SmartHR子会社の会議改善クラウド「SmartMeeting」正式版提供開始

SmartHR子会社のSmartMeetingが、会議改善クラウドサービス「SmartMeeting」のクローズドベータ版リリースを発表したのは、約1年前のことだ。8月26日、ついにその正式版提供がスタートする。

SmartMeetingのミッションは「無駄な会議を減らして良い会議を増やし、労働生産性を向上させる」こと。SmartMeeting代表取締役の佐々木真氏は「社会人の誰もがやる会議だが、みんな満足していない。一方で解決策がなく、本を読んだり、研修を受けたりするぐらいしか打ち手がなかった」と述べ、「会議の課題に特化したサービスとしてツールを提供して、生産性向上を支援したい」と話している。

企業や部署により会議のバリュエーションはさまざまだが、「大きな課題は3つ」と佐々木氏は言う。それは「会議数が多い/長い」「会議の質が低い」「会議後の情報管理が大変」という点だ。

「優秀な人はSmartMeetingがなくても、本を読んだり研修に参加したりするだけで良い会議ができるようになるが、そういう人はごく一部。会議のレベルは、参加者の中でできない方の人に合っていくので、落差があればスキルの高い方の人にもストレスがかかり、生産性が下がる。それをならすのが、SmartMeetingの最初の大きな役割だ」(佐々木氏)

良い会議をするために、最低限やらなければならないことは、アジェンダを用意する、情報を共有するといった準備の部分だ。ただし、当たり前のように見えるそのことも、場が用意されていなければ、カレンダーやドキュメントツールなど、あちこちのツールにバラバラに情報が格納され、情報は分散してしまう。

「準備が会議のコア。誰でも良い会議をするための準備ができる、最低限整う、という機能が共通のフォーマットで用意されているのが、SmartMeetingの1つ目の大きな価値。いい会議のためには準備が欠かせないことはみんな分かっているけれども、ダイエットと同じで『分かっているけどできない』のが実情。無理に人力でやろうとしても破綻するので、SaaSで仕組み化したものが、このプロダクトだ」(佐々木氏)

会議の準備・記録・振り返りをクラウドでサポート

SmartMeetingは、会議前の準備、会議中の記録、会議後の振り返りが行えるクラウドサービスだ。その機能をもう少し詳しく見ていこう。まずは「会議準備機能」だ。

会議の詳細を設定・閲覧する画面には、フォーマットとして「会議の目的」「準備・進行・議事録担当者の役割設定」「アジェンダ」などの入力欄が既にあり、ファイルの添付も可能。テンプレートを使って効率よく記載することもできる。リマインダーによる通知もあるので、会議準備にどれくらいかかるかを逆算して、あらかじめセットしておけば「直前に思い出して準備が間に合わない」ということもなくなる。

また会議中には議事録をリアルタイムで共同編集することもでき、参加者全員がその場で確認しながら記録を残すことが可能。最近では、ボイスチャットと文字起こしによる、議事録の自動作成機能も追加された。議事録も同じシステムに保管されるため、振り返りも容易だ。

また会議の質の可視化もできるように、会議後には参加者によるレビューが匿名で入力可能。フィードバックではレビューの平均点と、良かった点、改善点も確認できる。

参加者のレビューだけでなく、次へのアクションにつなげる機能としては、「決定事項」の入力・管理ができるというのも特徴的だ。「会議はものを決める場、というのがSmartMeetingのコンセプト。情報共有だけなら会議の場でやる必要はない」(佐々木氏)というプロダクトの思想が盛り込まれている部分である。

決定事項のうち、次のアクションが必要なものについては、担当者と締切も同じ画面内で設定できる。さらに決定事項だけを一覧で管理することもできる。タスクが完了すれば、一覧画面からチェックを入れればよい。クローズドベータ版の利用企業からはこの一覧ページが好評だと佐々木氏はいう。「決まったことをやり切る。ここまでやってはじめて、会議は意味がある」(佐々木氏)

決定事項だけでなく、議事録を一覧できるページも用意されており、会議名や開催日時だけでなく、タグで検索することも可能となっている。「異動や入社などで後から参加した人にも『このタグの会議の議事録だけ見ておいて』と言えば、情報共有がスムーズになる」(佐々木氏)

振り返りという点では、会議のコストと時間を可視化する「会議レポート機能」も、会議に特化したクラウドサービスとして特徴的な機能だろう。

ここでは個人、グループ、全社の会議コストを参加者の人件費と時間から自動計算し、表示する。実は個別の会議詳細画面には会議中、リアルタイムで「残り時間タイマー」が表示されているのだが、会議レポート画面ではコストだけでなく、予定より早く終わった会議の「削減コスト」も見ることができる。対象となる期間は選択でき、グラフで時系列での変化も把握可能。前月・前年などとの比較もできる。

