VR/AR/MR企画・開発のSynamonが2.5億円を調達、人材採用・先端技術活用の価値創出を推進

VR/AR/MR企画・開発のSynamonが2.5億円を調達、人材採用・先端技術活用の価値創出を推進

VR/AR/MR領域に対するプロダクトの企画・開発を手がけるSynamon(シナモン)は10月9日、第三者割当増資として約2.5億円の資金調達を発表した。引受先は、三井住友海上キャピタル、KDDI設立の「KDDI Open Innovation Fund 3号」、ロゼッタ、三井不動産設立のCVCファンド「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」。また同ラウンドの資金調達は継続し、年内での最終クローズを予定している。

またSynamonは、グローバル・ユビキタスなオフィス、海外旅行、ビジネスイベントのためのVRシステム開発を目指し、ロゼッタと資本業務提携を実施したと明らかにした。

今回調達した資金は、多様なニーズに対応するための技術開発・要件定義や提案内容のレベル向上・組織体制の強化を目的とした採用推進と、関連技術の多様化・高度化に対応するための研究開発および先端技術を活用しての価値創出の推進という観点に対して充当し、事業推進を加速させる。

Synamonは2016年8月の創業から現在までVRをはじめXR技術の社会実装、当たり前に使われている社会を目指し事業展開を推進。2020年8月から5期目となり、昨今のニューノーマルやDX化を推進する社会情勢も背景に、最新テクノロジーの活用を目指した問い合わせを様々な業種、業態の企業から受けているという。

Synamonは、これら様々な用途や要望に応えるべく、単なるプロダクト提供にとどまらず、今までにない新たな価値創出・提供に向け二人三脚で取り組みを進めていけるパートナーとして、顧客とプロジェクトを推進しているとした。

カテゴリー: VR / AR / MR
タグ: Synamon資金調達日本

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遠隔会議などの用途で活用できるビジネス向けのVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」を手がけるSynamonは3月26日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額で約2億4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはKDDI Open Innovation Fund、三井不動産のCVCファンドである31VENTURES Global Innovation Fund、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルおよび個人投資家ら。Synamonにとってはジェネシア・ベンチャーズなどから5000万円を調達した2017年11月以来の外部調達となる。

熱量や空気感が伝わるVR会議

前回も紹介した通り、SynamonはXR(VR/AR/MR)領域におけるプロダクトの研究開発をしているスタートアップだ。

同社ではVR空間内で最適なユーザー体験を実現するべく、マルチデバイス対応や複数人の同時接続機能などを搭載したベースシステム「NEUTRANS」を開発。これを軸にNEUTRANS BIZやVR関連の受託事業を展開している。

4月に正式ローンチを予定しているNEUTRANS BIZは複数人がVR空間でコラボレーションできるサービス。昨年5月から運用してきたクローズドベータ版に管理画面の追加やシステム面の強化、料金体系の変更など大幅なアップデートを加え、改めて正式版としてスタートする形だ。

Synamon代表取締役社長の武樋恒氏によると、今の所はブレストなども含めて「会議」での利用が多いのだそう。コンシューマー向けのサービスとは違い、ビジネス向けに特化したサービスとしてユーザー体験に磨きをかけてきたという。

これは僕もそうだったのだけど、“VR会議”と聞いて「別にテレビ会議(ビデオ会議)で十分なのでは?何が違うの?」と思う人も多いはずだ。VRの場合はそもそも専用端末を準備する必要があり、PCさえあればすぐに始められるビデオ会議に比べて最初のハードルも高い。

ただ、武樋氏によると「テレビ会議をやっている人ほど、VR会議にも興味を抱く」ようだ。

「顔の動きや身振り手振りを交えてコミュニケーションをすることで、熱量やその場の空気感を感じやすいというのは1つの特徴。3DCGのビジュアルデータなどを用いてインタラクティブな対話ができるのはもちろん、『空中にペンで絵を書く』といったように現実を超えたVRならではの体験もできる」(武樋氏)

今回実際に試させてもらったのだけど、確かにビデオ会議とは違うメリットがあるように感じた。特に複数人で会議をする場合、武樋氏が話していたように身振りや手振りに加え、相手の顔や体の向きがわかるのは大きい。

ビデオ会議ではリアルな表情がわかる反面、複数人だと誰が誰の方を向いて話しているのかが掴みづらい。その点、NEUTRANS BIZの場合はアバター越しではあるもののお互いの体の向きがわかるから「今、この人は自分の方を向いて話してくれている」ことが良くわかった。

もちろん“VR会議室”の中に3Dデータを持ち込んだり、仮想的なホワイトボードや空間にペンでアイデアを書きながらディスカッションできるのもVRならではの特徴。一方で相手の表情をしっかりと見たい場合などはビデオチャットの方が向いているので、この辺りは「VR会議 VS ビデオ会議」のような構図ではなく、両者が共存していくことになりそうだ。

武樋氏自身もこれまでNEUTRANS BIZを展開する中で、VRが刺さる場面と刺さらない場面がわかってきたそう。「ただ単に情報を伝えるだけの会議のような場面だと、VRは手間やコストがかかりすぎてマッチしない」一方で、実践型の研修やブレストスタイルの会議、グループインタビューなどとは相性がいいという。

「テレビ会議とリアルな会議の間に新しいレイヤーが加わるようなイメージ。どれが1番優れているかという話ではなく、VRでしかできないコミュニケーションを実現することで、新しい選択肢を提供していきたい」(武樋氏)

NEUTRANS BIZはOculus、VIVE、Windows MRに対応していて、同時接続人数は1部屋10人まで。月額課金モデルで提供する計画で、料金はライセンス数やサポートのレベルによっても異なる。

KDDIと協業、他の投資家とも事業面で連携

写真右からSynamon代表取締役社長の武樋恒氏、KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏

武樋氏によると今回出資を受けた投資家陣とは事業面での連携も見据えているそう。KDDIとは
NEUTRANS BIZの拡販を目指した顧客開拓サポート、および5G×VRの先進事例創出に向けての協業を実施。三井不動産とは同社が運営するコワーキングスペースでNEUTRANS BIZを導入する予定だ。

特にKDDIはアクセラレータープログラム「KDDI∞Labo」を通じてSynamonのビジネスを支援してきた。KDDI∞Labo長を務める中馬和彦氏によると以前からこの領域には注目していたそうで、非公開のものも含めると今年度だけでXR領域には5社以上投資しているという。

「営業面のサポートや今後どのようにマーケットを広げるかなども一緒にディスカッションする中で、結果としてKDDIのラインナップにSynamonのコラボレーションツールを加え、自社でも売っていくことになった。それならば資本も入れてより密に連携できればと出資に至った」(中馬氏)

実際にKDDIのチームではNEUTRANS BIZを社内で活用しているが「ブレストにおいては、オブジェクトやアバターを活用するという“非日常感”がプラスに働くことを実感した」という。アバターを介すことでシャイなメンバーでも話しやすく、役職や年齢関係なく議論が円滑に進められたそうだ。

なおKDDIではコンシューマー向けのVRプロダクトにも出資しているが「(VR体験が)B2B2Cで広がっていくことを考えると、企業側の一定のパーセンテージを抑えることでコンシューマー側のパイも取れる」という考えもあるという。

今後SynamonではKDDIとも連携を取りながらNEUTRANS BIZの提供を加速させる計画。まずはビジネス領域におけるVR技術活用の一般化を目指すとともに、今年春に発売予定のOculus Questを始めとする各端末への最適化も進めていく。

また中長期的にはツールキットやSDKの提供を通じて、「NEUTRANS BIZ for ◯◯」のように特定の用途や領域に特化したプロダクトをパートナーが作れる仕組みを考えているようだ。

「あくまで『XRという技術を使って、どのように世の中に新しい価値を提供できるか』ということに焦点を当てて、今後も技術開発に注力していく。NEUTRANS BIZはそのひとつの形であり、自分たちは基盤を作る役割。その基盤を基に顧客がより自分たちにあったツールを作れるような展開も考えている」(武樋氏)

