で、組織内のユーザーは招待状を送るだけで社外の誰とでもコラボレーションできるようになるというもの。

「Slackエコシステム内の誰にでもダイレクトメッセージができるようになりました。つまり、Slackのライセンスを持っている人なら誰でも相互に接続できるということです」と、Slackのプロダクト担当副社長を務める Ilan Frank(アイラン・フランク)氏は説明する。なお同社は今週この新機能を紹介しているが、広く利用できるようになるのは来年になるだろう。

我々は、これを広く利用できるようにする前に、多くの異なる情報プライバシーとセキュリティ(コンポーネント)に焦点を当てて、スパムやフィッシング攻撃などを影響を確認するつもりです。Slack Connect DMは、LinkedInFacebookメッセンジャーのように、誰もがあなたとつながることができるようなものではありません。これはビジネスのためのビジネスに特化したものです」とフランク氏。

なお、Slackはこの機能の実装を確実に実現するために、いくつかのコンセプトを導入している。その1つは、Twitterの検証済みユーザーに少し似たVerified Organizations機能で、Slack上で情報交換を始める前に信頼して仕事をしている組織の誰かと取引していることを確認できるようする。

フランク氏によると「誰かがダイレクトメッセージやチャネルを通じてあなたに接続してきた場合、接続する前に相手が検証済みのSlack組織からのものかどうかを確認できます。インターネットにサインアップしたばかりの人であれば、あなたはその人のことを聞いたことがなく、その人と関係を持っていないし、誰なのかもわからない」とフランク氏。同機能によりSlack管理者は、Slack上でどの組織や個人が組織内の人と接続できるかを合理的にコントロールすることができ、ほかの新機能を責任を持って使用することができます。

2つ目のManaged Connections機能は、Slackの管理者がSlack上でどの組織や個人が組織内の人々とつながるかを合理的に管理できるようにするもので、ほかの2つの新機能を確実に責任ある方法で使用されるよう支援する。

フランク氏は「組織はコントロールの精度をさらに細かくし、関連する外部組織によって異なるポリシーを設定したいと考えています」と説明する。管理者はManaged Connectionsを利用することで、外部組織とのさまざまなタイプの関係に関するポリシーを設定できるようになる。

これらの新しいツールはすべて今週発表されるが、今年中か来年初めに一般リリースされる予定だ。

同社が取り組んでいることの中には、Slackのチャネルにビデオやオーディオを埋め込むことを可能にし、単なるテキストメッセージングツールを超えて拡張することもある。同社は「これらの機能は現時点では単なる実験にすぎず、将来的に製品化されないかもしれない」と念押しした。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

「アジアのSlack」ことJANDIを提供するToss Labが約13.8億円を調達

Slackアジアへの投資に力を入れる中(Slackブログ)、韓国に拠点を置いて企業向けコラボレーションプラットフォームのJANDIを開発するToss LabはSlackの手強いライバルになろうとしている。Toss Labは米国時間9月1日、ソフトバンクグループのアーリーステージベンチャー部門であるSoftBank Ventures Asiaが主導したシリーズBで1300万ドル(約13億8000万円)を調達したと発表した。このラウンドにはSV Investment、Atinum Investment、Must Asset Management、Shinhan Capital、SparkLabs、T Investmentも参加した。

2014年に創業したToss Labは、このラウンドによりコラボレーション分野の韓国企業として初めて調達金額の累計が2000万ドル(約21億2500万円)に達したと述べた。

同社は、JANDIは韓国と台湾でトップのコラボレーションプラットフォームであるとしている。同社のサービスは、中小企業から従業員が数千人クラスの大企業にまで利用されている。クライアントには、韓国のコングロマリットのITサービス子会社であるLG CNS、韓国タイヤメーカーのNexen Tire、Lexusなどがある。Toss Labは過去3年間で売上が2倍以上になったという。

Toss LabのCEOであるMatthew Kim(マシュー・キム)氏はTechCrunchに対し、シリーズBの資金でグローバル展開を拡大し、従業員数を20~25%増やすと述べた。

アジア市場におけるJANDIの新規ユーザー数は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大中に80%増加した。リモートワークで利用できるよう、JANDIはZoomと統合し、セキュリティを強化し、高度な管理ダッシュボードを開発した。

このプラットフォームは現在、英語、中国語、日本語、韓国語、ベトナム語に対応している。そして日本、台湾、マレーシア、ベトナム、中東での事業を拡大していく計画だ。

2019年10月にSlackは、日本とオーストラリアに新しいデータリージョンを開設するなど、アジアへの投資を強化する計画を明らかにしていた。

しかしキム氏は、JANDIの最大のライバルはSlackではなく、むしろLINE、カカオ、WhatsApp、Zalo、Facebook Messengerといった人気メッセージングアプリと競っていると言う。アジアではこうしたメッセージングアプリで仕事のコミュニケーションをとっている人が多数派だとキム氏は語る。アジアでは、Slackは一部のスタートアップやテック企業で使われている。コラボレーションプラットフォームとしては日本ではChatwork、ベトナムではBase.vnがトップで、JANDIは韓国と台湾でトップだ。

JANDIの利点は「それぞれの地域に特有のレガシーシステムとの統合を進め、各地に企業のオンボーディングをサポートするチームがいることだ」とキム氏は語る。また、短期的には日本と台湾が最も成長が見込まれる市場で、アラブ首長国連邦やマレーシア、インドネシアがそれに続くとも述べた。

ほかのコラボレーションプラットフォームと同様に、JANDIもメッセージングとグループチャットの機能を提供している。しかしアジア市場の仕事の文化に合わせたと同社が語るコラボレーションツールもある。具体的には、部署ごとに従業員を探せる組織図、会社の発表やレポートを公開する「掲示板」、最大300人が同時に参加できるビデオ通話、領収書の読み取り、機密書類を保管するセキュアなファイル管理システムなどだ。

資金調達に伴い、Toss Labには新たに4人の取締役が加わった。Ticket Monster創業者でBass Investment創業者のDaniel Shin(ダニエル・シン)氏、カカオの元最高戦略責任者で同じくBass Investment創業者のJoon-yeol Kang(カン・ジョンヨル)氏、SoftBank Ventures AsiaのCEOのJP Lee(JP・リー)氏、SBI Investment KoreaのCEOのJoon-hyo Lee(イ・ジョンホ)氏だ。SendbirdのCEOのJohn S. Kim(ジョン・S・キム)氏とBespin Global創業者のHan-Joo Lee(イ・ハンジョ)氏は、Toss Labの顧問になる。

画像クレジット:Toss Lab

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(翻訳:Kaori Koyama)

遠隔地の同僚との親密さを声で取り戻すデジタル音声メッセージングサービスのYac、Slackが出資しAPIも連携

昨年ローンチしたデジタル音声メッセージングサービスのYacは、従業員にリモートワークのための新しいコミュニケーションツールを提供しようとしている企業の間で定着しつつあり、Slack Fundから新たな資金を調達した。

米国フロリダ州を拠点とするこのスタートアップは当初、Product HuntのMaker Festivalでのピッチから生まれた。デジタルエージェンシーのSoFriendlyによって開発されたYacのデジタル音声メッセージングサービスは、同イベントのスタートアップコンテストで優勝し、Boost VCとその創設者であり、3代目のベンチャーキャピタリストAdam Draper(アダム・ドレイパー)氏の関心を集めた。

Yacは3月に正式にサービスを開始し、最初の1週間で900チームが登録。同社の製品には、1対多のメッセージング、Slackとの統合、改良されたデスクトップアプリが含まれている。こういった機能が、Slack Fundの注目を集めることになった。Slackからの投資は、Yacの創業者であるJustin Mitchell(ジャスティン・ミッチェル)氏が最初に同社に接触してから2年後のことだとミッチェル氏は振り返っている。

電話に変わる通信手段を考えていたミッチェル氏は、起業家のJim Rand(ジム・ランド)氏の紹介でSlackの注目の的となった。ランド氏は、Synervoz Communications(シネルヴォス・コミュニケーションズ)が新しい音声通信アプリケーションにも取り組んでいた人物だ。

ランド氏とミッチェル氏はLinkedInを通じて知り合い、起業家精神の試練や苦難を乗り越えて絆を結んだ。二人が話を続けているうちに、同社は音声アプリケーションをほかのサービスに接続するためのAPIを作っているランド氏が、ミッチェル氏にコラボレーションについてSlackに相談したいかどうかを尋ねたそうだ。

Slackは手を差し伸べ、ミッチェル氏はYacアプリを介してSlackに返事をした。「基本的にすべてのデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること)は、Slackチームからの質問に答えてミッチェル氏が残した一連の音声メッセージで行われた」とミッチェル氏は説明している。

上場企業であるSlackは50万ドル(約5300万円)という少額の投資で参入した。Yac社は現在5000人強のユーザーを抱えており、Slackと同じようにシートごとに課金している。ミッチェル氏は「その資金を使ってSlackの独自のメッセージングサービスとより密接に統合する予定だ」とコメントしている。いくつかのYacの機能は自動的にSlackに統合される予定だ。Slackの通話ボタンをYacのボタンに変更することで、ユーザーは電話の代わりに音声メッセージを配信できるようになる。

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SlackとAtlassianが連携を強め、製品の統合をさらに進める

テック企業間の「パートナーシップ」の多くはプレスリリースの内容を大きく超えることはなく、大して身の入らない共同販売の試みのようなものだったりする。2018年にAtlassianがチャットサービスをSlackに売却したとき、両社は新しいパートナーシップを作っていくと述べた(Atlassianのブログ)。Atlassianがチャットのサービスを終了し、多くの人がその真の意味を懐疑的な目で見ていた。

それ以降、両社のコラボレーションについてはあまり聞こえてこなかった。しかし米国時間8月13日、両社はこれまで取り組んできた深い統合、特にSlack内での統合について発表した。

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この2年間でSlackとAtlassianは11のプロダクトの統合をリリースし、現在では毎月のアクティブユーザー数はおよそ100万人となっている。最も多く使われているのはJiraとの統合で、Atlassianが2020年5月に買収したHalpがそれに続く。

Atlassianは毎月4200万件のJiraの通知をSlackに送っており、その数は増え続けている。

両社の統合の要は、Slackのダイレクトメッセージでも公開チャンネルでもプライベートチャンネルでも、Atlassian製品へのディープリンクをリッチに展開できることだ。この展開の機能はまもなくSlackのデフォルトの機能となり、Atlassianのユーザーになっていなくても展開したものを見られるようになる。

Slackの事業開発および経営企画担当VPであるBrad Armstrong(ブラッド・アームストロング)氏は「現時点では、Jiraのユーザーでない場合、あるいはユーザーであっても認証はしてはいない場合、Jiraのリンクをチャンネルに送信すると単にリンクだけが表示される。展開の利点を活用することはできない。そこで、ログインしているかどうかに関わらず、さらにはAtlassianの顧客であるかどうかに関わらず、展開したものを誰でも見られるよう取り組んでいる」と述べている。

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両社はプロダクト間を容易に切り替えられるようにすることについても緊密に連携してきた。例えばJiraのユーザーであればSlackでリンクをクリックでき、Atlassianのアカウントにログインしていない状態であれば自動でログインされるようになる。両社は連携をさらに進め、Slackから来たユーザーには自動でJiraのアカウントを作成できるようにする。

アームストロング氏は「ユーザーでなくても、リンクをクリックすればSlackからのマッピングでJiraのユーザーアカウントを自動で作成してプロビジョンし認証するので、即座にJiraのユーザーとしてSlackのコンテンツの一部を共同作業で利用できるようになる」と説明する。

このようにして、SlackがAtlassianのプロダクトスイートにアクセスするためのパスポートのようなものになると両社は説明している。そうなれば、新規ユーザーもこれまでよりずっと簡単に使い始めることができるはずだ。

画像クレジット:Atlassian

Atlassianのプロダクトパートナーシップ責任者であるBryant Lee(ブライアント・リー)氏は「おそらく想像がつくと思うが、使い始めることは大変だ。役割やチームの規模など異なる要素がたくさんあるので難しい。認証の問題もあり、検出した情報を展開するには何が実践されているのかを理解する必要がある。しかし我々が見ているのは、単にプロダクトではなく人とプロダクトと実践だ。つまり我々は、人を理解して最適化しようとしている」と述べた。

こうした新たな統合はまもなく公開されるが、さらに両社は共同マーケティングの取り組みも拡大し、まずはSlackを利用したいAtlassianユーザーに対して50%の割引を提供する。

Slackの共同創業者でCEOのStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は「我々はこの2年間、パートナーシップを成功させるための強固な基盤を作ってきた。その結果、ともに顧客獲得に大いに弾みをつけ、影響力のあるプロダクトの統合を成し遂げてきた。SlackとAtlassianの戦略的な提携により、両社は開発者チームに最適なテクノロジースタックになった」と述べている。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

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画像クレジット:Andrei Stanescu / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

WordPress.comが社内コミュニケーションツールのP2をリリース

Automatticの1部門であるWordPress.comが「P2」という新しいプロダクトをリリースした。これは非公開グループの内部コミュニケーションを向上させることを目的としたプロダクトだ。リモートで業務をしているAutomatticは、何年にもわたって社内でP2を使って非同期でコミュニケーションをとってきた。P2は長期間共有する投稿やオンボーディング用のドキュメントなどずっと利用される重要な書類を置いておく場所だ。

P2はWordPress上に構築されている。チームメンバー間で考えを共有するというコンセプトに基づいて大幅にカスタマイズされた、チーム向けWordPressのように思える。今や多くの企業が複数の社内コミュニケーションツールを利用している。P2はそうしたツールの一部を置き換えるものになるかもしれないが、コミュニケーションツールを完全に刷新することを目指しているわけではない。

例えばP2はSlackの競合ではない。リアルタイムのチャットには利用できないからだ。しかしP2を重要な通知の共有に使うことはできる。イントラネットのポータルに置いておくような通知のことだ。

画像クレジット:WordPress.com

P2は長期にわたるプロジェクトにも使うことができる。またチーム専用のP2を作ることもできる。この場合、P2はFacebookのWorkplaceやMicrosoftのYammerの直接の競合になる。非同期コミュニケーションの効果を上げるために、P2にはシンプルなWordPressのブログより便利な機能がいくつかある。

例えば、同僚に「@」付きのメンションで通知を送ったり、投稿をフォローして最新情報を受け取ったりすることができる。チェックリストの作成、PDF書類の埋め込み、重要なポストをホームページの最上部に固定、自分が離れていた間の情報のフォローといった機能もある。新規の投稿やコメント、自分宛のメンションを見るための専用メニューもある。

理論的には従来のWordPressのバックエンドにもアクセスできるものの、P2を離れなくても新規投稿を書いたり既存の投稿を編集したりコメントを付けたりすることができる。新しいブロックエディタで見出しやリスト、埋め込みのビデオやメディアを追加して視覚的に編集することができるようになっている。SquarespaceのエディタやNotionにちょっと似ているもので、参照している、あるいはコメントを付けようとしているコンテンツのすぐ横にある新しいエディタを活用するのは大いに理にかなっている。

常に参照できるコンテンツとして、特定の公開日を設けずコメントを付けられないドキュメントを作成する機能もある。このようなドキュメントはカテゴリーで整理され、全社で簡単に共有できる。社内のポリシーやガイドライン、重要な連絡先情報などのドキュメントに利用できるものだ。この種のドキュメントの管理にはGoogleドキュメントやGoogle Driveの共有フォルダを利用している企業が多い。P2はそうした共有フォルダの代替として情報の主要なリポジトリになる可能性がある。

デフォルトではP2のサイトは非公開だが、自社プロダクトの最新情報をクライアントと共有したい場合や、P2を公開イベントに利用したい場合は、サイトを公開することができる。

WordPressのエコシステムをよく知っている人なら、P2というWordPressのテーマをご存じかもしれない。米国時間8月6日に発表されたP2は新しいプロダクトで、以前のP2のアイデアをさらに推し進めたものだ。Automatticはこのコンセプトをイテレーションし、同社の1300人の従業員で912個もの社内P2サイトを利用してきた。

WordPress.comはP2インスタンスをホストして提供する。誰でもP2を無料で作成し、他の人を招待できる。WordPress.comは将来的には有料サブスクリプションで高度な機能を提供する計画だ。つまり、P2をSaaSプロダクトにしようとしている。その一方で、セルフホスティング可能なオープンソース版も引き続き提供される予定だ。

筆者はP2インスタンスをいくつか立てて使ってみた。デフォルトではWordPressの複雑さが隠されていて良いというのが全体の印象だ。目的が明確なすっきりとしたプロダクトで、全社的なメールとSlackの中で行方不明になりがちな通知の間を埋める存在として特に有効だろう。

画像クレジット:WordPress.com

画像クレジット:Dylan Gillis / Unsplash

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(翻訳:Kaori Koyama)