Amazonよりも大規模な店舗の自動化を狙って、Standard CognitionがExplorer.aiを買収

Standard Cognitionは、小売店たちがジェフ・ベゾスの強大な力に立ち向かうことを手助けしようとしている。これまでに5000万ドルの資金を調達している自動チェックアウト(自動精算システム)のスタートアップが、顧客がレジで立ち止まることなくドアから出て行くことを可能にする、スキャンレス支払いテクノロジーを、より大きな店舗に展開しようとしているのだ。Amazon Goが2000平方フィート(185.8平方メートル、56.2坪)の小規模店舗を展開している一方で、Standard Cognitionは2万平方フィート(1858平方メートル、562坪)以上のドラッグストアや食料品店の整備に取り組んでいる。その目的を果たすために、Standard Cognitionは、初の買収としてExplorer.aiを手に入れた

自動チェックアウトの会社が、自動運転車のスタートアップを買収するのはなぜだろう?なぜなら追跡する相手が、買い物客であろうと歩行者であろうと、現実世界の洗練されたマップが必要とされるからだ。マシンビジョンが正確であるほど、対応できる店舗は大きくなる。また、Standard Cognitionは、Amazonのようにすべての棚にカメラを設置するのではなく、天井に設置されたカメラを使用しているため、より広いスペースを見渡すためのコストがはるかに安い。

Standard Cognitionは、まだ設立されて1年を過ぎたばかりだが、Y Combinator、Alexis Ohanian、Garry TanのInitialized Capitalによる支援を受け、そして7人の共同創業者からなる動きの速いチームによって支えられているために、Amazonを圧倒することができると考えている。前に向かって飛躍するためには、できることは何でもする覚悟だ。Standard Cognitionはすでに社内にマッピング技術を持っていたが、Explorer.aiのチームと技術は、10万平方フィート(9290.3平方メートル、2810.3坪)もの大型店舗を自動チェックアウト時代へと進化させる目標を加速させることができた。

「それは西部開拓時時代を思わせます。最先端で出来たての熱々の機械学習研究の成果を使うのですから。私たちは論文を読んで、公開されてから数週間でそれを実装し、アイデアを現場に出して、実用に耐え得るものに仕上げます…最先端のものを、蹴飛ばしても壊れない頑丈な機械の中に実装するのです」と語るのは、Standard Cognitionの共同創業者兼CEOのJordan Fisherである。「それは容易な仕事ではありませんし、私たちが要求する正確性はひたすら増すだけなのです。私たちの次世代マッピングを構築することができる、世界レベルの技術者と研究者のチームを得ることに、私たちは本当に興奮しています」。

AV(自動運転)からAC(自動チェックアウト)へ

Explorer.aiが設立されたのも2017年である、それがこれほど素早く買収されたということは、自動運転と自動チェックアウトの市場がどれほどホットであるかを物語っている。Akshay Goel、Nagasrikanth Kallakuri、そしてTushar Dadlaniは、自動運転車のスタートアップたちが皆、独自の地図を作成しようとしていることに気づいた。彼らは、複数のプロバイダからのデータをまとめて、さまざまな目的に応じた特別なマップを作成した。ほどなく彼らに対してお金を払おうとする、彼らと似たような規模のスタートアップたちが現れた。彼らはStory Venturesや初期のFacebookエンジニアであるNick Heymanなどから、100万ドル弱の資金を調達し、7人の従業員のチームへと拡大した。

Explorer.aiの共同創業者たち

しかし、結局Explorer.aiは、大企業たちは慎重すぎて外部の地図に頼ることはなかなかしないだろうということ、そしてそれが受け入れられるためには何年もかかるだろうということに気が付いた。「私たちの見立ては、自動運転車のための地図が商業的成功を収めるためには、かなりの時間がかかるだろうということになったのです」とGoelは私に語った。「パートナーシップで協力していた会社たちのほとんどは、早い段階から私たちを買収しようとしていました。私たちはもっと資金を調達するべきだろうか、それとも買収プロセスを検討し始めるべきなのだろうか?」その資金が減少する中で、チームは自問した。

