ギフト特化EC「TANP」運営のGraciaが約11億円調達、記念品配送に最適化した基幹業務システム強化へ

誕生日や結婚記念日、出産祝いなどのギフトに特化したECサイト「TANP」を運営するGraciaは7月29日、​シリーズCラウンドにおいて総額11億円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先は既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、ユナイテッド、エンジェル投資家の有安伸宏氏と、新規投資家のYJキャピタル。累計調達額は17億円で、これまでANRI、マネックスベンチャーズ、ドリームインキュベータ、Spiral CapitalなどのVC、個人投資家からの投資も受けている。今回調達した資金は、自社開発の基幹業務システムの強化に投下するとのこと。

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Graciaは昨年の資金調達以降、ロジスティクス部門の人員体制の整備と管理システムの改修による効率化を図り、1日あたりの自社発送能力を2300件超に拡大。​2018年5月時点で800件、2019年8月時点で1200件だった能力を大幅に増強している。昨年同月対比で売上成長率も210%増を達成しているとのこと。

同社代表取締役社長の斎藤拓泰氏はギフトに特化したECを構築した理由について「少量多品種の記念品の梱包や商品加工、ラッピング、セット組みへの対応などは、システム化された大手ECサイトでも誤配がしばしば発生し、積極的にサービスを提供しない業者が多いことに注目しました」とのこと。Amazon(アマゾン)ではシステム化されたギフトオプションがあるが細かなカスタマイズができない、楽天ではギフト発送できるかどうかは店舗次第など、一長一短がある。

そこで同社は、ECサイト向けの業務システムを開発したうえで自前の物流倉庫を持ち、前述した梱包などを担うスタッフとも契約して、ソフトとハードの両面でギフトの受注・配送に最適化したシステムを構築している。具体的には、用途や送る相手によって記念品の絞り込みが可能なほか、ギフトボックスや種類が選べるほか、フラワーやメッセージカード、ドライフラワーの同梱、手渡し用の紙袋の追加など細かなカスタマイズが可能だ。

今後の展開として同社は、現在は本州で実現している最短翌日配送を九州地域などへ拡大するため、数年以内に関西地域に拠点倉庫を設ける計画だ。新型コロナウイルスの蔓延を受けてデパートなどのリアル店舗での売上は落ちているがECサイトは堅調に伸びており、大手ブランドを中心にTANPへの問い合わせも増えているそうだ。斎藤氏は「コロナ禍の状況で、今後は路面店での販売よりもECに力を入れる大手ブランドも増えてくると予想され、ブランド直営ECサイトだけでなくTANPのようなギフト特化ECに販路を拡大するケースは増えるでしょう」と語る。また、今後の倉庫業務の効率化・発送能力の増強については「スタッフ増員だけでなく、作業指示書と伝票の一体化、現在は人力でチェックしているメッセージカードの紐付けの自動化による省力化、在庫の棚管理によりピッキングの効率化を図りたい」とのこと。

ギフト特化EC「TANP」が5億円調達、豊富なオプションと独自のロジスティクス軸に事業拡大

「TANP」を運営するGraciaのメンバーと投資家陣。前列左から4番目が代表取締役CEOの斎藤拓泰氏

ギフトプラットフォーム「TANP」を展開するGraciaは8月28日、グロービス・キャピタル・パートナーズなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで総額5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Graciaにとっては2018年10月に1.2億円を調達して以来の資金調達で、本ラウンドを含めた累計の調達額は6.4億円になる。同社では今後も引き続きギフト体験に特化したプラットフォーマーとしてTANPのアップデートを行っていく方針。調達した資金を活用しながら人材採用と事業拡大を計るという。

今回同社に出資した投資家のリストは以下の通り。なおGraciaでは資金調達と合わせて、グロービス・キャピタル・パートナーズの⾼宮慎⼀氏が社外取締役に就任したことも明かしている。

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ
  • スパイラルベンチャーズ
  • 福島良典⽒
  • 有安伸宏⽒
  • ⼤湯俊介⽒
  • 遠藤崇史⽒
  • ANRI(既存投資家)
  • マネックスベンチャーズ(既存投資家)
  • ドリームインキュベータ(既存投資家)
  • SMBCベンチャーキャピタル(既存投資家)

ギフトならではの豊富なオプションはユーザーの8割以上が活用

冒頭でも触れた通り、TANPはギフトに特化したECサイトだ。誕生日や結婚祝い、母の日などギフトを贈るシチュエーションや相手の性別・関係性に合わせて、豊富な品揃えの中からぴったりな商品を探しやすい仕組みを構築。そこにギフトならではの幅広いオプションを組み合わせ、良質な購買体験の実現を目指している。

この「オプションのバラエティ」とそれを支える「独自のロジスティクス」はGraciaが前回の調達時からさらに磨きをかけてきたポイントだ。

TANPでは複数種類のラッピングや紙袋を始め、メッセージカード、ドライフラワー、名前の彫刻、熨斗(のし)サービス、ダンボール内の装飾など豊富なオプションを用意。商品ごとにその数は異なるが、たとえば「誕生日や女子会で使えるバルーン」「結婚用のご祝儀袋」などユーザーの要望に合わせて細かいオプションを選択できるようになっている。

ギフトを購入する手段自体は百貨店や専門店のほか、既存のギフトECやAmazonのような総合モールECなどすでに複数の選択肢が存在するが「ギフトに特化することで実現した商品探しの体験やオプションの充実度」はTANPの大きな特徴だ。

Gracia代表取締役CEOの斎藤拓泰氏によると購入時に何らかのオプションを選択するユーザーは8割を超えているそうで、TANPが選ばれる要因の1つになっているのはもちろん、コアなファンを形成するきっかけにもなっているという。

TANPで選べるオプションの一部。商品ごとに種類は異なるが、オプションを組み合わせることで手軽に凝ったギフトを作ることができる

またギフトに特化してユーザー体験を作り込んでいることは、コンシューマー側だけでなくギフトを販売するメーカー側にとっても大きな意味を持つ。

TANPでは現在the body shop、gelato pique、DEAN&DELUCAなどの有名ブランドを筆頭に約300社ほどと取引をしている。斎藤氏の話では多くのブランドからは「(ギフト商品のみが掲載されているため)ブランドが毀損されるリスクが少ないことと、ギフトに特化したロジスティクスの仕組みを築いていること」が評価され、取引に至っているようだ。

現在はブランドの拡大に伴ってTANPで購入できる商品数も増え、色違いなども合わせると3000〜4000種類の商品を掲載。中には他のサイトには出品していないようなメーカーもいるため、TANP以外では手に入りづらいものもある。

「一見ギフトは自家需要とそこまで違いがないようにも見えるが、実際はメッセージカードを含む同梱物やラッピングなど専用のオペレーションが不可欠だ。メーカー側もギフトの取り組みを強化したい意向を持ってはいるが、どこに出店するべきかわからなかったり、ギフト用のオペレーションに自社で対応するのは難しいといった悩みを抱えていた。ロジスティクスの部分からしっかりと支援してもらいたいというニーズは大きい」(斎藤氏)

裏側のシステムはフルスクラッチで開発、ロジスティクスが強みに

GraciaはTANPの性質上ギフトにフォーカスしたECの会社に見えるが、実際はロジテックの会社と言っても過言ではないくらいロジスティクスの仕組み作りに力を入れている。

TANPを裏側で支えている在庫管理や発送管理、CS管理などに関する各システムは基本的にフルスクラッチで開発。それらを軸に社内のオペレーションを最適化することで「オプションのバラエティを増やしながらもビジネスとしてスケールできる体制」(斎藤氏)を時間をかけて構築してきた。

「テック企業ぽくないと言われることも多いが、実は表からは見えない裏側のシステムの部分でテクノロジーをフル活用している。ロジスティクスを効率的に回す仕組みなどは意外と難易度が高く、そこをフルスクラッチでやってこれているので開発力にもそれなりに自信を持っている」(斎藤氏)

ロジスティクスの体制は前回調達時に比べてさらに洗練されてきているそうで、1日あたりの最高発送数は1200件まで拡大。前回は「最も多い時で800件」という話だったから、オプションの数が増えたにも関わらず1日に対応できるキャパシティは400件分増えたことになる。

このような裏側の仕組みが整ってきたことに加えて商品数の増加などの要因も合わさり、事業規模も成長。売上の年次成長率は約400%ほどだという。

細かいアップデートにも日々取り組んでいて、最近ではAmazonのAPIを繋ぎ込み、地域のコンビニで24時間受け取れる機能を作った。ギフトは「いつまでに送らないといけない」という明確な期限があるからこそ、ユーザーからも好評のようだ。

「オペレーションの効率化が進んだことで対応できるオプションも増え、今まではあまり多くなかった『結婚』や『出産』のようなセミフォーマルなギフトの利用も増加してきている。ロジスティクスは作り込むのに相応の工数はかかるが、一度確立できればそうそう壊れない。この仕組みがTANPの競合優位性にもなるし、今回の調達では(トラクションなどだけでなく)ロジスティクスの部分を評価して頂けたと思っている」(斎藤氏)

今後は購入データの収集や活用も一層強化へ

Graciaでは今回調達した資金を用いて人材採用を強化するほか、マーケティングへの投資も行っていく計画。現在の強みにもなっているオプションやロジスティクス周りを引き続き磨いていくほか、年内にはアプリ版のリリースも予定している。

中長期的には「『ギフトを買うならTANP』という、ギフト市場における第一想起を獲得することが大きな目標」(斎藤氏)であり、それに向けて取引先のブランドや商品数の拡充なども含め、プロダクトをアップデートしていく方針だ。

特に斎藤氏が今後のポイントの1つに挙げたのが、TANPを通じて収集されたデータを活用した最適なギフト選びのサポート。現在もLINEを通じてユーザーにぴったりのギフトを提案する「プレゼントコンシェルジュ」を提供しているが、サービス上で自動でレコメンドできるような仕組みまでは構築できていないという。

「そもそも何を選んだらいいのかわからない」という問題はギフトを選ぶ際に多くのユーザーが抱えている根本的な課題だ。Graciaとしては購入データの収集や活用にも今後力を入れながら、ユーザーとメーカーを繋ぐプラットフォーマーとしてギフト市場でさらなる成長を目指す。

百貨店のリプレイス狙うギフト特化型EC「TANP」が1.2億円を調達

ギフトEC「TANP」を運営するGraciaは10月22日、複数のVCや個人投資家らを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してロジスティクスやマーケティングの強化を進め、プロダクトのさらなる成長を目指す計画。なお今回のラウンドに参加している投資家陣は以下の通りだ。

  • ANRI
  • マネックスベンチャーズ
  • ベンチャーユナイテッド
  • ドリームインキュベータ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 中川綾太郎氏
  • 有川鴻哉氏
  • 河原﨑大宗氏
  • 坂本達夫氏

Graciaは2017年6月の創業。その直後にANRIとCandle代表取締役の金靖征氏から約1300万円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達になるという。

特化型ECでオンライン上でも優れたギフト体験を

Graciaが手がけるTANPはギフトに特化したECサイトだ。

この領域に特化することで、誕生日や記念日、クリスマスなどの様々なシーンだけでなく、ギフトを渡したい相手の性別や年代に合わせてぴったりな商品を見つけやすい仕組みを設計。「何を贈ったらいいのかわからない」というユーザーの悩みをオンライン上で解決できる場所を目指している。

2017年9月のリリースから約1年が経った現在は約100社のメーカーとタッグを組み、取扱商品数は合計で860点を突破。Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏の話では人気化粧品メーカーの「the body shop」や香水ブランド「JIMMY CHOO」など、知名度のあるメーカー・ブランドも徐々に増えてきているようだ。

