ユニオンテックが建設職人マッチングサービスを「CraftBank」にリブランド、詳細な企業プロフィールで精度高める

ユニオンテックは3月16日、同社が運営している建設職人と建設現場をマッチングするサービス「SUSTINA」のブランド名を変更することを明らかにした。新しいブランド名は「CraftBank」となる。実はCraftBankという名称は、同社が運営する建設職人とコンシューマーをマッチングするBtoCサービスですでに使われていたが、今回のリブランドではCraftBankの従来サービスを終了したうえで、SUSTINAのサービスを移管することになる。

同社は2000年創業の建設会社。最近ではネット事業に力を入れており、建設会社であることを生かして、アナログな処理が多い建設業界のデジタルトランスフォーメーションを自社自ら進めている企業だ。スタートアップではないが、ネット事業に充てるための資金として2019年にはVCから約10億円を調達した。なお新CraftBank(旧SUSTINA)は、2019年に千葉県を中心に発生した台風による被害を受け、人手不足が深刻だったブルーシートの張り替え作業の職人の募集に活用された。

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同社社長の韓 英志氏は、SUSTINAを既存のサービス名であるCraftBankにリブランドした狙いについて「当初BtoC向けにサービスを提供していたCraftBankですが、実際には不動産業者など法人が建設職人を探すサービスとして活用されていた側面もありました」と説明する。サービスの詳細は異なるが、CraftBankもSUSTINAと同様に結果的にはBtoB向けのサービスになっていたわけだ。

また実際に工事現場で職人の声を聞いたところ「ユニオンテックが提供しているマッチングサービスの内容を知っている職人は多いのですが、サービス名としてはCraftBankのほうが浸透していたことも理由です」と語る。

新CraftBankのサービスの軸となるのは企業データベース。同社がこれまで各種ネットサービスを運用している中で感じたのが「ネットだけのマッチングには限界ある」ということ。自社のPRが得意な会社もあれば、掲載情報が少ない会社もあり、ネット上ではそういった公開情報だけで連絡をとるかどうかを判断するしかない。そこで同社は新CraftBankに登録している建設職人や工務店の詳細な情報を収集してマッチングの精度を高めることに決めた。

この取り組みは昨年から進めていて、当初は同社の建設部門で実際に取引のある業者からデータ収集を開始。現在では新CraftBankに登録している1万5000社のうち約5000社の企業プロフィールをデータ化済みだ。ちなみに企業プロフィールのヒアリングは1社あたり30〜40分かけているという。今後は1日50社のペースで収集する予定で「年内に1万5000社のデータを収集したい」と韓氏。

企業プロフィールとして各業者からヒアリングするのは、主要取引先、対応可能⼯事、希望⼈⼯単価、保有資格、加入保険など。なお、ヒアリングする項目についてはも同社の建設部門のスタッフとの数回にわたるディスカッションで決定したそうだ。「実際に新CraftBankのサービスを自社の工事案件に利用したところ、2019年12月から2020年2月までの3カ月間で80.4%のマッチング率を達成した」という。

一般的に建設現場では、1社がすべての作業を請け負うことはなく、鳶、基礎、電気、左官など工事内容によって業者を使い分ける。マンション建設など大規模工事になると発注する業者は20社を軽く超え、決められた工事期間内でそれぞれの業者が請け負う仕事の日程をスケジューリングする必要がある。しかし、天候や資材の調達状況、工事現場の状態などでスケジュールどおりに進まないことがほとんど。一方、受注する業者側は、工事日程が近い複数の仕事を同時に受けた場合、スケジュール遅延により一方の受注を完遂できないリスクが生じる。そのため、1人親方や社員が数人の工務店では一度受けた仕事が終わらないと次の仕事を受けられないこともしばしば。結果、ある程度融通が利く、取引実績のある業者内で仕事を仲介しあうという悪循環に陥っている。

新CraftBankではデータベースを活用してこういった悪循環を断ち切るのが狙いだ。同社プラットフォーム事業部でマネージャーを務める黛 尚太郎氏は「自社サービスながら当初は懐疑的でしたが、実際に使ってみると自分たちのコネクションを使って業者を探すよりも手間と時間が大幅に減りました」と語る。「心配していた工事の質は落ちず、むしろ上がったケースもありました」と続ける。ちなみに同氏は、もともとは同社の建設部門に所属しており現場監督経験もある人物だ。

ユニオンテックでは今回のリブランドに併せて、月額利用料のかからない「フリープラン」、月額2万円の「ライトプラン」に加えて、月額3万円の「ライトプラン+面談サポートお試しパック」という料金プランを新CraftBankに追加する。

新CraftBankでは、全国の建設職人や工務店を29工種、約1万5000社から希望条件で絞り込むことが可能だが、フリープランでは同時に2件まで、ライトプランでは同時に10件までという制限がある。自社の工事案件を掲載できる数、協力会社を募集できる数についても、それぞれ2件、10件だ。ライトプランではそのほか、協力会社募集の入稿を新CraftBank側に任せられるサービスある。

ライトプラン+面談サポートお試しパックでは、ライトプランのサービスに加えてユニオンテックの専門スタッフが当日〜5営業日に工事会社の面談承諾を得たうえで、最適な1社を紹介するサービスが付帯する。この新プランこそが、同社が独自に収集したデータベースを生かしたサービスだ。同社では今後、大手施工主などと連携して、下請け業者のデータベース化をさらに進めていく計画だ。韓社長は「大手と取引実績のある業者のうち80%程度は担当者変更などで取引が途絶えているケースが多いのですが、ユニオンテックではこの80%の業者を掘り起こしてデータベースにまとめ、生きたデータとして新CraftBankで活用したい」と話してくれた。

新型コロナウイルスの影響は建設業界でも深刻で、中国生産が多いトイレ設備などは資材が届かず工事が中断している現場もあると聞く。精度の高い建設職人のマッチングこそ、いま建設業界に必要なサービスではないか。

仮想通貨交換業から建設業へ転身、ユニオンテックCFO木村氏の挑戦

ユニオンテックは12月1日、CFO(Chief Financial Officer)として、元コインチェックCFOだった木村幸夫氏の就任を発表した。同社は経営陣に新たな人材を加えることで組織体制の強化を図り、ネット関連事業をいま以上に加速展開させる狙いだ。

写真に向かって左から、ユニオンテックの新CFOに就任した木村幸夫氏、代表取締役社長の韓 英志氏

ユニオンテックは、現会長の大川祐介氏が2000年に内装仕上げを主力事業として立ち上げた建設会社だ。2016年にはネット事業に参入し、建設業界の受発注に特化したマッチングプラットフォーム「SUSTINA」(サスティナ)を提供。現在の会員企業数は1万1000社超、登録職人は11万人超と国内有数のサービスに成長している。

2018年9月には元リクルートの韓 英志氏が社長に就任。会長の大川氏と二人三脚で建設業界のディスラプトを進めてきた。18歳のときにクロス職人として建設業界に入った大川氏は、2018年10月に日本SHOKUNIN総研(日本職人総研)を設立し、建設業界の環境改善や建設職人の意識改革に取り組んでいる。

一方の韓氏は、SUSTINAをはじめとするネット事業に注力。職人仲間からの紹介・斡旋が中心だった仕事の受発注を、適正な評価システムなどを活用して、職人企業の新規顧客開拓を支援している。同社は建設会社としては珍しく、著名なネット企業から転職してきたエンジニアを中心とした、20人超の抱えるプロダクトチームを擁し、オフショアではなく自社でサービスを開発・運営しているのも特徴だ。2019年1月には、DCMベンチャーズを引き受け先とする第三者割当増資で9.7億円の資金調達も実施した。

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直近の同社の活動としては、10月に発生した台風19号の被災地域で、SUSTINAのネットワークを活用して、首都圏だけでなく全国から職人を募って、ブルーシートの張り替え作業などを支援。最初に支援協力した千葉県富津市では、高齢者や損壊の激しい家屋を中心に、同社が職人の手配から職人の滞在費、資材費、ブルーシートの張り替えなどの施工費まですべてを負担して、ボランティアとして活動。その後、千葉県庁からの依頼で県下の被災地全域での支援に切り替わり、千葉県に寄せられた約700件の案件のうち、200件超の案件をユニオンテックが請け負ったという。なお、富津市以外の案件については、職人の派遣をユニオンテックが担当し、滞在費(宿泊日)や交通費は千葉県が負担した(資材費や施工費は、被災者負担)。

韓氏によると「被災地に個人でブルーシートを運んでいたときに富津市役所の関係者の方との出会いがあり、すぐに支援することを決めた」とのこと。こうして富津市でのボランティアが始まった。その後、千葉県からの要請を受け、被災地支援専用のコールセンターをユニオンテック社内を設け、多いときは1日200件を超える連絡を受けたという。

