子供も大人も自宅待機の中、バーチャルな世界が主流となる機会は到来しただろうか?

TechCrunchはこれまで、「メタバース」とも呼ばれるバーチャル世界の発展をつぶさに取材してきた。

Robloxなどのプラットフォームや、フォートナイトといったオープンワールド形式のゲームが成長した結果、ゲームのバーチャル世界を友達と一緒に楽しむのが近年で人気を集めつつあるが、若年層以外ではまだ主流の社会活動となってはいない。

TechCrunchのメディアコラムニストであるEric Peckhamは、3週間前に発表した詳細なレポートでソーシャルメディアの新たな時代としてバーチャル世界を位置付けた。8部に分かれたこのシリーズを通じて彼はバーチャル世界の歴史を振り返り、ゲームがすでにソーシャルネットワークと化している理由ソーシャルネットワークがもっとゲームを必要とする理由業界における今後数年間の動向およびゲームを通して社交することがまだ主流になっていない理由バーチャル世界が社会関係を健全にしていく仕組みバーチャル経済の未来この新たな市場で成功を収めつつある企業などを解説した。

たった3週間で、知識経済の大部分が突然バーチャルにすべてをやりとりする状況など、誰が想像できただろうか。そういうことから、私は、新型コロナウイルスが蔓延する中、人気が高まっているバーチャル世界の状況をよりよく把握したいと考えた。私はEricと電話対談し、その内容を公開することにした。

Danny Crichton:タイミングについて話そう。あなたがバーチャル世界に関する全8回の連載記事を書き終えた直後に突如として、この未曽有の現象、新型コロナウイルスの世界的流行が起こり、人類の大半が自宅にこもってオンラインのみでやりとりすることになった。今、バーチャル世界では何が起こっているのだろう。

Eric Peckham:私が一連の記事を執筆したのは、オープンワールド系MMOゲームに対する消費需要の増加と、FacebookやSnapなどの巨大ソーシャルメディアがバーチャル世界やソーシャルゲームを自社プラットフォームへ取り込もうとしている両側面で、すでにマルチバースへの関心が高まっていることに気づいていたからだ。大手企業は、バーチャル世界を将来のヴィジョンとして掲げるだけではなく、実行可能なやり方で計画している。また近年は、人々が長時間過ごすことのできる次世代のバーチャル世界、ユーザの貢献によって形作られる複雑な社会を持つバーチャル世界の構築に焦点を当てたスタートアップへのVC投資も盛んに行われている。

ゲーム業界の創業者や投資家に話を聞くと、ここ数週間で、大人も子供も自宅でのゲーム人口が増加し、利用率が大幅に上昇しているという。

こうした次世代バーチャル世界のほとんどはまだ非公開のベータ版だが、Roblox(ロブロックス)やマインクラフト、フォートナイトといった既に人気のプラットフォームは普段よりもかなり利用されている。自宅に閉じこもっている人々の多くが、ゲームの仮想世界を経由して脱出しているのだ。

あなたがそうした分析のすべてを連載記事に執筆したのはパンデミックの規模を知る前だった。この業界の見通しはどう変わったのだろうか。

日常的に人々がバーチャル世界で交流して社会活動を行うことが主流になるまでのタイムラインが加速すると考えられる。この自宅待機は数週間ではなく数ヶ月間続き、それによって人々の社交や在宅勤務に対する考え方も変わってくるだろう。

これは真に大きな文化的変化だ。コアのゲーミングコミュニティを超えて、より多くの人がバーチャル世界で時間を過ごし、友達とやりとりすることを楽しみ始めている。

インターネットユーザーの中でも、最も若い世代でこの傾向が特に顕著だ。9~12歳の子供の大半がマインクラフやRobloxのユーザーであり、そこで放課後に友達と時間を過ごしている。以前よりも急速に、高い年齢層へもこの傾向が広がるだろう。

史上最大規模で自宅待機が強制されているにも関わらず、VRヘッドセットはほとんど売り切れているという苦情をTwitterで目にしている。VRはバーチャル世界に不可欠な要素なのだろうか。

まあ、VRヘッドセットがなくても、バーチャル世界で他の人と交流して楽しむことはできる。スマートフォン、PC、ゲーム機を使って、今でも無数の人々がそうして楽しんでいる。

ゲームが要求するミッションをこなしながら、他の人々とやりとりできる、長い時間を過ごせるバーチャル世界を構築することが、ゲーミング業界が目指す理想だ。昨年最も人気を集めていたモバイルゲームとPCゲームの分野に、大規模多人数同時参加型オンラインゲーム(MMO)が挙げられる。

ゲームについていえば、一連の記事で特に興味深いと私が感じた点は、ゲーミングはまだそれほど人々へ浸透していないという事実だった。

年間でいえば、20億人以上の人がビデオゲームを楽しでいる。これ自体は、驚異的な市場浸透率だ。しかし、少なくとも私が得た米国のデータによると、毎日ゲームを楽しむ人口の割合は、毎日ソーシャルメディアを利用する人口に比べてずっと低いことがわかっている。

ゲームプレイのミッションを超えて、社会活動を行って互いとやりとりするためのバーチャル世界にゲームが進化するにつれ、スマートフォンで5分間楽しむ時間があれば、バーチャル世界で社会活動やエンターテイメントを選ぶ人々も増えていく。ソーシャルメディアは、生活の中でこうした短い時間を埋めている。現時点でMMOゲームがそうなってないのは、時間がかかり、継続して集中しなければならないというゲームプレイを中心に構築されているからだ。Robloxのように、友達と共に過ごすための系統に属するバーチャル世界は、インスタグラムとより直接的に競合できる。

RegalやAMCなどの映画館チェーンは、ウイルスの流行が終息するまで、すべての映画館を閉鎖すると今週発表した。これはバーチャル世界の企業に影響を与えるのだろうか。

私は、この2つは別々のメディアに属していると考えている。映画館の観客数は長年にわたって減少を続けており、これに対して映画産業は、映画館でプレミアム体験を提供し、チケット価格を上げることで対抗してきた。子供であれば、金曜日の夜に映画館へ行くのと同じ感覚で、あるいはより積極的に、友達と集まって一緒にゲームを楽しむだろう。若い人にとって、映画館はかつてほど文化的に身近な存在ではない。

一種のバーチャル世界、または少なくともバーチャル職場である、在宅ワークの大規模な実験が行われている。バーチャル世界の人気が高まるのは、エンターテイメント分野と、生産性指向のプラットフォームのどちらから始まるのだろう?

エンターテイメント側から始まるだろう。その理由の一部は、ビジネス環境で会議をする人々が、バーチャル世界をあまりプロフェッショナルではないと感じるのと比べて、礼儀作法をそれほど気にされない若い人々がそれを社会活動に使用するからだ。時間をかけて、バーチャル世界が社会活動で一般的になれば、ビジネスについても自然に話し合える場所になるだろう。

オンラインで仕事し、バーチャルでやりとりする人々が増えるにつれ、私たちが直面する大きな課題は、今市場にあるZoom通話やバーチャル会議用に出回っている技術の範囲を超えて、直接人々と触れ合って会話しているような状態へどうやって持っていくかだ。バーチャル世界で歩き回ることができなければ、それは難しいだろう。Zoom通話やその他のブロードキャストソフトで各自がボックスに収まっているだけでは、気さくに小さなグループを形成したり、1対1でやりとりできない。バーチャル世界の技術を基にした、バーチャルビジネス会議がどのように発展していくかを見るのは興味深い。この課題に取り組む企業をいくつか目にしている。

最後の質問になるが、今後大規模な経済不況が予想される。バーチャル世界で収入を得ている人々は、コロナウイルスでどのような変化に見舞われるのだろう。

私のシリーズ記事の最後から2番目では、バーチャル世界をめぐり形成されたバーチャル経済を扱っている。バーチャル世界であればどれでも、商業行為が行われており、人々はすでにゲームやSecond Lifeといった初期のバーチャル世界から実際の収入を得ている。

コロナウイルスの影響で自宅に待機する人々と、今後予想される不況の両方が、オンラインで収入を得るよう人々を後押しするだろう。バーチャル経済がゲーム内に公式に組み込まれた場合や、ゲームをめぐる未認可や非合法に形成されるバーチャル経済(こちらの方が一般的だ)のいずれであれ、その活動は増え続けるだけだ。

ありがとう、Eric。

画像クレジット: Shutterstock

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(翻訳:Dragonfly)

今どきリンク共有サイトが話題になりシード資金61万ドルももらうとは?…情報過剰へのひとつのソリューションThis.

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最初はWho(誰)で、二度目はWhat(何)かもしれないけど、このお話の主人公はいつもつねにThis(これ)なのだ。そのThis.が今、初めてのシードラウンドをやっている。Atlantic Mediaで孵化した同社は、“ジャーナリズムとアートとエンタテイメントに関して情熱的な人びとのためのキュレーションプラットホーム”、を自称している。しかし、これだけでは、さっぱり分からないね。

このサービスのユーザは、気に入ったコンテンツのリンクを一日に一つポストして、それを互いにシェアする。ということは、今のSNSなどと違って、ノイズがほとんどない、ということなのだ。

ファウンダのAndrew GolisはAtlanticの社員起業家だったが、そこを飛び出てThis.を作った。61万ドルのシード資金は、エンジェルたちと、シード専門のVCたちからだ(The New Republic Fund、Matter Ventures、FusionのCTO Hong Qu、元Twitterのメディア担当VP Chloe Sladden、そしてJohn S. and James L. Knight Foundation)。

GolisはかつてFrontlineのデジタルメディア担当ディレクター、その前はYahooでYahoo! Newsを担当し、TalkingPointsMemoのパブリッシャー代理でもあった。

Golisは語る: “FrontlineやAtlanticで痛感したのは、今ではソーシャルネットワークがメディアの王座を奪いつつあるけど、本当に自分の時間を費やしたくなるコンテンツを、なかなか見せてくれないことだ。むしろ彼らはパブリッシャーやアクティブユーザたちを商業的に刺激して、量の競争に走っている。だからますます、すばらしいコンテンツに出会う機会が、枯渇している。2013年の秋に、某大学のランチタイムで、ぼくの不満を説明したときに、‘ぼくが毎晩欲しいと思うのは、Ta-Nehisi Coatesからのメールひとつだけだ。メールのタイトルはいつも「This.」で、内容はたった一つのリンクだ’、という例話をした。そしてそのとき、このThis.はすごいアイデアだ!とわれながら思った”。

こうして、This.が生まれた。

元Tumblrの社長でThis.に投資しているJohn Maloneyはこう言う: “This.には自己規制があるのが良いね。Golisと彼のチームは、今のインターネットの大きな問題を解決しようとしている。Webには毎日にように、とっても良いメディアがあるけど、雑多な情報の供給過剰の中でそれを見つけるのは、ますます難しい”。

サイトは今非公開ベータだが、ユーザ数は約4500。秋には一般公開される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa