朝日新聞社がオウンドメディア運用支援を手がけるサムライトを買収

朝日新聞社は4月14日、サムライトの全株式を取得することで合意したことを明らかにした。買収額は非公開。

4月下旬に開催する臨時役員総会を経て創業者で取締役会長の柴田泰成氏、現在代表取締役COOを務める池戸聡氏が再任され、引き続き経営を担当する予定だ。加えて朝日新聞社からは1人取締役が派遣される。サムライトは今後社名変更などを行う予定はないという。サムライトは朝日新聞傘下で既存事業を行うほか、共同での営業・商品企画なども進める。つまり朝日新聞社がグループとして本格的にオウンドメディア分野に参入するということだ。

サムライトは2013年9月の設立。柴田氏は楽天の広告事業の出身。また池戸氏はネット広告のセプテーニの出身で、楽天時代の柴田氏の業務上のパートナーだった人物。なお柴田氏はインキュベイトファンドが開催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 5th」(2013年開催)で優勝。現在はインキュベイトファンドのFoF(Fund on Funds)の1つ、ソラシード・スタートアップスで投資も手がけている。

現在サムライトの社員数は50人。インターンも少なくないようだが、それも含めて(クラウドソーシングなどではない、という意味で)「内製」でのコンテンツ制作に注力することで、コンテンツの品質向上に努めているという。これまでに累計で約100社のオウンドメディアの企画や運用支援を行ってきた。その中にはサッポロビールやアデコといった大手企業も名を連ねる。

このほかネイティブ広告の企画や制作、自社開発したオウンドメディアのネイティブ広告ネットワーク「somewrite ad」をコンテンツ制作とセットで提供。支援するオウンドメディアの価値向上に努めてきた。同社はすでに単月黒字化を達成しているという。

朝日新聞社によると、両社は朝日新聞社が2015年秋に開催したプレゼンテーションイベントで出会ったという。そこから朝日新聞社の新規事業・投資部門である「朝日新聞メディアラボ」を通じて提携や買収までの道を模索した中で100%子会社として買収するに至った。

(追記:4月14日14時10分)なお複数関係者によると、買収額については非公開ではあるものの、投資サイドにもファイナンシャルなリターンのある、かつ気鋭のメディア運用支援の会社と歴史ある大手メディアが連携する非常に好い事例だという話を聞いた(金額は出せないが、スタートアップにありがちな「うまくいかなかった事業を手放す」という救済的な買収ではないということだ)。大手メディアと新興メディアの組み合わせというと、まれに文化面の違いなどで苦労するなんて話もあると聞くが、両社ははたしてどのようなシナジーを生み出していくのだろうか。

オウンドメディア支援のサムライトがグリーベンチャーズなどから1.2億円調達、ネイティブ広告ネットワークを展開

企業が消費者に向けて情報を発信するオウンドメディア。その記事作成や編集といった制作支援事業を手がけてきたサムライトが、これまでの実績を生かしてネイティブ広告ネットワークの展開を本格化する。同社は10月10日、グリーベンチャーズなどを引受先とした1億2000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

サムライトは2013年9月の設立。代表取締役の柴田泰成氏は、楽天でアドネットワークなど事業を手がけた後、リクルートで家具を取り扱うメディア「TABROOM」を立ち上げた人物。インキュベイトファンドが開催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 5th」(2013年開催)の優勝者でもある。

同社では現在、編集者10人、外部ライター100人超をネットワーク化してオウンドメディアのコンテンツ制作から運営までを手がけている。現在20媒体以上のオウンドメディアを手がけている。また、オウンドメディアのキュレーションメディアである「somewrite.jp」も展開している。somewrite.jpでは80社のオウンドメディアと連携している。これらの事業と並行する形でネイティブ広告ネットワーク「somewrite ad」を開発してきた。サムライトでは、ライターのネットワーク、オウンドメディアのネットワーク、ネイティブ広告のネットワークを合わせて「サムライト ネットワークス」と呼んでいる。

somewrite adは、形態素解析によってページの文章を解析し、同時にユーザーの求めるコンテンツをリアルタイムに学習していくことで、コンテンツの内容やユーザーの好みに合わせて関連記事やネイティブ広告を表示するというもの。ネイティブ広告だけでなく、関連記事なども表示されるため、サイト回遊率の向上も見込めるという。サムライトでは10月より試験的な運用を開始している。「リターゲティング広告でユーザーを追いかけ回したり、ミスタップを誘うスマートフォン広告はひどいと思うが、これまでビジネスとしては自分もそこに荷担していたので気持ち悪かった。今の事業では、『自分の見たいと思った記事がたまたま広告だった』という状況に変えていくことができると思っている」(柴田氏)

米Outbrainや東大発スタートアップのpopInなど先行する競合がいるが、オウンドメディアのネットワークやコンテンツ制作までを手がけられるのが同社の強みだと柴田氏は語る。「オウンドメディアの運営代行も、ネイティブ広告が広がることを見越して始めた。これからは広告が記事そのものになる時代だ。だが一方で海外の事業者などは(広告配信の)システムは持っていても、コンテンツを取っていけない。我々はsomewrite.jpを運営することでコンテンツ持っている人たちとの接点作りから始めて、その次にオウンドメディアを運営を手がけてきた。その状態で満を持してsomewrite adを開始した」(柴田氏)。

オウンドメディアの運営代行の金額を聞いたところ、月額15万円程度から展開しているとのことだったで正直利益が出ているのか?とも思ったのだけれど、そもそもそこはメディアのネットワーク作りと割り切っているところがあり、マネタイズの中心となるのはsomewrite adなのだそうだ。オウンドメディア運営代行としてはセールスフォースやDraper Nexusなどから資金を調達しているイノーバなどもあるが、事業の方向性が異なるようだ。

サムライトでは今後、ポータルサイト、ニュースサイトを中心にネイティブ広告ネットワークの拡大を目指す。「ページビュー(PV)は重要視していないが、月間20〜30億PVを1年以内に目指す。ただしネイティブ広告はサイトの一番下に張っておけばいいというわけではない。コンテンツとして広告を表示できるようにしていく必要がある」(柴田氏)