なお、被災地支援中に自衛隊による復旧作業も並行して実施されたが、自治体でも正確な情報を把握することは難しいほど混乱した状況だったそうだ。「ブルーシートをきちんと張り付けられる高所作業に長けた職人は現地では圧倒的に足りず、自衛隊の支援を除くと数週間から数カ月待ちだった」と同氏。損壊した瓦の復元工事に至っては、被災者にとっては気の遠くなる1年半待ちという状態だったそうだ。

自治体すら把握できない混乱状態だったので、復興支援に見せかけた詐欺や工事代金の高額請求などのトラブルが発生する懸念があった。そこで同社は、被災地への職人の派遣にSUSTINAのデータベースと建設会社として20年間積み上げてきた実績をフル活用。同社と実際に取引があり信頼のおける1500社超の建設会社に被災地支援を打診したところ、職人がすぐに呼応。北は北海道から、西は兵庫県から職人が千葉県に駆けつけたそうだ。

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金融業界と建設業界は実はよく似ている

このユニオンテックに、元コインチェックの木村氏が新たにCFOとして加わることになる。同氏は、コインチェックが旧社名のレジュプレスのときの2016年に、CFOとして参画した人物。それ以前は、2000年に監査法人トーマツに入所し、2004年公認会計士登録。2006年からはコンサルティング会社のグローウィン・パートナーズで、シニアコンサルタントとして数十件のM&A案件を担当し、財務デューデリジェンス、株価算定業務に従事したほか、IPO支援、業務改善などにも携わった。2010年には、保険持株会社であるアニコムホールディングスに入社して、財務部長、給付管理部長、経営企画部長を歴任。東証一部への市場変更のプロジェクト責任者などを務め、子会社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるアニコム キャピタルの社長も兼務していた。

「コインチェックは入社してすぐに会社の規模が非常に大きくなり、IPOに向けた準備もしていたが、2018年1月に仮想通貨流出という大事件を起こしてしまった。事件後は、もう一度コインチェックを復活させ、会社に残った社員がきちんと働ける環境を整えることを目指して、被害者への補償やセキュリティの強化などに務めた」と同氏。事件から3カ月後の同年4月にマネックスグループ入りして事業を続行してきた同社は、2019年1月にそれまでの「みなし業者」から正式な仮想通貨交換業者として金融庁の登録が認められるまでに回復した。

木村氏によると「ユニオンテックへの移籍は金融庁の登録が契機ではないが、コインチェックのマネックスグループ入り後は、株主構成や経営体制も変わってきたことで経営基盤が安定したことから、次のチャレンジに向けた活動の機会を模索していた」という。ユニオンテックではCFOという役職に就任するが、当面は同社の組織運営を含めたCOO的な役回りも担当し、社長の韓氏とともに建設職人マッチングサービスのSUSTINAを中心に、ネット関連事業の拡大を進めていく。

「転職時に特に業界は決めていなかったが、建設業界の現状を知りユニオンテックでぜひ仕事をしたいと感じた。建設業界も市場やプレイヤーが巨大かつ長い歴史があるゆえに、まだまだITの進展によるビジネスチャンスの余地が大きいと感じている。まずは社内組織の改善を進めて、今後の攻めにつなげていきたい」と木村氏は力強く語ってくれた。

需要逼迫なのに人手不足に陥る建設業界をテクノロジーで解決

建設業界は、2030年には需給のバランスが大きく崩れることが指摘されている。大都市部では今後、築後10年や20年を経過したタワーマンションや超高層ビルなどの大規模修繕の需要が激増するほか、来年の東京五輪や2025年の大阪万博などで新規着工も増える。一方で、少子高齢化や職場環境の問題で職人の人手不足は深刻だ。そのため、建設投資額が増えるが、技能労働者、すなわち建設職人が減っていく。その結果、建設コストの高騰はもちろん、職人が集まらずに建設計画の見直しを余儀なくされるケースも多数出てくると考えられる。

建設業界も、ドローンやGPSを使った測量をはじめとして今後は機械化やロボット化が進むと考えられるが、それはミリ単位での調整が不要な土木工事などに限られる。図面どおりには建てられず日々の修正が必要になる建築物については、職人の手がどうしても必要になるのだ。

しかし、今後訪れる職人の人手不足はミスマッチを減らすことである程度軽減できる。そして労働環境が改善されると、職人を目指す人材も増えるはずだ。ユニオンテックはこういった問題を解決して好循環を生み出すため、今後ネット事業を主力事業に育てる戦略を掲げている。「現在請け負っている仕事で、ユニオンテックが請けるより、SUSTINAの登録会社が担当したほうが適切と判断した仕事はどんどん譲っていきます」と韓氏。建設会社は一人親方のケースも多く、小規模な工事であれば工期や工事代金などをユニオンテックよりも柔軟に対応できるケースもある。ユニオンテックがプラットフォーム事業に注力することによって、小規模な建設会社の新規顧客開拓につなげるという狙いもあるようだ。

