VRとARはCES 2022でも「ブレイクの寸前」

最初のOculus RiftがKickstarterで登場してから、信じ難いことにほぼ10年が経った。

10年間の進歩を経て、VRヘッドセットはずいぶん改善された。しかし現時点では、VRの普及は段階的と言っていい。誰もがヘッドセット(VRかAR、あるいはその2つを組み合わせたもの)を顔に装着するようになるとしたら、それは1つの大きな出来事(※)というよりはたくさんの小さなステップの結果だろう。OculusのVRリズムゲーム「Beat Saber」もあれば、Oculus Questで使えるVRフィットネスの「Supernatural」もある。ヘッドセットは徐々により良く、より軽く、より処理速度が速くなっている。職場でのトレーニングでヘッドセットを使うことに慣れている人もいるだろう。ある日突然、誰もがメタバースのあり方に同意するかもしれない。

この少しずつの進歩は2022年のCESでも変わらなかった。VRやARに関するニュースはたくさんあったが、どれも世間を揺るがすようなものではなかった。しかし1つ1つのステップは進歩している。

※もしAppleが積極的にこれから参入し、製品を投下してこのカテゴリーをひっくり返すようなことがあれば、衝撃的な出来事になる可能性がある。これは、ここ最近噂になっていることだ。

2022年CESのVRとARの大きな話題を、ここでまとめよう。

ソニーのPSVR2

画像クレジット:Sony

Sony(ソニー)は2016年にPS VRヘッドセットをリリースし、その後PlayStation 5用の次世代ヘッドセットを開発していることは以前から知られていた。しかし2021年前半に「開発中」であることをちらっと発表し、数カ月後にコントローラの詳細を若干公表したが、詳しい仕様は発表していなかった。

全容はまだ明らかにされていないが、PSVR2という正式な名称と以下の内容が発表された。

  • 解像度は片方の目につき2000×2040
  • 初代ヘッドセットの視野角が96度であったのに対し、110度に拡張
  • リフレッシュレートは90/120Hz
  • 目の動きをトラッキングし、インターフェイスの項目を見るだけで選択されるといったことができるようになる模様
  • 視界の中央にあるものを優先的にレンダリングして処理の効率を上げるフォービエイテッドレンダリングに対応
  • 指を検知し、PS5の臨場感にあふれるアダプティブトリガーを搭載する専用の新コントローラ(下図)を開発中

画像クレジット:Sony

ヘッドセットがどのような外観になるかは、まだわからない。いつ出荷されるかもわからない。しかしPS VRヘッドセットが使いやすさの点でOculus改めMeta Questの数少ないライバルの1つであることを考えると、ソニーが開発を続けているのは好ましい。

HTCのリストトラッカー「Vive」

画像クレジット:HTC Vive

VRの入力に最も適した方法は何だろう。一般的なヘッドセットのほとんどは、両手にそれぞれ何らかのコントローラを持って使う。その代わりに、手そのものをコントローラにするというのはどうだろうか。

もちろん、ハンドトラッキングのアイデア自体は新しいものではない。さまざまな企業がハンドトラッキングに重点的に取り組んでは消えていった

しかしHTCのアプローチはちょっと違う。カメラに完全に頼るのではなく、センサー内蔵のバンドを両手首に巻いて、カメラでは捉えられないものをトラッキングしようとしている。例えば一方の手がもう一方の手を覆い隠しているとか、ゴルフのスイングをしたときに腕が背中側に回るといったケースだ。同社は卓球のラケットやNERFというおもちゃのシューティングガンなどの物体に取り付けたセンサーが動作している様子も披露した。

HTCはこのセンサーを2022年後半に129ドル(約1万5000円)で出荷する予定としている。対象者は誰? 少なくとも現時点では、このセンサーはHTCのVive Focus 3ヘッドセットとの組み合わせのみで動作する。

