SmartHR子会社の会議改善クラウド「SmartMeeting」正式版提供開始

SmartHR子会社のSmartMeetingが、会議改善クラウドサービス「SmartMeeting」のクローズドベータ版リリースを発表したのは、約1年前のことだ。8月26日、ついにその正式版提供がスタートする。

SmartMeetingのミッションは「無駄な会議を減らして良い会議を増やし、労働生産性を向上させる」こと。SmartMeeting代表取締役の佐々木真氏は「社会人の誰もがやる会議だが、みんな満足していない。一方で解決策がなく、本を読んだり、研修を受けたりするぐらいしか打ち手がなかった」と述べ、「会議の課題に特化したサービスとしてツールを提供して、生産性向上を支援したい」と話している。

企業や部署により会議のバリュエーションはさまざまだが、「大きな課題は3つ」と佐々木氏は言う。それは「会議数が多い/長い」「会議の質が低い」「会議後の情報管理が大変」という点だ。

「優秀な人はSmartMeetingがなくても、本を読んだり研修に参加したりするだけで良い会議ができるようになるが、そういう人はごく一部。会議のレベルは、参加者の中でできない方の人に合っていくので、落差があればスキルの高い方の人にもストレスがかかり、生産性が下がる。それをならすのが、SmartMeetingの最初の大きな役割だ」(佐々木氏)

良い会議をするために、最低限やらなければならないことは、アジェンダを用意する、情報を共有するといった準備の部分だ。ただし、当たり前のように見えるそのことも、場が用意されていなければ、カレンダーやドキュメントツールなど、あちこちのツールにバラバラに情報が格納され、情報は分散してしまう。

「準備が会議のコア。誰でも良い会議をするための準備ができる、最低限整う、という機能が共通のフォーマットで用意されているのが、SmartMeetingの1つ目の大きな価値。いい会議のためには準備が欠かせないことはみんな分かっているけれども、ダイエットと同じで『分かっているけどできない』のが実情。無理に人力でやろうとしても破綻するので、SaaSで仕組み化したものが、このプロダクトだ」(佐々木氏)

会議の準備・記録・振り返りをクラウドでサポート

SmartMeetingは、会議前の準備、会議中の記録、会議後の振り返りが行えるクラウドサービスだ。その機能をもう少し詳しく見ていこう。まずは「会議準備機能」だ。

会議の詳細を設定・閲覧する画面には、フォーマットとして「会議の目的」「準備・進行・議事録担当者の役割設定」「アジェンダ」などの入力欄が既にあり、ファイルの添付も可能。テンプレートを使って効率よく記載することもできる。リマインダーによる通知もあるので、会議準備にどれくらいかかるかを逆算して、あらかじめセットしておけば「直前に思い出して準備が間に合わない」ということもなくなる。

また会議中には議事録をリアルタイムで共同編集することもでき、参加者全員がその場で確認しながら記録を残すことが可能。最近では、ボイスチャットと文字起こしによる、議事録の自動作成機能も追加された。議事録も同じシステムに保管されるため、振り返りも容易だ。

また会議の質の可視化もできるように、会議後には参加者によるレビューが匿名で入力可能。フィードバックではレビューの平均点と、良かった点、改善点も確認できる。

参加者のレビューだけでなく、次へのアクションにつなげる機能としては、「決定事項」の入力・管理ができるというのも特徴的だ。「会議はものを決める場、というのがSmartMeetingのコンセプト。情報共有だけなら会議の場でやる必要はない」(佐々木氏)というプロダクトの思想が盛り込まれている部分である。

決定事項のうち、次のアクションが必要なものについては、担当者と締切も同じ画面内で設定できる。さらに決定事項だけを一覧で管理することもできる。タスクが完了すれば、一覧画面からチェックを入れればよい。クローズドベータ版の利用企業からはこの一覧ページが好評だと佐々木氏はいう。「決まったことをやり切る。ここまでやってはじめて、会議は意味がある」(佐々木氏)

決定事項だけでなく、議事録を一覧できるページも用意されており、会議名や開催日時だけでなく、タグで検索することも可能となっている。「異動や入社などで後から参加した人にも『このタグの会議の議事録だけ見ておいて』と言えば、情報共有がスムーズになる」(佐々木氏)

振り返りという点では、会議のコストと時間を可視化する「会議レポート機能」も、会議に特化したクラウドサービスとして特徴的な機能だろう。

ここでは個人、グループ、全社の会議コストを参加者の人件費と時間から自動計算し、表示する。実は個別の会議詳細画面には会議中、リアルタイムで「残り時間タイマー」が表示されているのだが、会議レポート画面ではコストだけでなく、予定より早く終わった会議の「削減コスト」も見ることができる。対象となる期間は選択でき、グラフで時系列での変化も把握可能。前月・前年などとの比較もできる。

管理者向けには「業務レポート機能」も用意されている。会議自体の内訳以外に、会議とそれ以外の業務の時間の内訳もグラフで可視化され、部署ごと、個人ごとに忙しさを把握することができる。

「特にリモートワークが多くなっている今は、それぞれが忙しいのか暇なのか、管理者が把握しづらい。ここでそれを可視化することで、業務の偏りが調整できるようになり、従業員のヘルスチェックにも役立つ」(佐々木氏)

将来的には個人・部署だけでなく、タグを活用してプロジェクトごとに「会議に何時間かけ、いくら利益を生んだか」まで可視化したいという佐々木氏。「見える化しなければ始まらないが、会議の可視化は今まで意外と語られてこなかった。現状の可視化から業務の最適化につなげることができるようになる」(佐々木氏)

そのほかにも「クローズドベータ版ユーザーから地味に好評」(佐々木氏)という機能が、「日程調整機能」だ。SmartMeetingでは、GoogleカレンダーやOffice 365のカレンダーの情報を元に、会議の日程調整を自動化する。

日程調整は社内だけでなく、社外の人とも可能だ。空き時間枠が分かる専用ページが生成されるので、社外の相手に送信し、相手が都合の良い時間を選択するだけで調整が完了する。

「人がやらなくていいことはできるだけサービスで吸収する」

「無駄な会議はなぜ起こるか、なぜ会議でストレスが生まれるのかを、ずっと考えている。それがSmartMeetingの最大のテーマ」という佐々木氏。「正解はないけれども」と断りつつ、その課題の原因のひとつとして「情報の非対称性」を挙げる。

「会議では参加者の情報レベルをそろえる必要があって、それができていないと無駄会議になる。期待値や前提がバラバラではいい会議ができないし、そこを埋める作業や説明から会議が始まってしまう」(佐々木氏)

事前の会議準備の重要性を佐々木氏は、何度も強調する。「米Amazonでは会議の最初の10分は資料の読み込み時間に充てられているというけれど、これも情報レベルや認識をそろえるためのもの。ただし、できれば最初の10分じゃなくて、事前にやった方がいい。SmartMeetingはそのための場だ」(佐々木氏)

佐々木氏は事前の準備に加えて、会議で決まったことの共有や、何度も会議を重ねた後のレポートもきちんと見える化されるのが、SmartMeetingの大きなポイントと話している。それから可視化のほかにもうひとつ、「人がやらなくてもいいことは、できるだけSmartMeetingで吸収する」という考え方も示している。

「話す、意見を出す、ブレストする、決めるというのが人の価値。日程調整や議事録作成は機械がやればいい」(佐々木氏)

2019年10月に公開したクローズドベータ版は500社からの事前登録があり、中でも会議の課題が特に大きい上場企業や従業員数の多い企業に導入された。「入社したばかりの新卒社員でも、全てを手取り足取り教えることなく、会議準備ができる」など、利用企業からの評価も高いという。

今後のアップデートでは、発話を分析することで、発言した人を可視化し、発言の偏りを減らすことや不要な会議への参加を抑える機能の追加も計画しているという。

「発言しないから出席しない、ということをエビデンスに基づいて言えるようになる。効率化と同時に、数字を元に会議を科学することを、SmartMeetingでは目指している。無駄な会議をどれくらい削減できたか、誰が発言しているか、誰が参加すると良い会議になるかをファクトベースでやれるのが、SmartMeetingのいいところ。これを本当にやっているサービスは、日本でも海外でもまだないと思う」(佐々木氏)

「手本がないので、開発ではものすごく試行錯誤した。何からやったらいいか、仮説検証を繰り返して、初期のお客さんに使ってもらい、やっと正式ローンチにこぎ着けた」と佐々木氏は言うが、同時にこのジャンルを「未開のマーケット」と述べ、「会議の悩みは世界共通。日本で行けたら世界にも行ける」とも語っている。

