“PriceTech”の空が駐車場の料金最適化に向け、NTTル・パルクと実証実験開始

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは1月7日、駐車場開発・運営のNTTル・パルクとコインパーキングの料金最適化の実証実験を開始し、ダイナミックプライシング導入に向けた検討を始めることを明らかにした。

空は「あらゆる価格を最適化し、売り手も買い手も嬉しい世界を作る」をミッションとして、ダイナミックプライシングに関するサービスを提供するスタートアップ。2016年には、ホテル・旅館業を対象にしたダイナミックプライシング(動的に変動するリアルタイムな適正価格による値付け)の支援サービスとして、MagicPriceを提供開始している。

MagicPriceでは、ホテルが客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売価格を提案。ホテルの担当者は簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

NTTル・パルクとの実証実験でも、競合企業のWebサイトなどからデータを自動収集・分析して、AIが適切な駐車料金を提示する。実験は首都圏を中心とした約400カ所のコインパーキングで実施予定。従来は月1回程度だった料金変更のタイミングを週1回へ変更して、より柔軟に値付けを行っていく。看板の表示料金については、当初は担当者が人力で張り替えるそうだが、今後デジタルサイネージにより、遠隔・リアルタイムでの料金変更も目指すという。

今回の実証実験は、昨年9月、NTT東日本アクセラレータープログラム「LIGHTnIC」第3期企業に空が採択されたことをきっかけに、スタートした取り組みだとのこと。空では昨年11月にも、電通と共同でリテール業界でも実証実験参加企業を募っており、今後、他業種・他業界にもプライシングサービスを展開していく考えだ。

“PriceTech”の空が電通とのタッグでリテール業界進出へ、実証実験店舗を募集開始

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは11月26日、電通と共同で、リテールAI研究会流通部会に「ダイナミックプライシング分科会」を立ち上げたことを明らかにした。小売店舗へのダイナミックプライシング適用の可能性を検討するため、同会に参加する会員企業の中から、実証実験に参加する企業の募集を開始する。

空が2016年から提供しているMagicPriceは、ホテル・旅館業を対象にしたダイナミックプライシング、すなわち動的に変動するリアルタイムな適正価格による値付けの支援サービスだ。ホテルが客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売価格を提案。ホテルの担当者は簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

実は同社は、かなり早い段階からダイナミックプライシングを、ホテル業界だけでなく他業界にも適用することを目指してきた。2017年開催のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで最優秀賞を受賞した際のピッチでも、空代表取締役の松村大貴氏が「あらゆる価格を最適化し、売り手も買い手も嬉しい世界を作りたい」とプレゼンを行っている。今回のリテール業界進出は、空にとっては満を持してのホテル業界外への展開となる。

リテールAI研究会には流通関連商材のメーカー、卸とその関連企業が中心に参加する「正会員」「賛助会員」と、スーパー、家電量販店、ドラッグストア、アパレルなど、小売り販売を行うさまざまな業界の流通企業が参加する「流通会員」の3組織があるが、ダイナミックプライシング分科会は流通会員が属する流通部会内に設立された。

空と電通では、分科会を通じて小売店舗におけるダイナミックプライシング導入を目的とした実証実験への参加企業を募る。空によれば、今のところ具体的に参加を表明している企業はいないそうだが、今後進める実証実験の中で、空はホテル業界支援で培った価格データ分析に関する知見を、電通は流通業界に関する知見を提供し、小売でのダイナミックプライシング適用の可能性を検討していく。

ホテルと、スーパーやドラッグストアなど多品目を扱うリテールとでは、データ収集の大変さやプライシングの難易度も違ってくるのではないかと思われる。空では、こうしたリテールならではの課題について「小売事業者とのディスカッションを通し、難易度やデータ量の差、対応しなければならない事項については明らかになっている」として、対応策についても検討、ディスカッションは行われていると説明。ただし「当社サービスを小売で実装した例はまだないため、今回の実証実験のなかでさまざまな手法の有効性を検証していく」と述べ、実証を実用化へ向けてのステップと位置付けている。

また、リアル店舗での販売が多いことから、店頭でのリアルタイムな価格変更に必要となるであろう「電子棚札」については、電通テックの支援を受けて導入することも可能にしている、とのことだった。

