再起を目指すEVスタートアップFaraday FutureはSPACを通じた上場を計画する

複雑な過去を持つ、電気自動車のスタートアップFaraday Futureが、特別買収目的会社(SPAC)を通じての上場を計画している。

同社のCEOであるCarsten Breitfeld(カルステン・ブライトフェルド)氏がロイター通信に語ったところによると、同社は現在、SPACとの逆合併に取り組んでおり、「早い時期に良い展望を発表できるだろう」という。

ブライトフェルド氏は中国のEVスタートアップであるBytonの共同創業者で、現在のFaradayの交渉相手や契約締結の時期については何も話さなかった。TechCrunchがコンタクトしたFaraday Futureの広報担当者も、今は詳細を明かせないと述べている。

SPACはブランクチェックカンパニー(白紙小切手企業)で、IPOで資金を調達するために創立され、その資金で他の企業を合併または買収する。最近SPACはテクノロジー企業界隈で人気がある。それは、多くの企業がパンデミックのためIPOが計画より遅れているからだ。SPACはまた、従来的なIPOを取り巻く規制の問題に、それらに代わるものを提示する。

2019年にCEOに任命されたブライトフェルド氏はAutomotive News誌に、Fraday Futureは2020年の第1四半期までに8億5000万ドル(約898億円)の資金を調達したい、と述べている。当時の同社はすでに、Birch Lake Associatesが率いるラウンドで2億2500万ドル(約238億円)のつなぎ資金を受け取っていた(未訳記事)。資金の目的は、Faradayのフラグシップモデルであるラグジュアリー電動SUV、FF91をついにデビューさせることだ。

そのSPACとの契約のタイムラインはまだ公表されていないが、ブライトフェルド氏はロイターに、Faraday Futureは初めての電動ラグジュアリーSUVであるFF91の量産を、資金を確保次第開始する計画だと語っている。それは2015年に創業された同社の大きな節目となるが、その量産モデルは未だに生産されていない。プロトタイプはいくつか作られており、そのうちの1台は2020年8月にオークションに出品されている。

ロイターへの談話の中でブライトフェルド氏は、契約がうまく行けばFF91を最初はカリフォルニア州ハンフォードの工場で生産するが、すでに合意に達しているアジアの契約生産者との話も進んでいる、と話している。

Faraday Futureの財務問題は2017年にさかのぼる(未訳記事)。その際は同社と密接な仲だった中国のテクノロジー企業であるLeEcoが、それ自身の複数の財務的トラブルを処理し始めた(未訳記事)。しかしそれらの問題は、Faraday Futureが2018年に同社の主な支援者だったEvergrande Healthbeganに振られたときにさらに悪化した(未訳記事)。

問題の多くは、LeEcoとFaraday Futureの創業者で元CEOのJia Yueting(ジア・ユエティン)氏と関連していた。彼は2020年初めに個人破産を申請した(The Verge記事)。申請文書は、ジア氏の自己破産費用をFaraday Futureの主要持株会社の1つであるPacific Technologyが出していたことを明らかにしていた。さらにその文書は、Faraday Futureのキャッシュが2019年7月末でわずか680万ドル(約7億1800万円)であることも、明らかにしていた。

ブライトフェルド氏はロイターに対して、現在、ジア氏はFaraday Futureの株をまったく所有していないと語っている。ジア氏の破産が認められ、Faraday Futureはもう一度、同社の電動車を生産するための投資を求めることになったが、現状それは、SPACとの契約の成功にかかっている。ブライトフェルド氏は、Faraday Futureの過去が問われることを覚悟している。「同社の経歴と時々流れる悪いニュースのために、誰も私たちを本当に信用しているわけではない。彼らは、安定した企業になった私たちを見たいのだ」と同氏はロイターに語っている。

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EV充電ネットワークのChargePointがSPACとの合併を経て上場へ

2020年、Canoo、Fisker Inc.、Lordstown Motors、Nikola Corp.などの電気自動車(EV)のスタートアップが、SPAC(特別目的買収会社)と合併して上場した。そして今、長くなる一方のSPACのリストにEV充電会社が加わり始めた。

EV充電ネットワークであるChargePointは、特定目的買収会社のSwitchback Energy Acquisition Corporationと合併する契約を結んだ。ChargePointのバリュエーションは24億ドル(約2520億円)。同社は、Pasquale Romano(パスカル・ロマーノ)社長兼CEOと現在の経営陣が引き続き率いる。新会社はChargePoint Holdings Inc.の社名でニューヨーク証券取引所に上場する。同社は合併が年末までに完了すると見込む。

同社はBaillie Gifford(ベイリー・ギフォード)氏などの機関投資家やNeuberger Berman Alternatives Advisors(ニューバーガー・バーマン・オルタナティブ・アドバイザーズ)が管理するファンドがリードした2億2500万ドル(約240億円)のPIPE(公開会社への私募増資)で資金を確保できたと述べた。同社の手元現金は約6億8300万ドル(約720億円)に上る。増資で調達したキャッシュは、負債返済、事業資金、成長資金などに使う。

「EV充電業界は成長しており、2030年までに充電インフラへの投資は1900億ドル(約20兆円)になると予想されている」とSwitchbackのCEO、CFOおよびディレクターのScott McNeill(スコット・マクニール)氏は声明で述べ、「ChargePointは求められているインフラを供給する良いポジションにいる」と付け加えた。