SmartMeetingでは、会議に関連した「前後」の外部ツールとの連携も広げていきたいとしている。既に一部のツールとの連携は始まっているが、カレンダー、ZoomやTeamsといったウェブ会議ツール、Slackなどのチャットツールをはじめ、営業やマーケティング、エンジニアやデザイナーが使うツールも含めて、会議前・会議後で使うサービスとシームレスにつながるように連携を検討していくという。

「さらに将来は、『ファシリテーション講座』のような研修のリプレイスもできるのではと考えている。アルゴリズムとAIで『良い会議』『悪い会議』を実践的に可視化したい。個人的には専用のマイクとスピーカーが作りたい。会議に際して『人間はしゃべるだけでいい』という状況を、いずれハードでも実現できればと考えている。会議のレベルを上げること、そのレベルを定着させることを仕組み化できるのはSaaSの役割。ポテンシャルのある領域だ」(佐々木氏)

SmartHRは8月24日にも、人材データベース構築サービスの新会社Looper設立を発表している。SmartHRでは、「より効率よく業務を行えるようなサービスを、企業を取り巻くさまざまな領域で展開することを目指す」と各子会社の動きについて説明している。

SmartHR Insuranceが確定拠出型年金事業「bowl」から撤退

人事・労務のクラウドサービスを手掛けるSmartHRは、子会社であるSmartHR Insuranceが2019年中にローンチすると表明していた確定拠出型年金事業「bowl」から撤退することを明らかにした。開発チームはすでに解散している。

共同創業者の1人である上谷真之氏も自身のTwitterで事業撤退と自身の退任ついて言及している。

SmartHR Insurancは2019年1月にSmartHRの子会社として設立され、SmartHRのCEOである宮田昇始氏とKyashでVP of Productを務めた経験を持つ重松泰斗氏の2人が代表取締役を務め、確定拠出年金や保険を駆使して「お金の不安」を解消し、いわゆる老後2000万円問題の解決を目指すことをミッションとしていた。撤退した事業名であるbowlを含む「https://www.bowl-app.com」のウェブサイトはすでにアクセスできなくなっているが、代表の重松氏を含めたメンバーは新しい事業に再チャレンジするとのこと。今後の同社の展開に期待したい。

関連記事:労務管理のSmartHRが保険領域に参入、年内に第一弾プロダクト

【10月31日まで】TC Tokyo 2019前売りチケット販売中、SmartHR宮田氏やOYO LIFE山本氏の登壇が決定

TechCrunch Japanは、11月15日、16日に国内最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2019」を東京・渋谷ヒカリエで開催する。ここでは10月31日現在で決定しているセッション内容とタイムスケジュールの一部、スタートアップバトルの審査員をお知らせしたい。

新たにシリーズCで60億円超えの資金を調達したの宮田昇始氏やソフトバンクグループの住宅シェアサービスOYO LIFE Japanでバイスプレジデントを務める山本竜馬氏、10月30日にレイターステージのスタートアップを支援する新ファンド「千葉道場ファンド」の設立を発表し、代表パートナーに就任した千葉功太郎氏、インキュベイトファンドの代表パートナーを務める村田祐二氏の登壇が確定した。

TechCrunch Tokyo 2019 11月14日(木)

9:00-9:10 TechCrunch Japanご挨拶
9:10-9:40 Fireside Chat

最新ガジェットを試し購入できるリテール・アズ・ア・サービスb8taの戦略
Vibhu Norby氏(b8ta CEO)

9:40-10:10 Fireside Chat

自動運転OS「Autoware」が作り出す未来
加藤真平氏(ティアフォー取締役会長兼CTO)

10:30-11:10 Startup Battleファーストラウンド・グループA(5社)

【審査員】
五嶋一人氏(iSGS Investment Works代表パートナー)
西條晋一氏(XTech代表取締役CEO)
堤 達生氏(STRIVE代表パートナー)

11:20-12:00 Startup Battleファーストラウンド・グループB(5社)

【審査員】
有安伸宏氏(起業家・エンジェル投資家)
今野 穣氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー)
新 和博氏(W Ventures共同パートナー)

12:20-13:00 TC School Special Edition(Sponsored by engage)

地方で起業するということ

岡橋寛明氏(みやこキャピタル代表取締役パートナー)
川原大樹氏(KURASERU代表取締役CEO)
近藤洋祐氏(電脳交通代表取締役社長)
寺田輝之氏(エンジャパン執行役員)

13:10-13:40 Fireside Chat

後日発表

14:00-14:30 Fireside Chat

後日発表

14:30-15:00 Fireside Chat

シリーズCで60億円超を調達、SmartHRの今後の戦略
宮田昇始氏(SmartHR代表取締役)

15:10-15:50 Panel Discussion

ボイスメディアの過去、現在、未来
緒方憲太郎氏(Voicy代表取締役CEO)
Matthew Hartman氏(Betaworks Venturesパートナー)

16:00-16:40 Startup Battleファーストラウンド・グループC(5社)

【審査員】
榊原健太郎氏(サムライインキュベート代表取締役)
深澤優壽氏(Eight Roads Ventures Japanプリンシパル)
山岸広太郎氏(慶応イノベーション・イニシアティブ代表取締役社長)

16:50-17:30 Startup Battleファーストラウンド・グループD(5社)

【審査員】
堀 新一郎氏(YJ Capital代表取締役社長)
松本真尚氏(WiLジェネラルパートナー)
宮田拓弥氏(Scrum Venturesジェネラルパートナー)

17:30-18:00 Startup Battle

会場投票

18:00-18:40 Fireside Chat
Uberの日本戦略、そして自動運転と空飛ぶタクシーはどうなる?
Émilie Potvin氏(Uber APAC Public Policy & Government Relations担当ディレクター)
18:40-19:00 Startup Battleファイナルラウンド通過発表

TechCrunch Tokyo 2019 11月15日(金)

9:00-9:10 TechCrunch Japanご挨拶
9:10-9:40 Fireside Chat

住宅シェアリングのOYO LIFE、日本での戦い方
山本竜馬氏
(OYO LIFE Japan Vice President of Growth)

9:40-10:10 Fireside Chat

正確な位置情報を3単語で表現する「住所革命」でできること
Chris Sheldrick氏(what3words CEO)

10:30-11:00 Fireside Chat

5Gがもたらすロボティクス新時代
沢登哲也氏(コネクテッドロボティクス代表取締役/CEO)

11:00-11:30 Fireside Chat

後日発表

11:50-12:20 Fireside Chat

後日発表

12:40-13:30 Product Update

山本 俊氏(GVA TECH代表取締役)
菱木 豊氏(inaho代表取締役CEO)
内山智晴氏(Yper代表取締役社長)
小川 嶺氏(タイミー代表取締役)
神林 隆氏(Eco-Pork代表取締役)
流郷綾乃氏(ムスカ代表取締役CEO)

13:40-14:20 Panel Discussion

2019年のスタートアップ投資を振り返る
千葉功太郎氏(Drone Fund代表パートナー/千葉道場ファンドジェネラルパートナー)
村田祐介氏(インキュベイトファンドジェネラルパートナー)

14:40-15:10 Fireside Chat

トヨタ自動運転開発子会社が開発する「世界で最も安全な自動運転車」とは?
James Kuffner氏(TRI-AD CEO)

15:10-15:40 Fireside Chat

電動キックボードのLimeが規制大国・日本に上陸する理由
David Richter氏(Lime CBO)

16:00-17:20 Startup Battleファイナルラウンド(6社)

【審査員】
赤坂 優氏(エンジェル投資家/エウレカ共同創業者)
千葉功太郎氏(Drone Fund代表パートナー/千葉道場ファンドジェネラルパートナー)
松本 大氏(マネックスグループ取締役会長)
山本康正氏(DNXベンチャーズインダストリーパートナー)
百合本 安彦氏(グローバルブレイン代表取締役社⻑)

17:50-18:20 Startup Battle授賞式
18:20-19:50 Meetup

TechCrunch Tokyoでは現在、一般来場者向けの「前売りチケット」(3万2000円)、設立3年未満(2016年10月以降に設立)のスタートアップ企業の経営者や従業員向けの「スタートアップチケット」(1万8000円)、同じく設立3年未満のスタートアップが対象でデモブースの出展と来場者チケット2枚ぶんが付属する「スタートアップデモブースチケット」(3万5000円)、学生向けチケット(1万8000円)、5名以上の一括申し込みで購入できる「団体チケット」(2万円/枚)、会場内のAホール前列の指定席と専用の控え室を利用できる「VIPチケット」(10万円)を発売中だ。なお、学生チケットでの入場の際は学生証の提示が必要となる。

前売りチケットとスタートアップデモブースチケットの販売は本日10月31日まで。11月1日からは一般チケット(4万5000円)の販売に切り替わる。

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SmartHRに「ラクラク分析レポート」機能追加、人事情報の可視化を簡単に