ShiftallのMeganeX

画像クレジット:Shiftall

近年、VRヘッドセットはかなりすっきりしてきたが、それでもまだゴツい。実際のところ、どれほど小さくできるのだろうか。

Panasonic(パナソニック)の子会社であるShiftallは「超軽量、超高解像度」のヘッドセット「Meganex」を開発している。フレームにスピーカーが内蔵され、ディスプレイは片方の目につき1.3インチ(2560×2560)で、ヘッドセットというよりはスチームパンクの大きいサングラスのように見える。軽量で折りたたみ可能とはいえ、それほど動き回れるわけではないようだ。重いグラフィックスを処理するにはUSB-Cでコンピュータに接続する必要がある。

Shiftallはこのヘッドセットを2022年に「900ドル(約10万4000円)以下」で出荷するとしている。

MicrosoftがARチップに関してQualcommと協業

画像クレジット:Qualcomm

Microsoftは同社のHoloLensヘッドセットにQualcommのチップをすでに採用しているが、この両社がCES会期中にさらに正式な取り組みを明らかにした。Qualcommの基調講演で、両社がARヘッドセット専用チップの開発で協力することが発表された。このチップは両社のAR開発プラットフォーム(Microsoft MeshとSnapdragon Spaces)に対応する。

NVIDIAのOmniverse

画像クレジット:Nvida

派手なハードウェアではないが、ソフトウェア関連としては重要である可能性が高い。NVIDIAは、3Dコンテンツのクリエイターがリアルタイムで共同作業をするのに役立つプラットフォーム「Omniverse」を公開した。

これを報じる記事の中でFrederic Lardinois(フレデリック・ラーディノイス)は次のように述べている。

Omniverseはクリエイターやデザイナー、エンジニアが共同作業でバーチャルワールドを作るためのNVIDIAのプラットフォームだ。NVIDIAや他社アプリのデザインツールやアセットを、ハードウェアとソフトウェアの1つのエコシステムにまとめる。これまでOmniverseとこれに対応するNVIDIAのさまざまなツールはベータ版だったが、米国時間1月4日のCESで同社はベータのラベルを外し、Omniverseはクリエイターに広く公開された。

TCLのARメガネ

これは今のところほとんどコンセプトなので、好きになるにはまだ早すぎる。テレビやスマートフォン、エアコンのメーカーであるTCLがARメガネの分野に参入し、ほぼ普通に見えるメガネにGoogle Glassに似た機能を搭載した製品を紹介している。「ホログラフィック光導波路テクノロジー」により画像をレンズと視界に映し出すもので、上に示したコンセプトビデオではメガネのフレームにタッチ式のコントロールが内蔵されている。

画像クレジット:wacomka / Getty Images

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Kaori Koyama)

本当にクラシックなBlackBerry端末の使用を止めるときがきた

BlackBerryの長く孤独な死は、明日(米国時間1月4日)に新たな節目を迎える。同社はついにレガシーサービスへのアクセスを終了する。しがみつくようにBlackBerry OS 7.1とBlackBerry 10搭載デバイスを使っているユーザーは、同日、実質的にその機能を失ってしまう。携帯電話を使って行うこと、つまりデータ、電話、SMS、911アクセスなどの主要な機能が使えなくなる。

同社が指摘しているように、この動きはまだ先が長い。BlackBerryは2016年に自社製ハードウェアを捨て、TCL(2020年に終了を宣言)のような企業にブランドを明け渡した。同社は2020年に、1月4日のシャットダウンを発表しており、BlackBerryが重要な移行期間を提供していないと非難することはできない。声明では次のように記されている。

BlackBerryのへの移行におけるもう1つのマイルストーンとして、BlackBerry 7.1 OS以前、BlackBerry 10ソフトウェア、BlackBerry PlayBook OS 2.1および以前のバージョンのレガシーサービスを廃止する措置を取る予定であり、2022年1月4日を使用停止または終了日とする予定です。この日をもって、これらのレガシーサービスおよびソフトウェアをキャリアまたはWi-Fi接続で実行するデバイスは、データ、電話、SMS、911機能を含め、信頼性をもって機能しなくなります。私たちは、忠実なパートナーやお客様に対する感謝の気持ちを込めて、この日までサービスを延長することを選択しました。