Explorer.aiは資金調達のためのタームシートをいくつか入手したが、市場に素早く出ていくことができるかどうかには確信を持つことができなかった。「ほとんどあらゆる買収相手を検討しました」とGoelは語った。だがその中に、自然な買い手の候補となるUberやGoogleのWaymoは含まれていたのかと尋ねた私の質問には答えて貰えなかった。しかし、それから彼らは小売という意外な方向転換をした。「私たちがわかったことは、当然のことながら自動チェックアウトに関わる安全性の問題は、自動運転に比べてはるかに少ないということでした。そのことでStandard Cognitionが市場により速く進出できること、そして私たちの持つマッピング技術が自動チェックアウトに大きなインパクトを持っていることもわかったのです」。

両社は買収の金銭的条件を明らかにしなかったが、Fisherは私に対して「それは間違いなく競争的なプロセスでした。私たちはExplorerチームの気持ちと理解をしっかりと掴むことができたことに満足しています」と語った。彼らは、米国と日本の小売店におけるパイロットプロジェクトで働くために、Standard Cognitionの40人以上の従業員たちの一員として加わる。Goelは「投資家、創業者、そしてチームはみな満足しています」と付け加えた。すなわちこれは手にした金額が調達金額を上回ったことを意味している。

Explorer.aiは、Standard Cognitionが買収する前には、自動運転車のためのマップを作成していた

Standard Cognitionの顧客たちが問いかけている大きな疑問は、自動チェックアウトは費用対効果が高いのか、顧客にとって理解はしやすいのか、そして万引きによって利益が損なわれることは無いのかということだ。それはすなわち、設置費用を最小限に抑え、慣れやすくすることと指示を完全なものとし、誰かが商品を棚に戻したのか上着の中に隠したのかを区別できるようになる必要があるということだ。スタートアップは、きちんとシステムが動作することで、人間のレジ係はコンシェルジェとして生まれ変わることができると信じている。彼らが買い物客たちの探しものを見つける手助けをし、レジの列に並ばなくてもより多くの商品を買うことができるようにするのだ。

Standard Cognitionの共同創業者兼CEOのJordan Fisher

「どのようにすればこれを、スーパーの中で誰も故障することを心配することをしないレジのような、頑丈で動き続けるシステムにすることができるのか?」という問いこそが、Fisherと彼の新しい同僚たちが解決しなければならない課題である。「Amazonは全ての棚に数インチごとにセンサーを配置する、私たちが『棚ベースのアプローチ』と呼ぶ方法を追求しています。この方法があまり良くない点は、費用が高いことや、電気システムおよびコンピューターシステムが複雑なところです…これが自動チェックアウトがAmazon Goに適用されていて、より大きなWhole Foodsストアには適用されていない理由なのです。Amazonにやる気が欠けているのではなく、彼らのアプローチには技術的に無理があるからなのです。まあ数年のうちには、彼らはその課題に取り組むとは思いますが、現時点では彼らは自分自身の技術に縛られているのです」。

このため、Standard Cognitionは、独立系の小売店やチェーン店にAmazonと戦うための武器を与えることで、可能な限り素早くリードを奪いブランドを構築しようと努力している。Standard Cognitionはまた、元PandoraのCTOであるWill Glaser率いるGrabango(本日1200万ドルの調達を発表した)のような、他の自動チェックアウトスタートアップたちにも打ち勝たなければならない。Grabangoは現在、最大2万5000平方フィート(2322.6平方メートル、702.6坪)のサイズの米国の4つの小売チェーンと契約を結び、37人の従業員を擁している。Mountain Viewにポップアップショップを持つY Combinator出身のスタートアップInokyoもある。またTrigo Visionは200以上の店舗を持つイスラエルの食料品チェーンと取引をしている。

「1ヶ月前には、買収のことは念頭にありませんでした」とFisherは明かす。「私たちの目標は、自動チェックアウトを世界に提供することだけではなく、それを驚くほど迅速に行うことなのです。私たちは宇宙競争の始まりにいるのです。今から2〜3年後には、これは自動運転車と同じくらい混み合う可能性があると思います。私たちは現在リードしていますが、それはまだ十分なものではありません。私たちが望むだけの市場を獲得するには、私たちは数光年先を行く必要があるのです。(Explorer.aiの買収で)私たちは何日前に進むのでしょうか?世界征服のためのロードマップに沿って、私たちをどれほど前に進めてくれるのでしょうか?この買収で実際に目にできのは、確かなもので、ロードマップを真に進めてくれるものだったのです」。

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(翻訳:sako)