創業期の起業家が組むべきは、「高み」を知るエンジェル投資家——コロプラ千葉氏、コーチ・ユナイテッド有安氏

11月17日から18日にかけて東京・渋谷ヒカリエで開催された「TechCrunch Tokyo 2015」。初日の午後には「エンジェル投資家と日本のスタートアップエコシステム」と題したセッションが繰り広げられた。プライベートコーチサービス「cyta.jp」を運営するコーチ・ユナイテッド代表取締役社長の有安伸宏氏、スマートフォン向けゲームなどを手がけるコロプラ取締役副社長の千葉功太郎氏が、それぞれのエンジェル投資家としての活動を語った。モデレーターはTechCrunch編集部の岩本有平が務めた。

あまり語られないエンジェル投資家の実態

エンジェル投資家とは、創業まもないスタートアップへ出資を行う個人投資家のことで、近年のスタートアップの盛り上がりとともに増えている。「ベンチャーキャピタルは黒子であるべき」と言われるが、それに比べてもエンジェル投資家はさらに表舞台から見えにくいことが多い。その実態を少しでもお伝えできればと思う。

有安氏は2013年にコーチ・ユナイテッドをクックパッドに売却したが、それ以前からマネーフォワードなどに投資を実施。現在では同社のほか複数の会社に投資している。投資のスタンスとしては、自分の知見が生かせるものにのみ投資検討をする程度で、自身の本質については「投資家」である以上に「起業家」だと語る。有安氏は、株式公開や売却などで利益を得た(イグジットした)若い起業家が集まって結成したファンドとして注目を集める「TOKYO FOUNDERS FUND(TFF)」の1人。TFFは「事業、経営をしたことがある人が投資の意思決定をするという面白い取り組み」(有安氏)だと語る。ちなみにTFFは現在9社に投資実行しており、そのすべてが海外のスタートアップだ。

千葉氏は「先に経験した人が次の世代に投資をする」という信念のもと投資を行っており、現在個人で17社に、また国内外で13のベンチャーキャピタルにLP(有限責任組合員)として出資。以下のスライドは、文字通り初公開となる千葉氏のポートフォリオだ。

千葉氏が投資する企業(左)とLP出資するVC(右)のポートフォリオ

千葉氏が投資する企業(左)とLP出資するVC(右)のポートフォリオ

中にはインターネットサービスのスタートアップだけでなく、リアルビジネスを行う会社もある。今回のTechCrunch Tokyo 2015のプレゼンコンテストである「スタートアップバトル」の本戦出場者やブース出展者の中にも同氏の出資先企業は何社か存在する。

また経営者が集まるとあるイベントにおいては、千葉氏がLP(有限責任組合員、つまりファンドの出資者)出資しているファンドの名前を挙げて、「これのファンドから投資を受けている人は?」と尋ねたところ、9割が手を挙げたという。また有安氏も4〜5のVCにLP出資を行っているが、「自分が出資しようとするVCに必ず千葉氏の名前がある」(有安氏)のだそうだ。

経営と投資、どう両立させるのか

日本では1つのことに集中することが美学とされがちだ。それは会社経営者も同じこと。では2人は経営者という本業と、エンジェル投資家としての活動をどのように両立させているのか。

有安氏は、「(役員など)周りの多くの人から反対される」とする一方、周囲でも投資をしている人もおり、そういった人々の理解で自身も投資できると語る。コーチ・ユナイテッドを買収したクックパッドの代表執行役兼取締役である穐田誉輝氏などもエンジェル投資家として有名な人物の1人だ。

また実際に投資してみると「トラブルや人事などの相談はよくあるが、(投資家として直接手を動かさないといけないようなことは)ほとんどない」という。加えて「投資をすると、会社の経営の中身を見られるので、自分の会社の経営の精度もあがって、自分の社にとっても良い経験となる」と有安氏は言う。また2人とも、個人での投資を実行する際、両社の経営会議で議論と承認を必ず行うという。

コロプラ取締役副社長の千葉功太郎氏

コロプラ取締役副社長の千葉功太郎氏

モデレーターの岩本からは、投資家に対する質問の代表格である「投資判断」についての問いかけもあった。挑戦するマーケットや起業家個人の魅力など投資家はさまざまな要素を分析して投資するわけだが、千葉氏は「完全に『人』だ」と答える。「能力を持った、面白い人は人生のどこかできっと面白いことをしてくれると信じており、人に投資している。仮に、いま投資している会社がだめだったとしても、2回目もその人に投資をするというつもりで10年、20年という単位で人を追いかけている」(千葉氏)

有安氏の投資判断は前述のとおりだが、「そもそも(積極的には)投資しないが、自分の知見が生かせそうなもので、どうしても(投資して欲しい)ということであれば」という条件で投資をしているという。

そうして投資した場合にも、もちろん上手くいかないケースはあるだろう。個人でやっている場合、投資のスタンスは様々だが、投資の失敗について、2人とも「投資したお金が返ってこないことがダウンサイドリスク」と定義しつつ、「投資した経営者との人間関係はしっかりできているので、リスクとは感じていない」(千葉氏)という。

エンジェル投資家の役割について、千葉氏は「経営者の悩みを解決し、サポートしなくてはならない」と語る。個人投資とはいえ、千葉氏はチームでスタートアップ経営者の支援を行っているという。千葉氏のほかに、Fringe81執行役員で元楽天執行役員の尾原和啓氏やPrivateBANK代表取締役社長の佐藤貴之氏らがメンタリングや資本政策のアドバイスなどを行っている。スタートアップの悩みはたいてい共通するので、投資先同士が助け合えるコミュニティーを作ろうと、Facebookグループで情報共有をするほか、半年に1回、週末を活用してリアルな合宿も行っているという。この合宿は秘密厳守で行われる。参加者は深く、具体的な悩みについて全員で議論するそうだ。

組むべきは「高み」に到達した投資家

近年イグジットを実現したIT系の起業家らが、次の世代に投資をするという動きは積極的になっており、新たなエンジェル投資家も生まれているようだ。では会社の礎をつくる創業期に、実際のところ、どのような人を株主に入れるべきなのか。未公開株マーケットでは様々なトラブルがある中、起業家は何を軸に判断すべきか。

これについて有安氏は「自分が到達したい『高み』に到達したことがない人から出資を受けるべきでない。使えそうな株主かどうかで判断すべきだ」と断言した。千葉氏もこれに同意し、さらに株式のシェアを過半数近く取得するというような提案をしたエンジェルの事例を紹介。たとえ創業者が過半数の株式を持っていたとしても、通常シード期に特定の株主が大きくシェアを取ってしまうと次の資金調達ができないケースが多い。そのため、「エンジェル投資家はなるべくシェアをとらないことが大切で、次につなげなければならない」と話した。

オフィス電力や配送センターの人の流れを最適化、Enlightedのセンサーネットとは

2009年に創業したEnlightedは、オフィスの空調設備や省エネ対策、空間の最適利用など、ビルの管理にまつわるソリューションを提供するスタートアップ企業だ。ハード面ではセンサーデバイスを、ソフト面ではセンサーから得たデータを分析するためのツールを開発している。こうして得たデータにより、オフィス内の照明や空調を最適化するという、IoTを駆使したソリューションを提供しているのだ。

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米Enlighted エグゼクティブバイスプレジデント Christian Rodatus氏

TechCrunch Tokyo 2015に登場したEnlightedエグゼクティブバイスプレジデントのChristian Rodatus氏によると、同社はネットワークエンジニアが中心となって創設した企業で、創業当時にはビル管理や省エネなどの知識はなかったのだという。それが、「さまざまなセンサーをネットワークに埋め込み情報を分析することで、オフィスビルの管理に変革を与えることができる」という思いから、現在のソリューションの開発に至ったという。

「オフィスビルは、企業にとって最も価値のある資産であるはずなのに、その施設内で何が起こっているのかしっかり管理できている企業は少ない。HVAC(冷暖房空調設備)は、ビルのエネルギー消費の約50〜70%を占めているとされる。アナリティクス技術などを活用すれば、エネルギー効率はより改善できるはずだ。Enlightedはこの分野で企業を支援したい」とRodatus氏は言う。

人の流れの分析や最適化も

例えば、小売店舗では1平方メートルあたりの収益をいかにして引き上げるかが重要となるが、「POSデータを分析しても、実際に顧客が商品を購入するまでその顧客のことは分からない。われわれのソリューションでは、顧客が実際にどの空間をどう歩き、どの製品をどう選んでいるかまでを捉えている」とRodatus氏。また、労働力の生産性を向上させるため、1人1日約20キロも歩き回っている大手オンラインリテール会社の配送センターにて、人の動きや流れを分析して最適化した事例もあるという。

こうしたソリューションを実現するためにEnlightedが開発したのが、照明に取りつけることでその場の人の動きや温度・湿度といった環境を感知したり消費電力を把握したりするセンサーだ。また、これらセンサーから安全にデータを収集する無線ネットワークと、収集したデータを分析する管理ソフトも用意した。

TC-1608「照明というものは、どんな建物にもついているものだ。これにセンサーを取り付けることで、人の動きやその場の環境などさまざまな状況が感知できるようになる。センサーが発するデータは5分ごとに収集され、そこから分析をかけている」(Rodatus氏)