ChargePointはEV用のハードウェア、付随するソフトウェア、クラウドサブスクプラットフォームを設計、開発、製造している。同社はEVやSUV向けの公共・半公共の充電スポットだけでなく、家庭用充電器のブランドとしても良く知られている。またChargePointは、フリートオペレーター向けに配達用バン、バス、乗用車を管理するハードウェアとソフトウェアを提供する商用ビジネスも行っている。同社は世界全体で11万5000以上の充電スポットを持つ。北米と欧州全体のネットワークとのローミングにより、さらに13万3000カ所の公共スポットへのアクセスを提供する。

2007年創業の同社は、新しく得た資金を使って北米と欧州での拡大、技術ポートフォリオの改善、商用・フリート・住宅向け事業の大幅な拡大を計画していると語った。

ChargePointのSPACとの合併は1億2700万ドル(約140億円)の資金調達(未訳記事)の1カ月後に行われた。調達には石油、ガス、電力、ベンチャー業界の既存投資家から、American Electric Power、Chevron Technology Ventures,、Clearvision、Quantum Energy Partnersが参加した。

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(翻訳:Mizoguchi

世界中を特別買収目的会社だらけにしたいVCがさらに3つの特別買収目的会社を創設  

特別買収目的会社(SPAC)が世界を支配しようとしている。少なくともパリハピティヤ氏の未来のポートフォリオでは。

Social Capitalの創業者であるChamath Palihapitiya(チャマト・パリハピティヤ)氏は、早くもSPACに3倍賭けしている。この「白紙小切手」とも呼ばれる投資の仕組みは、非公開企業を捕まえて、彼らを公開市場にひょいと載せるものだ。彼の最初のSPACは2020年にVirgin Galacticを買収で、2つめは今週Opendoorを買収した(未訳記事)。後者は、この簡易住宅販売プラットフォームを総額48億ドル(約5020億円)に押し上げる大当たりになった。しかも、キャッシュの出番はほとんどない。彼の3つ目のSPACは2020年4月に公式に資金を調達しているが、まだその発表はない。

その彼が今や、3倍賭けに倍賭けしようとしているようだ。米国時間9月18日にウォール街のベルが鳴った後でこのベンチャーキャピタリストは、3つの新しいSPACをSECに申請した。Social Capital Hedosophia Holdings Corp. IVは公称値3億5000万ドル(約366億円)、Social Capital Hedosophia Holdings Corp. Vは6億5000万ドル(約680億円)そしてSocial Capital Hedosophia Holdings Corp. VIは10億ドル(約1046億円)だ。

公称値は目標だ。各SPACはこれから投資家への売り込みを開始し、公式に資金を調達してから、買収ターゲットの物色を始められる。各SPACはそれぞれ独立した企業であり、同じ投資家を共有してもよいし、完全に独自の投資家を揃えてもよい。

3つの新しいSPACは同じ経営者を共有する。パリハピティヤ氏自身と、HedosophiaのIan Osborne(イアン・オズボーン)氏、Social CapitalのCFOであるSteven Trieu(スティーブン・トライウ)氏、そしてHedosophiaのチーフアドミニストレーションオフィサーであるSimon Williams(サイモン・ウィリアムズ)氏だ。

ただし、それぞれに5人目の取締役いて、たぶんそれが各SPACの戦略の違いを表すことになる。人気のソーシャルネットワークであるNextdoorの共同創業者でCEOのNirav Tolia(ニラヴ・トリア)氏が第4のSPACに加わり、元Facebook(フェイスブック)のエンジニアリングのトップで2020年初めに辞めた(CNBC記事)Jay Parikh(ジェイ・パリフ)氏が第5のSPACに、そして6つ目のSPACには、Twitter(ツイッター)の元CEOで今はベンチャーキャピタリストのDick Costolo(ディック・コストロ)氏が加わる。

TechCrunchも、2020年におけるSPACの加速ペースを話題にしてきた。そしてそれはここでは、Social Capitalという動きをめぐる小宇宙に現れているようだ。パリハピティヤ氏とHedosophiaは、SPACという仕組みに大志を賭けているだけでなく、それらへの資金調達の仕組みを整え、成長に導く道なら何でも歓迎するマーケットを利用していきたいようだ。

関連記事:勢いづくSocial Capital Hedosophiaが4番目の「特別買収目的会社」を申請、500億円超の調達を目指す

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

勢いづくSocial Capital Hedosophiaが4番目の「特別買収目的会社」を申請、500億円超の調達を目指す

Social Capital Hedosophia(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィア)は、新たな特別買収目的会社のために5億ドル(約523億円)の資金調達を行う計画をSEC(米証券取引委員会)で内々に申請(Bloomberg記事)した。

これはChamath Palihapitiya(チャマト・パリハピティヤ)氏と、同氏の長年の投資パートナーであるIan Osborne(イアン・オズボーン)氏が指揮を執る同社にとって4番目の特別買収目的会社(SPAC)だ。

驚くべきことに、ほかに何十社も計画中だと言われている。自身が共同ホストをつとめる「All-In Podcast」で、パリハピティヤ氏はニューヨーク証券取引所のティッカーシンボルを「IPOA」から「IPOZ」まで予約済みであることを最近明かした。さらに同氏は、それぞれの取引に自身の資金1億ドル(約106億円)をつぎ込んで、出資者候補と意識を共有していることも語った。

どんな筋書きなのか。パリハピティヤ氏はポッドキャストで、連邦準備銀行の経済・金利予測と今後数年間ゼロ金利を続けるという計画を指摘した。「つまり、率直に言って、いかなるタイプであれ短期的インフレの可能性はない」。

それが、「投資家は時間をかけて株式のリターンを得るようになる、なぜなら無リスク金利はゼロであり近々マイナスになるからだ。そしてあなたが資産管理者なら、すべきことはなにか?」。