HRテックスタートアップのSmartHRは9月2日、同社のクラウド人事ソフト「SmartHR」に登録された人事データベースの情報をもとに、従業員や組織の統計値を集計・可視化できる「ラクラク分析レポート」機能をオプションとして追加し、公開した。

SmartHRには、入社や人事労務管理に必要な情報が登録され、常に更新されるので、最新の人事データが蓄積されていく。今回公開された新機能・ラクラク分析レポートは、この人事データベースを活用して統計値をレポートとして表示する仕組み。社内で担当ごとに散在する人事データを取りまとめる必要がなく、Excel職人がいなくても、またBIツールがなくても、データ抽出が簡単に行える。

レポートにできる情報は以下の通りだ。

社員数推移
入退社数
雇用形態別の割合
平均年齢、平均勤続年数
任意で登録されているカスタム項目

(以下は9月以降、順次対応予定)
月間労働/残業時間数
平均有給休暇取得日数
人件費や平均給与の推移
離職率

SmartHRは4月に「カスタム社員名簿」機能を追加、人事労務担当だけでなく、必要な部門で社員の必要な情報を閲覧できる仕組みとして提供している。今回のラクラク分析レポートも、グラフがまとめられたレポートのアクセス範囲や共有ユーザーの設定が行えるので、人事だけでなく、経理・広報・情報システム部門や経営企画など、社内の幅広いユーザーの活用が想定されている。

SmartHRでは同機能により、組織や従業員の状態を誰でも直感的な操作で可視化できるようにし、煩雑なデータ管理・活用の課題を解消、戦略的な人材活用や組織改革のアイデア実現を支援するとしている。また今後も追加オプション機能の開発と、他サービスとの連携により、SmartHRのプラットフォーム戦略を推進するという。

SmartHRがシリーズCラウンドで総額61.5億円を国内外の投資家から調達

写真左からシニフィアン共同代表 朝倉祐介氏、小林賢治氏、SmartHR CFO玉木諒氏、代表取締役 宮田昇始氏、ALL STAR SAAS FUND 前田ヒロ氏、シニフィアン共同代表 村上誠典氏

クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRは7月22日、シリーズCラウンドで総額約61.5億円の資金調達を決定したことを明らかにした。今回の調達額のうち、約55億円が第三者割当増資、約6.5億円が新株予約権付社債。今回の調達でSmartHRの累計調達額は約82億円となる。

本ラウンドの出資者は、朝倉祐介氏、村上誠典氏、小林賢治氏の3人が設立したシニフィアンの200億円規模の新ファンド「THE FUND」、BEENEXTを設立した前田ヒロ氏が率いるALL STAR SAAS FUND、サンフランシスコを拠点とするLight Street Capitalほか2社が新規投資家として参加。既存株主からはCoral Capitalが運用するSmartHR専用ファンドの「SmartHR SPV」とWiL、BEENEXTが参加している。THE FUNDとALL STAR SAAS FUNDについては、いずれもSmartHRが出資1号案件となる。

SmartHRでは、外部サービスとの連携強化やオプション機能によるプラットフォーム化構想を2018年に打ち出し、「雇用契約機能」や「カスタム社員名簿機能」をリリースしてきた。2019年秋には従業員情報を分析する「ラクラク人事レポート機能」もリリース予定だ。

また今年1月に保険領域の新子会社、SmartHR Insurance設立を発表。確定拠出年金や保険を駆使して、従業員向けにお金の不安の課題解決を目指している。さらに先週7月16日には子会社SmartMeetingにより、会議の課題を改善するためのクラウドサービス「SmartMeeting」も発表したばかりだ。

SmartHR代表取締役の宮田昇始氏は、SmartHRをはじめ、これらのサービスはいずれも「企業の従業員の働き方の課題を解消するという共通点がある」と語っている。

今回の調達資金は、SmartHRの開発費、人材採用・人件費、マーケティング費用に投資するという。SmartHR代表取締役の宮田昇始氏は「開発・人材とマーケティング半々の割合で投資していく。マーケティングに関しては顕在化している顧客だけでなく、潜在層にもアプローチしたい。紙・はんこ・役所に行くことが当たり前だという企業でも、サービスを知ってもらえさえすれば、導入が決まっている状況。これらの手続きをまだ課題と感じていない顧客に啓蒙したい」という。

今回シリーズCラウンドでもあり、グロースファンドともパートナーシップを組むということで、そろそろ気になってくるのがIPOの時期だ。SmartHR CFOの玉木諒氏は「確定的な時期は申し上げられない」としているが、「IPOは企業が継続的に成長するための重要な手段。価値を最大化できる時期を見て公開も目指したい」と答えていた。

「SmartHR」が「WOVN.io」と連携、外国人従業員増視野に5カ国語対応へ

クラウド人事ソフトのSmartHRおよびウェブ・アプリの多言語化サービスを提供するWovn Technologies(ウォーブンテクノロジーズ)は7月17日、「SmartHR」と「WOVN.io」を連携し、10月中旬から5カ国語でSmartHRの従業員画面が利用できる翻訳機能を公開すると発表した。

SmartHRは入社手続きや雇用契約、年末調整などの労務手続きのペーパーレス化を可能にするクラウド人事労務ソフト。入社手続きに必要な情報や年末調整などの入力を従業員のアカウントで行い、労務に関する作業を効率化することができる。

日本で働く外国人労働者は2018年10月末に146万人を数え、外国人を雇用する事業所は約21万6000カ所に上る。4月1日に施行された改正出入国管理法により、その数はさらに増加が見込まれている。今回の連携では、既存の1言語のサイト・アプリがあれば多言語化が可能なWOVN.ioの機能を利用し、SmartHRの従業員入力画面を多言語化。外国人従業員が日本語や労務手続きの専門用語に戸惑うことなく、母国語で年末調整や入社手続きをスムーズに行えるよう、支援する。

多言語化対応が適用されるSmartHRの画面は、雇用契約、入社手続き、年末調整の従業員用入力画面で、書類として出力する場合は日本語になる。翻訳機能はSmartHRのスタンダードプラン以上のユーザー企業が利用できる。対応言語は英語、中国語(繁体字)、中国語(簡体字)、韓国語、ベトナム語の各言語だ。

SmartHR子会社が会議改善のためのクラウドサービスをクローズドβ版で公開、事前登録を開始

左から、宮田昇始氏、佐々木真氏

SmartHR子会社のSmartMeetingは7月16日、会議を改善するためのクラウドサービス「SmartMeeting」のクローズドβ版を公開し、事前利用登録を開始したと発表。このクローズドβ版は、G Suite(Googleカレンダー)とSlack上での提供となる。

SmartMeetingの代表取締役は、佐々木真氏、ならびにSmartHR代表取締役の宮田昇始氏。

佐々木氏は、リクルートマーケティングパートナーズではスタディサプリ、メタップスではタイムバンクなど、数々の新規事業開発を経験してきた人物だ。同氏は1月にSmartHRに入社。4月にSmartMeetingの代表に就任し、今回は日本中の企業の会議の改善のため、SmartMeetingの開発を進めている。

なぜSmartMeetingを開発しているのか。佐々木氏いわく、それは「会議数が多い」、「会議が時間通りに終わらない」、「会議をしたのに決まらない」などの課題を抱えている企業が多く存在するから。同社が様々な企業にヒアリングをした結果、9割以上の会社が会議について課題を持っていたという。

そして、パーソル総合研究所のデータによると、無駄な会議による企業の損失は年間15億円。社内会議・打ち合わせの時間はメンバー層で週に3時間を超え、係長級で6時間、部長級になると8.6時間になるそうだ。

佐々木氏自身も、過去に「上司が会議に入りすぎていて、相談ができない、会えない」ことを経験し、会議に対する課題感を感じていた。SmartHRでも「従業員数が100人を越えてきてから会議が増えすぎているという課題が出てきた」ため、もともとは他サービスの事業を検討していたが、SmartMeetingを開発するに至った。

SmartMeetingのミッションは「ムダな会議を減らして良い会議を増やし、労働生産性を向上させる」こと。2019年6月にはSmartMeetingのクローズドα版の事前登録を開始し、2日間で150社以上からの申し込みがあったという。

SmartMeetingがどのようなサービスなのかについて、まだ多くは明かされていないが、佐々木氏いわく、「会議の準備」を効率化することができたりする。一般公開は9月頃を予定しているため、より具体的な中身は今秋には知ることができそうだ。

【FounderStory #4】SmartHR宮田氏が「労務管理」領域からスタートした“社会の非合理を、ハックする”