管理者向けには「業務レポート機能」も用意されている。会議自体の内訳以外に、会議とそれ以外の業務の時間の内訳もグラフで可視化され、部署ごと、個人ごとに忙しさを把握することができる。

「特にリモートワークが多くなっている今は、それぞれが忙しいのか暇なのか、管理者が把握しづらい。ここでそれを可視化することで、業務の偏りが調整できるようになり、従業員のヘルスチェックにも役立つ」(佐々木氏)

将来的には個人・部署だけでなく、タグを活用してプロジェクトごとに「会議に何時間かけ、いくら利益を生んだか」まで可視化したいという佐々木氏。「見える化しなければ始まらないが、会議の可視化は今まで意外と語られてこなかった。現状の可視化から業務の最適化につなげることができるようになる」(佐々木氏)

そのほかにも「クローズドベータ版ユーザーから地味に好評」(佐々木氏)という機能が、「日程調整機能」だ。SmartMeetingでは、GoogleカレンダーやOffice 365のカレンダーの情報を元に、会議の日程調整を自動化する。

日程調整は社内だけでなく、社外の人とも可能だ。空き時間枠が分かる専用ページが生成されるので、社外の相手に送信し、相手が都合の良い時間を選択するだけで調整が完了する。

「人がやらなくていいことはできるだけサービスで吸収する」

「無駄な会議はなぜ起こるか、なぜ会議でストレスが生まれるのかを、ずっと考えている。それがSmartMeetingの最大のテーマ」という佐々木氏。「正解はないけれども」と断りつつ、その課題の原因のひとつとして「情報の非対称性」を挙げる。

「会議では参加者の情報レベルをそろえる必要があって、それができていないと無駄会議になる。期待値や前提がバラバラではいい会議ができないし、そこを埋める作業や説明から会議が始まってしまう」(佐々木氏)

事前の会議準備の重要性を佐々木氏は、何度も強調する。「米Amazonでは会議の最初の10分は資料の読み込み時間に充てられているというけれど、これも情報レベルや認識をそろえるためのもの。ただし、できれば最初の10分じゃなくて、事前にやった方がいい。SmartMeetingはそのための場だ」(佐々木氏)

佐々木氏は事前の準備に加えて、会議で決まったことの共有や、何度も会議を重ねた後のレポートもきちんと見える化されるのが、SmartMeetingの大きなポイントと話している。それから可視化のほかにもうひとつ、「人がやらなくてもいいことは、できるだけSmartMeetingで吸収する」という考え方も示している。

「話す、意見を出す、ブレストする、決めるというのが人の価値。日程調整や議事録作成は機械がやればいい」(佐々木氏)

2019年10月に公開したクローズドベータ版は500社からの事前登録があり、中でも会議の課題が特に大きい上場企業や従業員数の多い企業に導入された。「入社したばかりの新卒社員でも、全てを手取り足取り教えることなく、会議準備ができる」など、利用企業からの評価も高いという。

今後のアップデートでは、発話を分析することで、発言した人を可視化し、発言の偏りを減らすことや不要な会議への参加を抑える機能の追加も計画しているという。

「発言しないから出席しない、ということをエビデンスに基づいて言えるようになる。効率化と同時に、数字を元に会議を科学することを、SmartMeetingでは目指している。無駄な会議をどれくらい削減できたか、誰が発言しているか、誰が参加すると良い会議になるかをファクトベースでやれるのが、SmartMeetingのいいところ。これを本当にやっているサービスは、日本でも海外でもまだないと思う」(佐々木氏)

「手本がないので、開発ではものすごく試行錯誤した。何からやったらいいか、仮説検証を繰り返して、初期のお客さんに使ってもらい、やっと正式ローンチにこぎ着けた」と佐々木氏は言うが、同時にこのジャンルを「未開のマーケット」と述べ、「会議の悩みは世界共通。日本で行けたら世界にも行ける」とも語っている。

SmartMeetingでは、会議に関連した「前後」の外部ツールとの連携も広げていきたいとしている。既に一部のツールとの連携は始まっているが、カレンダー、ZoomやTeamsといったウェブ会議ツール、Slackなどのチャットツールをはじめ、営業やマーケティング、エンジニアやデザイナーが使うツールも含めて、会議前・会議後で使うサービスとシームレスにつながるように連携を検討していくという。

「さらに将来は、『ファシリテーション講座』のような研修のリプレイスもできるのではと考えている。アルゴリズムとAIで『良い会議』『悪い会議』を実践的に可視化したい。個人的には専用のマイクとスピーカーが作りたい。会議に際して『人間はしゃべるだけでいい』という状況を、いずれハードでも実現できればと考えている。会議のレベルを上げること、そのレベルを定着させることを仕組み化できるのはSaaSの役割。ポテンシャルのある領域だ」(佐々木氏)