彼は「あなたはカリフォルニア州の年金システムを運用しているとしよう。何千億ドルもの資金があり、年金が破綻しないように年に5~6%の運用益を出さなくてはならず、政府からは何ももらえない。誰もがその状態にあるとき、あなた著しいロング(買い)になる。だから一般的にこうしたチャンスは買いのチャンスであり、今私は以前よりも強気にでている」と説明する。

実際、非公開株と公開株への投資を比べた場合「乗る価値があるのは公開企業だけだと私は思っている。それは、気を悪くしてほしくないのだが、公開市場で良い株を見つけるのが非常に得意な人なら、Sequoia CapitalやBenchmarkといった最高のベンチャーファンドよりもよいリターンを得られる。多くの人たちがTwitterで、そういうVCたちがアーリーステージ市場でどれほど成功しているかをまくしたてているのを見ているが、どれも小さな金額であ大した意味はない」。

彼が意気盛んなのにはもちろん理由がある。Social Capital Hedosophia最初のSPACは、2017年に資金調達し、最終的に昨年、宇宙旅行会社のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)と合併して現在40億ドル(約4185億円)を少し上回る時価総額を、公開市場の株主たちから得ている。

同社2番目の今年4月に資金調達したファンドは、住宅用不動産売買のOpendoorとの合併を米国時間9月15日に発表した(未訳記事)が、Opendoorは、未だに不確実な経済環境の中で伝統的IPOプロセスで上場することは難しかったかもしれない。

Social Capital Hedosophiaの3番目のSPACは同じく今年4月立ち上げられた。まだターゲット企業を公表していないが「IPO Proceeds(公募で得た手取金)を使って主要拠点が米国以外のテック企業を買収するつもりだ」と同社は明らかにしていた。

SPACは、歴史的には華々しい評判を得てはいないが、ここ最近は多くの投資家の興味を引きつけていることは間違いない。SPCInsider誌によると、2020年だけで100近いSPACが設立され、わずか7社だった10年前から急増している。

Sequoia Capitalは、Zoom、ByteDance、Snowflakiを始め新聞の見出しを飾る会社を数多く抱えている目覚ましい年を迎えているが、同社の米国の責任者であるRoelof Botha(ロエロフ・ボータ)氏は米国時間9月15日のインタビュー(未訳記事)で、SequoiaはSPACを立ち上げることについて、ありそうにないとしながらも「可能性は排除していない」と語った。そして、IPOプロセスを巡って「もっと多くのイノベーションがあるという事実を大いに喜んでいる。それが企業の選択肢を増やすからだ」と続けた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

金属3DプリントのDesktop Metalはまさに「金のプリンター」、Kleinerのリターンは投資額の10倍

「金属をプリントする」技術を携えたDesktop Metal(デスクトップ・メタル)は、ひさしぶりにボストンから現れたおもしろいスタートアップだ。3Dプリント市場で大成長する可能性がある。通常3Dプリントでは柔軟性のあるポリマーが材料に使われるため、プリンターが「印刷」できる材料によって、製品のタイプが限られてしまう。なので、数週間前にこの会社がSPAC(特別目的買収会社)の目に留まったのは、ごく自然なことだった。すべてが順調にいけば、2020年末には株式が公開される。

米国時間9月14日朝、Trine(トライン)というSPACとこのスタートアップは、最新の財務と株主に関する報告書を米証券取引委員会(SEC)に提出したが、その内容から大成功を手にするベンチャー投資会社はどこなのかが見えてくる。

まず、2015年のシリーズA以降のDesktop Metalの第一優先株の価格を見てみよう。シリーズA当時は0.53ドルだったが、2019年のシリーズEで販売した株価は10ドルをやや上回るなど、この5年間で急上昇している。

Desktop Metalの株価。

提出された資料(SECサイト)によれば、Desktop Metalの大口の投資会社は、17.66%を所有するNEA、11.59%のLux、11.10%のKleiner、8.89%のGV(元Google Venturs)、6.96%のNorthern Trust、5.89%のKDT(Koch Industriesの子会社)となっている。

Desktop Metalの評価額は、SPACの総合評価額25億ドル(約2630億円)のうちの18億3000万ドル(約1895億円)。この2つの数値の差は、SPACが保有する株式3億500万ドル(約316億円)と、買収の一環として実施される同社への民間投資と手数料やその他の補助的融資を合わせた2億7500万ドル(約290億円)から生じている。

リターンの期待度という面から見るとどうだろう?その提出書類によれば、Desktop Metalは6回のラウンド(シリーズAからシリーズEおよびE-1)で、トータル4億3800万ドル(約460億円)の資本金を調達している。この数値を使った簡単な計算で、個々のファンドが投資会社にどれほどのリターンを提供できたかを大まかに推測できる。

Desktop Metalへの投資額。

投資額の何倍戻ったかという観点で見れば、最大の勝利者はKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)だ。Desktop Metalへの投資総額のおよそ10倍のリターンを獲得した。KlienerはシリーズAの5分の1を提供している。およそ300万ドル(約3億1600万円)だ。シリーズBでは、投資額はおよそ1300万ドル(約13億7000万円)に増強された。その後のラウンドでは、次第に比率が下がってゆく。2040万ドル(約21億5000万円)という投資額の比率が、昔に遡るほど大きくなっているところを見ると、それがリターンの倍率を押し上げていることがわかる。

NEAは、おそらくその資本規模の大きさからすべてのラウンドを通して一定した投資を行っており、最終的な投資額はおよそ5700万ドル(約60億円)にのぼる。シードプログラムから参加し、シリーズAの投資割合は43%としている。NEAは継続してDesktop Metalのすべての成長ラウンドに巨額を投じてきた。最終的なNEAのリターンの倍率は、およそ5.67倍と算出される。

