Spiral Ventures Japanは「Spiral Capital」に、新ファンドを2つ組成、オープンイノベーション支援の専門子会社を設立

Spiral Ventures Japanは1月27日、グループ名称をSpiral Capitalへと変更したことを発表。Spiral Ventures Japan Fund 1号投資事業有限責任組合も、Spiral Capital Japan Fund 1号投資事業有限責任組合へと名称を変更した。

Spiral Capital Japan Fund 1号は、これまで、シンガポール法人Spiral Ventures Pteとの合弁事業であるSpiral Ventures Japanが運営してきたが、同ファンドの投資組み入れが完了したため、次号ファンド以降はSpiral Capitalが単独で設立したSpiral Capital LLPによる運営へと移行、同社グループとSpiral Venturesとの資本関係は解消される。

そしてSpiral Capitalは同日、オープンイノベーション支援のための専門子会社であるSpiral Innovation Partnersの設立、そしてSpiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合の設立を併せて発表した。

Spiral Innovation Partnersでは、物流やその周辺領域のスタートアップへの投資を行うLogistics Innovation Fund投資事業有限責任組合を組成。Logistics Innovation Fundの主なパートナー企業は、セイノーホールディングス。規模は70億円以上で、平均投資金額はアーリーでは1.5億円、ミドル・レイターでは2.5億円を目安とする。LPは現在はセイノーホールディングスのみだが、「今後は、金融機関を中心とする外部のパートナー企業に対して募集を継続する」。

Spiral Innovation Partnersでは、Corporate Venture Capital(CVC)の運営を含む、オープンイノベーションに向けた包括的なサポートプログラムを提供。Spiral Ventures Japan 、そしてその前身である IMJ Investment Partnersは、CCCの「T-Venture Program」、東急電鉄の「東急アクセラレートプログラム」といったアクセラレータープログラムの運営を支援してきたことから得た知見を活かす。

Spiral Capitalの代表取締役、奥野友和氏は「事業会社でCVCを作りたいという需要が、オープンイノベーション・ブームもあり、存在する。我々は『オープンイノベーションに強みを持ってやっている』と言っていたので、前々から、『CVCを作りたいのだが、受託してくれないか』という旨の話をいただいていた」と話す。

現在、SBIインベストメントやグローバル・ブレインなどのVCがCVCの受託運営を行なっているが、需要があるもののプレイヤーは少ない。Spiral Capitalは新たな受け皿となることを目指す。

そして、Spiral Innovation Partnersが運営するファンドは、「特定の企業が自社におけるシナジーの実現を目的として設計、運営する」従来のCVCとは異なり、「特定のセクターの変革を目的」として、Spiral Innovation Partnersが企業と共同で設計し、運営。同社はそのコンセプトを「Sector-focused Venture Capital(SVC)」と提唱している。

奥野氏は「通常のCVCの設立プロセスは、事業会社が起点となり、自社でCVCを作ろうと言った話を決め、コンセプトが決まった上で最後に委託先を決める。この考えをひっくり返した」と説明。

「(事業会社が)VCを最後に決めるのではなく、VCが起点となり、ドメインとパートナー企業を決めていく。単なる受託ファンドではない。我々がスクリーニングをかけた上で、アトラクティブなセクターにフォーカスしているファンドということで訴求する」(奥野氏)

規模が100億円以上のSpiral Capital Japan Fund 2号では、1号に引き続き、X-Techを重点テーマとして、投資を行う。1件あたりの投資金額は、アーリー・ミドルで1から5億円、レイターでは5から10億円を想定。奥野氏いわく、2号ファンドでは「レイターの比率を上げる」。Spiral Ventures Japanはこれまでに、理系学生のための採用プラットフォーム「LabBase」などを提供するPOL、宇宙用作業代替ロボットを開発するGITAIなどに投資を実行してきた。

Spiral Capitalの組織体制の変更に関しても発表があった。元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長および元カーライル・グループ日本共同代表で、これまでシニアアドバイザーとしてSpiral Ventures Japanのファンド運営に関与した平野正雄氏はSpiral Capitalの取締役会長として経営全体により深く関与。そしてSpiral Innovation Partnersの代表パートナーを岡洋氏が務める。

独立系VCのSpiral Ventures Japanが総額70億円の1号ファンド組成を完了

ベンチャーキャピタル(VC)のSpiral Ventures Japanは1月29日、1号ファンドの最終募集を締め切り、総額70億円で組成を完了したことを発表した。日本企業のみを投資対象とする独立系VCが組成した1号ファンドとしては、過去最大規模の金額となる。

1号ファンドの主な出資者は、アシックス・ベンチャーズ、セイノーホールディングス、T8、図書印刷、森トラストなどの事業会社、国内証券会社や海外ヘッジファンドなどの大手金融機関と中小企業基盤整備機構。TMT(テクノロジー、メディア、テレコム)セクター以外の大企業の出資が多いのも特徴だ。

Spiral Venturesグループは、IMJ傘下で投資活動を行うVC子会社として2012年に設立された。2013年、IMJがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のグループ会社となってからは、CCCグループ傘下で投資活動を継続しながら、拠点をシンガポールに移し、東南アジア向けのファンド運営を開始。その後、2015年に新たに国内拠点を設立し、日本向けファンドの運営を開始。その後、事業拡大にともないCCCグループから独立し、2017年からはSpiral Venturesとして投資活動を行っている。

1号ファンドの投資領域は、テクノロジーの活用により既存産業が抱える課題を解決し、付加価値向上を図る「業界変革型ビジネス」と、先端的なテクノロジーやビジネスモデルで新たな産業を創出する「新産業創出型ビジネス」の2つが対象。

既に投資を行った例では、オープンロジ(物流業務プラットフォーム)や、エネチェンジ(電力自由化ビジネスなど)ビズリーチ(転職サービス)などが業界変革型、ナーブ(VR内見)Z-Works(IoT介護支援システム)フューチャースタンダード(AIによる映像解析システム)などが新産業創出型に当たる。

投資ステージとしては、アーリー〜レイターステージまでのスタートアップを対象としており、これまでにアーリー・ミドルを中心に19件(合計約21億円)の投資を実行している。アーリーステージで5000万円から3億円程度、レイターステージでは5億円程度の出資を行うという。

Spiral Ventures Japanでは、1号ファンドの運営を通じて「日本のスタートアップエコシステムの発展に貢献する」とコメント。またグループの連携を生かし、日本のスタートアップのアジア展開にも協力するという。アジア展開の際のリサーチ協力、営業・アライアンス先の紹介などで支援を行っていく。

Spiral Ventures Japanのメンバー。右から3番目が代表パートナーの奥野友和氏。