SmartHRは8月24日にも、人材データベース構築サービスの新会社Looper設立を発表している。SmartHRでは、「より効率よく業務を行えるようなサービスを、企業を取り巻くさまざまな領域で展開することを目指す」と各子会社の動きについて説明している。

会議のコストを可視化、“短時間で成果の出る時間”に変える「Savetime」

「資料や議事録が見つからない」、「目的や議題が不明瞭」、「時間通りに終わらない」、「結果が共有されない」、「決まったことが行われない」、「安易に会議が増える」。企業に務める多くの従業員は会議に関してこのような課題を感じているのではないだろうか。マキナで代表取締役を務める植川悠氏もその一人だ。パーソル総合研究所のデータによると、無駄な会議による企業の損失は年間15億円。社内会議・打ち合わせの時間はメンバー層で週に3時間を超え、係長級で6時間、部長級になると8.6時間になるという。

会議に関連する課題を解決するため、マキナは10月8日、「会議を成果が生まれる時間に変える」クラウドツールの「Savetime(セーブタイム)」のオープンβ版をリリースした。

Savetimeでは、会議に関わる情報やコミュニケーションを集約、GoogleカレンダーやSlackなどと連携し、ミーティングの生産性を高めていく。アジェンダや担当者の事前の設定、経過時間の見える化、設定した共有範囲に対して会議の結果を簡単に共有、ミーティング中に記入したタスクの一覧表示、などといった機能が特徴的。

中でも注目したいのは、会議に要しているコストを見える化し、出席者や開催時間の削減を促し、コスト削減を実現できるという点だ。時給を設定することで、会議の「コスト感」が一目瞭然となる。それによる「危機感」によって、従業員は率先的に会議を効率化するという機能だ。

マキナいわく、Savetimeを使うことで「会議時間が減り、より生産性が高い活動に時間を使える」、「事前準備と決まったことの明文化で、アウトプット(結果)が増える」、「決まったことを完了まで管理でき、アウトカム(成果)が増える」といったメリットが得られるそうだ。

Savetimeの導入実績にはスタークス、Peatix、レッドビジョンなどの企業が名を連ねる。マキナは12月頃にはSavetimeの正式リリースを予定しているそうだ。類似サービスにはSmartHR子会社SmartMeetingがクローズドβ版を公開している「SmartMeeting」がある。「現状、『会議を改善する』という(ツールの)市場があるわけではない。まずは市場ができることが重要」(植川氏)。

現段階で、Savetimeは「社内会議の効率化」に特化しているが’、「最終的には企業間でのコミュニケーションに対してアプローチしていきたい」(植川氏)。

SmartHR子会社が会議改善のためのクラウドサービスをクローズドβ版で公開、事前登録を開始

左から、宮田昇始氏、佐々木真氏

SmartHR子会社のSmartMeetingは7月16日、会議を改善するためのクラウドサービス「SmartMeeting」のクローズドβ版を公開し、事前利用登録を開始したと発表。このクローズドβ版は、G Suite(Googleカレンダー)とSlack上での提供となる。

SmartMeetingの代表取締役は、佐々木真氏、ならびにSmartHR代表取締役の宮田昇始氏。

佐々木氏は、リクルートマーケティングパートナーズではスタディサプリ、メタップスではタイムバンクなど、数々の新規事業開発を経験してきた人物だ。同氏は1月にSmartHRに入社。4月にSmartMeetingの代表に就任し、今回は日本中の企業の会議の改善のため、SmartMeetingの開発を進めている。

なぜSmartMeetingを開発しているのか。佐々木氏いわく、それは「会議数が多い」、「会議が時間通りに終わらない」、「会議をしたのに決まらない」などの課題を抱えている企業が多く存在するから。同社が様々な企業にヒアリングをした結果、9割以上の会社が会議について課題を持っていたという。

そして、パーソル総合研究所のデータによると、無駄な会議による企業の損失は年間15億円。社内会議・打ち合わせの時間はメンバー層で週に3時間を超え、係長級で6時間、部長級になると8.6時間になるそうだ。

佐々木氏自身も、過去に「上司が会議に入りすぎていて、相談ができない、会えない」ことを経験し、会議に対する課題感を感じていた。SmartHRでも「従業員数が100人を越えてきてから会議が増えすぎているという課題が出てきた」ため、もともとは他サービスの事業を検討していたが、SmartMeetingを開発するに至った。

SmartMeetingのミッションは「ムダな会議を減らして良い会議を増やし、労働生産性を向上させる」こと。2019年6月にはSmartMeetingのクローズドα版の事前登録を開始し、2日間で150社以上からの申し込みがあったという。

SmartMeetingがどのようなサービスなのかについて、まだ多くは明かされていないが、佐々木氏いわく、「会議の準備」を効率化することができたりする。一般公開は9月頃を予定しているため、より具体的な中身は今秋には知ることができそうだ。