脳卒中のAI予測診断を救急医療サービス「Smart119」に実装、千葉消防局が実用化へ

脳卒中のAI予測診断を救急医療サービス「Smart119」に実装、千葉消防局が実用化へ

千葉大学発の医療スタートアップSmart119は10月18日、脳卒中AI予測診断アルゴリズムの研究論文がイギリスの科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されたことを発表した。この論文は、急性期の脳卒中にAI予測アルゴリズムを確立し、有効性を実証したことを報告している。

三大疾病の1つである脳卒中は、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、主幹動脈閉塞などが含まれ、突発的に発病する傾向が強い。救命はもちろんのこと、片麻痺などの後遺症を抑えるためにも緊急の治療が求められる。しかし、救急隊員の判断は医療機関と共有されず、病院に到着してからの診断によって病状が特定されるのが現状だ。

そこでSmart119は、救急隊員の判断の精度を高め、専門医や設備を持つ医療機関での的確で迅速な治療を実現するために、救急隊と医療機関とで診断結果が共有できるAI予測診断を開発した。これは、容態、疾患履歴、気象状況など、患者の個別の背景条件から脳卒中の症状を診断できる。

実験では、千葉市内の医療機関と千葉市消防局の協力で、脳卒中の可能性のある救急患者約1500人の、容態、年齢、性別、気象状況のデータを収集。そのうち約1200人分(80%)のデータは機械学習の分類アルゴリズムモデルの設計に利用され、残る約300人(20%)のデータはテストに用いられた。分類アルゴリズムをテスト用300人のデータで検証した結果、評価指標AUC(Area under the curve)値で高い精度(0.980)が示された(AUCは、分類のアルゴリズムの精度を示す曲線値。閾値「0.8」を上回ることで高精度とされる)。

このアルゴリズムは、本年度中に緊急医療情報サービス「Smart119」に実装される予定とのこと。これを導入している千葉市消防局の救急車に装備されているタブレット端末アプリで利用できるようになる。

掲載した画面写真はデモ版のため、正式リリースでは変更になる場合がある

救急隊員は、患者に脳卒中の可能性がある場合に「脳卒中診断ボタン」をタップし、診断専用ページで患者の容態を選択肢に従って入力する。すると、AI予測診断で病状が確定し、受け入れ先の自動選択とともに、受け入れ要請が実施される。受け入れ先病院では、この情報を基に、救急車が到着する前に専門医の召集や緊急手術に関する準備を整えることができる。

このアルゴリズムは、他の病状への応用も期待されている。またこれは、Smart119により特許申請がなされている。

現役の救急集中治療医師が設立、緊急医療の改善に取り組む千葉大発医療スタートアップSmart119が約3億円調達

現役の救急集中治療医師が設立、緊急医療の改善に取り組む千葉大発医療スタートアップ「Smart119」が約3億円を調達

現役の救急集中治療医師が設立し、テクノロジーで緊急医療の改善に取り組む千葉大学発医療スタートアップSmart119(スマートイイチイチキュウ)は8月10日、第三者割当増資による総額3億675万円の資金調達を発表した。引受先は、ニッセイ・キャピタル、三井住友海上キャピタル、Sony Innovation Fund(ソニーグループCVC)、PKSHA SPARX アルゴリズム1号(PKSHA Technology Capital/スパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメント)。

Smart119は、音声認識とAIを活用した救急医療支援システム「Smart119」のほか、緊急時医師集合要請システム「ACES」、災害時の医師の招集や最適な人員配置を支援する病院初期対応システム「Smart:DR」(スマートディーアール。Smart Disaster Response。Android版iOS版)など、「急性期医療の問題を解決する」SaaS型ソリューションの開発・運用を行っている。

Smart119は、2020年7月から千葉市消防局において本格運用を開始。Smart:DRなどの病院向けソリューションは、大阪急性期・総合医療センター、国立国際医療研究センター、りんくう総合医療センター、島根大学病院、千葉大学病院などに導入されている。

今回調達した資金は、PKSHA Technologyの知見を取り入れた「急性期医療分野における予測診断アルゴリズムなどの研究開発」、日本生命と三井住友海上グループのネットワークを活用した自治体や医療機関への営業活動の促進にあてられるという。

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タグ:医療 / 治療(用語)自然災害 / 火災(用語)Smart119(企業・サービス)千葉大学(組織)BCP / 事業継続計画(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

医療機関用災害対策システム「Smart:DR」を手がけるSmart119が災害時の病院初期対応アプリを公開

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テクノロジーによる緊急医療の改善に取り組む千葉大学発の医療スタートアップSmart119(スマートイチイチキュウ)は、医療機関用災害対策システム「Smart:DR」(スマートディーアール)をスマートフォンやタブレットに対応させた「Smart:DRアプリ」を開発。7月15日、Android版iOS版を公開した。

Smart:DRは、災害やテロの発生時に「スタッフの安否確認」「集合要請」をスムーズに行い、医療機関や企業が被害を最小限に抑え、BCP(業務継続計画)策定による事業継続や復旧、傷病者の救命を支援するシステム。Smart119によると、同システムを導入した医療機関からの要望に応え、アプリ版を開発したという。

アプリ版では、受信したメッセージをより明瞭に把握できるほか、災害発生地点の表示や、健康状態の報告も従来より容易になっているそうだ。また、新型コロナウイルスのワクチン接種状況や副反応発生の有無などの情報収集も可能で、院内クラスター発生抑止や職員の健康管理に貢献するとしている。

主な特徴は次のとおり。

Smart:DRの特徴

  • スタッフへの緊急連絡、安否確認
  • 緊急時の集合状況をリアルタイムに把握でき、最適な人員配置を支援
  • 医学的見地に基づいた健康管理情報を自動集計
  • 返信は、ワンクリックで完了でき、ログイン不要
  • 掲示板機能を有し、平時においても活用できる

アプリ版を使うことで「医療従事者が通常時からSmart:DRを積極的に活用し、緊急時に、スムーズに危機管理体制へ参加」することが期待されるとSmart119は話している。

2018年5月設立のSmart119は、「安心できる未来医療を創造する」を目指し、現役救急医が設立した千葉大学医学部発のスタートアップ企業。Smart:DRをはじめ、音声認識とAIを活用した救急医療支援システム「Smart119」、緊急時医師集合要請システム「ACES」の開発・運用も行っている。また千葉県千葉市において、日本医療研究開発機構(AMED)の救急医療に関する研究開発事業を実施した。

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