そして同社がいま取り組んでいるのは、前述したユニオンテックとの取引実績がある1500社超のデータベースと同じものを、SUSTNAの法人会員1万社超に広げていくこと。所在地や従業員数はもちろん、人工単価、取得資格、夜間工事可能かどうか、得意とする工事、取引先、保険といった信用情報を蓄積することで、SUSTINAを介した取引量の増加を目指していく。

従来の職人仲間からの仕事の斡旋だけでは非効率だった受発注をSaaSで提供することで建設職人自身の働き方改革も目指す同社。韓氏は「今後は建設職人の空き時間までリアルタイムで可視化できるようにして職人の流動性を高め、受発注のミスマッチをなくしていく」と語る。

建設現場×職人マッチングの「SUSTINA」が登録社数1万社突破、登録職人はまもなく11万人に

ユニオンテックは6月3日、同社が運営する「SUSTINA」を導入する企業が1万社を突破したことを発表した。SUSTINAは、建設職人と建設現場をマッチングするサービス。

同社は2000年設立の建設会社だが、2016年4月にSUSTINAの前身となる「TEAM SUSTINA」のサービスを開始後、ネット事業に力を入れてきた。2019年2年には、会社設立20年目にして米国のベンチャーキャピタルから10億円を資金調達するなど、スタートアップ的な動きを加速させている。

今回、1万の大台に乗ったのは建築現場などを監督する建設会社の社数だが、登録している職人はすでに11万人近くとなっている。

SUSTINAは、建設職人が希望する地域や職種など検索条件にすることで、スマホやPCで建設現場を探せるのが特徴だ。同様に建設会社も、職種や地域を選んで協力会社(建設職人)を選ぶことができる。

建設職人は、知人からの紹介で仕事が決まるケースが多く、これまでは新しい仕事を受注する機会が限られていた。一方で、建設職人は職種が細分化されており、建設現場では工事に必要な職人を集めるためにコストと時間がかかっていた。SUSTINAは、これらの問題を解決するサービスの1つだ。

登録している企業は、関東が56%と最も多く、次いで近畿の20%、中部の10%。

登録している職人の職種は、1位が内装、2位がクロス、3位が塗装となっている。

そのほかの詳しいデータは、ユニオンテックのウェブサイトで公開されている。

建設職人マッチングのユニオンテック、設立20年目にして米VCから約10億円調達、なぜ?

ユニオンテックは2月18日、シリーズAラウンドとしてDCMベンチャーズを引受先とする9.7億円の第三者割当増資を発表した。大規模な資金調達は、2016年10月のみずほキャピタルからの1億円に続き2回目、同社としては史上最大規模となる。DCMベンチャーズは、米国シリコンバレー発祥のベンチャー・キャピタル(VC)だ。

写真左から、ユニオンテック代表取締役社長の韓 英志氏、同会長の大川祐介氏、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏

設立20年の建設会社が初のシリーズAラウンド資金調達

ユニオンテックは、2000年にクロス職人だった現会長の大川祐介氏がユニオン企画として設立。当初はクロスや床など内装仕上げの工事業を手がけていたが、ショップやオフィスの内装・管理などの空間事業にも進出し、2004年に現社名に変更した。2005年には設計デザイン事業、2009年にはグラフィック・ウェブデザイン事業に進出するなど、さらに事業を拡大。そして2016年には、施工主(ハウスメーカー、設計事務所、工務店)と職人を結びつけるB to Bのマッチングサービス「TEAM SUSTINA」(現・SUSTINA)のサービスを開始。2018年には、個人と職人を結びつけるB to Cの工事マッチングアプリ「CraftBank」の提供を始めた。

ユニオンテックの沿革

同社は2018年9月3日に新体制を発表。代表取締役社長を務めてきた大川氏が代表取締役会長に、代表取締役社長には取締役副社長の韓 英志氏が就任した。韓氏は、リクルートホールディングスでエグゼクティブマネージャーを務め、投資ファンドの設立や海外でのM&Aを手がけていた人物。2018年4月に同社入社後、約9カ月での社長就任となった。