“PriceTech”の空にグロービスが出資、ラウンド全体で3億円を調達

写真左:グロービス・キャピタル・パートナーズ 渡邉佑規氏、右:空代表取締役 松村大貴氏

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは9月4日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)からの資金調達実施を発表した。今年5月に発表されたUB Venturesからの調達と今回の調達を合わせ、ラウンド全体では約3億円の調達となる。

顧客コミュニティ醸成で改善進むMagicPrice

TechCrunch Tokyo 2017の「スタートアップバトル」で最優秀賞を獲得した空。「世界中の価格を最適化する」というミッションを掲げる同社は、ホテル向けプライシングサービス「MagicPrice」を提供している。客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売料金を提案するMagicPriceは、ホテルの担当者が簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

2018年12月に、同社が提供していた市場分析サービス「ホテル番付」と名称を統合し、デザインやAIを改善するリニューアルを実施したMagicPrice。7月に東急ホテルズ所属の那覇東急REIホテルへの導入が決まるなど、各社・各地のホテルで順調に導入が進んでおり、顧客数は直近1年間で約5倍に伸びているという。

「顧客増に加え、カスタマーサクセスチームが中心になって、コミュニティを形成しながらホテル収益をどう高めていくかを学び合うなど、MagicPriceの使い方だけでなく、ホテル業界としていかに前に進んでいくかを語り合うような関係性になっている」(空代表取締役の松村大貴氏)

コミュニティの醸成により「より多くの顧客の声を集めることができるようになった」と松村氏は述べ、「開発チームもそれを聞いてプロダクトを改良する、というよい循環が生まれている」と話している。

他業界へのプライシングサービス展開もにらみ組織強化へ

GCPからの資金調達を得ることになったきっかけは、5月に出資発表があったUB Venturesの紹介によるものだと松村氏は明かす。GCPはユーザベースへ出資していた経緯もあり、ユーザベースからの高評価が、空へのGCPの出資を後押しした形となる。

「ユーザベースにならいながら、空がSaaS事業を伸ばしていくという点は、グロービスにとって魅力に感じてもらえたのではないか。ユーザベースにはSaaS事業の先生として、事業面や組織づくりなど、さまざまな面で教わることも多い」(松村氏)

今回の調達ラウンドではGCPがリードインベスターとなる。出資はGCP過去最大の400億円規模となる6号ファンドからのものだ。ユニコーン創出を目指す同ファンドから投資を受けたことについて、松村氏は「空がホテル向けのプライシングにとどまらず、“PriceTech”という新しいテーマの事業を創造していることと、価格戦略というどの企業にも共通のテーマを軸に大きな広がりを見せそうだというところに『大きく化けるかもしれない』可能性を感じていただけたのではないか」と語っている。

調達資金については、MagicPrice事業強化のための人材採用とマーケティングに充てるという空。既存プロダクトの強化とともに、プライシング支援サービスを他業界にも展開すべく、「データサイエンティスト、エンジニアや、各業界でクライアントのビジネスパートナーとなれる人材も集めていく」と松村氏は述べている。

今回、資金調達の発表と同時に、社外取締役としてグロービス・キャピタル・パートナーズの渡邉佑規氏を、監査役に空の財務・コーポレートアドバイザーを務めていた堅田航平氏を迎えることも明らかにしており、IPOを見据えた財務面の強化を図る構えだ。グロービスには「経営マネジメントを担うハイレイヤー人材の採用と、今後のファイナンス面でも協力を仰ぐ」と松村氏は話している。

【スタートアップバトルへの道】「プライシングで社会的なインパクトを」2017 Winner / 空 #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空CEOの松村大貴氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化や事業のアップデート、今後の展望などについて聞く。
(出場までの経緯や準備、登壇時に感じたことなどについて松村氏に聞いたインタビュー前半はこちらから)

採用活動への寄与は大きい

TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで見事優勝を果たした。その後、社内外では何か変化はあったのだろうか。松村氏によれば「社内的には大きな動きではないが、社員は『一気に会社の名前が知られて、友人にもあの会社にいるんだね、と認められるようになった』と話していて、その後の資金調達もこの勢いでがんばるぞ、と士気が高まった」とのことだ。