Founder Story #4
SmartHR
代表取締役
宮田昇始
Shoji Miyata

TechCrunch Japanでは起業家の「原体験」に焦点を当てた、「Founder Story」シリーズを展開している。スタートアップ起業家はどのような社会課題を解決していくため、または世の中をどのように変えていくため、「起業」という選択肢を選んだのだろうか。普段のニュース記事とは異なるカタチで、起業家たちの物語を「図鑑」のように記録として残していきたいと思っている。今回の主人公はSmartHRで代表取締役を務める宮田昇始氏だ。

宮田昇始
SmartHR 代表取締役
熊本県で生まれ育ち、大学進学を機に上京。ITベンチャー、フリーランスなどを経て、医療系Webサイト開発会社でWebディレクターを務める。2013年にSmartHRの前身となるKUFUを設立。2015年にはTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで最優秀賞を受賞。今なお事業を急成長させ続けている。
Interviewer:Daisuke Kikuchi
TechCrunch Japan 編集記者
東京生まれで米国カリフォルニア州サンディエゴ育ち。英字新聞を発行する新聞社で政治・社会を担当の記者として活動後、2018年よりTechCrunch Japanに加入。

中高生時代から強かった「古い慣習」への反骨心

「起業当初は、プロダクトの作り方というものをまったくわかっていなかった」

――株式会社SmartHR代表取締役、宮田昇始氏は創業からの迷走期をそう振り返る。

「自分たちに何ができるか」を起点として2つのサービスを作り、いずれも失敗。次に「ユーザーのニーズ」に目を向け、いくつものアイデアを出したが、「自分たちがやる意味」を打ち出せるものが見つからない。しかし、自身の生活での実体験から社会課題を発見したとき、ようやくヒットプロダクト「SmartHR」が生まれたのだという。

SmartHRとは「クラウド人事労務ソフト」。雇用契約や入社手続きをペーパーレスで行い、従業員情報を自動で蓄積して一元管理する。年末調整の手続きやWeb給与明細の発行機能も備える。つまりは、「面倒な労務関連業務を楽にする」サービスだ。

利用企業は中小から大手まで2万社を超え、労務管理クラウドとしてシェアNo.1を誇る。

熊本県で生まれ育った宮田氏。中学・高校時代は私立の進学校に通い、寮生活を送っていた。寮の規則は厳しく、夜は早い時間に電源が落とされ、外出も当然禁止。そこで仲間たちと画策し、トイレの換気扇から電源を引っ張ってきてTVを観たり、カーテンをつなぎ合わせて雨どいをつたって抜け出したりしていたという。


宮田氏その頃から、古い規則や慣習に縛られるのがすごく嫌だったんですよね。そこを皆で工夫してハックするのが楽しかった。今も当社で掲げるキャッチフレーズは『社会の非合理を、ハックする』です

難病に苦しんで決意した「好きなことをして生きていく」

大学進学を機に上京。ITベンチャー、フリーランスなどを経て、医療系Webサイト開発会社でWebディレクターを務めていた27歳のとき、のちの起業につながる転機が訪れた。
「10万人に1人」と言われる難病「ハント症候群」を発症。三半規管に水ぼうそうができ、顔面まひ、聴覚障害、味覚障害などを引き起こす病だ。医師からは「完治の見込みは20%」と宣告された。


宮田氏自分の将来どうなっていくのか……って真剣に考えたとき、今の会社で働くよりも好きなことをやりたいと思った。この頃には、ずっとインターネット業界で食っていくという意志を固めていたので、『自分たちのWebサービスをつくろう』と。現・副社長兼CIOの内藤研介を誘って、2013年に立ち上げたのが株式会社KUFUです


社名の由来は、ジャパニーズヒップホップの先駆者Rhymesterの楽曲「K.U.F.U.」。メンバーから提案されたときはピンと来なかったが、歌詞の意味を知って納得した。


宮田氏K.U.F.U.とはそのまま『工夫』。持ってない奴が持っている奴に勝つための武器は工夫だ、という意味の歌詞なんです。下剋上感、スタートアップ感があっていいな、と思って。メルカリさんの社名が最初はコウゾウだったように、一見意味のなさそうな社名でも、サービスをヒットさせて社名を変えるのがかっこいいと思ってたんですよね(笑)


しかし、創業からしばらくは苦戦が続く。

まずは自分たちが得意とする領域から着手し、Webクリエイターと企業のマッチングサイトを立ち上げた。採用成立時の仲介手数料で稼ぐことを目論んだが、双方のニーズが合わずマッチングが成立しない。1年ほどで閉鎖を決めた

次に生み出したのは、法人向けクラウドサービスを比較できるクチコミサイト。滑り出しは順調に見えたが、3ヵ月ほどで成長が止まってしまう。何がだめなのか、わからなかった。

このタイミングで、スタートアップ育成を目的としたアクセラレータープログラム「Open Network Lab」に応募した。そこで受けた指摘により、宮田氏は自らの課題に気付く。


宮田氏『ユーザーのニーズに刺さっていないのではないか。ユーザーヒアリングから始めなさい』と言われて。そこで初めてユーザーの声を探り始めたら、ニーズがない、というか『あれば使ってみるけど、これで意思決定はしない』というものだったことがわかったんです。これまで自分たちは机上の空論だけでサービスをつくってたんだな、と思い知らされました

自分たちがやるからこそ意味があることって、何だ?

それからは「ユーザーニーズ」に目を向け、世の中の課題を探った。しかし、課題とソリューションを思いついても、仮説を立てて検証してみると「やはりだめだ」という結論に至るケースが続く。つくってみたものの、世に出すことなく終わったサービスは10個に及ぶ。


宮田氏中には『まぁまぁいけそう』というものもあったんです。でも、結果的にやらなかった。
当時、アイデアを思いつくと、メンターのような存在の方々に壁打ちをさせてもらっていたんですが『それ、あなたたちがやる意味は何?』と問われて答えられなかったからです


それでも、試行錯誤を繰り返すうちに、社会課題への嗅覚は鋭くなっていった。「誰か、何か困っていることはないか」――。そしてある日、宮田氏は一つの「可能性」を嗅ぎ付ける。

それは自宅でのこと。当時、妊娠9ヵ月だった妻が産休・育休の申請手続きをしていた。テーブルに広げられたたくさんの書類をのぞき込むと、いかにも複雑そうな内容。妻はそれらを一つひとつ手書きで記入している。

「社会保険の手続きって、どんな企業もやっている。かなり面倒な作業なのに、これを便利にするソリューションって聞いたことないな」。これは普遍的な課題だ、と感じた。

そして、宮田氏はこのジャンルに「自分がやる意味」を見出す。


宮田氏難病を患って2ヵ月間働けなかったとき、社会保険制度の一つである傷病手当金を受給した。このおかけで生活費を確保でき、リハビリに専念して完治できたんです。社会保険制度のありがたみを知っている自分が、このジャンルの課題を解決する――そんなストーリーは、今後の資金調達、広報、採用などにも活かせるのではないかと考えました


しかし、当時は収益源となる製品がなく、会社の残高も個人残高も10万円を切る寸前。開発を始めていいものか悩んだ。

そんな折、Open Network Labの「DemoDay」で優勝。開発資金を獲得する。

こうして、2015年11月、クラウド人事労務ソフトSmartHRの提供開始にこぎ着けた。その後、数々のスタートアップイベントで優勝を勝ち取ることになる。
こうしたイベントは、現・CTOである芹澤雅人氏との縁ももたらした。「TechCrunch Tokyo 2015」の会場を訪れ、「今日出ている会社で、一番ビビッときた会社に転職する」と決めていた芹澤氏が、「エンジニア募集中」という宮田氏の呼びかけに応えたのだ。

HRテックを盛り上げた後、HR以外への領域に挑戦したい

ローンチから3年にして、導入企業は2万社を超えた。この成長の裏側には、ローンチ後の「2つの決断」があったという。


宮田氏実はサービス出して半年後くらいに、ターゲットユーザーをがらっと変えたんです。当初は10人未満の企業を想定していたんですが、数十~数百名規模の企業からの引き合いが多かった。それに対応するため、根幹の仕組みをリプレイスしたんです。組織体制が固まっていない時期だったので大変でしたが、初期に対応しておけたのはよかったと思います。そして1年半くらい経つと
『1000名以上規模の顧客を狙っていくべきかどうか』という議論が持ち上がった。その規模になると全国に拠点があり、拠点ごとに社会保険制度の『事業者番号』が割り当てられている。これに対応するには大きなシステム改修が必要になるので迷いはあったんですが、メンバーの『攻めましょう』の声に後押しされ、決断しました。その2つの転機が、今につながっています


