Apple Watchは「オート・オルロジュリー」の世界に入った


時計売場に立ち寄ったことのある人ならおわかりのように、高級腕時計は高い。驚くほど高い。ステンレス側の安いロレックスが約7500ドル、パネライやパテックは1万2000ドル以下では手に入らない。そしてApple Watch Editionが着地したのは正にそこだ ― オート・オルロジュリー[高級複雑時計製造]の高尚な世界への仲間入りだ。

Appleが “Edition” モデルに1万ドルを越える法外な値を付けたことに不満を漏らす前に、なぜこの数字が成り立つかを理解する必要がある。第一に、1万ドルのモデルはわれわれのためにない。これは、腕時計偏執狂または驚くべき金持ちのためにある。彼らにとって1万ドルはローエンドだ。

つまりAppleは、不思議なモノが異常に高価である高級品市場に参入したので ある。それには正当な理由がある。今から数ヵ月のうちに誰もがApple Watchを着けるようになるだろうが、ステンレスのSportモデルと、より高価なEditionモデルとの違いに対する社会的信号は殆どない。たしかに金側はそれとわかるかもしれないが、時計に1万ドルを使うような人間は、スリルのためあるいはそんな装飾品から連想される社会資本のためにやっている。これは、ルイヴィトンが昔ながらのデザインにこだわり、クリスチャンルブタンが真赤な靴底を採用しているのと同じ理由だ。わずかな違いだが重要だ。つまるところ、この時計が人気を博す場所、特にアジアとロシアでは、1万ドルの腕時計はビジネス世界における手持ちのポーカーチップなのだ。

腕時計や身繕いに興味のない人は、安心してEditionモデルは存在しないことにしてよい。あれはAppleがウェアラブルに参入することによってプレイを強制されたゲームへの答であり、いずれ巻き返しをはかるメーカーから高級Android Wearや豪華Pebbleが出てくる。それはアクセサリーが車より高くなる世界における必要悪であり、買い手は5万ドルの携帯電話には目もくれないのである

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook