元みんなのウェディング社長の飯尾氏、再び表舞台へーー辞任から新サービス立ち上げまでの空白の4年を語る

先日オウチーノとの経営統合を発表したみんなのウェディング。同社では東証マザーズ上場直後の2014年9月期に実態を伴わない売上が計上されていたことが明らかになり、当時、代表取締役だった飯尾慶介氏は、同年12月に代表取締役を引責辞任している。

売上計上があったのはBridal事業本部。従業員の親族のウェディングを施行したとして1200万円が計上されていたものの、そのウェディングは実際には行われておらず、飯尾氏らの指示でBridal事業のプロモーション映像を撮影したものだった。売上の入金は飯尾氏の個人資金から行われていた。

ほぼ4年前の出来事を僕たちが今こうしてお伝えするのには理由がある。その飯尾氏が、みずから会社を立ち上げ、新サービスを手にスタートアップ業界に戻ってきたのだ。TechCrunch Japanは、辞任と新会社の立ち上げまでの空白期間、そして、飯尾氏が手がける新しいサービスについて聞いた。

空白の4年間

「私を応援してくれた人がいるにも関わらず、自分の未熟さと弱さのせいで過ちを起こしてしまった。一連の会計プロセスに当事者として関わってしまった」ーー当時を振り返り、飯尾氏はこう語る。コミットした数字を達成できないというプレッシャーがあり、それに屈してしまったことが原因だと彼は話す。

「辞任した後、約半年間は外にも出ずほとんど家で寝込んでいた。メンタルを崩し、本当に恥ずかしい話だが、死んでしまおうと思ったこともある」(飯尾氏)

みずからが犯した過ちであるとは言え、精神的に大きなダメージを受けた飯尾氏が少しずつ生気を取り戻し始めるきっかけとなったのは、あるVCから受けた依頼だった。

「某VCの社長から、彼らの投資先でCGMを手がけるスタートアップにアドバイスをしてほしいと言われた。そこで、DeNA時代から実践してきた“口コミの集め方”をそのスタートアップに教えることになった。その間、彼らは一生懸命に僕の話のメモを取り、『本当に助かりました』と感謝してくれた。僕が持つノウハウが役に立つことを実感でき、とても嬉しかった」(飯尾氏)

それから、飯尾氏は約1年間ほどVCを通したスタートアップへのアドバイスを続けた。なかにはエンジェルとして出資をする例もあったようだ。

「自分にとっては当たり前の知識でも、それをシェアすると感謝される。例えば、魚屋さんの“当たり前”である魚の捌き方は、他の人にとってはありがたい情報だ。じゃあ、みんなの当たり前をシェアする場があればお互いに感謝し合えるのではないか。そんな妄想が生まれるようになった」(飯尾氏)

みんなの当たり前をシェアする場

飯尾氏が手がける新サービス「soeasy buddy(ソーイージーバディ)」は、自分が持つノウハウをシェアする場として機能する。企業向けに開発された同サービスでは、従業員がみずから持つ営業や接客のノウハウをスマホで撮った短い動画で他の従業員にシェアすることができる。従来の体系化された研修制度をリプレースするサービスだ。

研修用に用意されたマニュアルは、時間が経つにつれて劣化してしまう。それに、そういったマニュアルは必ずしも現場で活躍する人が作成していないこともあり、現実とはかけ離れた内容になってしまうこともある。

一方のsoeasy buddyは、実際に現場で働く従業員がみずからのノウハウを自発的にシェアする場だ。サービスの利用が活発化されれば、そこにある情報の鮮度も保たれる。チャット機能やクエスチョン機能を設けることで、生まれた疑問をすぐに解決することもできる。

ただ、いくら“自発的”とは言え、動画を投稿するために何らかのモチベーションを与える必要はある。だから、soeasy buddyでは動画の投稿回数やコメント数によって組織への「貢献度」を偏差値として測定し、それを人事評価に生かすこともできる仕組みになっている。

soeasy buddyは2018年4月にリリース。化粧品業界やブライダル業界を中心に、数十社への導入済みだという。

上場企業だったみんなのウェディングとは違い、soeasy buddyはまだ始まったばかりのサービスだ。運営企業であるsoeasyの資本金も、エンジェル出資と飯尾氏の個人資金を合わせた約8000万円で、まだ本格的な外部調達は行なっていない。まさに、僕らが普段から取り上げるスタートアップだ。企業規模だけで言えば、soeasyとみんなのウェディングには天と地の差がある。それでも、このサービスについて語る飯尾氏の目は明るい。

「綺麗ごとかも知れないが、目先の売上ではなく、世界中の人々が使うようなサービスを作りたい。自分たちのプロダクトで世界がちょっと変わったよね、ということを実現したいと思っている。役に立つプロダクトを作ることでしか、自分の過去は償えないと思う。僕には他のことはできないから」(飯尾氏)