もちろん、そこにはたくさんの選択肢がある。しかし、5G BlackBerryブランドのデバイスを約束したOnwardMobilityは、2021年の発表を約束したにもかかわらず、現在まだ「MIA(作戦行動中行方不明)」のままだ。カナダの名門OSOMのデバイスもある。しかし、やはり、プライバシーに焦点を当てたこの製品は、2022年2月末のMobile World Congressまで発表されないだろう。

それまでの間、BlackBerryが世界のリーダーや芸能人、一般人から選ばれ、モバイルの世界を支配していた時代を思い出してみよう。しかし、ハードウェアの世界では、物理キーボードも含めて、金のものは残らない。R.I.P. BB classic。本当だよ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

リアルでも開催されているMWC 2021、初日まとめ

「MWCが戻ってこれたことは、本当にすばらしいことです。Samsung(サムスン)を代表して、MWCに戻ってこれたことはとても名誉なことです」とSamsung UKの営業担当副社長であるJames Kitto(ジェームズ・キット)氏は、2021年の記者発表の冒頭で述べた。

厳密にいえば、2021年を「戻ってきた」と呼ぶことには大いに疑問の余地がある。Samsungは、2021年バルセロナで開催されるMWC(Mobile World Congress)に出展しないと発表していた企業の1つだ。主要企業が次々と出展を取り止め、GSMAがイベントの全面中止を余儀なくされた2020年のイベントの影響を感じずにはいられない。

1つは、MWCの開催時期が従来の2月下旬から3月上旬になったことで、新型コロナウイルス(COVID-19)がEUで猛威を振るった時期と重なってしまった。また今回は、、結果的に主催者に1年の準備期間があった。

 

最も簡単な方法は、CTAがCESで行ったように、すべてをバーチャルで行うことだ。最初のオールバーチャルCESにはもちろん多くの問題があったが、米国でのワクチンの普及を前に直接参加するという要素を試みることは、大きな混乱を招いただろう、

スペインでも世界の多くの国と同様に、新型コロナウイルス(COVID-19)の懸念はある。しかし、GSMAは、MWCを通常の日程から数カ月延期した上で、2021年のイベントの開催を決定した。GSMAはさまざまな安全対策を講じているが、会場で撮影された初期の映像を見る限り、今年のショーフロアでは、ソーシャルディスタンスが問題になることはなさそうだ。

画像クレジット:Samsung/Google

このイベントに「参加」している企業は、ほとんどがバーチャルで参加しているといっても過言ではない。。そもそも参加ベンダーのリストすら、バーチャルだった。

Samsungをはじめ有名企業の多くが、2021年の記者発表を、どこかで録画した動画によるバーチャルで行った。おそらく多くの企業が、バーチャルでも参加しないよりましと考えたのか、あるいは主催団体の顔をつぶしたくない配慮があったのだろう。皮肉な見方をすれば、スポンサーつきのセッションもその多くはバーチャルで良かったのではないだろうか。

関連記事:サムスンとグーグルが次期Galaxy Watchの発売に向けウェアラブルプラットフォームをプレビュー

最大の展示はSamsungだと思うが、記者発表は中身が薄かった。最大のニュースといえば、先月、2021年5のI/Oで発表されたGoogleとのパートナーシップだ。そして残りは2021年夏後半に行われるUnpackedイベントの宣伝だった。

画像クレジット:Samsung

それどころか、そのバーチャルイベントは「See you soon at the next Unpacked」と書かれた、念を押すような白黒のスライドがフィナーレだ。ハードウェアの発表は、何もない。