最後に、初期ステージの投資会社の間ではLux(ラックス)が5.31倍を守った。同社も同様に、すべてのラウンドに資金を提供している。ただし、NEAほど積極的ではない。最終的にDesktop Metalに投じた資金は4000万ドル(約42億円)となった。

成長投資企業を目指すGVはシリーズCから参加し、その後のラウンドを通じておよそ6500万ドル(約68億5000万円)を投資。リターンの倍率は2.5倍となっている。Northern Trust(ノーザン・トラスト)はシリーズDからの参加で、リターンの倍率は1.6倍。KDT of Koch Industries(コッチ・インダストリーズ)のKDTの場合は、そのメザニンファイナンスの注入によるリターンが1.44倍という結果になった。

これらの投資会社は、みなSECの基準による5%以上の所有権を持つ者たちだ。4億3800万ドル(約460億円)というDesktop Metalの調達額の中には、資本政策表には公開されていない1億ドル(約105億円)があるため、他にも巨額のリターンを獲得しながシェアの公開義務のないベンチャー投資家がいるようだ。またここでは、これらのベンチャー投資会社が所有する少数の普通株による出資金は計算に入れていない。リターンの倍率に影響するほどの大きな額ではないからだ。

ほんの5年間で評価額を急増させたDesktop Metalは、これらの投資会社に投資に対する確かな内部利益率を与えることになる。

Desktop MetalがSPACを通じて株式公開を行えば、これらすべての投資会社には株式を売却するか、そのまま持ち続けるかの選択肢が与えられる。もしDesktop Metalの株式を持ち続け、同社の業績が順調に伸びれば、株価は劇的に上昇してリターンはさらに押し上げられる可能性がある。もちろん、その逆もあり得る。株式公開をした企業にはエグジットするか、するならいつかを決める自由がある。そしてその判断が、リミテッドパートナーたちの最終的なリターンの額を決めることになる。

だが今のところこれは、ベンチャー投資会社たちが、今回の取引でどれだけ成功できるかを確かめる指標として有効に使える。おそらく彼らは、その3Dプリンターで黄金をプリントできるようになるだろう。

関連記事:金属3Dプリント技術を擁するDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

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(翻訳:金井哲夫)

LinkedInのリード・ホフマン氏とZyngaのマーク・ピンカス氏がテック企業を育てるSPACを創設

高名な投資家で連続起業家のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏と、Zyngaの創業者であるMark Pincus(マーク・ピンカス)氏、そしてベテランのヘッジファンドマネージャーであるMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏がこのほど立ち上げた特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partnersが米国時間8月31日に、6億ドル(約634億円)の株式公開を申請した

このSPACは、ホフマン氏とピンカス氏、そして元BHR Capitalのトンプソン氏が、テクノロジー企業と合弁する目的で作った。トンプソン氏が取締役でCEO兼CFOになり、ホフマン氏とピンカス氏は共同筆頭取締役になる。同社はニューヨーク証券取引所にRTP.Uのシンボルで上場する計画だ。Reinvent Technology Partnersが6億ドルを調達したら、その資本は同社の買収企業が決まるまで白紙委任信託に移される。

SPACはブランクチェックカンパニー(blank-check company、白紙小切会社)であり、他の企業を合併または買収する目的のために作られる。SPACは2020年に、ベンチャーが支援する企業の間で、従来的なIPOの面倒な手順を踏まなくても上場できる方法として人気と利用が高まった。過去数カ月で数社のベンチャー支援企業が、従来的なIPO過程の代わりにSPAC企業と合併した。それらは、中古車マーケットプレースのShift Technologies、LiDARのLuminarとVelodyne Lidar、そして数社の電気自動車関連企業すなわちCanooFisker Inc.Lordstown MotorそしてNikola Motorなどだ。

1月のAxiosの記事によると、ピンカス氏とトンプソン氏は、ホフマン氏をアドバイザーとして新たな投資ファンドとして最大で7億ドル(約740億円)を調達中(Axios記事)であり、その対象は事業の戦略的再構築を必要としている上場テクノロジー企業だとされていた。

8月31日の申請書類を見ると、詳細がややわかる。ホフマン氏とピンカス氏とトンプソン氏からなるブレーントラストの考えでは、このSPACはベンチャーキャピタルの新種のパートナーの一種として、これから上場するテクノロジー企業を投資対象とする。

申請書類に含まれているホフマン氏とピンカス氏の書簡を、以下に引用する。

私たちは、ある程度の規模に達した企業がイノベーションを追求し、IPO以降の長きにわたって機能の成長過程を踏んでいけるための、新しいタイプのベンチャーキャピタルが、従来のタイプに加えて必要と考える。

起業家、投資家そして企業の取締役というキャリアの全体を通じて私たちは、一部のテクノロジー企業がなぜマーケットリーダーとしての地位を維持し続けるのか、その理由を学ぶ生徒だった。人はしばしば、これらの企業を外から見てまるで事前に決まっていたかのような完全で邪魔の入らない成長の物語を想定する。しかしながら私たちが理解しているのは、そういう神話のような成長話の背後に、発明と再発明の困難なサイクルがあることだ。発明は企業が新製品を作って関連市場で成長を達成する。Amazon(アマゾン)がAWSを開発したときのように。再発明は企業がコアプロダクトとサービスを適応させて、既存の市場で成長を続ける。NetflixがDVDレンタルからストリーミングに移行したように。

多くの上場テクノロジー企業、特に資本が中サイズのところは、上記のようなサイクルが難しく、十分な数と額の投資家を揃えることが難しい。私たちはZyngaやLinkedInで上場後に発明と再発明のサイクルを追ったが、容易ではなかった。

私たちがこれから作りたい新種のベンチャーキャピタルパートナーは、次の数年間に上場するテクノロジー企業の内の1社を対象とする。それがどこになるか、今からわくわくしているが、成長と大胆さを助け維持していく。しかも大胆さと成長は、四半期ごとの結果報告というプレッシャーの中で維持しなければならない。

私たちの経験とアイデアとインサイトが、市場でトップになる企業を作ろうとする創業者やCEOが、人びとの生活に関わる製品やサービスで他社との違いを作り出そうとするときに役に立つことを望みたい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

金属3Dプリント技術を擁するのDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

Desktop Metalはその5年間の存在を通じて、投資家が足りないことはなかった。これまでのところ、この金属3Dプリント企業は4億3000万ドル(約460億円)を調達し、その間に米国で最も最速でユニコーンの資格を達成した企業になった。

米国時間8月26日、同社は上場の意図を発表(Businesswire記事)している最近の一連の企業の中(未訳記事)で最新の企業になった。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とする同社は、SPAC(特別目的買収会社、ブランク・チェック・カンパニー)であるTrine Acquisitionと合併(GlobalNewswire記事)し、「DM」のテッッカーシンボルでニューヨーク証券取引所に上場するつもりだ。この特別目的買収会社は昨年の3月に、2億6100万ドル(約278億円)の自社のIPOを発表(IPOScoop.com記事)した。

この新しい取引でTrineは、Desktop Metalと合併して同社自身の見積もりでは最大で25億ドル(約2663億円)の企業(Businesswire記事)を作る。Desktop Metalの昨年初頭以降最新の評価額は15億ドル(約1600億円)だ(Pichbookデータ)。従って、この特別目的買収会社がリードする取引はDesktop Metalの投資家に魅力的な上げ幅を与える。

この取引に先立って、SPACによる合併のブームがあり、さらにその背景には活発な活動があった。その典型がVirgin Galacticのケースだ

関連記事:Desktop Metal just raised another $160 million(未訳記事)

この特別目的買収会社がリードする上場は、5億7500万ドル(約612億円)の資金を生み出す(BusinessWire記事)という。Trineで3億ドル(約320億円)、さらに「普通株PIPEは1株当たり10.00ドルでコミットされている」いることから2億7500万ドル(約293億円)となる。PIPE(Private Investment In Public Equity)は「公開株式への民間投資」という意味(Harvard Law School Forum on Corporate Governance記事)で、必要に応じて特別目的買収会社主導の案件により多くの資金を投入できる仕組みだ。

SPAC以後の計画

Desktop Metalは、自社の研究開発をさらに深く進めることに加え、付加価値製造、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。この計画によって同社は「付加製造2.0」における主要なプレーヤーになる狙いだ。3Dプリントイノベーションの第二波により、今までの数十年間、期待と誇大宣伝で膨らんでいた金属の3Dプリントというものがついにそのポテンシャルを満たし、従来の製造業を打ち負かしていく。(付加製造(additive manufacturing, AM)、3Dプリントは素材を徐々に付加していって物を作るので、こう呼ばれる。従来の、素材を削って物を作る技術は除去加工と呼ばれる)。

Desktop Metalは、自社の研究開発努力を進めるとともに、付加製造(材料を付加しながら製造していく造形方法)、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。今回の買収によってDesktop Metalは、同社が「付加製造2.0」(3Dプリンターでは付加製造の材料に樹脂や金属を使える)とみなしてきた分野の主要なプレーヤーとなる狙いだ。これは3Dプリンティングのイノベーションの第2の波になり、何年も何十年にもわたって喧伝されてきた製造業を真にひっくり返す可能性をついに実現できるかもしれないと考えている。

同社創業者でCEOのRic Fulop(リック・フロップ)氏はプレスリリースで「私たちは付加的製造の採用における大きな転換期にあり、Desktop Metalはこの変革をリードしています」と述べている。

このような業界では、誇大広告と真に影響力のある技術と区別するのは難しいかもしれないが、Desktop Metalは設立以来5年の間に、確かに目覚ましいブレークスルーを示してきた。Lux Capital、NEA、Kleiner Perkins、Ford Motor Company、Google Ventures、Koch Disruptive Technologiesなどの著名な投資家に加えて、同社は数々のビッグネームのパートナーシップを結んでいる。Ford(フォード)とBMWの両社は、自動車産業の製造工程を革新させる可能性を十分に同社が秘めていることを感じ、投資家として契約した。

画像クレジット: Desktop Metal

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

LiDARスタートアップのLuminarが約3600億円のSPAC合併で株式公開へ

何年にもわたってステルスで活動してきたあと、2017年4月に自動運転車の市場に華々しくデビュー(未訳記事)したLiDAR(ライダー、光を用いたリモートセンシング技術)スタートアップのLuminar(ルミナー)が、SPAC(特別目的買収企業)のGores Metropoulos(ゴアズ・メトロポウロス)と合併した。買収後の時価評価額は34億ドル(約3600億円)になると発表された。

NASDAQ取引所に上場しているGores Metropoulosは、1980年代後半にAlec Gores(アレック・ゴアーズ)氏が設立した世界的な投資会社であるThe Gores Grou(ザ・ゴアーズ・グループ)の関連会社が支援するSPACだ。

SPACを利用した合併は、Luminarが重要な節目を迎え、ボルボが2022年にLuminarとパーセプション・スタック(知覚システム)を搭載した自動車の生産を開始すると発表してからわずか3カ月後のことだ。Luminarの技術は、高速道路用の自動運転システムを展開するために使用される。