また、同センサーは照明に取り付けるタイプのため、センサーの電力を照明から補給できると同時に、照明器具の管理もできることが利点だという。「例えば、センサーがある特定のイベントを検知した場合、照明に何らかの操作をさせるといったことも可能だ。センサーをエネルギー管理の仕組みとして活用することで、照明のエネルギー消費は60〜90%程度削減することが可能となる。そこで削減したコストを、このセンサーネットワークの資金源として使えるのだ」とRodatus氏。また同社では、初期費用の課題を支援するため、Global Energy Optimization(GEO)というファイナンスプログラムも用意している。

Enlightedがこれらのソリューションを販売開始したのは3年前。同社の顧客には、GoogleやIntel、Cisco、AT&Tなど、テクノロジー系企業も数多く名を連ねている。Oracleも早期にEnlightedの製品を導入した1社で、「Oracleは2016年末までに社員1人あたりのエネルギー消費を10%削減するという目標を掲げており、その目標を達成するためにEnlightedのソリューションを採用した」とRodatus氏は述べている。

「Enlightedは、最先端のセンサーテクノロジーを活用した完全なIoTスタックを用意しており、そこから環境や人の行動データなどが取得できるようになっている。われわれは、今後10年で商用不動産におけるインテリジェントセンサーネットワークの市場が100億ドルになると見ている。これは非常に大きなチャンスだ。その後も、アナリティクスアプリケーションの市場はさらに毎年100億ドルずつ成長するだろう。つまり、施設のデータを分析し、それをさまざまな分野に適用していくことによってもたらされる価値は、非常に大きなものになるのだ」(Rodatus氏)

明日から開催!TechCrunch Tokyoの見どころをもう一度お伝えする

ここしばらくご紹介してきたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」もいよいよ明日からスタートする。もうタイムテーブルも公開済みだが、セッション、ブースなどなど見どころをまとめてご紹介しておきたい。

“近い未来”の家庭向けロボット「Jibo」

1日目の11月17日、キーノートスピーチをしてくれるのは米国のロボットスタートアップ「JIbo」のCEOであるSteve Chambers氏。2012年創業のJiboは、クラウドファンディングサービス「Indiegogo」で約7400人から約370万ドル(約4.5億円)の資金を調達して注目を集めている。

彼らの開発するロボットの特徴は、顔認識によって家族それぞれの区別が付くこと。相手によって対応を変えたり、好みを覚えたりしてくれるのだそう。また、Jiboから人間に対して話しかけるなんてこともあるという。プロダクトのリリースは2016年以降だと聞いているが、その全容をいち早く知りたい人は是非ともチェックして欲しい。

※Jiboの紹介記事はこちら

気鋭国内スタートアップの起業家のビジョンを聞く

TechCrunch Tokyoには海外だけでなく、国内の企業家も数多く登壇する予定だ。

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金額は非公開ながら、100億円とも200億円とも言われる大型のクロスボーダーM&Aを実現したエウレカ・赤坂優氏、ユーザー数2000万人を突破したとの発表もあったばかりのメルカリ・山田進太郎氏、LINE代表の座を離れ、今春自ら起業したC Channel・森川亮氏のほか、gumi・国光宏尚氏、コロプラ・千葉功太郎氏、コーチ・ユナイテッド有安伸宏氏などが、自身の事業のアップデートや新しい取り組みについて語ってくれる予定だ。

※各社の紹介記事はこちら:エウレカメルカリC Channelgumi

また2日目の18日のキーノートセッションにはマネックスグループの松本大氏が登壇。「FinTech」なんて言葉がなかった頃から、日本の金融×IT領域を切り開いてきた同氏には、事業の話に加えて、起業論や組織論、仕事論などを語ってもらう予定になっている。

※紹介記事はこちら

デザイン特化のクラウドソーシング「99design」と組んだトートバックも

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海外からのゲストの1社である99designsは、デザインに特化したコンペ型のクラウドソーシングサービス。同社からはCEOのPatrick Llewellyn氏が登壇する予定だ。加えて、会場では99designsで作ってもらったデザインと、TechCrunchのロゴが入ったトートバッグも来場者に提供する予定となっている(バッグのデザインは3つあるため、参加者の運次第になるが)。

※紹介記事はこちら

気鋭12社がプレゼンを競う「スタートアップバトル」

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イベントの目玉になっているのが、プレゼンテーションコンテストの「スタートアップバトル」だ。創業3年未満、サービスローンチ1年未満のスタートアップのみを対象にしたスタートアップバトルには、100社以上の応募の中から選ばれた12社が1社5分のプレゼンテーションを繰り広げる。

昨年は800人入るホールが立ち見になるほどの熱気に包まれていた。結果は記事でもご紹介することになると思うが、魂のこもった起業家のプレゼンテーションは、会場で見て欲しいと思っている。

※紹介記事はこちら

最新のIoT製品を見て触れられる「フューチャーラウンジ」

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TechCrunch Tokyoの見どころはセッションだけではない。会場には過去のバトル登壇者をはじめとしたスタートアップや、スポンサー企業のブースも数多く出展する。

ここではブースの中でも初の試みとなる「フューチャーラウンジ」について紹介したい。このスペースでは、単3電池で動くガジェットをスマホでコントロールできるようになるIoTデバイス「MaBeee」や、HOME360の提供するVRコンテンツなど、IoTやハードウェアに特化したスタートアップ5社の展示が行われる。もちろん展示を見るだけでなく、実際にデモを体験したり、プロダクトを購入したり(cloudissのみ)もできる。

前売りチケットの販売は本日いっぱい

そうそう、大事なことを1つ伝え忘れていた。前売りチケットの販売は今夜23時59分までとなっている。これを読んでイベントに興味を持った人は、今すぐ以下からチケットを購入頂きたい。

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日本発・非ネット分野の「世界基準ベンチャー」がTechCrunch Tokyoに登壇

ネット系のスタートアップではメルカリやスマートニュースが米国進出したり、海外ユーザー比率が95%の対戦型脳トレ「BrainWars」が国境を超えた感があるが、“非ネット”な分野にも世界を狙えるスタートアップはある。

11月17日、18日に開催するTechCrunch Tokyoでは、そんな非ネット分野の「世界基準ベンチャー」にスポットを当てる。登壇するのは、工場の生産ラインなどに導入される産業用ロボットの制御機器を手掛けるMUJINの滝野一征さんと、電気自動車(EV)を開発するGLMの小間裕康さんの2人だ。

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

産業用ロボットに“考える力”を与える

MUJINをざっくり言うと、産業用ロボットの“脳みそ”を作る研究開発型ベンチャーだ。ロボットと聞いてガンダムのような人型ロボットを思い浮かべる人にはピンとこないかもしれないが、通常、産業用ロボットを稼働させるには、専門のオペレーターがロボットを手作業で動かし、その動作をプログラミングする「ティーチング」が必要となる。この作業は膨大な時間とコストがかかるうえ、教えた動作以外に応用がきかないのだ。

こうした産業用ロボットに“考える力”を与えるのがMUJINだ。主力製品のひとつ、「ピックワーカー」は、ティーチングせずにバラ積みの部品を取り出せるのが特徴。対象部品を3次元で認識し、その情報をもとに産業用ロボットを制御するコントローラが瞬時に動作プログラムを計算する。ロボットや3次元センサーは汎用品が使用可能で、MUJINはコントローラを開発している。

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

MUJINの設立は2011年7月。今年5年目のベンチャーだが、すでに自動車工場や物流、食品仕分けなどで導入実績があり、取引先にはキヤノンやデンソー、日産、三菱電機といった大企業が名を連ねる。海外からの問い合わせも多く、世界展開を見据えている。2012年7月には東京大学エッジキャピタル(UTEC)からシリーズA資金として7500万円、2014年8月にはUTECとJAFCOからシリーズB資金として6億円を調達している。

最後にピックワーカーの動画をご紹介する。産業用ロボットが自律的に考えてばら積みの部品をピックアップする様子は、まるでSF映画を見ているような気にもなる。

「日本版テスラ」国内で初めてEVスポーツカーを量産

登壇するもう1社、GLMは2014年4月に設立した京都大学発のベンチャーだ。電気自動車(EV)向けの独自プラットフォームを開発している。プラットフォームというのは、ギアやドライブシャフトで構成されるドライブトレイン、そしてシャーシのこと。GLMはこのEV向けプラットフォームを利用した完成車を販売し、一部では「日本版テスラ」と呼ばれたりしている。

2014年7月には、量産を前提としたEVスポーツカーとしては国内で初めて、国土交通省の安全認証を取得。公道での走行が可能となった。これを受けて同年8月から、国内初の量産EVスポーツカー「トミーカイラ ZZ」の納車をスタートしている。トミーカイラ ZZは静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速性能がウリ。価格は800万円ながらも、限定生産の99台は受付初日で限定数を超える予約が集まった。

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

GLMはEVスポーツカーだけでなく、資金調達でも話題を呼んだ。2012年10月の増資では元ソニー会長の出井伸之氏や元グリコ栄養食品会長の江崎正道氏らが出資。2013年12月にはグロービス・キャピタル・パートナーズなどVC4社と日本政策金融公庫から約6億円、2015年5月には既存株主や複数国の政府系ファンドから約8億円、8月には総額17億円のシリーズB資金調達を完了するなど、すでに多額の資金を集めている。

産業用ロボットと電気自動車。どちらの業界も、いちベンチャーが参入するには障壁が高そうに思えるが、MUJINもGLMも夢物語ではなく、テクノロジーで世界市場をつかもうとしている。イベントではそんな世界基準の研究開発ベンチャーの魅力をお伝えできればと思う。

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ポルトガル発ハッカソン生まれ、シリコンバレーで急成長のTalkdesk創業ストーリーとは

「シリコンバレーは月みたいなもの。遠くで美しく輝いている。見上げるだけで自分で月面を歩く日が来るとみんな思わない。だけど、そう感じながら外国から文無し、ツテなしで来て、気付けばY Combinatorに入って成功するやつを、ここで何人も見てきたよ」

これは、半年ほど前にシリコンバレーのパロアルトにある「Startup Embassy」というハッカーハウスに滞在していたときにスペイン人のホスト、Carlos Noriegaがぼくに語った言葉だ。そのハッカーハウスというのはシリコンバレーに憧れてやってくる外国人のハッカーや起業家向けのシェアハウスで、常時10〜15人前後の起業家が数週間から数カ月と逗留してプロトタイプを作ったり、スタートアップのアイデアについて議論していたりするような場所なのだった。過去2年で200人ほどが滞在し、うち数人が起業家として成功しつつあるという。

最近だと中国やアジアが市場として台頭してきているし、スタートアップエコシステムということだとヨーロッパにもテックハブと呼ぶべき都市がいくつも生まれてきている。しかし、そうは言ってもテック系スタートアップの聖地としてシリコンバレーは図抜けた存在で、憧れるヒトも多いだろう。ルネサンス期のフィレンツェのように国際都市として多くのタレントを惹きつけている。ルネサンスという運動は100年とか200年かけてヨーロッパ各地に広がったが、フィレンツェこそが中心地だった。それと同じで、シリコンバレーの地位はソフトウェアによる産業の革新が続く当面は揺るがないだろうと思う。

そんなシリコンバレーに外国人として入っていって成功しつつあるストーリーを語ってくれるポルトガル人起業家、Tiago Paiva氏を来週に迫ったTechCrunch Tokyo 2015にお呼びしたのでご紹介したい。Tiagoはクラウドベースでコールセンターを構築できる「Talkdesk」の共同創業者でCEOだ。

すべてはハッカソンから始まった

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Talkdesk共同創業者でCEOのTiago Paiva氏

Tiagoはリスボン大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得したエンジニア。冒頭に書いたように、世界を変えるようなプロダクトを作り、スタートアップエコシステムに入っていくことを夢見ていた外国人の1人だ。多くのビジネスや起業のアイデアを試したり議論したり、シリコンバレーから発信されるポッドキャストを聞き、最近のSaaS企業のIPO申請資料を壁に張って眺めるほどの憧れっぷりだったという。ただ当時のポルトガルには、まだスタートアップエコシステムは立ち上がってなかった。

そんなの時に見つけたのがTwilio主催のハッカソン。優勝賞品はMacBook Air。Tiagoはそのラップトップと、賞品としてのMacBook Airが象徴するものを手に入れたくなった。2011年のことだ。Tiagoは後の共同創業者となるクラスメイトと2人で飛行機に飛び乗り、TwilioConという48時間のハッカソンに参加。Talkdeskのプロトタイプを作り、そしてMacBook Airと成功へのチケットを手に入れた。

それから4年が経った今、Tiagoは2450万ドル(約30億円)もの資金調達をして急成長を続ける「Talkdesk」の共同創業者兼CEOを務めるにいたっている。Salesforce Ventures、500 Startups、DFJなど著名VCからの投資を受けて、54カ国2000以上の顧客と約120人の社員を抱えているそうだ。

Talkdeskは「クラウドベースのコールセンターがあればいいんじゃね?」というアイデアを、ハッカソンで実現したことから始まっている。これを書いているTechCrunch Japanの西村は、これまで何度もTwilio APIを使ったハッカソンを見てきたり主催もしてきたが、今までTalkdeskほど説得力のある実装アイデアは聞いたことがなかった。

かつて専用機材や特殊なソフトウェア開発の世界だったICTのうちの「C」の世界をクラウドを使ったITの世界に結びつけるのがTwilioだった。例えばコールセンターといえば「予約確認の方は#1を……、キャンセルの方は#2を……」というプッシュトーンによる音声ナビゲーションを提供する。この「IVR」と呼ばれるシステムは旧態依然とした高価で特殊なシステムの世界だ。Twilioは、これをクラウドとWeb開発者が慣れ親しんだプログラミング言語で実現できる、というのが売りだった。

Twilio APIを使えばIVRが手軽に作れるし、ほかのCRMやZendeskのようなカスタマーサポートサービスとのつなぎ込みもできる。しかし、そこにはまだ「開発」が残っていた。Talkdeskのコンセプトは、Twilio APIの上に1枚レイヤーをかぶせ、ユーザー企業が直接IVRや他サービス連携をブラウザ上でグラフィカルに定義、変更できるようにしてしまおうというものだ。Talkdedskのウリ文句は「5分でコールセンターを作ろう」だ。Talkdeskはコールセンター業務にかかわるシステム構築に、専用ハードウェアもコーディングも不要にしてしまった上に、SalesforceやZendesk、Shopifyを繋ぎこむウィジェットも用意している。アメリカの場合だとコールセンターで当然必要な電話番号も初期設定画面から購入できたりする。コールセンターへの問い合わせを、その内容と人材のスキルに応じて適切な人に「ルーティング」するような高度な処理など、Talkdeskはソフトウェアによる順当なイノベーションを起こしつつあって、レガシーな通信関連業界をディスラプトしている。典型的な企業向けSaaSのスタートアップ企業とも言える。

さて、そんなTiagoだが、TechCrunch Tokyoでは500 StartupsのベンチャーキャピタリストであるRyan Lawler氏とファイアサイドチャットという形で、創業ストーリーやシリコンバレーで外国人として起業することなどを語っていただく予定だ。Ryanは、去年TechCrunch Japan 2014に来たときにはTechCrunchのシニア・エディターだったのだけど、最近テック・ジャーナリストからVCに転向している。シリコンバレーで多くのスタートアップを見てきたメディアの視点と、投資家という視点の両方からインタビュワーとして話を聞いてもらう予定だ。

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触覚ありVRを体験せよ! TechCrunch Tokyoにモトクロス体験型VRやハコスコ1000個を用意

hacoscoOculusのようなVR映像で感動したことは4回ある。1度目は、2013年9月に初めてOculus Riftを装着して戦闘機もののフライトシミューレーターを体験したとき。コックピットからキョロキョロと上下左右を見れば別の飛行機が空中を滑るように飛んでいるのが見える。360度映像というのはこれまでにもあったが、三半規管と映像がシンクロすると、こんなに没入感があるのかということと、それが300ドル程度の安価なデバイスで実現されていることに驚いた。

2度めに感動したのは、初めてハコスコを試したとき。1000円というお手頃価格のダンボール製簡易ビューワーとスマホだけでも十分な没入体験ができることに驚いた。3度めに感動したのは半年ほど前のこと。シリコンバレー滞在中に3Dの360度カメラを1000ドル以下で作るんだとハッカーハウスに引きこもってRaspberryPiによる自作の2眼カメラモジュールを製作しているハッカーと出会った。彼は2眼モジュール4つを四角い箱に貼り付けてFPGAでリアルタイムスティッチ処理をするコードを書いていた。ちなみに両眼視差を使った立体VRと、普通のVRは相当に違うものだ。サブ1000ドルのカメラで奥行きも分かる360度映像が作れてストリーミングが可能となるとなると、これまでと全く違う映像カルチャーや応用が生まれるんじゃないかという彼の話も面白かったが、何よりもその彼に見せてもらったポルノ映像に鼻血が出た。エロ本とエロビデオが違うという以上にエロビデオとエロVRは違う。ぼくは体験する前から「ああ、分かるよ、分かるよ。スゴいってのは想像できるよ」と言っていたが、それは全く過小評価だった。体験してみないと分からないことはあるのだ。たとえバーチャルな体験であっても。

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あまりパブリックな場でエロの話をするわけにはいかないので、もう1つVRで感動したことを書こう。これは2015年の初夏のことだが、日本のHOME360という会社が作った上の写真にあるようなモトクロス体験型VRを試したときも「なるほど!」という感動があった。それは室内に設置したモトクロスにまたがってOculusを装着して体験するセットだった。コースを走り回り、土でできた小山をジャンプして高みから見下ろすと、足元にレース場が見える。身体全体で感じる加速度や傾きといった触覚とVRを組み合わせると、さらにスゴい体験が生まれるのだということを、ぼくはこれで理解した。

HOME360のモトクロス体験型VRコンテンツというのは、実はモトクロスの後ろに立った人間が(!)、画面をみながらタイミングを見計らってモトクロスのおしりをガツンと持ち上げたり下ろしたりしているだけだったのだが、その事実を後から知って、ぼくはなおさら感心した。モトクロスの前には大きな扇風機も置いてあって風を切って空中を舞うような爽快な体感が生まれるのだけど、この扇風機も人間がコントールしているのだった。Maker精神を感じるブリコラージュによって、これほどの体験が生み出せるのか、とぼくは感動してしまった。

2015-06-21 10.40.00

会場にモトクロスVRを展示、VRパネル・セッションもやるぞ!