現実世界のような操作感、VR空間コンテンツのSynamonが5000万円調達

企業向けのVR/AR/MRコンテンツを開発するSynamonは11月30日、ジェネシア・ベンチャーズKLab Venture PartnersBEENEXTABBALabを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は5000万円で、これが同社にとって初めての外部調達となる。

Synamonは企業向けのVR空間構築ソリューション「NEUTRANS」を開発するスタートアップだ。これは企業向けVRコンテンツの土台となるようなもので、1つのVR空間に複数人が同時にアクセスできることや、音声でコミュニケーションをとる、空間にあるモノを掴む、動画を表示するといった各種機能をベースシステムとして提供している。

現在、彼らの主なビジネスはNEUTRANSを土台にした企業向けのVRコンテンツ開発することだ。取材の際、NEUTRANSを利用したVRコンテンツの一例として見せてくれたのが旅行会社向けのVR接客ルーム。この空間では顧客と営業員が同時接続して音声でコミュニケーションがとれるほか、営業用パンフレットをVR空間の中で見たり、現地で撮った360度動画に入り込んで旅の雰囲気を味わうこともできる。

最大の特徴はリアルな操作性

TechCrunch Japanの読者であれば、複数人が同時接続するVR空間と聞いて「cluster.」の名前が思い浮かぶ人もいるかもしれない。cluster.とNEUTRANSは両方とも、複数人が入り込むVR空間を提供するという点は同じだ。一方でSynamon代表取締役の武樋恒氏は、NEUTRANS独自の特徴について次のように語る。

「cluster.は1000人規模の同時接続が特徴であるように思うが、NEUTRANSは空間内での操作性に力を入れている。同時接続できるのは20人程度だが、モノを掴んだりするなど操作のリアルさが特徴だ。また、“VR酔い”しないようにFPS(フレームレート)を90程度と高く保つことにも力を入れた」(武樋氏)

僕も実際にViveのHMDを装着して試してみたのだけれど、なるほど、モノを掴んだり投げたりするときのリアルさには感動した。VR空間にあるボールをつかんで投げたときの跳ね返りは現実世界での物理運動のそれに限りなく近いし、積み木を机の端まで少しづつ押していくと、グラグラとゆっくり落ちていく。より細かな操作まで可能になれば、飛行機や自動車の修理シュミレーションとしても使えそうだ。

「体験したユーザーの中には『思ったより普通だね』というフィードバックをくれる人もいる。試してみる前はゲームのようなものだろうと思っていたが、NEUTRANSでは現実と同じような感覚だ、という意味で頂いた言葉だった」(武樋氏)

市場自体を作ることが先決

このようなVR空間を顧客のニーズに沿ってカスタマイズするのがSynamonのビジネスだが、NEUTRANSという土台があるからこそ開発期間も短く、平均して1ヶ月でプロダクトを仕上げることができるという。先ほどの旅行会社向けVR空間を例にすると、開発料金は300〜500万円だそうだ。また、来年春ごろからは特に引き合いの強かった「VR会議室」を完成品として提供する。

でも、この値段で儲かるのかと聞いてみると、やはり利益は出ないのだそう。

「企業にVRコンテンツを導入してもらうためには、まずは市場自体を作る必要がある。まずは使ってもらうことが重要だ。一度使って貰えれば、その後のカスタマイズなどで継続的な収入に繋がる可能性もある。その意味でいえば、他のVRスタートアップはライバルではあるが敵ではない。一緒にVR市場を大きくしていく仲間だと思っている」(武樋氏)

今回調達した資金を利用して、Synamonは開発機材の拡充や人材の強化を進める。特に、Unity、C#、C++、JAVAエンジニアや3Dデザイナーなどの採用を進めていくという。

そういえば、Synamonはつい先日オフィスを五反田に移転したばかりだ。その新しいオフィスには、ユーザーが気軽にVR空間を体験できるスペースを設けるそうだから、五反田駅で降りた際にはちょっと寄り道してみてもいいかもしれない。TechCrunchを読んだと言えば、たぶん、彼らも快く受け入れてくれるだろう。

Synamon共同創業者の2人。左より、テクニカルアーティストの西口雅幸氏と代表取締役の武樋恒氏