Luminarの創業者でCEOのAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏はTechCrunchに対して「いつかは株式公開をしたい」と語っていた。「しかし、ボルボとの取引の勢いと公開市場での関心が同社をSPACルートに導いた」とラッセル氏は語った。

Luminarは今夏、従来のIPOプロセスの代わりにSPACを利用した最新のスタートアップ企業であり、2社目のLiDAR企業でもある。LiDAR企業としては、6月にVelodyne LiDARが市場価値18億ドル(約1900億円)でSPACであるGraf Industrial(グラフ・インダストリアル)と合併するための取引を行った。Canoo(カヌー)、Fisker (フィスカー) 、Lordstown Motors(ローズタウン・モータース)、Nikola(ニコラ)の電気自動車のスタートアップ4社も、ここ数カ月で従来のIPOの道を避け、代わりにSPACとの合併契約を通じて株式を公開することを選択している。

LuminarはAlec Gores、Van Tuyl Companies、Peter Thiel、Volvo Cars Tech Fund、Crescent Cove、Moore Strategic Ventures、GoPro創業者のNick Woodman(ニック・ウッドマン)氏、VectoIQなどの機関投資家と、既存の主要な投資家の大半が参加することで、1億7000万ドル(約180億円)の株式公開投資(PIPE)を調達(Velodyne Lidarプレスリリース)できたと述べている。また、今回の取引には、Gores Metropoulosが保有していた約4億ドル(約423億円)の現金残高も含まれる。

買収が完了した後もLuminarは社名を維持し、Nasdaqにティッカーシンボル「LAZR」で上場する。この取引は2020年の第4四半期に完了する予定とのこと。ラッセル氏は引き続きCEOを務め、Tom Fennimore(トム・フェニモア)氏は引き続きCFOを務める。ゴアーズ氏は取引終了後、Luminarの取締役会に参加する。

ラッセル氏は声明で「この節目は、当社にとってだけでなく、より大きな自動車業界にとっても極めて重要なことです。8年前、私たちは技術的にも商業的にも実現可能な解決策はないと考えられていた問題に取り組みました。私たちは、この問題を解決するためにゼロから技術を構築し、世界の主要な自動車メーカーと直接提携して、その可能性を世界に示してきました。現在Luminarは、テクノロジーと自動車の分野で豊富な経験を持ち、Luminarを原動力とした安全な自律型の未来というビジョンを共有しているGores Metropoulosとの長期的なパートナーシップを通じて、次の飛躍を目指しています」と述べている。

Luminarは2012年にラッセル氏によって設立されたが、2017年春にPeter Thiel(ピーター・ティール)氏らの支援を受けてステルスから姿を現すまで、数年間は秘密裏に運営されていた。現在25歳のラッセル氏は、大学を中退してアイデアを追求する若者に2年間で10万ドル(約1060万円)を与えるThielフェローとしてLuminarの技術に取り組んだ。

LuminarはSPAC合併の発表前に2億5000万ドル(約265億円)を調達。同社は現在、シリコンバレーに350人の従業員を抱え、フロリダ州オーランドの工場のほか、シリコンバレーでも事業を展開している。今後はミシガン州デトロイトにもオフィスを開設する予定だという。

LiDARは、レーザー光を使って距離を測定し、車の周りの世界の高精度な3Dマップを生成する。このセンサーは、自動運転車の商用展開に不可欠と広く考えられている技術だ。自動車メーカーはまた、消費者が利用可能な新しい車のトラックやSUVの高度な運転支援システムの機能と安全性を強化するために使用される重要なセンサーとしてLiDARを認識し始めている。

ボルボは、LiDARを重要と考える自動車メーカーの1社だ。LuminarのIris Lidarセンサーは、TechCrunchが以前「本当に厚いサンドイッチくらいの大きさで、以前のバージョンよりも3分の1ほど小さい」と説明したコンパクトサイズで、2022年からボルボの生産車のルーフに搭載される予定だ。

またLuminarは、米国時間8月24日、現在は解散してしまったサムスンのDRVLINEチームで働いていた16人を雇用したことを発表した。サムスンはかつてDRVLINEプラットフォームを、自動運転車市場向けの「オープンでモジュール化されたスケーラブルなハードウェアおよびソフトウェアベースのプラットフォーム」と表現していた。今年初めにTechCrunchは、サムスンがDRVLINE/Smart Machinesチームを閉鎖したと報じた(未訳記事)。

元DRVLINEチームの採用は、Luminarの戦略にも直結している。ラッセル氏は、ロボタクシーにではなく、近い将来に生産車へLiDARを応用することを考えている。同社はロボタクシーの商業化を目指す企業との協力関係を続けていくが、ラッセル氏はロボタクシーとの提携について「長期的な視点」だと考えている。

「ロボタクシーには長期的に大きな期待が寄せられていると思いますが、市場は2020年代ではなく2030年代に大きく成長すると考えています」とラッセル氏。アクティブ・ドライバー・セーフティ・システムをサポートするために使用されるLiDARは、このビジネスを牽引するボリュームと規模の経済性を提供することになるだろう」とラッセル氏は付け加えた。

カテゴリー:モビリティ

タグ:LiDAR  SPAC Luminar

画像クレジット:Luminar

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(翻訳:TechCrunch Japan)

特別目的買収会社について知っておくべきほぼすべてのこと

Special Purpose Acqusition Company(SPAC、特別目的買収会社)をもっとよく理解しておかねばと思っているだろうか。そう考えているのはあなた1人ではない。

見当もつかないというわけではないはずだ。Paul Ryan(ポール・ライアン)氏が現在SPACを保有していることはご存じだろう。野球界の経営者であるBilly Beane(ビリー・ビーン)氏やシリコンバレーの重鎮Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏も保有している。