モトクロスをガツンガツンと動かし、乗っているヒトに身体感覚込みのVR体験を提供するのはHOME360代表の中谷孔明さんだ。来週火曜日、水曜日のTechCrunch Tokyo 2015では中谷さん自らが会場の展示スペースに来て、ガツン、ガツンとやってくれることになったのでお知らせしたい。Oculus未体験のヒトも、すでにある種のVR映像は見たことがあるというヒトも、ぜひ会場に遊びに来て試してみてほしい。中谷さんに聞けば、これまでにもモトクロスVR展示は各地で行っていて、1日500人ぐらいならこなせますよ、と笑っていた。

HOME360はモトクロスVRをやっている会社ではなく、実はB向けに360度コンテンツの企画・製作、コンサルをやっている会社だ。旅行代理店のH.I.S向けにハワイ旅行の体験コンテンツを作ったり、スバル向けに自家用車の仮想試乗体験を360度映像で提供するということをやっている。中谷氏は2001年ごろから360度映像に取り組んでいて、この方面では良く知られた人物だ。ぼくはライブ・コンサートを最前列で見るというVRコンテンツも体験させてもらったのだけど、低音に合わせて椅子がバイブレートする状態でVR体験をするのは、かなり新鮮だった。

筋肉を電気で制御して「フィードバック」をVR体験に付加するUnlimitedHand

もう1人、触覚とVRの融合という点で注目の日本のスタートアップ企業「H2L」創業者の岩﨑健一郎氏もご紹介したい。岩﨑氏には今回TechCrunch Tokyoの会場に来てステージ上でデモをして頂くほか、来場者が体験ができる形で展示もして頂けることになっている。

H2Lについては、TechCrunch Disrupt SF 2015で米国デビューしたので記事を見た記憶のあるヒトもいるかもしれない。H2Lが提供するUnlimitedHandは、VRそのものではなく、腕に巻き付けてVRとともに使う「入力センサー+フィードバック」のデバイスだ。モーションセンサーと筋変位センサーにより、ユーザーの腕や指の動きを読み取れるほか、電気刺激によって触覚をユーザーにフィードバックできるという。

uh01EMS(Electrical Muscle Stimulation)という電気刺激で筋肉を外部から動かしてしまう技術は、これまで筋トレマシンなどフィットネス家電で使われてきたが、H2LはそれをVRやVRゲームと結び付けようとしている。UnlimitedHandがスゴいのは、複数の電極を使った「マルチチャンネルEMS」と呼ばれる技術を使っていること。EMSというのは周波数によってターゲットとする筋肉を変えられるそう。皮膚からの深さや個人差によって20Hzから1000Hzほどの周波数の交流電流を流すのだが、周波数が高いほど身体の奥にある筋肉に作用する。この原理と複数電極をうまく制御することによって、指の1本1本まで制御できてしまう。ちょっとにわかに信じがたいのだけど、本人の意図と関係なく特定の指を動かせるというのだ。

つまり、VRで映像を見せつつ仮想の感触をユーザーに与えることができるわけで、VR空間の物体に「触れる」ような体験を提供できるのだそうだ。あまり激しい電流を流すと人によってはチクチク感じるという事情もあるので今は模索段階というが、テーブルを叩いたときに平面に手のひらがあたって止まるような、そんな印象をユーザーに与える強い筋肉の制御すら原理的にはできるという。もともと生物化学や情報工学分野の研究者だったH2Lの岩﨑氏によれば、触覚というのは進化論的に古い感覚なので騙しにくいそう。一方、触覚に比べると視覚というのは比較的新しく生物が獲得した感覚なので騙しやすい(だから錯視というのがたくさんある)。つまり、VRの普及によって視覚と触覚を組み合わせた新しい体験を生み出せる可能性が広がっているということだと思う。

uh02ちなみにマルチチャンネルEMSの制御は、ユーザーの体型や脂肪率など個人差にあわせてキャリブレーションが必要になる。ここの処理は機械学習の学習機を搭載することで対応しているそうだ。この学習機に大量のセンサーデーターを「教師信号」として突っ込んで結果を出す。こうした膨大な計算処理が現実的にやれるようになってきたということも、UnlimitedHandのようなものが2015年まで登場してこなかった背景にあるのではないかと岩﨑氏は話している。

さて、TechCrunch TokyoのVR関連は展示だけでなく、パネル・ディスカッションも予定している。「VR最戦前:360度動画が開く新しい世界とビジネス」と題して、日本語で読めるVR専門ウェブメディア「Panora」編集長の広田稔氏、ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏、HOME360代表取締役の中谷孔明氏の3人に登壇して頂く予定だ。なぜVRが今注目されていて、どういうビジネスや可能性が開けつつあるのか? OculusやFacebook、ソニー、サムスンなど注目プレイヤーの動向はどうなっているのか? VRに関心のあるヒトには見逃せないセッションだ。

先着1000名様と数に限りがあるのだが、会場にはTechCrunchオリジナルデザインのハコスコ1000個も用意してある。ぜひ事前にアプリをダウンロードの上、早めに会場に遊びに来てほしい。

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十億円を捨てて起業―、マネックス証券創業者の松本大CEOがTechCrunch Tokyo登壇

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matsumoto-photoいよいよ来週の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015だが、国内ゲスト登壇者をもう1人ご紹介したい。マネックス証券の創業者で、現在マネックスグループの代表執行役社長CEOを務めている松本大(まつもと・おおき)氏の登壇だ。

Fintechが盛り上がりを見せる日本のスタートアップ界だが、マネックス証券は、その草分け的存在と言える。マネックス証券が創業したのは、まだFintechなんていう呼び方がなかった今から16年前のこと。1999年のマネックス創業当時、インターネット接続はめんどうで高かった。電話回線をインターネットに流用するダイヤルアップ接続が一般的だったために、電話料金が安くなる夜間以外は、電話料金を気にしながらにネットを利用するのが一般的だった。今じゃ信じられないけど、必要のないときにはPCはネットに繋がってなかったのだ。ネットというのは「よいこらしょ」という感じで繋げ、それから利用して、そして用事が済んだらそそくさと「切断」するものだった。

そんな時代に松本氏は「オンライン証券」という業態で創業した。個人がインターネットを使って株式をはじめとする金融商品の売買をする時代が必ず来る、という信念があったという。

あと半年待てば受け取れたはずのプレミアム報酬は数十億円とも

いくら時代が動くという直感があっても行動に移せない人が多いだろう。まして、それなりの待遇で会社勤めをしていたら迷うのが普通だ。松本氏の場合、それなりの待遇などではなかった。起業時に捨てた待遇は文字通り破格だった。外資系金融業界でスピード出世をした松本氏は、1994年に史上最年少の30歳という若さでゴールドマン・サックスのゼネラル・パートナーに抜擢されている。1998年に退社してマネックスを創業する決意をしたタイミングというのは、実はゴールドマン・サックスは上場を間近に控えていた。実際同社は1999年5月に上場を果たしていて、松本氏がゼネラル・パートナーとして受け取れたはずのプレミアム報酬は10億円以上とか数十億円と言われている。ここは守秘義務があるから松本氏自身が過去に正確な数字を口にしたことはないが、関係者や当時の報道からすると二桁億円以上だったのは間違いなさそうだ。

翌年の春に上場が控えていて、個人としては莫大な報酬を受け取れることがほとんど確定していた。なのに、なぜその半年前の1998年の秋に松本氏は、それを捨ててまでゴールドマン・サックスを去ってマネックスを創業したのか。

松本氏自身は、この決断の背景にあったのは「タイミング」と「クレダビリティー」の2つだとしている。

1999年10月というのは株式委託売買の取引手数料が自由化されたタイミング。1996年に始まった金融ビッグバンという大きな金融制度改革の流れにおける、千載一遇のチャンスでもあった。当時の松本氏には、個人金融資産の行き先が銀行と郵便貯金に異常に偏りすぎていて、日本経済が歪んでいるという強い問題意識があった。そういう問題意識を抱えたまま、金融の専門家として何もしないという選択肢はなかったのだろう。規制緩和のようにゲームのルールが変わる時というのは、たった半年の参入タイミングの差で勝敗が付くことがある。たとえ半年でも待てなかった、ということだ。

「クレダビリティー」というのは信じるに値するかどうかのことだ。ビジネスマン、あるいは一人の人間として、どれだけ人から信用されるかこそが最も重要だと考えたということ。口でいくら日本経済や個人資産の問題を指摘し、「あるべき論」を展開していたとしても、やるべきタイミングを逃し、やるべきだと言ってることをやらないようでは、しょせんその程度と思われる。逆に、目の前の莫大な報酬を捨ててでもゼロから起業したとなれば、その覚悟は言葉で説明しなくても周囲に伝わる。クレダビリティーというのは作り上げていくのに年単位の時間がかかるのに対して、崩れるときは一瞬。長い目で見れば、目の前の利益を捨ててでも守るべきモノがあるというのは傾聴に値する話だ。