2000年設立で20年目を迎えた同社が、なぜいまごろシリーズAラウンドでの資金調達なのか?代表取締役会長の大川氏と、代表取締役社長韓氏に話を聞いた。

とにかく建設職人の働き方を変えたい

大川氏によると「DCMベンチャーズの人と人脈、そしてなによりもビジョンに共感した」という。今回の資金調達により、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏が社外取締役に就任し、SUSTINAやCraftBankなどのネット事業について協力していく体制が整った。

建設業界の問題点

創業者社長から会長になった大川氏は現在、建設職人の働き方やイメージの改革に取り組んでいる。「建設業界には職人をきちんと評価する仕組みが必要で、ユニオンテックで利用している人事評価システムを他社に開放します」という。同社の職人評価システムは、作業スキルはもちろん、コミュニケーション能力など多岐にわたり、評価ポイントは数十項目におよぶ。この職人評価システムにより「職人は自分の能力を客観的に判断できる。親方は職人の報酬を決める判断材料に使える。そして、第三者からは職人の与信情報にもなる」と大川氏。

大川氏は建設業界の現状について「40〜50代が主力で若手の職人人口が少ない。働き方改革によって若年層の職人を増やしたい」とも語る。建設業界では、施主(発注者)が決めた期間内で工事を終えなければならず、「納期が遅れると賠償問題になることもあり、期日厳守は当たり前。しかし、人手不足や天候不良などの不可抗力もある。そもそもの納期がギリギリだと、ネットなどを駆使して業務を最大限効率化したところで限界があり、結局は職人にしわ寄せが来る。その結果、残業や夜間作業、休日返上などが発生して労働環境がどんどん悪化していく」と大川氏。

このような建設業界の問題点を解決するため、大川氏は2018年に一般社団法人として「日本SHOKUNIN総研」を設立。同団体では、2019年4月に前述の職人評価システムをベースにした建検(建設キャリア検定)を開始、2019年12月に「ベスト職人賞」と呼ぶアワードを開催予定だ。

さらに同団体では、職人同士の定期的なミートアップも実施している。「建設業界ではこれまでも、例えば地域ごとに左官職人の集まりなどは開催されてきました。しかし、ほかの職種の職人と出会うことが少ないので、なかなか仕事が広がらないんです」と大川氏。こういった問題解決のためにミートアップを主催し、建設業界内の異業種人材交流を積極的に進めている。

ユニオンテックとしても、2018年12月にデニム地の新ユニフォームを発表するなど、3K(きつい、危険、汚い)という建設業界のイメージ払拭を目指す。

市場規模は51兆円超、いまアクセルを踏むとき

代表取締役社長の韓氏は「以前(みずほキャピタル)のように金融機関からの調達も考えたが、SUSTINAやCraftBankに先行投資していくうえで長期的なサポートが望めるDCMベンチャーズを選んだ」とコメント。続けて「ユニオンテックの空間事業は年間30数億円の売上があり、現在はそこから出た利益の数億円を毎年ネット事業に投入している。しかし、それではスピードが遅い。建設業界の現状を早急に打破することを目指し、目一杯アクセルを踏むことを決めた」とのこと。DCMベンチャーズは、シードステージ、アーリーステージの投資を中心とするVCで、創業20年を迎える企業に投資するのは異例だ。

「SUSTINAは現在、7000社ほどの大小の建設会社が登録していますが、2019年5月には1万社を目指したい」と韓氏。前述のようにユニオンテックの空間事業の売上は30億円超だが「実はそのうち40%程度が100万円未満の少額案件なんです。そして、資材の発注や職人の招集などは現在でも電話業務が中心なので効率がなかなか上がらない。こうした業務についてもクラウド化による効率化を図りたい」とのこと。

大川氏は「現在のSUSTINAは、急なスケジュール変更や職人不足など『困ったとき』に使われることが多いサービスですが、もっと使いやすいように改良して施工主や職人がいつでも使えるサービスにしたい」とコメント。前述の新ユニフォームの発表時には、建設業界に「カッコイイ」「稼げる」「けっこうモテる」という新しい3K定義への挑戦も宣言。「工事が設計図どおりに進むことはほとんどなく、AIといえども職人の仕事は奪えない」と、建設ラッシュが続く現在における建設職人の重要性を力強く語った。

市場規模51兆円超と自動車業界に次いで巨大な建設業界。仕事は山ほどあるのに、職人が全然足りていない。ユニオンテックは、職人の働き方改革と職人人口の増加を目指し、リアルとネットで事業を推進していく。

建設業界は51兆円超の市場規模