空CEO 松村大貴氏

「起業をすると誰でも、自分たちがやっていることが本当に正しいのか、世の中に価値あるものをつくれているのか、不安と共にやっている。バトル優勝は、それまでにやってきたことが間違っていないと認められる、ひとつの機会。働く人や顧客にも『僕らの関わる事業』『私たちが使っているサービス』として、一緒にそれを感じてもらえる点が大きいところだ」(松村氏)。

空のプロダクトを利用する顧客企業はホテル業界が中心で、TechCrunch読者が少ないことから、営業面では直接の反響は少ないというが、バトル勝利後に経済紙・誌の取材が増えたことで、PRや営業はしやすくなったようだ。また、採用の面では「かなり強くなった」と松村氏はいう。

「バトルの1年後に『あのとき、会場にいました』という人が入社してきたケースもある。また記事やイベントの動画で空のことを知り、『面白いと思った』という人も多く、採用への寄与が一番強かったのではないか」(松村氏)。

PriceTechに向け、より本格的にチャレンジ

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルなどに自動で最適な宿泊料金を提示するプライシングサービスの「MagicPrice」だ。そしてスタートアップバトルでは、同社の2つ目のプロダクトで2017年8月にリリースされた、ホテルの市場分析サービス「ホテル番付」が紹介された。

バトル後の約1年後、2018年12月にこれら2つのサービスは統合され、新生MagicPriceとして大幅にリニューアルされた。松村氏は「バトルのプレゼンでは『ホテルには経営指標が必要だ』と訴えたが、同時に『空の事業ドメインはプライシング』とも話していたとおり。空としては、プライシングはより長期で伸ばしたい事業領域。顧客にとっても付加価値が大きい、価格最適化を支援するサービスへ統合した」と説明している。

MagicPriceは同社の「PriceTechにより、世界中の価格を最適化する」との構想に基づき、プライシングの支援サービスとして、顧客数の成長率では1年で5倍以上に実績を伸ばしている。また会社の従業員規模も2倍以上に成長を遂げ、「空という企業のビジョン、ミッション、カルチャーに共感して集まってくれる人が増えている」(松村氏)。

今後の事業展望については「バトル当時に話していた空の未来が実現しつつある」と松村氏は語る。「プライシングはホテルに限らず、さまざまな業界での共通の経営課題だ。実際に最近ではホテル・旅館だけでなく、他業界でプライシングに悩む企業からの問い合わせが来るようになった。不動産関連やメーカー、小売など、さまざまな業種のアンテナ感度の高い企業で、新しい経営改善の手を探している。業界横断でプライシングサービスを展開できるよう、計画してやっていこうとは考えていたが、想定を超えて早く引き合いが来ている」(松村氏)。

今後、PriceTechへの本格的なチャレンジを図る空。松村氏は「プライシングでより大きな、社会的なインパクトがつくれる。最近発表した(2019年5月の)資金調達による後押しも含めて、成長を一気に加速させたい」と話している。

出るなら優勝すべき、プロセス自体もメリット

これからスタートアップバトルへの参加を目指す起業家に対しては、松村氏から「出るなら優勝すべき」と激励の言葉をもらった。「勝てるときに、勝つための練習をして、勝つためのメッセージを磨き込んで、勝つことに執着して出場した方が、意味のあることになる。バトルに優勝したからといって成功が約束されているわけではないけれども、プラスになることは多い」(松村氏)。

また松村氏は「全力で勝ちに行けば、結果が優勝でなくても、自分の会社の経営戦略を考えることとか、自分たちが世の中のために何をしたいのか定義をはっきりさせることにもつながる。出ると決めて、当日までに確固たるものにしていくという、プロセス自体もメリットになる」とも述べている。

「プレゼンのやり方については、型もフレームワークもいろいろとあるので、それほど特殊なことをしなくてもいい。よかったら僕の過去に書いたブログでもいろいろと発信しているので、参考にしてもらえればと思う」(松村氏)。

 

TC Tokyo 2019 スタートアップバトルの詳細はこちら。2019年9月30日までエントリーを受け付けているので、我こそはというスタートアップからの応募を心よりお待ちしている。

 

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【スタートアップバトルへの道】「出るからには優勝すべき」2017 Winner / 空 #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空CEOの松村大貴氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備、登壇時の感想などについて聞いた。