スタートアップ創業期の話でいえば、松本氏はこんなことも言っている。自分たちが守るべき理念は最初から作れ、組織やビジネスができてからと後回しにするなと。創業期はカオスになりがちだし、売上もまともに立たずに必死にもがくもの。そうした中、オレたちはこの一線だけは守るのだというのを最初から決めておかないと、より大きて強いものに降参したりすることが起こり得る。心当たりのある人はいないだろうか? 立ち上げ期の溺れるような環境にいたことがある人なら心当たりの1つや2つはあるだろう。「受注するしかないよ……、だって売上どうすんの!?」「でも、これをやるためにオレたち集まったんじゃないよね?」「だってしょうがないじゃん!」「そもそも倫理的にマズくね?」「じゃあ、お前はほかにどうするって言うんだッ!」。

ぼくは松本氏にTechCrunch Tokyoに登壇していただくにあたって聞いてみたいことがたくさんある。創業期、成長期を経て、現在マネックスグループとしてアメリカや中国へとビジネスを広げつつある拡大期にある。多段ロケットのように異なるステージを駆け抜けてきた起業家、経営者としての松本氏のストーリーや、それぞれの段階における洞察もお聞きしたいし、創業から16年が経過してみて結局個人金融資産は動かなかったんじゃないですか、問題は実は解決できてないんじゃないですか、ということも是非聞いてみたいと思っている。いくら「貯蓄から投資へ」といったところで過去にそれほど大きく動いてこなかったのは、何かもっと本質的な問題があるからではないのか。

同じくFintechの文脈でいえば、証券会社とユーザーの間にある本質的な利益相反についても聞ければと思っている。金融商品取引プラットフォームというのは、その性質上プラットフォーマーにはトランザクションを増やすインセンティブが強く働く。証券会社の売上である手数料収入というのは、預かり資産残高に売買回転率を掛けたものだから、回転率を上げれば上げるほど売上はあがる。一方、回転率を上げてパフォーマンスが確保できる個人投資家などほとんどいないだろう。投資信託にしても金融庁が指摘するとおり日本では投信の保有期間が平均2年程度と短く、何かがおかしい。リスクの高いジャンク・ボンド債が人気商品として上位にランクし、証券会社の売上は伸びていても個人投資家のパフォーマンスは良くない。日本の証券会社はユーザー利益に主眼など置いていないのではないか。こういう構造的問題は、霞が関と金融村の阿吽の呼吸のようなクローズドな環境でルール決めをやっているから解決が難しいのではないか。と、そんなことも、最近ぼくがFintechや「霞が関ハック」が必要なスタートアップ領域で気になっていることの1つだ。

ちょっと紹介がFintech寄りになってしまったが、松本氏には起業論や組織論、仕事論といったことも話していただければと思っている。マネックス証券の創業時にはソニーを巻き込み、設立記者会見では当時ソニー社長だった出井伸之氏が舌を巻くほどの演出を仕込むなど痛快なエピソードも多い。大企業や官庁とうまく付き合っていきたいスタートアップの人たちには参考になる話もあるだろう。日本で生まれて世界に羽ばたきつつあるマネックスグループの祖、松本大氏の生の声を来週のTechCrunch Tokyoへ、ぜひ聞きに来ていただければと思う。

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TechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトル登場チームはこの12社だ

昨年は家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」が優勝した

昨年は家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」が優勝した

いよいよ再来週に迫ってきた「TechCrunch Tokyo 2015」。その目玉企画の1つが、100社以上がエントリーした一次審査を勝ち抜いたチームが自社プロダクトをプレゼンで競い合う「スタートアップバトル」だ。昨年は800人規模の会場で立ち見が出るほどの盛況ぶりだったが、今年は昨年同様かそれ以上の盛り上がりが予想される。11月18日の決勝大会に出場する12チームのプロダクトを手短に紹介しよう。

SmartHR(株式会社KUFU )
社会保険・雇用保険の手続を自動化するクラウド型ソフト。

Popcorn(クービック)
渋谷や恵比寿、六本木をはじめ都内中心に、当日予約できるサロンが見つかるアプリ。

One Tap BUY(株式会社One Tap BUY)
4タップで有名企業の株式を買えるアプリ。日本初のスマホ専門証券会社を設立準備中。

キャスタービズ(株式会社キャスター)
人事や経理などの事務作業をオンライン秘書に依頼できるサービス。

シェルフィー(シェルフィー株式会社)
店舗を出店・改装したい人と、デザイン・施工会社をつなぐプラットフォーム。

TANREN(TANREN株式会社)
動画を主体とした研修システム。属人的になりがちな社内教育を共有化できる。

WATCHA(株式会社WATCHA)
自分の好きな作品をもとに、オススメの映画、ドラマ、アニメを教えてくれるアプリ。

WealthNavi(ウェルスナビ株式会社)
世界中の機関投資家や富裕層が利用する国際分散投資をサポートする資産運用サービス。

BONX(チケイ株式会社)
スマホと接続して使えるウェアラブルトランシーバー。アウトドアでの利用を想定している。

SHOPCOUNTER(株式会社COUNTERWORKS)
物販やイベント用のスペースを貸し借りできるマーケットプレイス。

mijin(テックビューロ株式会社)
自社またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン構築プラットフォーム。

VIDEO TAP(株式会社オープンエイト)
延べ4000万UUの女性向けプレミアムメディアを束ねるスマホ動画アドプラットフォーム。

以上の12社が、11月18日(水)に開催するスタートアップバトルに登場する。バトルの開始前には、家庭用プリンタで電子回路を印字できる「AgIC」を発表して昨年王者に輝いたAgICの清水信哉さん、同じく昨年のバトルに出場したダイエット家庭教師アプリ「FiNC」の溝口勇児さん、後付型スマートロック「Akerun」を手掛けるフォトシンスの河瀬航大さんが登場し、プロダクトのアップデートを語ってもらう予定だ。

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開催まで残り10日、TechCrunch Tokyoハッカソンはテーマ自由、チーム歓迎!

すでに告知させて頂いた通り、東京・渋谷のヒカリエで開催予定のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」に付随する形でハッカソンを行う。イベント本編は11月17日(火)・18日(水)だけど、ハッカソンはその直前の14日(土)、15日(日)にお台場で開催する。

2014年のTechCrunch Tokyoハッカソン

今年は審査員として、デザイナーでエンジニアでもあるコイニー・プロダクトストラテジストの久下玄氏、そして角川アスキー総合研究所所長で元「月刊アスキー」編集長の遠藤諭氏をお呼びしている。また特別参加エンジニアとして、昨年同様にIT芸人masuidriveことトレタCTOの増井雄一郎氏にもチーム参加いただくことになっている。

テーマは自由、プロトタイプ持ち込み可

これまでにTechCrunch Japanでは何度かハッカソンを開催してきたが、今回は少しルールが異なる。まず、参加資格はエンジニアかデザイナーであること。企画・ビジネスサイドの人には、今回ご遠慮いただいている。最近増えている「起業するためにコーディングを覚えた」というような人は歓迎だ。

今回はチームビルディングの時間を設けないのでチームでの参加が必須となっている。ただし、チームメンバーが1人というのはオッケー。1人で会場へ来てモクモクとハックして何かのプロトタイプを作るというのもチーム扱いで歓迎したい。実は2014年のTechCrunch Tokyoハッカソンで登場した「CFTraq」(クラウドファンディング・トラック)も1人チームの作品だ。

多くのハッカソンはテーマを設けるが、今回のTechCrunch Tokyo 2015 Hackathonでは、「TechCrunchに載ってもおかしくないようなもの」というモヤッとした方向性だけを設定したい。そのアイデアなら投資したいという事業性がほのかに感じられたり、ハックそれ自体が面白いなどといった作品を期待したい。作るのはハードウェアでもソフトウェアでもオッケーだ。

IoTであればモジュールの持ち込み、ソフトウェアなら自作ライブラリの利用など、プロトタイプレベルのものは持ち込み可としたい。いきなり何かのハードウェアモジュールを使うとなると、動作検証とか習作を作るだけで週末が終わる可能性があるので、ハッカソンの週末で一気に作り上げるのに必要な要素は、あらかじめ準備していただけると良いと思う。

ルールとして、もう1つ。サービス系、インフラ系のAPI提供スポンサーにご協力いただけることになっているので、いずれか1つAPIを利用してほしい。面白いサービスAPIもあるし、クラウドインフラや決済がある。サービス化の部分でAPIを組み込むと活かせるのではないかと思う。

APIスポンサー
楽天、KDDIウェブコミュニケーションズ、kii、アプレッソ、さくらインターネット、構造計画研究所、株式会社ぐるなび、アマゾン ウェブ サービス ジャパン、PR TIMES、Microsoft、NTTドコモ、IBM

今回のハッカソンには優勝賞金のようなものはないが、各種スポンサー賞が用意されるほか、ハッカソン参加者は全員TechCrunch Tokyo本編にも無償招待させていただく。そして昨年同様にハッカソン発表作品の中から5作品(チーム)は、TechCrunch Tokyo 2015のセッションで各4分間のライトニングトークをしていただく予定だ。

