Amazonのプライム・ワードローブの正式スタート間近――ファッション版プライム・ショッピング

Amazonのプライム・ワードローブの正式スタートが近いようだ。このファッション通販のキャッチフレーズは「買う前に試着できます」だ。発表されたのは2017年6月で、Stitch Fix、Trunk Club、Wantableといったサービスのライバルとなる。これまでレーダーに映りにくい「招待オンリー」で運営を続けてきた(Amazonは現在もこれに変化はないと主張)。しかし最近プライム・ワードローブ関連のツイートが賑やかになってきた。その中にはAmazonの支社のアカウントやプライム・ワードローブで働いてる人々の投稿もあった。

われわれがAmazonに取材を試みた後、残念ながこのツイートは削除されてしまったが、らAmazon社員が「バンザイ!Amazon Wardrobe正式にローンチ! これは楽しいプロジェクトだよ!」と書いていた(下はChromeの履歴)。

当初Amazonの広報担当者は「何も変化はない」というスタンスだったが、 上記のツイートなどを示して取材すると、担当者はいくぶん詳しい説明をした。依然プライム会員対象で招待オンリーのサービスではあるものの、メンバーをさらに拡大しているという。

実際、プライム会員多数が「ワードローブに招待された!」とツイートしている。下は参加手順のツイートだ。

AMZNからPrime Wardrobe招待メールが来たら次のようにする。
1. 好みの衣服3点以上を選ぶ
2. 家で試着(7日間)
3. いらないものは返品(専用ラベル同梱)
4. 往復とも送料無料

店にいく必要がなくなった。アパレル店舗にとって最後の麦わらになるかも。

Amazonは参加者数や最近の拡大状況について説明することを避けた。

しかし最初の発表からそろそろ1年たつことでもあり、プログラムが正式に公開されるまでそう長く待つ必要はあるまい。この間、Stitch Fix は株式を上場させており、Gwynnie Beeはファッソン店舗向けに会員システムのファッション通販を運営できるプラットフォームの提供を始めている。【略】

プライム・ワードローブはアパレル通販における最大のハードルを取り払おうとするものだ。つまりファッション・アイテムはオンラインで写真やビデオをいくら見せられても、実物を身に着けてみるまで本当のところはわからない。サイズがフィットするだろうか? 自分に似合うだろうか? モデルの体型は平均的な顧客とはだいぶ違う。号数は同じでもメーカーごとにカッティングは少しずつ異なる。いくら見ためが良さそうでも、着てみなければ風合い、着心地など不明だ。どこか特定の部分がきつい、ぶかぶかだ、長すぎる、短すぎる、手持ちの他のアイテムと相性が悪いといった問題も起きる。

そのためアパレルに関してはオンライン通販を使わない消費者も多かった。しかし同時にアパレルはオンライン・ショッピングでももっとも規模が大きく、成長率も最高のジャンルの一つだ。そのためWalmartはShoeBuyBonobosModClothなどを次々に買収している。

Stitch Fixは定額会費システムに加えてスタイリストが顧客に合わせて選んだアイテムを送るという仕組みでオンラインでのアパレル購入の問題点を解決しようとしている。消費者は試着した上でいらないアイテムは送料支払済のラベルを貼って簡単に返品できる。

プライム・ワードローブはスタイリスト・サービスを省いている。しかしStitch Fixを1年以上使った体験からいうと、スタイリスト・サービスはそれほど素晴らしい機能ではない。スタイリストはこちらの希望を平気で無視するし、セレクションにしても過去の購買傾向を十分に参考にしているとは思えない。なるほど顧客別にカスタマイズされてはいるが、どちらかというと客寄せの飾りに思える。Stitch Fixのファッションはトレンドもの、クラシックものが中心で、大部分の顧客には無難といえば無難だろう。実際よく売れている。その主要な理由はやはり「家でゆっくり試着できる」という点だと思う。Amazonのプライム・ワードローブが狙っているのもまさにそこだ。

Amazonのプライム会員がワードローブに参加した場合、専用のセレクションが表示される。トップカテゴリーは、男性、女性、女子、男子、ベビーだ。それぞれのセクションにはトレンディー、ロマンティック、スポーティー、カジュアルなどのファッションスタイル、オフィス、週末などのTPO、その他の下位区分が設けられている。.「エディターのトップセレクション」、「パーフェクトな春のドレス」のような季節ごとのスペシャル、また「新着」、「お気に入りのブランド」など多数のセクションが用意されているのでアイテムを探しやすい。【略】

プライム・ワードローブはプライム会員向けサービスだが、通常のプライム・ショッピングほど配送は速くない。多種類の商品を箱詰めする必要があるため発送までに4日から6日かかる。

プライム・ワードローブが規模を拡大中であるのは間違いないが、プライム会員一般に公開される時期について今のところAmazonからの発表はない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon、衣服を試して気軽に返品もできる「プライム・ワードローブ」をアナウンス