「勝てそうだ」と思ったから応募した

松村氏は「TC Tokyoには創業前の会社員だったころに、オーディエンスとして参加し、スタートアップの世界は面白いと感じていた」と明かす。大学在学中からシリコンバレーに旅行したり、起業家に会ったりしていて、起業を目指していた松村氏。「スタートアップの世界はクールで、僕にとってのスターは起業家たちの中にいた」という。スタートアップバトルは、そんな松村氏には“いつかは立つ舞台”として目に映っていた。

そんな松村氏がを創業したのは2015年。バトルへの応募を決意したのは2017年だ。「2017年になってサービスが伸び始め、事業への思いだけでなく実績が示せて、顧客業界でも役立ててもらっている、という段階になった。事業も好転していることから『今年出場すれば勝てそうだ』と思い、応募した」という松村氏。「出るからには優勝すべき」と出場タイミングも計算していた。

「2016年は、プロトタイプを試行錯誤しながらつくっていて、その年にはあまりピッチコンテストには出ていない。シード期の企業のためのコンテストで一緒に出場した同期のスタートアップの中には、2016年のTC Tokyoに出ていた企業も多かったが、『僕らはまだ勝てないな』と思ったので空では翌年出場した。結果、狙い通りに評価されたと思う」(松村氏)。

バトルに合わせてプロダクトリリースを計算

空CEO 松村大貴氏

「バトルに勝つために事業を進めていたわけではないけれども」と言いつつ、松村氏の周到な準備はプロダクトのリリース時期のスケジュールにも及んでいる。バトルで披露されたのは、空の2つ目のプロダクト「ホテル番付」。宿泊料金プライシングサービス「MagicPrice」に続いて公開された、ホテル向けの経営分析サービスだ。

プロダクトリリースは2017年8月。松村氏は「バトルの時点で導入件数など、数字が示せるように準備した。間に合うようにベータ版を用意して、先行登録の募集を開始し、実際に使ってもらって、フィードバックをもらえるよう、スタートアップバトルから逆算をして事業ステップをつくった」と話している。

当日のプレゼンの準備はバトルの2〜3週間前から実施。「プレゼンのだいたいの形を決めた後、練習を50回はしたと思う」と松村氏はいう。練習結果を反映しながら内容を変え、「より滑らかでより魅力が伝わるプレゼンになるように」練習と改善を繰り返した。松村氏は「TC Tokyoで優勝した後、よく『TC Tokyoのプレゼンを見た。今度ピッチコンテストに出るので相談させてほしい』と聞かれるのだけれど、『とにかく練習量をこなすのが一番』と伝えている」と語る。

プレゼンテーションのベースとなるフォーマットや話し方については、前年の2016年に参加した500 KOBE ACCELERATORのプログラムで、米西海岸でスタートアップのためのピッチコーチをしている人たちに教えてもらった型を、ほぼそのまま使っているそうだ。「解決すべき課題を示し、そこに対してソリューションや実績を提案していき、自分たちがなぜそれをやっているのか、きちんと語る。テンプレ化しているけれども、内容が一番伝わりやすいので、型に沿って発表した」(松村氏)。

プレゼンで力を入れたポイントは2つ。「成長率を示すこと」と「世界を変えるんだというメッセージを強調すること」だという。「実際に伸びているサービスだということを意図的に、印象に残るように心がけた。また、TC Tokyoではバトルに参戦するスタートアップに対して、審査員もオーディエンスもユニコーンを超えるような企業になることを期待して集まっている。小さな、ちょっとした課題を解決する中小企業になりたいわけじゃなく、この変革で世界を変えるんだ、と照れずにちゃんと言うこと、だから応援してもらいたいと示すことが大事だ」(松村氏)。

当日は「一緒に祭りをつくっている感覚」

バトル本番の当日について、松村氏は「イベントを運営するチーム、スタッフが一体となって、TC Tokyoを盛り上げようとしているんだなということが伝わってきて、『登壇者エクスペリエンス』としてはすごくよかった(笑)。舞台裏でのサポートも万全で緊張せずに舞台に立てたし、みんなで作り上げているイベントで一緒に祭りをつくっている感覚があり、楽しかった」と振り返る。

登壇の際も「練習していたので話すこと自体は勝手に口から出るようになっていたので、緊張はなかった。けれども高揚感はあり、会場の多くの人に向けて自分たちがやっていることを全力で伝えられる機会をもらったということがうれしくて、いい時間にしようと考えた」という。

また「せっかくだから対審査員だけでなく、オーディエンスに『こんな企業がいるんだよ』『こういうことをやっているんだよ』ということを伝えたい」と感じたそうだ。「話していることを聞いてくれている。それが目の当たりにできてうれしかった。ステージ上では後半になるほどしゃべりやすくなっていった」(松村氏)。

審査員からの質問についても「ちゃんといいところ、『まだ話し足りないんじゃないのか』という部分を質疑応答で聞いてくれた。質疑応答の時間も含めて、自分たちの魅力をアピールできた」という松村氏。念入りな準備が功を奏して、全体に余裕のある参戦となった様子だ。

 

インタビュー後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や事業のアップデート、今後の展望などについて松村氏に聞く。

 

空出身の宮崎氏がAI旅行提案サービスをリリース、4000万円超の資金調達も

2018年、スタートアップが進出する領域としてトレンドのひとつになった旅行関連サービス。チャットでざっくり条件を伝えるだけで旅行プランの提案・予約ができる「ズボラ旅 by こころから」や後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now」、LINEとTravel.jpとの提携でスタートした「LINEトラベル.jp」など、旅行領域への進出は盛んに行われていた。

大きな市場があり、ディスラプトする余地が残るジャンルとして、旅行カテゴリーはスタートアップや投資家にとって、まだまだ魅力的な開拓先のようだ。8月8日には、新たにAIを活用した旅行サービス「AVA Travel(アバトラベル)」のベータ版リリースが発表された。サービスを提供するのはAVA Intelligence(アバインテリジェンス)。創業者はホテルのプライシングサービス「MagicPrice」を提供、TechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得したで開発企画、マーケティング、広報PRを担当していた宮崎祐一氏だ。

メタサーチ+AIでスマートな旅選び体験を提供

AVA Intelligenceは2018年10月の設立。ユーザーデータをもとに、それぞれに合った選択肢や情報を提供するアバターAIを開発するスタートアップだ。今回リリースされたAVA Travelは、ユーザーの性格や旅行に関する条件をもとに、AIが適した旅行先を提案。旅行先情報の閲覧・保存から、航空券・ホテル検索までを1プロダクトでまかなえるサービスである。

宮崎氏は高校生の頃から起業すると決めていたそうだが、旅行サービスで創業しようと決意したのは、自身が約30カ国へ旅行した経験からだ。「予約サイトではサイトによって値段などが違い、情報の非対称性が大きい。また、それを解決するために価格比較サイトなどでよく使われている『メタサーチ』の手法では情報量が多くなりすぎて、逆にユーザーの選択が不自由になるという点に課題を感じた」と宮崎氏はいう。

AVA Travelでは、メタサーチによって旅行予約サイトや旅行情報サイトなど、複数サイトにある多くの情報を自動収集しながら、AIにより各ユーザーに合った情報だけを判断して提供。情報の非対称性は解消しつつ、自分に合った情報に絞って提案してくれる。

検索・提案の効率のほかに、既にある旅行提案アプリやサービスと違う点として宮崎氏が挙げるのは、「タビマエの提案サービスというだけでなく、タビナカ、タビアトといった旅行の一連のプロセスで一貫して使えるサービスを目指しているところ」だという。

「AVA Travelでは旅行先を決める際に必要なインスピレーションをAIが瞬時に与え、旅行先ではどんなことができるのかを詳しく見ることができる。これにより旅行メディアサイトを複数、自身で見に行く必要はなく、気に入った旅行先情報があれば、それをAVA Travelのユーザーページ内にストックできる。今回のリリースでは実装していないが、今後はこのストックした旅行先情報から簡単に旅行先スケジュールを生成する機能の実装も計画している。また、訪れた旅行先情報をまとめて管理したり、必要に応じて公開したりできる、タビアト機能も実装予定。タビログ管理ができることに加えて、このタビログ情報をもとにAIがよりユーザーの好みを理解し、学習するようになる予定だ」(宮崎氏)

今回のベータ版では、ユーザーはAIからの旅行提案を実際に受け、予約まで行える。AIの学習度や提案できる都市の数(現状では海外の100超程度の都市が対象)の関係でベータ版としてリリースしているが、今後AIの学習度を進め、日本国内の提案も可能として、正式版公開を目指すという。

「空での経験は実に多く生かせている」

宮崎氏は起業にあたり、「空での経験は実に多く生かせている」という。そもそもAIを活用してホテル料金の提案を行うMagicPriceとは「旅行×AI」という分野が同じ。それゆえ「旅行業界における知見や人脈、そしてAIの可能性、生かし方が感覚として身についている」と宮崎氏は述べている。

また「スタートアップでのサービスをグロースさせる経験ができたことも非常に良かった」と宮崎氏。空CEOの松村大貴氏は「起業家が日本にどんどん増えていってほしい」と語っており、その思いは宮崎氏も同じだという。「スタートアップで働く人がどんどん増え、またそこからさらに新しいスタートアップを創業する人が増えていって欲しいと思う」(宮崎氏)

今回、プロダクトリリースの発表と同時にAVA Intelligenceでは、サイバーエージェント・キャピタルインキュベイトファンドTRADコンサルティング汐留パートナーズを引受先としたJ-KISS型新株予約権方式による増資と、日本政策金融公庫、みずほ銀行からの融資による、総額4000万円超の資金調達実施を明らかにしている。調達資金は、さらなるプロダクト開発、採用とユーザーへのコミュニケーション強化などに充てるという。

写真左から2人目:AVA Intelligence代表取締役 宮崎祐一氏

TC Tokyo 2017バトル優勝「ホテル番付」、ベストウェスタンホテル系列10施設に導入

ホテル業界向けの市場分析サービス「ホテル番付」を提供するは11月1日、ベストウェスタンホテル系列の10施設へのホテル番付導入決定を発表した。

ホテル番付は、周辺ホテル・施設の客室価格や販売室数などをユーザーの代わりに自動で調査・分析。必要なタイミングで報告・提案してくれる、ホテルの客室価格決定のための市場分析サービスだ。

今回、ホテル番付を導入するのは、世界110の国と地域に広がるベストウェスタンブランドのホテルを、日本で展開する価値開発。同社が運営する以下の10施設にホテル番付の導入が決定している。

  • ベストウェスタン札幌大通公園
  • ベストウェスタンプラスホテルフィーノ千歳
  • ベストウェスタン山形エアポート
  • ベストウェスタンthe japonais米沢
  • ベストウェスタンホテルフィーノ東京秋葉原
  • ベストウェスタンホテル名古屋
  • ベストウェスタンホテルフィーノ大阪心斎橋
  • ベストウェスタン大阪塚本
  • ベストウェスタン沖縄恩納ビーチ
  • ベストウェスタン沖縄幸喜ビーチ

ベストウェスタンでは運営ホテル数が増加する中で、担当者が複数ホテルのプライシングを担当しており、負担が大きくなっていたという。適正価格の設定は職人技的な部分もあって、人材育成も難しい業務。価値開発は、ホテル番付について「マーケットの動きを素早く可視化でき、時間短縮・売り上げ改善チャンスの発見に役立っている。各施設でホテル番付の無料体験をし、現場のスタッフも活用してくれたので、全面的に導入を決めた」とコメントしている。

空はホテル番付を2017年8月にリリースする前に、客室料金設定を効率化する「MagicPrice」をリリースしている。市場分析のみ行うホテル番付と、プライシングまでできるMagicPriceの2つの製品をラインアップする形だ。だが、最近ではホテル番付を優先してプロダクトアップデートを進めてきた。

先月もホテルニューオータニ系列施設での導入が決まるなど、続々と宿泊施設への導入が進むホテル番付。そんな中、クライアントからは「ホテル番付の持つ市場分析機能と、MagicPriceが持つプライシング機能を一貫してサポートするようなサービスがほしい」との声も上がっているそうだ。

ホテル番付のプロダクトアップデートが一段落し、軌道に乗り始めたこともあって、空では年内にもホテルのレベニューマネジメント業務を一貫して支援するような、上位サービスのローンチを予定しているという。

ホテル番付は、昨年開催されたTechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を受賞したプロダクト。今年のTechCrunch Tokyo 2018では、空 代表取締役の松村大貴氏が、受賞以降のプロダクトアップデートやこの1年の事業の成長について紹介してくれる予定だ。

ホテルの市場分析・料金設定を支援する「ホテル番付」の空が1.7億円を調達

ホテル・旅館向けに、AIを使った市場分析と料金設定支援サービスを提供する空(そら)は7月12日、約1.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はベンチャーユナイテッドふくおかフィナンシャルグループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズ、エースタートマネックスベンチャーズ、ほか数名のエンジェル投資家。

空は2015年の設立以来、2016年7月にシードラウンドで数千万円の調達2017年10月に8000万円の調達を行っており、今回の調達は3回目、シリーズAラウンドに当たる。

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルや旅館などに自動で最適な宿泊料金を提示するBtoBサービス「MagicPrice」だ。MagicPriceはホテルが持つ過去の宿泊予約データと、公開されている旅行予約サイトなどから得たデータを分析し、適正な宿泊料金を提案。ホテル側は自社の方針に合わせて日ごとの料金ランクを決定し、サイトコントローラー経由で予約サイトに自動で反映することができる。

MagicPriceに続いて2017年8月にリリースされたホテルの経営分析サービス「ホテル番付」はTechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した。空 代表取締役の松村大貴氏は「今回投資に参加したマネックスベンチャーズについては、スタートアップバトルで審査員だった松本大氏(マネックスグループ 代表執行役社長CEO)と会話したことがきっかけとなった」と話している。

ホテル番付は当初、ホテル業界向けの効果測定・経営分析ツールとして登場したが、2018年4月からはエージェント型サービスにリニューアル。旧バージョンでも予約サイトに公開されている価格・室数情報を自動収集し、周辺ホテルの市場分析データをユーザーに届ける機能を備えていたが、新バージョンでは分析結果に基づく気づきや提案を、必要なタイミングでユーザーへ通知するスタイルに変わった。

リニューアルに伴い、基本無料で追加機能の使える有料版を月額1万円で提供してきた料金体系も変更。月額8000円の基本料金に、ホテルの規模に応じて部屋数で課金する形となっている。

2018年4月現在、ホテル番付とMagicPriceを合わせた利用ホテル数は1500件。松村氏は「利用が増えたことでフィードバックを得て、プロダクトの質も上がっている」と話す。

「料金体系の変更もよい決断だった。顧客の売上だけでなく単価もアップしており、我々もSaaS事業では重要なカスタマーサクセスに投資できるようになった。ひとつひとつ、相手に合わせたサポートプランを用意でき、満足度も向上し、ビジネスとしても成長している」(松村氏)

ホテル番付のリリースから1年弱、プロダクトの内容について模索してきたという松村氏。「今、いい型にはまったところで、サービスをよりスケールさせたい」と資金調達の意図について語る。

「調達資金はもっとチームを強くするために投資していく。プロダクトに自信が付いたところで、新しい顧客も集めたい。投資の半分はプロダクト強化のための技術開発へ、残りはセールスやマーケティングに使い、より顧客満足度を上げていきたい」(松村氏)

また、かねてから取材に対し松村氏が述べていることだが、価格決定に関わる技術を活用して、ホテル業界以外への事業展開も検討しているとのこと。

松村氏は「ホテル業界にビジネスモデルが近い業界、つまり価格決定がビジネスの成否に大きく影響し、かつプライシングのソリューションがない業界というのはいろいろある。実は他業界からも問い合わせがあり、1つ1つをプロジェクトとして検討し、見定めた上で進出したい」と話している。

「具体的にはホテル以外の旅行業界やイベントチケット、さらに飲食・小売業についても話があり、適用範囲は限りなく広いと考えている。各業界のすばらしい企業と組み、新規事業として展開することも狙っていく」(松村氏)

データでホテルの適正価格を自動算出、「MagicPrice」運営の空が8000万円調達

データ分析を駆使してホテルの適正価格を算出する「MagicPrice」を提供する空(そら)は、500 Startups Japan大和企業投資日本政策金融公庫、および複数のエンジェル投資家から総額8000万円を調達した。

2016年7月に行ったシードラウンドを合わせ、同社の累計調達金額は約1億円になるという。

空が提供するMagicPriceはホテル向けに提供するBtoBサービス。宿泊予約データを分析することで、ホテルなどの適切な料金設定を可能にするツールだ。

適正価格の予測にはまず、特定の月や曜日ごとの過去の傾向を分析し、その日の「ベース価格」を算出する。その後、近隣ホテルの料金設定や近所でイベントがあるかなどの外部要因によってベース価格を加減し、最終的に適正価格を割り出すという仕組みだ。

MagicPriceは、年に数回の季節要因だけでなく、その時々に確定している予約数の数など、需給要因による適正価格の変動も加味して、それをリアルタイムで反映するという。また、外部のホテル予約サイトの宿泊料金をMagicPriceが自動で適正価格に設定する機能も備えられている。

空代表取締役の松村大貴氏は、「たとえば、現在と1週間後の価格は予約状況などの要因によって適正価格がまったく異なることもある。MagicPriceはホテルの料金設定を継続的に改善するためのサービスだ」と語る。

インプットするデータは2種類。ホテル側のシステムから取り込むデータと、外部Webサイトからのデータだ。

2017年3月、空はホテル予約システム開発大手のダイナテックと事業提携を結び、同社の予約システムとMagicPriceを統合した。これにより、ホテルがダイナテック製のシステムを使っている場合は過去の宿泊予約データをMagicPriceに取り込むことが可能になった。

そのほかにも、MagicPriceは外部の旅行予約サイトから過去の宿泊価格データを取得している。

2016年7月にリリースしたMagicPriceの料金は月額3〜6万円(ホテルの規模により変動)。これまでに顧客として獲得したホテルの数は数十社だ。

「改善」と「効果測定」

2017年8月、空はMagicPriceに続き、第2弾目サービスとなる「ホテル番付」をリリースした。

ホテル番付は、MagicPriceと同じくホテル業界に向けたBtoBサービス。1万軒以上のホテル業績データをもとに、現在の料金設定が本当に業績向上に結びついているのかを把握するための効果測定ツールだ。

例えば、あるホテルが宿泊料金を見直した結果、前年同期比で売上があがったとしよう。でも、それが適切な料金設定によるものなのかは分からない。たまたまインバウンド旅行者が多かったのかもしれないし、近くでイベントがあったのかもしれない。料金設定が業績向上の要因になったかどうかは、近隣にある他のホテルと業績を比べて見なければ分からないのだ。

ユーザーがホテル番付を利用することで、自社の業績データと他社のデータを分析し、宿泊料金の見直しが業績向上にどれだけ寄与しているか調べることが可能だ。

でも、SORAは1万軒ものホテルの業績データをどうやって取得しているのだろう。松村氏によれば、ホテル番付はネット上に公開されている各ホテルの価格情報と客数情報からそれぞれの業績を推定しているのだそうだ。

上の画像にもあるように、SORAは各ホテルの毎日の販売価格と残り室数を記録し、前日との差から最低でも◯◯室、◯◯円分は販売されたことを計算する。そして、それらの数字を足し合わせて、各ホテルの売上や稼働率の指標を算出しているという。

「MagicPriceがホテルの料金設定を改善するためのサービスだとしたら、ホテル番付はその効果を測定するためのサービス。いわば、アドテク業界のGoogleAnalyticsのようなものです」(松村氏)

ホテル番付は無料のサービスで、リリースから約1ヶ月に約500軒以上のホテルが同サービスを利用しているという。

「適正価格の算出技術」を軸に、各業界へ

ホテル業界向けのサービスを複数展開しているSORAだが、彼らが目指しているのは「ホテルスタートアップ」ではないという。

その社名の通り、2015年創業のSORAはもともと、航空チケットの適正価格を算出するサービスを考案するスタートアップだった。しかし松村氏は、ほんの数社がシェアの大半を握る航空業界を、スタートアップであるSORAの営業体力で突破するのは困難だと判断。

創業時のヒアリングから、中小規模の事業者が数多く存在し、スタートアップでもサービスを浸透させられる可能性の高いホテル業界にまずはターゲットを決めたのだそうだ。

「私たちはテクノロジーで世界中の料金ミスマッチをなくしたいと思っています」と松村氏はいう。

「ビッグデータ分析が可能になっただけでなく、料金表は紙からオンラインに変わった。つまり、料金を自由に何度でも変更することが可能になった。これまで固定されていた価格がすべて、日々変動する適正価格に置き換わる時代が来ると確信している」(松村氏)

写真右から3番目が空代表取締役の松村大貴氏。