現在は、アップセルプロダクトの開発にも注力。『SmartHR Plus』としてプラットホーム化を目指す。


宮田氏昨年夏には雇用契約書締結のアプリを出しましたが、本体の初期の伸びよりも2倍ぐらい速いスピードで成長しています。ゆくゆくは当社の仕組みを外部に開放し、HR系のSaaSの会社さんがSmartHRに乗っかれるようにしていきたい。そうすれば、彼らは製品づくりに集中できて、SmartHRを利用している会社さんは製品を簡単に導入できる。そんなプラットホームを提供し、HRテック分野を活性化させたいですね。そしていずれはHR領域にとどまらず、テクノロジーを使って社会全体の非合理をハックしていきたいと思います

( 取材・構成:Daisuke Kikuchi / 執筆:青木典子 / 撮影:田中振一 / ディレクション:平泉佑真)

SmartHRに「カスタム社員名簿」機能追加、労務から人材活用の領域へ

HRTechスタートアップのSmartHRは4月10日、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」上に「カスタム社員名簿」機能をリリースした。この機能では、SmartHRから必要な社員情報を抽出した名簿を作成し、人事労務担当だけではなく、必要な人が社員の必要な情報だけを閲覧することが可能になっている。

カスタム社員名簿は、SmartHRの管理者により作成・管理できる。作成画面から、表示したい情報、公開したい部門や職種などの範囲を設定し、名簿を作成して公開が可能だ。

人事労務管理で必要な社員情報は、入社手続きの際にSmartHRに入力されるため、新たに人事データベースを構築したり、社員情報を追加入力する手間は不要だ。また、労務に直接関係がない情報(例えば保持資格や制服のサイズなど)でも、入社のときに収集した情報であれば、表示項目に追加することができる。

社員名簿の用途としては、「社員同士で顔と名前、所属部門や職種だけ確認できるようにしたい」といった全社員向けのものや、「部門やチームメンバーの情報を抽出して、人事異動や登用の意思決定に活用したい」という経営者や管理者向けのもの、また多店舗展開する企業のエリアマネージャーや店長が、アルバイトの緊急連絡先をすぐ調べられるようにしたり、管理部門が社員に支給している手当や備品を簡単に把握できるようにしたり、といった使い方が想定されている。

SmartHRの人事データベースは、労務担当者だけでなく、人事・経理・情報システム部門や経営戦略を担う部門からも「個人情報を除いた形式で活用したい」との要望が多く寄せられていたという。

人材活用や多様な働き方実現に必要な社員情報が、分散管理されていたり、データが不揃いであったりという運用の課題に着目したこの機能。SmartHRでは新機能について、「これまでSmartHRが提供してきた労務管理の領域を超えて、人材管理を目的に活用できる初の機能」と位置付けている。

なおSmartHRによれば、人材管理の分野で、評価や目標管理のような、さらに深掘りした機能を自社開発で追加する予定はないが、外部サービスとのAPI連携の開発は進めているとのこと。SmartHRでは「より多くの部門・社員の皆さまに活用いただくことで、スムーズな組織マネジメントや社内コミュニケーションの活性化など、さまざまな用途での活用を期待する」としている。

カスタム社員名簿はSmartHRのスタンダードプランより上位のプランで利用が可能だ。SmartHRでは2019年夏をめどに、社員や組織の統計値を可視化できる「分析レポート」機能の公開も予定している。

労務管理のSmartHRが保険領域に参入、年内に第一弾プロダクト

労務管理クラウド「SmartHR」などを提供するSmartHRは1月23日、新会社SmartHR Insuranceを設立して保険業界にテクノロジーで変革をもたらす「InsurTech(インシュアテック)」の領域に参入すると発表した。

SmartHRはこの背景について、「保険業界は国内41兆円と言われる巨大産業である一方、FinTech領域に比べて、この領域でビジネスを営むスタートアップが少ないのが現状」とコメント。具体的にどのようなサービスを提供するかは明らかになっていないが、2019年内には第一弾となるプロダクトをリリースする予定だという。

SmartHR Insuranceの代表取締役を務めるのは、SmartHR CEOの宮田昇始氏とKyashでVP of Productを務めた経験を持つ重松泰斗氏の2人。同社は「保健領域における非合理の解消に挑戦する」と新たなチャレンジを前に意気込みを見せた。

2015年に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで最優秀賞を飾ったSmartHR。2018年9月の時点では導入社数が1万6000社を越え、サードパーティストアを軸にした新たな成長戦略を発表していた。今回のInsurTech参入は、去年始まったSmartHRの進化が加速しつつあることを表しているのだろう。

「人事労務freee」と「SmartHR」がAPI連携開始、労務手続きと給与計算をよりシームレスに

クラウド型の人事労務ソフト「人事労務freee」と「SmartHR」が、1月21日よりAPI連携を開始した。

経理・会計ソフトのfreeeが生んだ人事労務freeeは、給与計算機能に強みを持ち、勤怠管理・労務管理機能を持った統合プロダクト。一方、SmartHRは社会保険・雇用保険の電子申請機能など、行政手続きに対応。入社手続きや年末調整といった労務手続きに特化したプロダクトだ。

今回のAPI連携では、人事労務freee、またはSmartHRのいずれか一方に従業員情報が登録されていれば、もう一方に転記することなく、従業員情報が同期できるようになった。これにより、双方のサービスが得意とする機能をシームレスに活用することが可能となる。

SmartHRでは、2018年に外部サービスとの連携強化や拡張機能ストア公開など、プラットフォーム化構想を打ち出している。今回のAPI連携にあたり、SmartHRは「今後も外部連携の強化と、拡張機能が追加できる『Plusアプリ』の開発・提供により、SmartHRの設計を複雑にすることなく、多様化するユーザーのニーズにお応えし、SmartHRのプラットフォーム化を実現していく」としている。

SmartHRにiPad専用アプリが登場、ガラケーのみの従業員でも勤務先で入力可能に

クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供するSmartHRは10月24日、飲食・小売業などの店舗向けに、従業員の入社手続きに必要な情報を収集できるiPad専用アプリを公開した。

SmartHRは、企業が行う社会保険・労働保険の手続きを自動化することを目指す、クラウド型の人事労務ソフトウェアだ。総務省が提供するAPIと連携し、役所への申請をウェブ上からできるようにする。労務手続きや労務管理を簡易化し、経営者や人事担当者の業務改善、本来注力すべき採用や制度作りに取り組めるようにするのがプロダクトの狙いだ。

SmartHRは、今日、資金調達の発表があった「One Tap BUY」と同じく、2015年11月に開催されたTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルに出場し、最優秀賞を獲得している。

その追加機能となるiPadアプリ「店舗管理者向けスマートHR」は、入社手続きに必要な情報を従業員自身が、店舗内などで共有されているiPadを使って入力することができる、というもの。

従来は人事労務担当者が入社する人へ、SmartHRから招待メールを送信し、従業員はPCやスマートフォンからログインして情報を入力する必要があった。

しかし、SmartHRの利用企業が1万7000社を超える規模になり、さまざまな業態のユーザー企業へも利用が広がっている。中でもアルバイトやパートスタッフの比率が多く、入退社が頻繁な飲食・小売業でも利用が拡大。そうした状況下で、PCやスマートフォンを持っていない人が入社した場合、従業員自身がSmartHRに情報を入力ができず、書類での煩雑な作業が残ってしまうという課題があった。

この課題を解消すべく開発されたのが、今回発表された店舗管理者向けスマートHRだ。

同アプリはSmartHRの既存利用企業は追加費用なしで使える(iPad端末の準備は必要)。

SmartHRでは、9月に開催したイベント「SmartHR Next 2018」で、外部サービスとの連携強化や拡張機能ストア公開など、プラットフォーム化構想を打ち出している。その際に「ガラケーしか持たない従業員が多い企業でもSmartHRが利用できるようなiPadアプリ」の提供についても触れられていた。

同社では「今後も多様なニーズに応えながら、必要なときに必要なアプリケーションををインストールして使えるSmartHRのプラットフォーム化を進める」としている。さらに同社代表取締役の宮田昇始氏のブログによれば、プラットフォーム化構想とは別に、新規事業をつくる予定もあるようだ。

導入社数1万6000社のSmartHR:LINEとの連携、拡張機能ストアなど「次の一手」を語る

SmartHRは9月11日、同社が主催するイベント「SmartHR Next」のなかで、LINEなどの外部サービスとの連携強化、そして拡張機能ストアの「SmartHR Plus」など、今後のSmartHRの成長を担う新しい事業戦略を発表した。SaaSとして提供してきた労務管理クラウド「SmartHR」をプラットフォーム化するという構想だ。

