フォードの新車載IT、Sync 3はすぐれもの―OSはMicrosoft AutoからBlackberry QNXに乗り換え

フォード・モーターは今日(米国時間12/11)、次世代の車載情報システムを発表した。Sync 3と呼ばれるこのシステムは旧版に比べてはるかに高速で使いやすく、機能豊富なものに仕上がっている。しかしわれわれにとって最大の驚きは、OSがMicrosoft AutoからBlackBerry QNXことだ。

フォードがSyncの初代を発表したのは大昔で、2.0にアップデートされてからも数年経つ。Sync 3はSync 2に比べてあらゆる面で劇的な改良となった。

以前のSyncはひどいもので、タッチスクリーンとスマートフォンの機能がごたまざにしたコントロールは遅く、わかりにくく、反応するまではっきりわかるタイムラグがあった。コンシューマー・リポート誌に「車載ITがひどすぎるからフォード車は買うな」と書かれたほどだった。

本社敷地の奥深くで小人数のジャーナリストのインタビューを受けたフォードの副社長、CTOのRaj Nairは「Sync 3はフォード車の歴史中、もっとも深く研究されたプロダクトだ」と述べた。開発には18ヶ月かけ、フォード車のオーナー、2万2000人にベータテストを依頼したという。その結果、前のバージョンとは共通点がほぼゼロとなった。

Microsoft Autoプラットフォームの代わりにBlackBerry QNX OSが採用され、ハードウェアはTexas Instruments製だ。残念ながらSync 3は以前のSyncとは完全に別物のなので私の車を含め、既存の車種には後付けできない。

新しいプラットフォームのメリットは即座に感じられた。Sync 3は遅れなしにきびきびと反応する。UIはわかりやすくデザインはスマートだ。メニュー、画面切り替えも直感的に素早くできる。

Nairによれば、Fordの開発チームは最新のスマートフォンとタブレットをユーザー体験の目標としたという。そこでピンチによるズーム、スムーズなスクロール、画面の下部に常に表示されるメニューバーなどが実装された。

事実、新しいSyncはタブレットに近い操作感覚だ。スクリーン下部に「オーディオ、空調、電話、ナビ、アプリ、設定」と6つボタンが常に表示される(カーナビ・モードの場合のみ地図を広く表示するために一時下に沈んで隠される)。

アプリメニューからはPandoraのようなスマートフォンアプリが利用できる。フォードはオーナーの8%がスマートフォンを持っていることを知り、特にスマートフォン・アプリとの連動に力をいれたという。そのためフォードは有力なアプリ・デベロッパーと提携しており、Sync 3が新車に搭載されるときには、Spotify、Pandora、Stitcher、NPR One、SiriusXM Radio、iHeartRadio Autoが利用可能となる。



カーナビの検索機能も大きな改良点だ。ユーザーがWと入力すると先読み予測でWalmart、Walgreenなどの候補が表示される。検索用データはTelnavの提供で、地図の画像データと共にデバイス内にローカルに保存される(地図の利用は有料となるもよう)。ソフトウェアのアップデートはWiFi経由だ。

Fordの高級車ブランドであるリンカーンもこのシステムが搭載されるが、カラースキームを別バージョンになるようだ。

ただしフォードはAndroid Auto、Apple CarPlayの搭載を完全に断念したわけではなく、依然研究中ということだ。

Sync 3はSync 2とまったくご完成がなく、実際に消費者の手にわたるのは来年発売される新型車からとなる。私がSync 3に触れることができたのはほんの数分だったが、非常に大きな改良が行われたことは確認できた。Sync 3はAudiやBMWのシステムほど派手ではないし、Chrysler Uconnectとくらべても地味だ。しかしほとんどの消費者の要求に十分に答えられる水準に仕上がっている感じた。.

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+