アメリカのAmazonが、プライム会員向けに新たなサービスをアナウンスした。ファッション関連のサービスで、興味を引いたものをなんでもオーダーし、届いたものの中で気に入ったもののみを購入することができるというものだ。この新たなサービスの名前はプライム・ワードローブ(Amazon Prime Wardrobe)という。現在のところはベータ段階ではあるが、登録しておけば、サービス開始時に通知を受けることができる。

利用する際には、大人向けないし子供向けの、洋服・靴・アクセサリーなどの「ファッション」カテゴリーから3ないし15のアイテムを選択する。選択したアイテムは「ワードローブボックス」(Prime Wardrobe box)として送付される。まとめて送るにあたっての追加料金(ボックス費用など)はかからない。カルバンクライン、リーバイス、アディダス、セオリー、タイメックス、ラコステなどなど、ブランドも自由に選ぶことができる。

ワードローブボックスが届けば、7日間のうちに試着してみることができる。合わなかったり、気に入らなかったものは、送られてきたボックスに入れて送り返すことになる。返却用のボックスには、近くのUPSが発行したプリペイドラベルがついていて、集荷してもらったり、あるいは営業所に持ち込むことができる。ワードローブボックスで送られた商品の3ないし4つを購入すれば、購入金額は10%割引となり、5つ以上を購入するならば20%オフになる特典もついている。支払額はもちろん購入した商品についてのみで、追加の手数料などは一切かからない。プライムメンバーは追加料金なしで利用することができるのだ。

なお、これらの情報は「本日、Amazon Fashionはプライム・ワードローブをアナウンスしました。Amazonでのファッション商品購入に新たな魅力をもたらすものです。購入前に試してみることができるようになったのです」という、Amazonからの簡単なメールによりもたらされたものだ。

ファッション関連の商品が思った様子と違ったり、購入を後悔してしまうようなことはありがちなことだ。ZapposはAmazonが買収する前から返品システムを特徴のひとつとしてアピールしていた。Amazonは自らが揃える幅広いファッションアイテムについて返品システムを充実させることにより、より気軽に買い物を楽しめるようにしようとしているわけだ。送られた商品の多くを購入すれば、割り引くというサービスもおもしろい。利用者としては、少数のアイテムしか選ばない場合でも、UPSとのやり取り時間が増えるだけだ。comScoreのデータによれば、Amazonのファッションジャンルでの売上割合は、2013年の15.4%から2016年の17%に拡大中だとのことで、新たなサービスが大きな収益源として成長する可能性はある。

プライム・ワードローブと同様の返品サービスは、Stitch Fixなど多くのサービスが行なっていることだ。ただ、これまでの類似サービスに比べると、Amazonは(多くの男性がそうであるように)買い物に出かけるのがあまり好きでないという人をターゲットとして重視しているようだ。「おすすめアイテム」などを送って興味をもってもらうのではなく実際に関心をもったものを送るようになっている。ただ、プライム・ワードローブがうまくいくようならば、Stitch FixやTrunkClubなどのファンション関連アイテムのデリバリーサービスを買収して、サービス拡大に乗り出そうとするかもしれない。

とりあえずのところは、プライム・ワードローブの一番のウリはその簡単さにあるといえるかもしれない。手持ちのアイテムとちょっと違ったものが必要になった場合にも、Amazonの商品層の厚さや迅速な配達により、気になるものをすぐにオーダーしてみることができるようになる。気になったものの、結局気に入らなかったというような場合でも失うものは何もない。通販でファッションアイテムを購入することのリスクや面倒をできる限り減らそうとするサービスなわけだ。

「試着」が気軽ができるようになり、あるいはリアル店舗の魅力を薄めることにもなるかもしれない。自分に合わないものをオーダーしてしまっても気軽に返品できるわけで、Alexaを活用する幅も広がるかもしれない。

さらにいえば、プライム・ワードローブはAmazon Echo Lookとの親和性も高いものだといえる。全身写真で洋服の様子をチェックすることができるし、似合うかどうかをAIに判断してもらうStyleCheckアプリケーションなどを使って、購入判断をすることもできるだろう。すなわち、プライム・ワードローブはAmazonが扱うファッション関連サービスの拡大に大いに寄与するものとなる可能性もあるわけだ。

10年ほど前に、ジェフ・ベゾスは「2000億ドル企業になるためには、ファッションや食料品を充実させていく必要がある」と述べていた。すでに金額的には目標を上回っているわけではあるが、ファッション関連サービスを充実させることで、Amazonはさらなる成長を成し遂げようとしているわけだ。さらに、買収したWhole Foodsを活用して、ファッション関連アイテムの実店舗展開に乗り出すということもあるのかもしれない。

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(翻訳:Maeda, H