TechCrunch JapanではSmartHR代表取締役の宮田昇始氏にインタビューを行い、その戦略の背後にある想いを聞いた。

「やらないこと」を追求する

プラットフォーム化構想を支える柱の1つである外部サービスとの連携では、勤怠管理サービスの「人事労務freee」や「ジョブカン」、福利厚生サービスの「RELO  CLUB」、そしてチャットアプリの「LINE」との連携を準備中であることが明らかとなった。

具体的な連携内容についてはまだ明らかにされていないが、LINEとの連携では、従業員がチャットボットと会話するだけで年末調整を完結することができる機能や、LINEで給与明細を受け取れるような機能が考えられると宮田氏は言う。LINEとの連携は来年をめどに実現する予定だ。

もう1つの柱である拡張機能ストアのSmartHR Plusの公開は、同社が“スタートアップらしさ”を追求したからこそ生まれた戦略だ。

「スタートアップのSmartHRでは、『やらないこと』を決めています。1つは、多様なニーズすべてに応えようとして機能を増やしすぎた“中途半端なプロダクト”を出さないこと。もう1つは、利益のための囲い込みはしないということです」と宮田氏は話す。

多様化するニーズにどう応えるか

SmartHRが拡張機能ストアの公開に踏み切るのは、SmartHRを利用する企業が抱えるニーズが多様化したためだ。SmartHRのリリースは2015年11月16日。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルの登壇中に正式ローンチを発表した。リリースから約2年10ヶ月が経過したいま、SmartHRの利用企業数は1万6000社を超える。

リリース直後から約1年間は、従業員数が1000人に満たないスタートアップや中小企業に導入される例が多かった。SmartHR自身もその層をターゲットとしたプロダクトづくりを行っていたという。

しかし、2017年春頃になると状況は一変する。従業員数が1000人以上の企業がSmartHRを導入する事例が急速に増え、IT系スタートアップが多かった導入企業の業種も、飲食、アパレル、レジャー施設などに多様化した。

「その頃、社内でも従業員数が1000人を超す企業を受け入れるかどうかという議論が起こりました。マネタイズのことだけを考えれば従業員数が多いことは嬉しいかぎり。でも、当時のプロダクトがその企業規模に耐えうる仕様ではなかったのです」(宮田氏)

複数の事業所をもつ企業の場合、従業員の社会保険証に記載された番号がそれぞれの事業所ごとに異なることがある。しかし、当時のSmartHRは1つの番号しか登録できず、そもそも複数事業所に対応してなかった。もっと細かい例でいうと、従業員が多い企業が人事データのCVSファイルをSmartHRにアップロードしようとすると、時間がかかりすぎてタイムアウトエラーが出てしまうということもあった。

そういった仕様上の欠陥だけでなく、規模の大きな企業ならではのニーズも浮き彫りになった。飲食店など、全国各地に事業所が散らばる企業では、紙の雇用契約書を作成し、それを本部に郵送するだけでも大きな手間がかかる。

その課題を解決するために開発されたのが、SmartHRが2018年8月にリリースした「雇用契約機能」だ。これを利用すれば、オンライン上で雇用契約の締結が完了するため、紙の契約書の作成や郵送に時間を取られる心配もない。従業員すべてが1フロアのオフィスにいる企業がSmartHRを導入していた時代には誕生しなかったであろう機能の1つだ。

企業規模の大きなユーザーのニーズに応えるため、SmartHRは2017年春頃から細かなプロダクト改善を重ねていく。しかし、ユーザーのニーズに応え続けることは重要ではあるが、業種や規模の異なる企業のニーズに応えてSmartHRの標準機能を増やし続けると、誰のためのプロダクトなのか分かりにくくなる。宮田氏が言うところの「中途半端なプロダクト」だ。

追加的な機能を“拡張機能”として用意し、サードパーティアプリもそこに並べるという戦略は、それを防ぐためのアイデアだ。先述した雇用契約機能も、じつはSmartHRの標準機能としてではなく、拡張機能として提供されている。

同社は今後、ガラケーしか持たない従業員が多い企業でもSmartHRを利用できるように、店舗や工場に備え付けられたiPadにインストールできる専用アプリや、来年リリースを予定している「HRレポート」や「すごい社員名簿」が自動作成できる機能などを自社開発の拡張機能として提供していく。また、来年をめどにサードパーティの拡張機能も提供開始する予定だ。

「バックオフィス系のサービスは、何かと機能を広げがちです。SmartHRをプラットフォーム化することで、単体だと満たせなかったニーズも満たせるようになる。必要なときに、必要な分だけ使えるサービスを目指したい」(宮田氏)

SmartHRが15億円調達、東京海上日動火災保険との連携も視野に

労務管理クラウド「SmartHR」を提供するSmartHRは1月23日、戦略的スキーム「SPV(Special Purpose Vehicle)」を活用して15億円の資金調達を完了したと発表した。また、今回の調達に併せて、500 Startups Japan代表兼マネージングパートナーのJames Riney氏が社外取締役に就任することも明らかとなった。

写真中央がSmartHR代表取締役の宮田昇始氏、その右が500 Startups Japan代表兼マネージングパートナーのJames Riney 氏。

今回SmartHRが資金調達に利用したSPVは、特定の企業やプロジェクトに投資することを目的に専用のファンドを組成し、このファンドを通して資金を供給するスキームだ。SmartHRのプレスリリースによれば、SPVを利用した資金調達は米国では事例があるものの、「日本では未だ前例の少ないスキーム」としている。

SmartHRにとってシリーズBとなる今回のラウンドでは、既存株主である500 Startups Japanが専用のファンドの組成を行い、東京海上日動火災保険日宣、機関投資家3社、CVC、個人投資家などをLPとして資金調達を行った。SPVを利用した資金調達は、(日米両方の)500 Startupsにとって初めてのことだという。

スタートアップがSPVを利用するメリットとしては、資金調達活動にかかる負担を軽減できることなどがある。一方、500 Startups Japanにとっては、ファンド規模などの理由からこれまではシード・シリーズAが同ファンドの主戦場だったが、SPVを利用することでそれ以降のラウンドからも利益を得られる仕組みを手に入れたことになる。

SmartHRは今回調達した資金を利用して、サービスの追加開発、人材採用、マーケティング活動の推進を行っていく。また、オンライン利用率が8.9%とまだ低い社会保険・労働保険分野の電子申請の啓蒙を行い、クラウド人事労務ソフトの市場拡大を目指していくとしている。

「税務関係の書類(に関わる業務)はバリューを出しやすいが、社会保険や労働保険分野の書類作業はただ書き写すだけというような作業も多い。SmartHRを利用することで、そこにかかる時間を圧縮し、バリューアップにつながるような他の作業に集中できる」(SmartHR代表取締役の宮田昇始氏)

これに加え、具体的にはまだ不明だが、今回からSPVのLPとなった東京海上日動火災保険との業務提携、ならびに金融における新規事業も視野に入れているという。

SmartHRは2013年の創業で、TechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルの優勝企業だ。クラウド人事労務ソフトのSmartHRを導入する企業は現在9300社を超えた。2016年8月にはシリーズAで5億円の資金調達も行っている

人事労務クラウドのSmartHRに元グリーCFOの青柳氏が株主として参画、アドバイザーにFond CEOの福山氏も

クラウド型の人事労務ソフトウェアを提供するSmartHRは11月14日、元グリー取締役でエンジェル投資家の青柳直樹氏が株主として参画、米国で福利厚生サービスを提供するFond(旧AnyPerk) CEOの福山太郎氏が社外アドバイザーに就任することを明らかにした。

青柳氏はドイツ証券を経て、2006年にグリーに入社。CFOとしてKDDIとの資本提携や2008年の東証マザーズ上場、2010年の東証1部上場などを主導した人物だ。2011年からはGREE International CEOに就任し、海外事業の拡大にも尽力した。事業統括本部長などを歴任し、2016年9月に同社取締役執行役員常務を退任。現在は事業経験を生かしてベンチャー企業への投資・支援に取り組んでいる。

青柳直樹氏(左)とSmartHR代表取締役 宮田昇始氏(右)

Fond CEO 福山太郎氏

また福山氏は、日本人チームとして初めてY Combinatorの起業家支援プログラムを卒業し、2012年にサンフランシスコで福利厚生サービスAnyPerkを立ち上げた人物。2017年4月に社名をFondへ変更した同社は現在、SalesforceやVirginなどの大企業も含め、1000社以上にサービスを提供。米国トップシェアの福利厚生サービスとなっている。

SmartHRは、Open Network Labのインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」第10期の出身(実はFondもこのプログラムの第3期に参加している)で、TechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルでは優勝を獲得。サービス公開から2年で利用企業を7000社以上に伸ばし、順調にサービスを拡大してきた。

SmartHRでは2人の参画について「青柳氏が持つ上場企業経営における豊富な経験により、強固な組織体制と財務戦略の構築を図る。また、福山氏が持つHRテクノロジー領域のSaaSビジネスに関する幅広い見識により、さらなるサービスの拡大を目指していく」とコメントしている。

エンジェル投資家の有安氏、AWS、SmartHR、PAY.JPと連携した特典プログラムを出資先に提供

VCが企業と連携し、出資先のスタートアップに特典プログラムを提供する例はあるが、個人のエンジェル投資家が同様の取り組みをすることはあまりない。でも、それが日本で始まるみたいだ。

エンジェル投資家として知られる有安伸宏氏は8月28日、彼が出資するスタートアップに対してAWSと連携した特典プログラムを提供するとTwitter上で発表した。

さらに有安氏は、AWSとの連携に加えて、決済サービスのPAY.JPとクラウド労務サービスのSmartHRと提携することもTechCrunch Japanに明かした。

この3社との提携によって、有安氏が出資するスタートアップは以下の特典プログラムを利用することができる(SmartHRについては、現在支援内容を検討中で9月にリリース予定だという):

AWS

*AWSが定める要件を満たすスタートアップに限る

  • 最大 1 年間有効な 100,000 USD の AWS プロモーションクレジット、または、最大 2 年間有効な最大 15,000 USD の AWS プロモーションクレジット
  • 最大 2 年間有効な、最大 10,000 USD の AWS ビジネスサポートプランクレジット
  • AWS Business Essentials のオンラインまたは個人トレーニング (600 USD 相当)
  • AWS Technical Essentials のオンラインまたは個人トレーニング (600 USD 相当)
  • セルフペースラボに使用できる 80 コース分のクレジット (80 USD 相当)

PAY.JP

  • 2.59%の手数料で決済を組み込むことが可能(プログラム名は「PAY.JP Seed」)

エンジェル投資家、有安伸宏

念の為に説明しておくと、自身も起業家である有安氏は2007年にコーチ・ユナイテッドを創業。2013年に同社の全株式をクックパッドに売却する。のちに投資家に転身した。2015年に共同設立したTokyo Founders Fundを通してVC投資を行うとともに、個人としてエンジェル投資も行っている。

先週8月25日に上場承認がおりたばかりのマネーフォワードにも創業初期から出資しているし、その他にも決済サービスのAnyPayなど40社を超える企業に出資してきた。

有安氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「経営現場にいない投資家が、起業家に対して本質的に貢献できることはそう多くはない。それはエンジェル投資家も同じ。その前提に立って、スタートアップに対して何か実質的で『リアル』なサポートはできないかな、と日々考えているなか、AWSの畑さん(畑浩史氏)からお声がけいただいた」と話す。

AWSとの提携の話が進むなか、サポートの幅を広げたいと考えた有安氏が、PAY.JPを運営するBASEの鶴岡裕太CEOとSmartHRの宮田昇始CEOに話を持ちかけ、これら3社との提携が実現したそうだ。

ジェフ・べソスやピーター・ティールなど、米国のエンジェル投資家がもつ影響力は大きい。でも、個人である有安氏を中心にした新しい取り組みの誕生は、日本でもエンジェル投資家の存在感が大きくなっていること表しているのかもしれない。

「SmartHR」利用企業が1年半で5000社を突破、8000人規模の企業での採用も

SmartHR(旧社名:KUFU)は6月19日、労務管理クラウド「SmartHR」の利用企業が、6月12日に5000社を突破したと発表した。また同時に、7月4日より、社会保険の「算定基礎届」の電子申請機能を公開することも明らかにした。

SmartHRは労務関連の書類自動作成、オンラインでの役所への申請、人事情報、マイナンバーの収集・管理やWeb給与明細などの機能を備えたクラウド型の労務管理ソフトウェア。2015年11月の正式版リリースから約1年半で、利用社数が5000社を突破したことになる。

SmartHRでは、従業員5名以下の小規模企業を対象とした「¥0プラン」を2016年9月に提供開始することで、利用の裾野を広げる一方、従業員1000人以上の企業による導入も増えているそうだ。複数店舗が多い業態の飲食チェーン、アパレル業、宿泊業のほか、農園、寺院、新聞社など、IT以外の業種での採用もあるという。

特にアパレル、飲食チェーン、宿泊業など、複数店舗が多い企業での導入が進んでいることについて、SmartHRでは「本社にバックオフィスを集約していること、各店舗の店長には労務知識がないが、本部とスタッフとのやりとりには店長をはさむことが共通している。スタッフも店長も本部も多忙で、(人事労務情報のやり取りのための)印刷代、郵送代などのコミュニケーションコストが高くついている。そうした中、SmartHRでは情報収集機能や、人事マスター機能、閲覧や操作の権限管理機能を強化していて、そこがニーズに合致したのではないか」と分析している。

5月には、飲食チェーン「てけてけ」や「the 3rd Burger」など57店舗を展開し、従業員約1700人を抱えるユナイテッド&コレクティブでの導入が発表されたほか、8000人規模の企業による採用も決定しており、その他、数千人〜1万人を超える従業員数の企業からの導入決定や検討も進められているそうだ。

また7月4日には、SmartHRに「算定基礎届」の電子申請機能が追加される。これにより、7月10日が申告期限となる「年度更新」「算定基礎届」の2つの手続きで電子申請に対応、ペーパーレス化を実現する。「年度更新」については申告と合わせて労働保険料の納付が必要だが、通常、労働基準監督署や金融機関の窓口で行う支払を、SmartHRからネットバンキングで行うことができる。さらに今回の「算定基礎届」の電子申請対応により、手続きをパソコンだけで完了させることが可能となる。

SmartHRでは、こうした機能追加・改善による各種手続きの利便性向上や、人事マスタ機能の強化に加え、今後、周辺クラウドサービスとのAPI連携強化や、業務提携による新製品開発も視野にいれている、ということだ。

労務管理クラウド「SmartHR」に社労士向け機能、公認アドバイザー制度も開始

SmartHR for Adviser

KUFU(クフ)は9月26日、労務管理クラウド「SmartHR」に社労士向け機能を搭載した「SmartHR for Adviser」の提供を開始した。またこれと同時に、「SmartHR公認アドバイザー制度」を開始した。

「社労士とともにサービスを伸ばす」というメッセージ

SmartHRは、労務関連の書類自動作成、オンラインでの役所への申請、人事情報、マイナンバーの収集・管理やWeb給与明細などの機能を備えたクラウド型の労務管理ソフトウェア。これまで中小企業を中心にサービスを展開してきたが、SmartHR for Adviserの開始により、社労士向けの機能も拡充。社労士が顧問契約している中堅から大手の企業にも利用を拡大していく構えだ。

スタート時点では、社労士が顧問先の複数の企業を1アカウントで閲覧・管理できる機能が提供される。また、これまで役所へのオンライン申請時には、企業に特定の社労士を紹介してその電子証明書を利用していたが、これを一般の社労士にも解放。自身が所有している電子証明書を使って、顧問先企業の社会保険・雇用保険の手続きをSmartHR上から電子申請することが可能となった。

今後は、顧問先企業の離職率を経時変化や世間動向との比較で確認できたり、制度が変わりやすい助成金の受給要件に合致しているかどうかなど、タイムリーに情報を把握できる機能などを拡充していくという。

「SmartHRは、社労士の仕事を奪うのではないかと考えられているが、我々はリリース当初から一緒にうまくやりたいと思っていた」とKUFU代表取締役の宮田昇始氏は話す。「例えば、クラウド会計ソフトのfreeeが登場した時には、『税理士の仕事がなくなる』という見方があったが、今や税理士がfreeeを利用して企業にも紹介している。うまくやれているサービスは専門家と競業しないと考えていた。実際、SmartHRも初めは中小企業をターゲットにサービスを展開してきたが、すでに社労士を顧問に持つ中堅以上の企業での併用も多くなってきた。さらに、社労士が顧問先企業にSmartHR導入を勧めるケースも増えている」(宮田氏)

今回のSmartHR for Adviser提供は「社労士といっしょにサービスを伸ばしたい」というKUFUからの正式なメッセージでもある、と宮田氏は言う。「多くの社労士は顧問先を月次で訪問していて、少ない情報と短いコミュニケーションの中で、スタンダードな提案しかできないのが現状。我々のサービスを使ってもらうことで、個々の顧問先企業に寄り添った、よりよい提案ができるように支援していきたい」(宮田氏)

またKUFUでは、SmartHR for Adviserと同時に「SmartHR公認アドバイザー制度」開始も発表した。SmartHRの導入企業からは「SmartHRが使いこなせて労務相談もできる社労士を紹介してほしい」との要望が多く、中には上場直前といった規模の会社でも「社労士を紹介して」との声があるのだという。これまでも個別では紹介してきたということだが、制度化によって、SmartHRへの理解が深い社労士を公式に育成・紹介していく形をとる。

制度開始にあたり、KUFUでは社労士向けの無料セミナーを随時開催し、参加した社労士をSmartHR公認アドバイザーとして認定していく。企業への社労士の紹介料は無料。社労士側も紹介料、加入料金、月額料金などの費用は不要だ。

労務管理をDisruptするサービスを

KUFUでは先日、従業員5名以下の小規模企業向けにSmartHRの¥0プランを発表したばかりだ。このときにも「大企業向け機能の強化も同時に進めることで、収益増を図る」としていたが、今回の社労士向け機能の解放も、エンタープライズ企業向けサービス強化の一環だと宮田氏は言う。

「¥0プランは、社労士顧問契約など結べない小さな企業にも、とにかく使ってもらいたいということで間口を広げた。そうして会社が成長していく中で、社労士に労務環境をチェックしてもらったり、相談する場面が増えてきたときに、公認アドバイザーと手を組んで共に歩んでもらい、ゆくゆくは大きな成長を遂げてもらえれば、我々のサービスも有償で使ってもらえることになる」(宮田氏)

大企業の場合、雇用形態のバリエーションが多く、手続きはより煩雑で、労務担当者が一人ではないことも多い。こうした大企業特有の環境に合わせて、雇用形態別の書類出し分けや、担当者の権限が設定できる機能、組織に合わせて従業員データベースをカスタマイズできるような機能も追加を準備しているそうだ。また2016年5月に公開したAPIを利用した、社内システムや各社のクラウドサービスとの連携もどんどん進める、という。「2016年10月には、さらに大企業にうれしい機能を提供する予定だ」(宮田氏)

2016年初めのインタビューでは「2016年内に3000社、2017年内には2万社の導入を目指す」としていた宮田氏に、その道程を聞いたところ「2016年5月の時点で1000社、現時点で2000社を超える登録を獲得しており、2016年内の目標は4000社に上方修正した。さらに少し先になるが、2019年末には20万社の登録を目指す」と答えてくれた。今月、サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disrupt SFに絡めて、宮田氏はこう話す。「Disrupt(破壊)という言葉が気に入って。¥0プランにしてもfor Adviserにしても、とにかく門戸を開いて、多くの企業に使ってもらって広げていく中で、企業、社労士、KUFUの三者が喜べる形にしていきたい。Disruptしたいですね」

労務管理クラウド「SmartHR」に小規模企業向け0円プランが登場—大企業向け機能の強化で収益化図る

SmartHR

KUFU(クフ)は9月12日、労務管理クラウド「SmartHR」に従業員5名以下の小規模企業を対象とした「¥0プラン」の提供を開始した。

SmartHRは労務関連の書類自動作成、オンラインでの役所への申請、人事情報、マイナンバーの収集・管理やWeb給与明細などの機能を備えたクラウド型の労務管理ソフトウェア。TechCrunch Japanが開催するイベント「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップバトルで優勝を果たしたことでも話題になったこのサービスは、2015年11月のリリースから9カ月の2016年9月現在、1800社を超える企業が登録している。

その登録企業のうち、一定数を従業員が5名以下の小規模企業が占めるという。こうした企業では、労務管理や手続きを経営者が行うケースが多く、労務に関する書類作成の時間コストや、手続きに必要な情報を調べたり教わったりするコストが負担になりやすい。一方で従業員数が少ないうちは労務手続きが頻発するわけではないため、月額制のサービスを利用すると割高になる恐れがある。

「¥0プラン」はこうした小規模企業が、SmartHRの主要機能を無料で利用できるプランとなっている。無制限でサービスが利用できる15日間のトライアル期間終了後に制限される機能は、「メール&チャットサポート」、「書類の印刷代行機能」、「役所への電子申請機能」の3つで、役所への電子申請機能については将来的には解放を検討しているそうだ。

また従業員数1000名を超えるエンタープライズ企業の引き合いも増加する中、KUFUでは「権限管理のカスタマイズ」や「従業員データベース機能の強化」、「外国人雇用に必要な書類への対応」など、SmartHRの大企業向け機能の強化も進めることで、¥0プランのリリースとバランスを取り、収益化を図っていくという。

2016年9月12日現在の従業員数別プラン体系と料金(年間一括払い時の月額換算、税抜)は以下のとおり。

  • ¥0プラン(〜5名) 0円(一部機能制限あり)
  • MICROプラン(〜5名) 980円
  • SMALLプラン(〜15名) 3,980円
  • MIDIUMプラン(〜30名) 9,800円
  • LARGEプラン(〜50名) 19,800円
  • ENTERPRISEプラン(51名以上) 別途見積り

KUFUでは¥0プランの提供により「社会保険・雇用保険の手続きを後回しにせざるを得なかった小規模企業でも、本来行われるべき手続きが進むことを期待する。経営者は本業に、人事担当者は採用や制度づくりに集中でき、そこで働く従業員はよりよい環境で安心して働くことができる、という社会を実現していきたい」としている。

労務管理クラウド「SmartHR」運営のKUFU、WiLなどから5億円の資金調達——すでに1700社が利用

左から500 Startups Japanの澤山陽平氏、James Riney氏、KUFUの宮田昇始氏、WiLの難波俊充氏

左から500 Startups Japanの澤山陽平氏、James Riney氏、KUFUの宮田昇始氏、WiLの難波俊充氏

Open Network Lab(Onlab)10期卒業生であり、そのデモデイで最優秀賞を受賞。その後はTechCrunch Japanが開催するイベント「TechCrunch Tokyo 2015」のプレゼンコンテストである「スタートアップバトル」をはじめ数多くのイベントで優勝を果たしたことでも話題を集めたのがクラウド型労務管理ソフトウェア「SmartHR」を運営するKUFU。そんな同社が大規模な資金調達を実施した。

KUFUは8月30日、WiL、BEENEXT、500 Startups Japanおよびコロプラ元取締役副社長の千葉功太郎氏、エウレカ共同創業者で元代表取締役CEOの赤坂優氏、エウレカ共同創業者で取締役副社長COOの西川順氏を引受先とする総額5億円の第三者増資を実施したことを明らかにした。なお、赤坂氏、西川氏が立ち上げたエウレカは、SmartHRエンタープライズ版の最初の導入企業でもある。

KUFUは2013年の創業。クライアントワークを行いつつ自社サービスを検討する中でOnlabに参加。自身が労務手続きで苦労した経験から、社会保険や雇用保険の手続き自動化を行うSmartHRが生まれた。

SmartHRは労務関係の書類の自動作成から、手続きのToDoリスト化、オンラインでの役所への申請、人事情報の管理、マイナンバーの暗号化保存などの機能を備える。2016年8月現在、IT企業を中心に1700社がサービスを導入。利用継続率も98%と好調だ。当初は10人規模の比較的小さなスタートアップをユーザーとして想定していたが、いざサービスを提供してみると、50〜200人規模の中小企業にも好評なのだという。

「会社のフェーズによって担当者や抱えているニーズが違うことが分かってきた。10人未満の会社では、社長が労務管理を行っている。そうなると書類が自動で作成でき、オンラインで申請までできるということ、そしてそもそも労務まわりの学習コストが下がることが評価されている。10〜30人規模になるとバックオフィスの専任担当者がいるが、その場合は効率化のためにSmartHRを利用する。50人以上にもなると、今度は管理のコストが大変なことになるので、プロジェクト管理ツール、人事管理ツールとしても使う様になる」(KUFU代表取締役の宮田昇始氏)

KUFUでは今回の調達をもとに、開発や営業人員の増員進める。開発面では、大規模な組織について対応するための細かな管理機能を強化するほか、社会保険労務士(社労士)向けの機能を開発・提供していく予定だという。「サービスは口コミを中心に広がっているが、企業が契約する社労士から導入を進められるというケースもある。今後は街の社労士を味方に引き込んでいきたい」(宮田氏)。エンタープライズ向けの営業についても進めていく。マーケティング施策も強化する。

また最近では「ヘルプの文言やボタンの名称までコピーした競合サービスも出てきた」(宮田氏だが、「競合が市場を開いてくれているという意識もある」「SmartHRは社労士法人も持っており、ユーザー企業が電子申請の際にわざわざ電子証明書を取得する必要がないなど、システム面での優位性も高い」(宮田氏)だと語る。同社は2019年に20万社への導入を進めるとしている。

余談だが、KUFUも登壇してくれたTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルは今年も開催予定。登壇を希望する創業3年未満、サービスローンチ1年未満のスタートアップはこちらを読んで是非とも応募して欲しい。