トップシェアであるからこそ、プラットフォームになり得る──LINE舛田氏が語ったグローバル戦略

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

11月17日から18日にかけて開催されたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでは2日目のセッション「日米同時上場のLINE、その次の挑戦」の様子をレポートする。このセッションに登壇したLINE取締役CSMOの舛田淳氏は、米TechCrunch記者のHaje Jan Kampsとの質疑を通じてLINEのグローバル戦略について熱く語った。

まずLINEと他のメッセンジャーアプリの違いについて。舛田氏によれば、LINEは日常的なコミュニケーションに徹底的にこだわってきたという。「日常生活で会ったことのある、プライベートな関係。そんな人達を友だちリストに並べて、その中だけでコミュニケーションを取る。そんなリアルグラフに徹底的にこだわったのが開発当初のLINEの差別化のポイント」(舛田氏)

ユーザー数の伸びに意味はない

LINEは、日本や台湾・タイ・インドネシアなどアジア圏を中心に、2016年9月末時点で2億2000万人のMAU(月間アクティブユーザー数)を抱えている。一方で2016年6月末に比べるとほぼ横ばいと、ここにきて伸び悩んでいるのも事実だ。舛田氏は、グローバル全体のユーザー数の伸びについて、本質的な意味はないと切り捨てる。

「LINEが誕生した2011年から2013年頃まで、我々は『どこまでいけるんだろう』と考えていた。日本発のサービスが海を超え、アジアや欧州でどんどん普及していった。ユーザー数が毎週伸びていくなかで、世界中に足を運んで、現地のパートナーと手を結び、現地のコンテンツを調達してきた」

「ただある時、全体としてのユーザー数の伸びに本質的な意味はないことに気づいた。毎週毎週ユーザーは増えるが、全体的にユーザーが増えることには意味がない。これ(MAU)が3億になっても4億になっても5億になっても、我々の思い描いているLINEというサービスを成功させるためには、意味がないとわかった」

トップシェアである必要がある

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

「我々のサービスは、その国々においてトップシェアでなければならない。トップシェアであるからこそ、プラットフォームとなり、その先の事業がうまれる。当時を振り返ると、LINEは多くの国で使われていたが、シェアが3位・4位という国が山ほど出てきた。短期的な投資家の観点では、例えば我々がバイアウトを考えていた場合では、ある種の評価がされるのかもしれない。ただ、私達は私達のサービスを戦略的に成長させていきたいという思いがあり、戦略を切り替えた」

「もちろんグーグルやFacebookのように、世界中で使われるサービスもある。しかし、全てがグローバルなサービスになってはいない。日本のApp Storeのランキングを見ても、決してグローバルプレイヤーだけが並んでいるわけでもない。グローバルプレイヤーが勝っていないケースはたくさんある。LINEはまさにその中の1つ」

「ネクストグローバル」はローカルに

「それぞれの国やローカルエリアによって、ユーザーのニーズは違う。(世界で)画一的なサービスを提供しようというのが、少し前のインターネットの形。ローカルから始まってグローバルになったが、『ネクストグローバル』はローカルになった。そこで文化がきちんと意識されて、慣習に合ったユーザーの行動パターンが求められている。そこにうまく最適化したところが、ユーザーを掴むのだと思う」

「我々のグローバル戦略というのは、きちんと1個1個、日本をやって台湾をやってタイをやって、次はインドネシアだと。アジアのマーケットが我々の挑戦すべきフィールドで、そこを押さえることに今は注力している。つまり(各国の)ローカルのユーザーに愛していただくことが、我々の成長に繋がる、結果としてグローバルにチャレンジできるという考え方。2014年後半から4か国に焦点を絞り、アジアフォーカスとして戦略を動かしている」

「(日本できちんとしたポジションがあるから海外に出ていきやすいというのは)あまり関係ないと思う。日本で考えたことをそのままやるというスタンスでは決して無い。日本で作ったものは当然あるが、やはり現地のスタッフが最前線でその国の人達と触れ合い、そこで生まれるアイデアを吸収して、そこで事業を行う。我々の考え方は、その国その国で最も愛されるサービスを作ることだ」

プラットフォーム化に先行してチャレンジしてきた

インドネシアはLINEがフォーカスする地域の1つだ。しかし、BlackBerry Messengerが同国のメッセンジャーアプリのシェア1位を獲得。LINEは2位と後塵を拝している。その点について舛田氏はこう語る。

「インドネシアではBlackBerry Messengerが強い。これはメッセンジャー業界のミステリーだ。とはいえ、ユーザーの属性を見てみると、若いユーザーはBlackBerryではないものをアクティブに使っている。それがLINEだ。そこではニュースが読めたり、ゲームも楽しめる。メッセンジャーだけでなく、メッセンジャーをアクティブにするためのコンテンツやサービスがあったりする」

「バラバラなサービスではなく、例えばニュースを読もうとすると、メッセンジャーを必ず通過する。LINEが持っているメッセンジャーのユーザー体験、それによって我々はインドネシアに注力するのが遅かったにもかかわらず、シェアを2位にまで伸ばすことができた」

「今はスマートフォンを1人1台持ち始めているし、アプリケーションも使われている。ただ調査によれば、スマートフォンで日常的に使われているアプリは10個もない。これは世界中で同じ。世に出ている90%以上のアプリはゾンビ化していて、作っても使われない」

「その代わりにメッセンジャーがそのプラットフォームになってきている。今までOSが担っていたサービスのプラットフォームを担っていたが、今やメッセンジャーが最もユーザーを集めるゲートウェイになり、擬似的なOSとして振る舞い始めている。WeChatもFacebook Messengerもやろうとしている、メッセンジャーの可能性。そこへLINEは先行してチャレンジしてきた」

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