特にクリスマスや母の日といったイベント時の利用が多いそうで、5月の母の日のピークには1日あたりの出荷数が800件を超えたという。

「特別なシーン用のギフトを買うとなると、多くの人が想起するのは百貨店。特に『何か特定なものを探している』というよりは『何かしら買いたい』というニーズに対して、オンライン上で応えられる場所がまだない。(ECというくくりでは)すでにビッグプレイヤーがいるが、自分たちはギフトに特化することで探すのが大変という悩みを解決しつつ、より優れたギフト体験を提供したいと考えている」(斎藤氏)

ギフト探しの悩みを解決するという点では、TANP上で細かい条件ごとに商品を探せるほか、LINE@を活用してチャットベースでの相談にも応じている。斎藤氏の話ではLINE@の登録者数は約6500人ほどだそう。記念日や特別なイベントに合わせて年に数回問い合わせをしてくるユーザーが多いようだ。

“良さそうな商品がオンライン上で見つかる”というのもTANPの特徴ではあるけれど、同サービスのウリはそれだけではない。斎藤氏によるとユーザーに評判がいい機能として「配送までのスピード」と「ラッピングなど独自のオプション」をあげる。

独自のロジスティクスを軸にギフトの商流を作る

TANPでは注文が入ってから最短で翌日届くような体制を構築している。シンプルながらこの点に関してはユーザーのニーズがかなりあるそうで「注文した商品が明日届くかどうか」といった問い合わせが多いという。

またラッピングなど独自のオプションも複数用意。ラッピングだけで約10種類ほどあり、それ以外にもブーケを同梱したり、段ボールの中を装飾したりといったことができる。7割くらいのユーザーが何かしらのオプションをつけていて、斎藤氏は「(ギフト探しの悩みを解決するだけでなく)配送期日やオプションといった要素を網羅していることがTANPの特徴」だと話す。

この点について課題意識を抱えているのは何もユーザー側だけではない。メーカー側もまた、同じようにギフトに関する悩みを持っているようだ。

「担当者の方と話していても、ギフトをやりたいという考えはある一方で、ギフト用のニーズに応えるためだけに自分たちでラッピングをしたり、(他の顧客よりも優先して)最短で届けるための仕組みを作ったりするのが難しいという声を聞く。双方の間に入って“ギフトの商流を作る”というのがTANPを通じてやりたいテーマだ」(斎藤氏)

このギフトの商流づくりのために、Graciaではロジスティクス周りの整備に力を入れてきた。自社で倉庫を保有し商品はそこから発送。その際に使う発送システムや在庫管理システムも独自で開発しているのだという。

特にギフトの場合は商品にさまざまなオプションがつくことが多いため「どの商品にどのオプションがつくか」を全部紐付ける必要がある。その作業に対応したシステムを自社で整えていることが、オペレーションを効率化しつつ、ユーザーのニーズに合わせたスピード感やオプションを実現できる要因にもなっているようだ。

ギフトを買う際に最初に想起してもらえるサービスへ

「ロジスティクスの強化」は今後のTANPの鍵を握るポイントであり、今回調達した資金もここに投資する計画。扱う商品の数を増やすべく倉庫を広げたり、ラッピングなどの質を改善することでサービスの拡大を目指していく。

また中長期的にはTANPに蓄積されるユーザーの購買データを活用することによって、ユーザーのギフト探しの悩みに対して適切な商品をレコメンドできるような仕組みも構築する予定だ。

Graciaのメンバー。写真前列中央が代表取締役の斎藤拓泰氏

Graciaは以前Candleで働いていた斎藤氏を含む3人の東大生によって設立されたスタートアップ。今後ECが伸びていく一方で、ギフトECの領域では「ファッションにおけるZOZOTOWN」のような巨大なプレイヤーがおらず、ユーザーの課題もあるためこの領域で事業を展開することを選んだ。

現在のユーザー層は20〜40代が中心。インターネットを普段そこまで利用していないようなユーザーも一定数いるが、そういった層のユーザーも含めて「オンライン上でギフトを買う体験」をさらに広げていくのが目標だ。

「(今回調達した資金も活用しながら)まずはギフトの領域をもっと掘り下げて、ギフト市場での第一想起の獲得を目指していきたい」(斎藤氏)