一方、Lenovoは元気だ。最近発表した / するハードウェアの種類がとても多いからだろう。それらを、MWCで宣伝しない手はない。

今回の発表では、スマホ用のワイヤレス充電パッドを内蔵したGoogleアシスタント対応目覚まし時計「Smart Clock」の新バージョンや、ハンガーとキックスタンドを組み合わせたYoga Tab 11および13を含む複数のタブレットが発表された。13インチモデルは外部モニターとしても使えるため、キックスタンドはとても便利だ。

画像クレジット:Lenovo

イベントに先駆けて、TCLはウェアラブル有機ELシネマディスプレイ「NXTWEAR G」を発表した。このヘッドマウントデバイスは、アスペクト比16:9の140インチディスプレイに相当する。また、米国で発売される「20 Pro 5G」の概要も明らかになった。この製品の価格は500ドル(約5万5000円)未満で、Snapdragonn750Gプロセッサーを搭載し、ヘッドフォンジャックも装備している。

TCLのNEXTWEAR G

以上が、今回のショー初日の主なトピックスだ。イベントは7月1日まで開催されている。実際に見に行くかどうかにかかわらず、まだ多くのショーが残されている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:MWCMWC 2021SamsungGoogleウェアラブルデバイススマートウォッチLenovoTCL

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「折り畳み」の次は「ローラブル」、LGとTCLが巻き取り式スマホを披露

はっきりいって、スマートフォンの売れ行きは悪い。ここ数年ずっとそうだ。現在進行中のパンデミックが助けになっていないのも確かだ。5Gと新しいフォームファクタがある種の立ち直りを引き起こすだろうという説は、人々が不必要な贅沢品の購入にブレーキをかける中で、隅に押しやられてしまった。

Samsungは折り畳み式フォームファクタで成功を収めた唯一の企業だが、そのスタートはいばらの道だった。最初は技術的な問題が多く、あまり良くない第一印象につながったのである。最近では、価格が主なハードルであり続けている。特に多くの人にとって、スマホに1000ドル(約10万4000円)以上を必要なことが、購入の赤信号に等しいこのご時世ならなおさらだ。

携帯電話のフォームファクタの世界では、少なくとも2つ製品が登場すれば、トレンドが始まったと見なされる。CES 2021の初日、LGとTCLの両社はそれぞれ、モバイルデバイスの画面の面積をさらに広げる新たなフォームファクタを披露した。

画像クレジット:TCL

2つのオプションのうち今のところLGの製品の方が注目度が高いのは、同社が実際にリリースを予定している点が大きい。米国1月12日朝に公開されたインタビューで、広報担当者のKen Hong(ケン・ホン)氏は日経の取材に対し「CES 2021で発表されているように、2021年発売されるとお伝えできます」と述べている。

確かに、LGは奇抜なフォームファクタでチャンスをつかむことを恐れない会社だ。この傾向を示す近年の例はいくつかあるが、最も顕著なものとして回転デュアルスクリーンのLG Wingが挙げられる。

それでも、この製品は記者会見でのほんの数秒間のティーザー(いってみればシーン間の移行のための演出)に過ぎなかったので、この技術はまだまだ先のことだと思っていいだろう。

一方のTCLは、製品はまだコンセプト段階にあることを前面に出しているが、その姿はもう少しよく見ることができた。未完成の現実世界の製品よりも、コンセプトを披露する方が容易なのは確かだ。詳細はまだわずかだが、同社はデバイスを6.7インチ(約17cm)から7.8インチ(約19.8cm)に広げられるという。対するLGは、画面サイズで6.8インチ(約17.2cm)から7.4インチ(約18.8cm)に広げられるとのことだ。

モバイル業界は、折り畳み式の最初のバッチで発生した問題から学んだのではないかと想像する。あるいは少なくとも、そう期待している。時に、技術を市場に投入するための競争のあまり中途半端な製品が供給され、Samsung(サムスン)やMotorola(モトローラ)のような企業はしっぺ返しを喰らう。ラボでするテストと、現実の世界は大きく違う。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:スマートフォンLGTCLCES 2021

画像クレジット:LG

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(翻訳:Nakazato)