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TechCrunch Tokyoにメッシュセンサーでビルの省エネを実現する「Enlighted」が来る

Christian-Rodatus1約2週間後の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015の海外ゲストスピーカーについて、またもう1人紹介したい。日本ではほとんど知られていないだろうけど、広い意味でIoT系スタートアップ企業といえる「Enlighted」から、グローバル・ビジネス部門を統括するChristian Rodatus氏にご登壇いただけることとなった。

フロアのヒトの位置、流れを把握してオフィスの電力消費を最適化

IoTというと最近出てきたバズワードだけど、Enlightedが生まれたのは2009年と、もう少し歴史は古い。Enlightedは過去5回の投資ラウンドで5560万ドル(67億円)の資金を調達している。何をしているかをヒトコトで言うと、センサーネットワークを使ったオフィスビルの省エネだ。以下のようなセンサーデバイスを主に天井に取り付け、オフィス内の光と温度、動きの分布を検知して、電灯や空調をコントロールする。

sensors

Enlightedのセンサー。天井に貼り付けるもの、屋外利用できるもの、小型タイプなどがある

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ヒートマップでヒトの動きを把握

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実際にヒトがいるところだけ電気をオンに

Englightedの1つのポイントは、光を検知するといっても光の強度のことであり、映像を撮影するというわけではないということ。

Enlightedのセンサーデバイスのもう1つのポイントは、ZigBeeを使った無線ネットワークを独自に構築していること。つまり既存のWiFiに依存することはない。Enlightedは、もともと無線技術のプロが集まって「メッシュネットワークが何に使えるか?」という議論から始まった会社なのだそうだ。メッシュネットワークなので、WiFiのアクセスポイントのように複雑なネットワーク設計が不要でインストールが容易というメリットがある。ゲートウェイを介してクラウド側に送った各種メトリックスは、ブラウザ経由で見ることができて、各種設定も利用者がブラウザから直接行える。

オフィスといっても全フロアに常に人がいるわけではない。例えば、夜になって一部の残業組のためにオフィスの電灯が煌々と全フロアを照らしているという光景は、多くの人が見覚えがあるだろう。最近だと「こまめに電気を消しましょう (総務部)」と書いてあるのかもしれないが、もう人間が電気のオン・オフをやる時代は終わるのだ。「まだ人間が消灯してるの?」ということだよね。

オフィス環境の空調も同じだ。ヒトの分布を調べ、空調を最適化することができれば、エネルギー効率は高まる。曜日や時間帯でパターンを学習していくことができれば、人間がやるよりも、はるかにきめ細かなコントロールができて、しかも快適ということになる。

将来的には家賃や人件費の最適化にも

Enlightedは、すでにOracleやGoogle、AT&Tのコールセンターといった大企業など約60社でも採用されていて、6万5000平米のオフィスをカバーしているという。もしこれが日本の話で島型レイアウトオフィスで執務室25平米あたり8人の席があるとすると、だいたい2万人分だ。

Englighted導入による省エネ効果は、学校やオフィスで50%程度の照明用電気代の削減、ビルの通路だと78%の電力カットという事例があるそうだ。エアコンのほうは20〜30%程度の電力削減効果という。

電気代は固定費だから定常的に削ることができれば大きなメリットになるが、実は多くの企業は初期導入コストが大きくなると簡単にEnlightedのようなシステムを導入できない。特にEnlighted立ち上げの初期には、コスト削減効果を証明しづらいために企業は導入をためらった。この問題に直面したEnlightedは「GEO」(Global Energy Optimization)というファイナンス面でのスキームも考案。導入企業に代わって借入を行い、効果を保証した上で初期導入費用の問題を解決しているという。Enlightedはスタートアップ企業だが、テックのイノベーションだけでなく、こうしたビジネス面で工夫も注目だと思う。TechCrunch Tokyoに登壇してくれるChristianはSAPから引き抜かれてCEOの右腕となっている人物だから、この辺の苦労話も聞かせてくれることと思う。

さて、EnlightedをIoT企業と紹介したが、それはセンサーネットワークとして電灯のオン・オフ以上の価値を生み出す可能性が高いからだ。例えば、会議室が10個ぐらいあって、その稼働率を正確に把握できれば、8個に減らして最適化することができるかもしれない。ヒートマップでヒトの流れが分かれば、コピー機をわざとフロアに1つだけに限定して人的交流を生み出すという施策が効果を発揮しているかといった洞察に繋がるかもしれない。小売業者なら、ヒートマップによって売場レイアウト見直しの重要な気付きが得られるだろうから、これは電気代じゃなくて家賃や人件費の話になってくる。

リストバンドのようなヘルスケアアイテムで認知が広がった感のあるIoTだが、企業活動にインパクトのあるプロダクトを生み出しているエンタープライズ系IoTの最先端の話を、ぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来てもらえればと思う。あ、ちなみにEnlightedは日本でのビジネス展開を、今まさに始めたところだそうで、パートナー企業になりたいような関係者も注目だ。

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クロスボーダーの大型買収を実現した「pairs」運営エウレカ、これまでと次の一手をTechCrunch Tokyoで聞く

エウレカ共同創業者 代表取締役CEOの赤坂優氏

エウレカ共同創業者 代表取締役CEOの赤坂優氏

2015年もっとも話題になったスタートアップの買収劇と言えば、米IACグループによるエウレカのクロスボーダー買収ではないだろうか。

IACはこれまでMatchTinderをはじめ世界の各エリアでマッチングサービスを展開してきたほか、動画配信のVimeoやQ&AサービスのAskなど、日本のネットユーザーも利用している(もしくは見たことくらいはある)ようなサービスを保有している。

そんなIACだが、まだマッチングサービスで進出できていなかったのがアジア領域。そこにピッタリとハマったのがエウレカの「pairs」だったというわけだ。pairsはFacebook認証を利用したマッチングサービス。10月には会員数300万人を突破した。またカップル向けのコミュニケーションアプリ「Couples」も好調で、現在は300万ダウンロードを突破したのだとか。

NASDAQ上場企業がアプリやウェブサービスを手がける国内のスタートアップを買収するケースはあまりなかったし、その買収額も関係者の話では100億円以上とのウワサ。好調な話ばかり聞くエウレカだが、ここまでの道のりは決して楽なものではなかった。

鳴かず飛ばずのクラウドソーシングサービス

エウレカの創業は2009年。エウレカ共同創業者 代表取締役CEOの赤坂優氏と共同創業者 取締役副社長COO西川順氏は、ともにイマージュ・ネットの出身。当初は受託事業を手がけつつ、エウレカ創業前から赤坂氏が開発していたクラウドソーシングサービスの「MILLION DESIGNS」を提供していたが、後者については鳴かず飛ばずの状態。結局2012年にはランサーズにサービスを売却(売却と言えば聞こえがいいかもしれないが、金額面など決してハッピーなものではなかったようだ)するに至る。

次に手がけたのはスマホアプリの「Pickie」。僕はこのタイミングで初めて赤坂氏からプロダクトの話を聞くことになった。Pickieはユーザーが自分がスマートフォンにインストールしているアプリの情報をFacebook上の友人と共有できるというもので、友人を経由して新しいアプリと出会うというプロダクトだった。将来的にはインストールしているアプリの傾向から最適な広告を表示することも計画していた。KDDIが主催するインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」の第2期メンバーとして採択されたが、こちらも事業としてはうまくいかなかった。

そしての次、マッチングサービスに勝機を見出してリリースしたのがpairsだ。その成長ぶりは冒頭に書いた通り。現在は月商も数億円規模に成長しているという。Couplesもカップル向けの機能にとどまらずメディア機能なども強化。カップル向けの広告展開なども進めていると聞く。

IACによる買収を選択したワケ

pairsは今後アジア領域への進出も考えているそうだが、僕は以前、赤坂氏に「買収ではなく、自ら海外進出することを考えなかったのか」と聞いたことがある。その際、赤坂氏は「別にエウレカとしてアジアから海外に出るということを考えなかった訳ではない」と語っていた。実はすでに台湾でもサービスを展開しているpairs。台湾の成長を見てアジア、そして北米への展開も考えていない訳ではないそうだ。

しかし同社はこれまでほぼ自己資金で事業を展開してきた。そのため外部からの資金調達をせず、スピードを持って海外戦略を進めるには課題もあった。最終的に自ら北米に行って勝負をするのではなく、IACが進出できていないアジアの覇権を握ることにこそ強みがあると考えて買収という選択肢を選んだということだろう。

11月17〜18日に東京・渋谷ヒカリエで開催する「TechCrunch Tokyo 2015」には、そんな成長を続けるエウレカ代表の赤坂氏も登壇する予定だ。赤坂氏にはエウレカの成長ストーリーや買収後の戦略、代表としての決断、さらにはマッチングサービスのこれからなど、いろいろな話を聞いてみたいと思っている。興味がある人は是非ともイベントに遊びに来て欲しい。

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TechCrunch Tokyo CTO Nightの登壇CTO 8人が決定! 参加者は引き続き募集中


すでに告知させて頂いたとおり、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015の中で「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催する。初日17日の夕方4時スタートで、参加は申し込みが必要だがチケットは無料なので、どしどし申し込みをして来場してほしい。

今年も昨年に引き続き、表彰制度の「CTO・オブ・ザ・イヤー」を開催する。以下の8社のスタートアップ企業のCTOに登壇いただいて、5分の発表と3分の質疑によるピッチ・コンテストを行う。審査するのは技術によるビジネスへの貢献度で、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」について評価対象とする。

今年の登壇企業の8人のCTOは以下の通りだ。

2015年のCTO Night登壇者

  • BASE株式会社 (PAY.JP) 藤川真一CTO
  • Increments株式会社 (Qiita) 高橋侑久CTO
  • 株式会社トランスリミット (Brain Dots) 松下雅和CTO
  • 株式会社トレタ (トレタ) 増井雄一郎CTO
  • 株式会社VASILY (iQON) 今村雅幸CTO
  • 株式会社フォトシンス (AKERUN) 本間和弘CTO
  • 株式会社ソラコム (SORACOM Air) 安川健太CTO
  • 株式会社エアークローゼット (airCloset) 辻亮佑CTO

すでに発表済みだが、今年の審査員は以下の方々にお願いしている。

2015年のCTO Night審査員

  • グリー 藤本真樹CTO
  • DeNA 川崎修平取締役
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
  • アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博(ソリューションアーキテクト)

昨年のCTO Nightは発表テーマも方向性も多様で、コンテストというよりも「CTOライトニングトーク祭り」といった感じで盛り上がったのだった。今年もまた和気あいあいとやれればと思う。CTO Night終了後は、そのままTechCrunch Tokyo 2015の交流会と合流するかたちとなっているので、ほかのスタートアップ企業のCTOが何を考えていて、何を悩んでいるのかなんかを話す場所、エンジニアを一本釣りするリクルーティングする場として活用していただければと思っている。

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学割チケット売切御礼! TechCrunch Tokyo 2015の学割チケットを100枚増やします

highschool-kids11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催する「TechCrunch Tokyo 2015」で、100枚用意していた学割チケットがおかげさまで完売となり、追加で100枚、学割チケットを売り出すことにしたのでお知らせしたい。一般チケットは税別で一般2万7000円(前売り1万8000円)だが、学割チケットは2700円と、だいぶ割安となっている。これは会期2日ぶんのランチと懇親会のドリンク・軽食も含む。

ここのところ、ぼくは上智大学で非常勤講師としてスタートアップ概論のような講義を受け持っている。それでレポートなんかを見ていて痛感するのだけど、スタートアップという新しいエコシステムは、まだ多くの学生の皆さんにとっては未知の世界のようだ。

スタートアップを「方法論」だと見ると、これは新しいプロダクトの作り方や、新しい市場の見つけ方のことだと思う。一方、そこに主役として関わる人々にとっては、新しいキャリアのあり方、そして生き方そのものなんじゃないかと思う。21世紀に入った頃を境にして、特にネット系での起業に必要な資金は桁違いに小さくなり、ベンチャー投資は世界的にますます盛んになっている。起業家や投資家、それを支援するエコシステムも続々と世界の各都市で生まれてきている。

スタートアップの世界で成功している人は、何度も起業したり、投資サイドに回ったり、誰かのプロジェクトに請われてジョインしたりと、どんどん広がる可能性と人脈の中で社会的インパクトを生み出す生き方を選択している。世の中の誰もが起業するなんてことにはならないのはもちろんだけど、こうした世界が広がっていくことで、いずれはより多くの人たちがスタートアップと関わるようになるのではないかと思う。急成長するスタートアップ企業で社員として働くとか、スタートアップ企業と一緒に何かをやるというようなことだ。そういう意味で、これから社会に出ようという学生の人たちにも、スタートアップの現状を知ってもらえればという風に思っている。もちろん起業する気満々の人であれば、まず飛び込んでみる場所としてTechCrunch Tokyoを使ってほしい。

まだまだ日本のスタートアップ業界は揺籃期にある。今後は、より多くの業界を巻き込んで大きくなっていくだろう。その胎動が聞こえる場を提供する。それがTechCrunch Tokyoというイベントをメディアが開催する意義だと思っている。ぜひたくさんの学生の皆さんに来てもらえたらと思う。

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話題のIoTスタートアップ、ソラコム創業者の玉川憲氏もTechCrunch Tokyoに来て話すぞ!

IoT関連のスタートアップは増えているが、今年いちばん話題をかっさらったのは9月末にサービスを一般公開したソラコムだろう。ソラコムは、AWSのエバンジェリストだった玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円という大型のシードラウンドで資金調達をしたのも注目を集めた。そのソラコム創業者の玉川憲氏が11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015に登壇していただけることとなったのでお知らせしたい。

ソラコム創業者で代表の玉川憲氏

ソラコムが提供するのはソフトウェア的に制御可能で安価なMVNOサービス「SORACOM Air」だ。

SORACOM Airは、アマゾンがクラウドで果たした役割をモバイルネットワークで果たそうとしているように見える。AWSは、従来専用ハードウェアを用意しなければ実現できなかったサーバー、ネットワーク、ストレージといったものを仮想化して、いつでも好きなときに好きなだけ組み合わせて使えるようにした。API経由で制御できることで、それまでの常識とは異なるシステム構築を可能にして、小さく始めて大きく育てられる高いスケーラビリティや、高い可用性、柔軟性を実現した。

クラウド同様にSORACOM Airは「小さく始められる」サービスだ。従来通信サービスを含んだ「ソリューション」の開発・提供となると、まずSIMカードを数百枚単位で買ってきてというのがスタート地点だった。それがSORACOM Airなら1枚のSIMカードによるプロトタイプからスタートできるようになっている。また、SORACOM AirではAPI経由で制御可能としている。きめ細かに通信サービスを制御することで、従来は採算性が取れなかった新しいビジネスを構築できる可能性も感じられる。詳しくは、9月末に掲載した記事「ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?」をみてほしいが、ソラコム創業者の玉川氏は、「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」と話している。

ソラコムは、提供する製品自体も注目だが、スタートアップ企業としての立ち上げ方も目を引いた。大型資金調達やメディアを使った大々的なローンチ発表もそうだし、ローンチ時にパートナー制度を開始して多くのハードウェアメーカーやシステムベンダーを巻き込んでいること、そもそも特定業界を中から見ている腕の立つエンジニアでなければ見つけられない起業アイデアをつかんだことや、半年ほどで専用ハードウェア相当の機能をクラウドで実装してしまったことなんかは鮮やかな垂直立ち上げだったというほかない。製品リリース後もリレーブログ開発者イベントの開催などの開発者を巻き込むB2Dも、もともと技術者コミュニティーを盛り立てるエバンジェリストだった玉川氏の面目躍如といった感じで「手慣れたもの」という印象すらある。

まだ大きく成長するのかどうかは分からないが、ソラコムがいまもっとも各方面からの注目が集まっているスタートアップであることは間違いない。TechCrunch Tokyo 2015のステージ上では、大手企業を飛び出して起業することや、チームやプロダクトの作り方、SORACOMの詳細と応用可能性、IoTの未来など、ざっくばらんに語っていただこうと思っている。

玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタート。Amazon Web Servicesへの移籍前にはカーネギーメロン大学でソフトウェア・エンジニアリングとMBAの2つの修士号を取得している。

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ソーシャル時代の申し子、「Yelp」もTechCrunch Tokyo 2015に来るぞ!

約3週間後の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015の海外ゲストスピーカーが、また1人決まったのでお知らせしたい。Yelpで新規市場担当バイス・プレジデントを務めるMiriam Warren氏だ。2007年にMiriamがYelpにジョインしたときには、すでに超ヘビーなYelpユーザー(Yelperと呼ぶ)だったというから、Yelpの歴史と発展、特に海外展開を見てきた最重要人物と言える。Yelp登場の歴史的背景と、他サービスとのYelpの差別化について、2015年5月にサンフランシスコでMiriamに対して行ったインタビューを交えてまとめてみたい。

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Yelp新規市場担当バイシ・プレジデント Miriam Warren氏

ソーシャル化は同時多発的に起こった現象だった

Yelpが創業したのは2004年10月のことだ。振り返ってみると2004年はソーシャル元年だったように見える。2002年にマレーシア発のサービスとしてFriendsterが後にSNSと呼ばれることになる新ジャンルを開拓していたが、SNSブームに火を付けたのは2004年1月に始まったOrkutだろう。今となっては意外な感じがするが、OrkutはGoogle社員が作ったサービスだった。Orkutはインドやブラジルで爆発的にユーザーを伸ばした。2004年前後を振り返ってみると、LinkedIn(2003年)、Facebook(2004年)、YouTube(2005年)、Twitter(2006年)などが続々と生まれ、「ソーシャルネットワーク」という言葉が一般化したのだった。日本ではmixiが2004年と早い時期に立ち上がっていた。