SPACは他社の合併・買収を目的に設立される「白紙小切手会社」(blank-check companies)だ。SPACの大流行のきっかけを作ったのが物議を醸した起業家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏だということもご存知かもしれない。同氏は2017年に、Social Capital Hedosophia Holdings(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィア・ホールディングス)というSPACで6億ドル(約640億円)を調達した。その資金で最終的に英国の宇宙飛行会社Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)の49%の株を取得した。

だがSPACは最初にどう設立され、具体的にはどう機能するのか。あなたはSPACの設立を検討すべきなのか。TechCrunchは今週、目下ほぼSPACの仕事しかしていない何人かに我々の(そしておそらくあなたの)質問をぶつけてみた。

SPACが至る所で急に芽を出し始めたのはなぜか。

Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は、人気の原因は「サーベンス・オクスリー法と従来のルートで会社を公開することの難しさ」によるところもあると述べた。同氏は2億ドル(約210億円)の「白紙小切手会社」を8月18日に株式市場にデビューさせた。その後TechCrunchが話を聞いた。

新たに上場した会社でハーツ氏と提携し、事業を担当するTroy Steckenrider(トロイ・ステッケンライダー)氏は、SPACの人気の高まりが「スポンサーチームの質の変化」とも関連していると語る。ハーツ氏のような「これまでなら従来型ファンドの立ち上げは難しかったかもしれない」人がSPACのような投資ビークルの音頭を取り始めたというのだ。

忘れてはならないのは、数千万~数億ドル(数十億~数百億円)をベンチャーキャピタルから調達したが、新型コロナウイルスのパンデミックによりIPO計画が頓挫または遅延してしまった会社が実に多いということだ。その状況から脱け出すために比較的実行しやすい方法を必要としている会社もある。その方向に会社を動かしたいと考えている投資家も多数存在する。

SPACの設立手続きはどのように始めるのか。

「従来のIPOと手続面で違いは全くない」と投資銀行であるCowen(コーウェン)で資本市場グループのマネージングディレクターを務めるChris Weekes(クリス・ウィークズ)氏は説明する。募集への関心を高めるために「ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどの機関投資家とSPACの経営陣との1対1のミーティングを組み込んだロードショーが行われる」。

ロードショーが終わると、機関投資家(その中には現在多くのファミリーオフィスが含まれる)と割合としては少ない個人投資家が募集に応じることになる。

SPACを設立できるのは誰か。

株主に株を買うよう説得できる人なら誰でも設立できる。

SPACが資金を調達した後に何が起こるのか。

資金は経営陣が取得したい会社を決定するまでブラインドトラスト(受託者が運用に完全な裁量権を持つ信託)に移動される。どの投資家も対象会社がどこになるのかを知らない(少なくとも知るべきではない)ため、ユニットプライスはこの期間中実際にはあまり変動しない。

SPACの持ち分はすべて1ピース10ドルで売られているようだが、なぜか。

会計処理が簡単になるからなのか、従来そうしてきたからなのか。はっきりとはわからないが、ウィークズ氏によると、極めて少数の例外を除き、10ドル(約1060円)が常にSPACのユニットプライスだった(ユニットは通常株式とワラントの組み合わせ)。例外の1つはヘッジファンドの億万長者であるBill Ackman(ビル・アックマン)氏のPershing Square Capital Management(パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント)だ。同社は先月、40億ドル(約4200億円)のSPACを立ち上げ、1ユニット20ドル(約2120円)で募集した。

SPACのストラクチャーにここ数年で変化はあったのか。

あった。何年も前は、SPACがNDA(秘密保持契約)に基づき、機関投資家に交渉が決着した買収案件について伝える場合、投資家は資金をそのまま投資したままにしたいなら「イエス」、払い戻しを受けて退出したい場合は「ノー」に投票した。だが、「設立者株式」(投資家が保有する株式よりも権利内容が良い)を入手できない場合や、合併新会社に対して優遇措置が与えられない場合などに、結託して「買収取引を潰す」と脅迫することもあった。「市場ではいじめとも言えるようなこともあった」とウィークズ氏は言う。

その後、規制当局は議決権と出資払戻権を分離した。つまり、今日の投資家は「イエス」「ノー」のいずれに投票しても、資金を払い戻してもらうことができる。そのため投票プロセスはより表面的になり、ほとんどの買収取引が計画どおりに進むことになる。

ワラント(新株予約権)について聞いたことがある。

SPACのユニットを購入すると、機関投資家は通常、普通株とワラント、またはワラントの端数を受け取る。ワラントとは、その保有者に発行会社の株を後日固定価格で購入する権利を与える証券だ。基本的には、SPACへの投資意欲を高めるために加えられる「甘味料」だ。

SPACは以前よりも安全な投資になったのか。かつては最高に評判が良いというわけではなかった。

「どうしようもないフェーズはもう終わったと思う」と、国際法律事務所Orrick(オリック)のテクノロジー企業グループの弁護士であるAlbert Vanderlaan(アルバート・バンダーラーン)氏は言う。「90年代にはどうしようもない状況だと考えられていた。SPACは外国人投資家の食い物にされていた。2000年代初めになってもまだ毛嫌いされていた」。同氏は、「物事は急に元に戻る可能性もあるが、ここ数年間はプレーヤーが良い方向に変化しており、従来とは状況が大きく異なる」と指摘する。

ハーツ氏やステッケンライダー氏のような経営陣は集めた資金のうちいくらを会社で使うのか。

大まかな経験則はSPACの価値の2%に200万ドル(約2億1000万円)を加えた金額だ、とステッケンライダー氏は言う。2%で当初引受料(イニシャルアンダーライティングフィー)を概ねカバーする。200万ドル(約2億1000万円)はSPACの運営費用、すなわちSPAC設立にかかる初期費用から、法律面の準備、会計、NYSE(ニューヨーク証券取引所)またはNASDAQ(ナスダック)への申請費用までカバーする。「進行中のデューデリジェンスプロセスのための準備金にもなる」と同氏は言う。

この金額はVCが受け取るキャリーのようなものなのか。SPACのマネージャーはSPACのパフォーマンスに関係なくそれを受け取るのか。

両方イエスだ。

ハーツ氏はこう説明する。「2億ドル(約210億円)のSPACには、5000万ドル(約53億円)の『プロモート』(設立者持ち分またはそれに相当する価値)が含まれている」。しかし、「会社が業績を上げられず、たとえば1年または18カ月で半分に落ち込んだとしても、持ち分にはまだ2500万ドル(約26.5億円)の価値がある」

ハーツ氏はこれを「悪質」だと言うが、かと言って同氏とステッケンライダー氏がそれとは異なる方法でSPACのストラクチャーを決めたわけではなく、むしろまったくその通りのストラクチャーを採用した。

ステッケンライダー氏は次のように述べた。「当社は最終的に、初めてのSPACスポンサーとしてプレーンバニラ(最も単純な仕組み)のストラクチャーを採用することに決めた。投資コミュニティがSPACをできるだけ簡単に理解できるようにしたかった。パートナー企業(買収対象会社)との合併取引を行うと決めたり実際に行ったりする際に、ストラクチャーの経済性について再交渉すると思う」

2億ドルのSPACは、ほぼ同額の価値の企業を買収するつもりなのか。

違う。法律事務所のVinson&Elkins(ビンソンアンドエルキンズ)によると、対象会社の規模に上限はなく、下限があるのみだ。下限はSPACトラストに預けた資金の約8割だ。

実際、設立者が保有する株式とワラントへの希薄化の影響を減らすため、SPACがIPOで得た資金のの2〜4倍の規模の会社と合併するのが一般的だ。

ハーツ氏とステッケンライダー氏のSPAC(会社名は「one」)の場合、「2億ドル(約210億円)の投資ビークルの約4〜6倍の規模の会社を探している」とハーツ氏は説明する。「つまりだいたい10億ドル(約1060億円)前後ということになる」

パートナー企業がSPACより何倍も大きい場合、残りの資金はどこから調達するのか。

PIPEで調達する。SPAC同様、従前から存在する制度であり流行の波がある。これは文字通り「private investments in public equities」(上場会社による私募増資)であり、経営陣が合併したい会社を決定するとSPACに資金が注入される。

機関投資家が個人投資家とは異なる扱いを受けるのはここだ。そのため、業界を注視する者の中にはSPACを警戒する向きもある

具体的に言えば、SPACの機関投資家(おそらくSPACにまだ投資していない新しい機関投資家も同じ)は秘密保持契約に基づき、世間に知れ渡る前に買収対象を知ることができる。その情報に基づき、PIPE取引による追加出資を行うべきか判断することになる。

情報の非対称性は不公平に思える。ただ機関投資家は情報の取扱いについて制約を受けるだけでなく、最初の企業結合が公開されてから少なくとも4カ月間は株の取引も制限される。暗闇に放置された個人投資家は、いつでも自分の株を取引することができる。

SPACがこれらの全てを完了すべき期間の制約は。

場合によるが標準的には約2年間だ。

決められた期間内に完了しない場合はどうなるのか。

資金は株主に返還される。

パートナー企業が特定され、合併に合意した後、合併が実際に起こる前のフェーズを何と呼ぶか。

これは「De-SPAC」プロセスと呼ばれる。この段階で、SPACは株主の承認を得る必要があり、その後SECによるレビュー及びコメントの期間に入る。De-SPACプロセスは全体で12〜18週間かかる。

直線コースの最後を目指し、バンカーは従来のロードショーのスタイルで新しい営業チームを引き連れ、業界をカバーするアナリストらにストーリーを伝え始める。合併新会社のお披露目の後も市場で需要を引き付け、株主に会社への関心を持ち続けてもらうためだ。

パリハピティヤ氏やハーツ氏のようにベンチャー業界出身者がもっとSPACを始めるようになるだろうか。

インベストメントバンカーであるウィークズ氏は、SPACのスポンサーになることへのベンチャーキャピタリストの関心は低下しており、ポートフォリオ企業をSPACに売却することへの関心は高まっていると語る。「ほとんどのベンチャーキャピタルは通常、どちらかと言えばアーリーステージの投資家であり、非公開市場の投資家だ。一方、プライベートエクイティファンド、ヘッジファンド、ロングオンリーのミューチュアルファンドなどからの関心が全体的に高まっている」

ハーツ氏が関わればそれは変わるかもしれない。「我々は今シリコンバレーであらゆるファンドと話している。ベンチャーファンドを教育することだけを考えている」と同氏は語る。「多くの要望が寄せられた。著名なベンチャーキャピタリストであるBill Gurley(ビル・ガーリー)氏を直接上場の擁護者からSPACの擁護者に早急に転向させるつもりだ」

ところで、ハーツ氏のSPACがすでに念頭に置いている特定の買収対象(ターゲット)はあるのか尋ねると、ハーツ氏は「ない」と答えた。同氏は「ターゲット」という言葉にも問題があると考えている。

「我々は『パートナー企業』という言葉を好む」とハーツ氏は言う。ターゲットという言葉は「まるで誰かを暗殺しようとしているかのようだ」と付け加えた。

カテゴリー:ニュース

タグ:SPAC 買収 / 合併 / M&A 投資

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(翻訳:Mizoguchi