メールをチャット風に扱えるようにするSpikeがシリーズAで約8億円を調達

Slackのような非同期のチャットアプリが頑張ってメールを亡き者にした。しかし「チャットでメールを置き換えるのならいっそ、メールをチャットみたいにしたらどうだ?」と考えたSpikeは、メールをチャットの複数のバブルにまとめるアプリを作り、それに、ユーザーが短くてシンプルなテキストだけを書きたくなるようなインターフェイスをくっつけた。

Spikeのソフトウェアは、最初はメールの外見を変えただけのように思えたが、今ではコラボレーションの会話をサポートし、そのインターフェイスの中で仕事ができるようにして、彼らが目標とする統合された生産性ツールに近づいてきた。統合と言うだけあって、1つのウィンドウからアクセスできる機能がとても多い。同社によると、いろんなアプリが一本化されていたほうが、ユーザーがあちこちのウィンドウをさまようより時間の節約になり、仕事もたくさんできるという。

同社CEOのDvir Ben-Aroya(ドビル・ベン-アロヤ)氏は「メールは仕事の集まりだから、ほかの仕事がわざわざほかの場所にある必要はないのでは?」と語る。

新たな機能によってより意欲的なソフトウェアになった一方で、完全なビジネスユースケースへというフォーカスも明確になった。同氏も認めるように、これまでは収益化にあまり熱心でなく、むしろ無料ユーザーのユーザーベースを拡大することに注力してきた。個々の企業内における、Spike利用のスケールアップを狙ったからだ。しかし中小企業や大企業向けの有料アカウントを導入したときに無料のティアは残したが、メッセージの履歴やノートとタスクの生成のニーズが大きいユーザーは、月額7.99ドルのプランにアップグレードしなければならないようにした(年額なら月あたり5.99ドル)。

本日同社はプロダクトに関するニュースと並んで、シリーズAラウンドによる800万ドル(約8億6400万円)の資金調達を発表した。ラウンドをリードしたのはInsight Partnersで、これにWix、NFX、Koa Labsらが参加した。資金は主に新規の雇用に充て、年内に社員数を倍にしたいと言っている。

Insight Partnersの副社長であるDaniel Aronovitz(ダニエル・アロノヴィッツ)氏は「個々の具体的な企業がこのニーズを抱えているから、市場はとても大きい。彼らが望むのは、コミュニケーションのハブを中央に置いて、そこにありとあらゆるメッセージングチャネルを接続することだ。デジタルのコラボレーションツールの需要は、リモートワークのブームも追い風になって今や急増している」と声明の中で語っている。

Spikeのプラットホームは既存のメールサービスとの互換性が高く、アプリはAndroid、iOS、macOS、そしてWindows向けがそろっている。メールサービスのスタートアップはユーザーの機密データに触れることも多く、プライバシーに関してさまざまな要求を突きつけられる。その結果、ベン-アロヤ氏によれば「Spikeは安全性に関して他社よりもはるかに強力だ。さまざまなメールクライアントのアプリがあるが、Spikeはユーザーデータのいかなる部分にも触らないし、変更や利用、販売することもない」とのこと。

Spikeの調達総額は、これで1600万ドル(約17億1000万円)になる。

画像クレジット: Spike

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

レゴは小学校高学年から中学生向けのエデュケーションSPIKEプライムを発表

米国時間4月2日にニューヨークで開かれた教育イベントで、レゴはエデュケーションSPIKEプライムを発表した。これは同社として最新のSTEAM(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Arts=美術、Mathematics=数学)教材で、教室での利用を前提に設計されたもの。具体的には小学校6年生から中学2年生(11歳から14歳)レベルを対象にしている。

このキットは、レゴブロックに、センサー、モーター、そして「プライムハブ」を組み合わせたもの。なんだか、Amazonの新サービスのような名前だが、この製品は、基本的にあらゆるSPIKEの工作で「頭脳」として機能する。

その中には、100MHzで動作するプロセッサ、加速度計、ジャイロスコープ、スピーカー、ディスプレイが内蔵され、6つの入出力ポートを備えている。このシステムは、専用アプリをインストールしたモバイルデバイスでコントロールできる。そのアプリには、ちょうど45分で学習が完了できるようなレッスンが数本含まれている。生徒はアプリを使って学習を始めるところから、Scratchによるプログラミングまでが可能となっている。

「私たちは世界的に、小学校高学年から中学生、特に11歳から14歳まで子供たちの教育に課題があると見ています」と、レゴの教育責任者であるEsben Stærk Jørgensen氏は、この発表にともなうリリースの中で述べている。「その年齢あたりで、子供たちは学習への自信を失い始めます。Confidence Pollのデータによると、ほとんどの生徒は、何かで一度失敗したら、もう一度挑戦することはしたくない、と言っています。SPIKEプライムと、SPIKEアプリに内蔵されているレッスンにより、そうした子供たちも、さまざまな解決策を試すことによって触発され、新しいことに挑戦し、そして最終的には自信を持って学ぶことができるようになるでしょう」。

このシステムは、米国ではすでに予約が可能となっている。ただし、実際に出荷されるのは8月以降だ。

画像クレジット:LEGO

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

カード決済だけやるのではなく、金融システムを作りたい—メタップスが電子マネーを提供する理由

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2月に43億円の資金調達を実施し、人工知能によるデータ解析を元にしたアプリの分析・広告配信事業を展開しているメタップス。今では広告のほかに宇宙やロボット、オンライン決済などの事業を展開している。

そのオンライン決済プラットフォームである「SPIKE(スパイク)」に関するアップデートがあった。メタップスは6月2日、SPIKE上でプリペイド型電子マネー「SPIKEコイン」の提供を開始したことを発表した。

SPIKEは、ウェブサイトにリンクを設置するだけで利用できるオンライン決済サービス。月額100万円までの決済であれば無料で利用することができる。2014年3月にクローズドベータを開始。同年4月から一般公開をしている。

SPIKEコインはそのSPIKEユーザー向けの電子マネーとなる。大きな特徴は、毎年保有額の1%の電子マネーをユーザーに付与すること。また、SPIKEで決済した金額の最大5%の電子マネーが付与されるという。

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カード決済をしたいのではなく金融のシステムを作りたい

さてここまでが昨日発表されたリリースの内容。それではなぜメタップスが電子マネーを提供するのか? 代表取締役の佐藤航陽氏に聞いたところ、「そもそもSPIKE自体、決済だけをやりたかったのではない。金融のシステムを作りたかった」という答えが返ってきた。

SPIKEを立ち上げた際にも、「現在の『お金』が作り出した世界全体の矛盾を解消するのが目的」「通貨や経済システムも競争にさらされたほうが切磋琢磨してより健全になると考えていた」と語っていた佐藤氏。決済サービスは、そんな世界を実現するための第一歩だったのだという。「ポイント・電子マネーは加盟店が大事。まずはカード決済でその面を取れないか考えた。加盟店も増え、そろそろ(SPIKEコインの提供に向けて)いい時期になった」(佐藤氏)

メタップスがSPIKEで考えている金融のシステムだが、楽天の掲げる「楽天経済圏」のようなモノを作ることが当面の目標のようだ。加盟店の決済をおさえ、ポイントで顧客を囲い込みをする。顧客は共通のIDで、さまざまなサービスを利用していくというものだ。

とはいえ、SPIKEコインを提供する理由はそんな構想をぶち上げるためだけではない。SPIKEコインの流通によって、決済手数料が削減できるというメリットがあるという。通常カード決済を行うのであれば、トランザクションごとにカード会社の手数料がかかる。しかしそれがポイントに置き換われば同社のサーバ上での処理で済むため手数料がかからなくなる。

またメタップスでは、SPIKEコインで商品を購入したり、商品購入時にSPIKEコインが付与される「SIPKEマーケット」も立ち上げている。現状では商品数が20点もなくて寂しい状況なのだが、今後は希望があればSPIKE加盟店の商品も販売していく予定だ。「集客に困っている店舗もいる。店舗が希望すればその支援もしていきたい」(佐藤氏)

手数料無料の決済サービス「SPIKE」、いよいよオープンベータ版を公開

2013年にメタップスが発表した手数料無料の決済サービス「SPIKE」が本格始動する。4月14日より日本でオープンベータ版の利用が可能になる。

SPIKEはクレジットカード決済機能のついたリンクを作成することで、手軽に決済を実現できるサービス。同様のサービスには米国では「Stripe」、国内では「WebPay」やヤフーの「Yahoo!ウォレットFastPay」などがある。

無料と有料の2つのプランを用意する。個人事業主や小規模事業者向けの「フリープラン」は、初期費用、月額費用、決済手数料が無料。月間100万円までの決済が利用できる。今後は月間の決済上限額を引き上げていき、最終的に完全無料での提供を目指すという。

中規模事業者向けの「ビジネスプレミアム」は月額3000円。月間1000万円までの決済については手数料が無料となっており、月間1000万円を超える部分に関しては2.5%の決済手数料と30円のトランザクションフィーで利用できるという。また今後は、開発者向けにAPIの提供も予定する。

なお現在はオープンベータ版につき、「フリープラン」のみの提供になるほか、決済に対応するのは日本円とUSドルのみとのこと。今後は対応する通貨も拡大する。2016年に年間2兆円の決済額を目指す。

当初は「昨年夏以降に公開予定」としていた同サービスだが、特許やリスクマネジメントへの対応・仕組みの構築と、各国でのサービス提供のためのレギュレーションや法律上の調整などにかなり時間がかかったという。メタップス代表取締役の佐藤航陽氏によると、「世界中で使われるサービスの提供をしたいと考えていた」とのことで、米国、欧州、日本など主要先進国でリリースに向けた事前の準備に相当時間をかけていたそうだ。

フリーミアムモデルでスモールビジネスの無料化を実現

サービスの発表当初から言われていた「完全無料」のサービスは、現在発表されている限りはいわゆるフリーミアムモデルとなる。メタップスではSPIKEによって「カード決済を導入できなかったスモールビジネスを支援する」としているが、継続可能なビジネスとして、どうやって無料化を実現するのだろうか。

佐藤氏は「決済のトランザクションは、上位1割が全体の9割のボリュームを稼ぎ、その他9割が1割のボリュームを稼ぐ非対称性を持つケースが多い」と説明する。SPIKEでは、今後開始する予定のビジネスプレミアムでその“上位1割”からフィーを得るほか、そこから派生する付加価値の提供によって無料サービスを進めていくという。「そこから派生する付加価値」については詳細が明らかにされなかったが、国内ではベリトランスやカンムなどが決済データを利用したマーケティングサービスを展開しているが(詳細はこちらの記事を参考頂きたい)、そういったサービスも予定されているのかもしれない。

メタップスはアプリのリワード広告事業を手がけるスタートアップ。スタートアップとは言っても2007年創業で当初はコミュニティサービスを運営していた。その経緯についてはこちらの記事に詳しい。最近ではLINEのリワード広告「LINEフリーコイン」の販売パートナーとなっている。

実はこのサービス、メタップスのシンガポール法人からのリリースとなる。アジアでは、国によってはカード決済がまだ主流となっていないケースも少なくない。メタップスでは今後、カード決済以外のモバイル決済の展開も視野に入れているとのことで、サービスの拠点にシンガポールを選んだという。実はメタップスのアプリ広告事業も、もともとシンガポールからアジア全土に展開していったそうで、そのノウハウも生かしたいとしている。

アジアの決済領域というと、たとえばGMOベンチャーパートナーズなどもアジア特化のファンド「GMO Global Payment Fund」を設立して、モバイル決済サービスを展開するアジア企業に出資していたりする。余談にはなるが、先日その理由について現在シンガポールに拠点を置くGMO-VPの取締役 Founding Partnerの村松竜氏に尋ねたところ、「日本人であればカード決済が主流になっていなければ『どうカード決済を拡大させるか』と考える。だが現地で生活してみれば、モバイル決済でも、ATM決済でも、『利用されている決済サービスをどう拡大するか』と考えるようになる」と語っていたのが印象的だった。このあたりはまた別の機会に紹介したい。

現在の「お金」の矛盾を解消したい

話をメタップスに戻すが、僕は佐藤氏が1月に書いたブログエントリー「グローバル化とインターネットのその先にある世界:あらゆる境界線が見直される10年間」を読んで、これまで自分で取材してきた企業、サービスがどのように世界を変えていく可能性があるのか、ということを考える際のヒントをもらった気がしていた。

ブログ内で「テクノロジーが境界線を引き直す」「『営利と非営利』ではなく『価値』がとらえられる社会になる」といった持論を展開していた佐藤氏が、そもそもなぜ手数料無料の決済サービスを開始したのか。「会社の代表者としては、現在の経営資源を活用して大きく成長できそうな分野だと感じたから」とした上で、佐藤氏は次のように答えてくれた。

「創業者のエゴとして言えば、現在の『お金』が作り出した世界全体の矛盾を解消するのが人生の目的。私は、通貨や経済システムも競争にさらされたほうが切磋琢磨してより健全になると考えていた。独占が起こると進化が止まってしまうので、経済の根底の仕組みそのものをテクノロジーで民主化できる方法を探していて、SPIKEはその仮設が正しいかを実世界で実証するための試み。現実世界の経済と仮想世界の経済の接合点である「決済」は最初におさえておきたかった」(佐藤氏)。以前のブログでも、その詳細が語られている。