“求人へ応募”ではなく“企業をフォロー”から始まるタレントコミュニティ、「TalentCloud」公開

「今の採用市場は空前の人材不足状態で、多くの企業が人材採用に苦労している。売り手市場と言われることも多いが、実際は求職者側も多くの応募者の中でふるいにかけられるなど、双方が幸せになれていないのが現状。その原因のひとつが、応募者を募っていることにあるからだと考えた」—— タレントクラウド代表取締役の寺師岳見氏は、現在の採用市場の課題についてそのように話す。

そんな同社が本日リリースしたのが、求人へ応募するのではなく、企業とユーザーが「フォロー」という関係で継続的に繋がれる採用サービス「TalentCloud」だ。

企業にとっては、自社に関心を持った採用候補者の母集団を作れる場所。ユーザーにとっては、タイムラインやチャットを通じて気になる企業の最新情報を手軽に収集できる場所。TalentCloudが目指しているのは、企業とユーザーをつなぐそのようなコミュニティだ。

ユーザーはエリアや職種、希望する働き方といった条件で企業を検索。すると該当するポジションの採用情報やブログ記事が出てくる。ここまでは既存の採用サイトの仕組みと変わりはない。ただ大きく違うのは個別のページに進んだ際、設置されているのが「応募ボタン」ではなく「フォローボタン」であることだ。

フォローした企業の情報はユーザーのタイムラインに表示されるようになるほか、企業との間でチャットが開設され気軽にコミュニケーションがとれるようにもなる。就職活動や転職活動が本格化する前からじっくりと情報収集できる点が特徴だ。この点はSNSで企業のアカウントをフォローする感覚に近いかもしれない。

個人ユーザー側の画面(デモ版)

企業としては、将来的に自社の仲間になる可能性のある母集団を構築する際に活用できる。応募者ではなくフォロワーを集めるため、「いずれ必要となるポジション」を前もって掲載することも可能だ。

寺師氏によると、タレントクラウドではもともとタレントプールの構築から採用管理までに対応した企業向けのSaaSを1年半ほど提供していたという。ただ「タレントプールの候補者が集まらないという中小企業や、採用手法を変えるのが大変という大企業の課題にも直面し、興味を持ってもらっても導入まで至らないことも多く苦労した」(寺師氏)そうだ。

その中で企業の要望としてでてきたのが、タレントプールの土台となる候補者を集められるサービス。そこで企業側だけでなくユーザー側の目線も加えた“タレントコミュニティ”として、TalentCloudを立ち上げた。

もちろん集まったフォロワーの管理機能も搭載していて、特徴やステータスごとにユーザーを検索したり、チャットを通じて一括でメッセージを送ったりすることもできる。ユーザーは完全に無料で利用可能。企業は無料、月額2万円、5万円、10万円の4プランから選ぶ。タレントプールの構築自体は無料で、プランごとに閲覧できるユーザープロフィールの上限数が異なる(無料プランだと5名まで)。

企業側のダッシュボード(デモ版)

最近は「採用広報」という形で、企業がオウンドメディアやSNSを通じて積極的に社員のインタビューなど情報発信をしている。WantedlyのFeed機能を活用する企業も多く、それこそ同サービスにはフォローという概念もあり似ているようにも思う。

その点について寺師氏は「最終的な目的が応募なのか、フォローなのかの違いは大きい。TalentCloudは応募の一歩手前にいるフォロワーを集める、タレントプールを構築するという点に特化したサービス。まだ募集し始めていないポジションや一旦募集を終了したポジションも含めて、事前に候補者の母集団を作り関係性を構築できる」と話す。

通常はユーザーが求人に応募した後で初めてコミュニケーションをとれるようになる(Wantedlyなどは企業からのスカウトを起点に会話をすることも可能ではある)。TalentCloudの場合はフォローというもう少し手前の段階から相互に交流できるため、そこが1番の違いと言えそうだ。

今後はイベント機能や企業からユーザーをフォローできる機能、AIを活用した高度なレコメンド機能などの実装、各種SNSとの連携を進めていく予定。「『ふるいにかけない、いつでも採用』をテーマに、企業とユーザーの繋がりを深められる、新しい切り口の採用サービスを目指していく」(寺師氏)という。

タレントクラウドは2016年5月の設立。代表の寺師氏はマーケティングリサーチのプラットフォームを手がけるベンチャー企業の出身で「企業がマーケティングにSNSやコミュニティを活用するように、それを人材採用にも活かせるのではと思ったこと」がタレントプールサービスを立ち上げた背景にあるそうだ。

なお同社は、2017年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルに登壇した企業の1社でもある。