インターネットが爆発的普及を始めた1995年から10年ほどのネット初期というのは、いまとだいぶ状況が違った。ユーザーは半匿名で、ユーザー同士の繋がりをサービス側がグラフデータとして保持しないのが一般的だった。チャットサービスや交流の掲示板、情報投稿サイトなどは古くから存在しているが、ユーザー同士を結ぶのは特定のアイテムや話題だけだった。レビューや売買サイトであれば、アイテムというのは書籍や店舗、商品、そのジャンルなどを指す。ここにユーザー同士を繋ぎ、フォロー・非フォローといった関係を持ち込んだのは一連のSNSなのだった。TechCrunch Japan読者には説明不要だろうけど、この繋がりを「ソーシャル・グラフ」と呼ぶ。

2004年にソーシャル系サービスが一気に出てきて、ソーシャル・グラフの価値はすぐに明らかになる。友だちが、泊まったことのあるホテルについて何か肯定的なことを言っていれば、それは誰か全く見ず知らずの人がオススメだと言っているよりも遥かに意味のあることだからだ。サービス提供者がユーザー獲得をすることを考えた場合でも個別ユーザー単位でなくソーシャル・グラフごとサービスを利用してもらうことで、大きな価値を提供できる。今再び、メッセージング系サービスの存在感が大きくなるにつれて勢力図が変わりつつあるように見えるものの、Facebookが貯めこんだソーシャル・グラフは外部サービスへも大きな影響を与えているのはご存じの通り。

Yelpは最初からソーシャルだった

Yelpはネットがソーシャル化していく時期に生まれたので、それまでの匿名性の高いサービスとは根本的に異なっていた。Miriamは、

「Yelpには、redpony68というようなユーザー名の人はいません」

というふうに指摘する。Yelpが掲げる標語は「本物の人々による本物のレビュー」だ。Yelpが誕生した2004年には、まだFacebookアカウントによるログインなどという概念も技術的枠組みもなかったが、最初からYelpはSNS時代を先取りしていた。というよりも、米国でFacebookが強すぎたので誤解しがちだが、ネットのソーシャル化は同時多発的に起こった現象だったわけで、Yelpはその一角を占めていたということだ。

Yelpは2014年4月に日本に上陸を果たしている。日本には、すでにレストランのレビューサービスは多数あるが、何が違うのだろうか?

「Yelpのレビュー対象が食べ物だけじゃないという点が挙げられます。歯医者や配管工、自動車整備なんかのスモールビジネスもレビューの対象です。多くの人がYelpを食べ物のことだと思っているのは、それは食事というのが1日に3度あるからに過ぎません。実はレストランのレビューは全体の19%に過ぎず、23%はショッピング関連です」

以下のグラフがYelpが公開しているジャンル別レビューの比率だ。

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「各地にコミュニティマネージャーがいるのも差別化です。アジアだと台湾、香港、シンガポール、マニラ、クアラルンプール、東京、大阪、京都、福岡などにコミュティマネージャーがいます」

Yelpは各地(各都市)にコミュニティを作ることでも知られている。世界170都市に170人ほどのコミュニティマネージャーがいるそうだ。コミュニティマネージャーは飲食店でミートアップを開き、ユーザー同士の交流を促す。ヘビーなYelpユーザーはYelperと呼ばれているが、さらにその上に「Yelpエリート」と呼ばれる「選ばれし者たち」がいる。このYelpエリートの選出は「Yelp評議会」と呼ぶ本社組織で決定されているが、素晴らしいレビューを書く人だという以外の基準は特に公開されていない。ちょっとした謎めき感があるところも、熱心にレビューを投稿するユーザーのエンゲージメントに一役買っているようだ。Yelpを使ってみると分かるが、フェアで熱のこもった長文のレビューが結構ある。

文化は違う、でも人間は国によって思うほど違わない

ぼくがMiriamに話を聞いていていちばんハッとしたのは、文化に違いはあっても、実は人間というのは、国や言葉が違ってもそんなに違わないというデータに基づいた知見だった。

「カナダが2番目に進出した市場でフィリピンが32番目です。この間、多くの国への進出にあたって、ぼくたちの国でYelpをやるのは難しいよと言われました。ドイツの人たちは、自分たちはすごくネガティブだから、レビューサイトをやってもネガティブなものばかりになるといい、逆にチリの人たちは、何でも褒めるようなポジティブさがあるという風に。私も最初はそうかもしれないと思っていたんですけど、実際には国を問わず、ほとんど同じでした」

ある店舗やサービスについて、「ほかの人にも推薦するか、しないか」という項目では、約7割の回答が「する」というポジティブなものだそうだが、この数字は国によらずほぼ同じなのだという。

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これはちょっと驚きだ。かつてAirbnb共同創業者にインタビューしたときにも、ぼくは同じことを言われたことを思い出した。AirbnbのBrian Chesky CEOは、みんな自分たちの国は違う、自分たちの国への進出は難しいというんだけど、実際には何も変わらないと分かったのがAirbnbの国際展開における教訓だったという。これは、「われわれ日本(人)は違う」と言い過ぎていないだろうか、という反省を促すような知見だと思う。

多言語、多地域対応で有利に展開

創業11年、32カ国にわたって8300万件集まったYelp上のレビューは、機械翻訳ではあるものの16の言語に翻訳される。これはどういうことかというと、地元の人達のオススメ情報を、旅行者がダイレクトに見ることができるということだ。

「地元の人→旅行者」ということ以外にももう1つ、「いつものサービスを使って、初めて訪れる場所の情報が得られる」というダイレクトさもある。これは、Uberなんかを使うと良く分かるが、どこの国に行っても、いつものサービスが使えるということの手軽さはユーザー視点で見るときわめて大きい。3日間しか滞在しない国のために、その国で使うべきサービスが何かを調べてダウンロードするのか、と考えると良く分かる。国境を超えるような情報サービスを提供しようと思うとき、広くグローバルに展開しないと競争上不利になり得るサービスがある、ということだと思う。

Yelpの日本上陸から1年ちょっと。日本ではまだこれからという感もあるが、Yelpは間違いなくソーシャル時代のローカルビジネスのレビューサービスの雄だ。このYelpについて語るMiriam Warren氏のトークセッションを是非、TechCrunch Tokyo 2015に見に来てほしい。

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家庭向けロボ「Jibo」は何が従来のロボットと違う? TechCrunch TokyoにCEOが来るぞ

11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015で、またもう1人、海外ゲストスピーカーが決まったのでお知らせしたい。家庭向けロボットを開発する「Jibo」でCEOを務めるSteve Chambers氏が登壇する。Jiboは2012年創業で、Indiegogoで7400人を超える支援者から約370万ドル(約4.5億円)の資金を集めて注目される米東海岸発のロボット関連スタートアップだ。これまでに4度のラウンドで約3860万ドル(約46.8億円)もの資金を調達している。TechCrunch Japanの読者には、以下の動画に見覚えのある人も多いのではないだろうか。

現在、まだ量産出荷には至っていないものの、すでに試作量産品を作っていて、いまはSDKを準備中という。Chambers氏によれば上の動画ほど速くはないものの、首の動きは動画の通りだし、しゃべり方も動画に近い仕上がりになっているという。Jiboには腕はないし、目も1つだけ。でも、流れるような動きはコミカルだし、何か動作や目のアニメーションに人間らしさのようなものを感じてしまう。以下の2つの動画を見ると、これらが長年の研究に基いて注意深くデザインされたものであることがわかる。

相手が誰か認識し、感情表現をするロボット

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Jibo CEOのSteve Chambers氏

Jiboがこれまでに存在した家庭向けロボットやスマート・トイと異なるのは、顔認識によって家族のメンバーの区別が付くことだという。これまでにも個性を持ったロボットというのはあったが、相手によって違った対応をするとか、好みを覚えるといったものはなかった。その時々で誰に向かって話をしているのかJiboは分かっているので、メッセージングアプリやエージェント的アプリでの使い分けができるのだそうだ。

もう1つ、Jiboが従来のロボットと違うのは、Jibo側から人間側に話かけることがあることだそうだ。Siriが典型だが、これまでのロボットは人間側から話しかけて何かを頼み、ロボットがそれに応えるというのが基本的なインタラクションの流れだった。Chambers氏によると、利用者となる家族と「親しい関係」(social rapport)を築こうというのがJiboのコアにあるコンセプトだという。

Jibo創業に携わり、現在同社のチーフサイエンティストを務めているのはMITメディア・ラボ准教授のCynthia Breazeal氏だ。Jibo創業以前にも彼女は、アフェクティブ・コンピューティングという研究分野で、Jiboを思わせるロボットを、いくつか作り出してきた。アフェクティブ・コンピューティングというのは感情を識別、認識し、人間らしい感情表現をコンピューティングに生かすかという研究分野。1990年代にBreazeal氏が作ったKismetというフェイス・トゥー・フェイスでインタラクトするロボットも、この研究の一環で、以下の動画を見たことがある人も多いだろう。

Kismet

火星探査や自動車工場では、すでにロボットが使われているというのに、なぜまだ家庭にロボットが存在していないのか。その理由は、これまでのロボットには人間のようなソーシャルなインタラクションが欠けていたから、というのがBreazeal氏の主張で、それを商業的なプロジェクトにしたのがJiboということだ。

2014年7月のJiboのブログによれば、JiboのSDKはグラフィカルに行動を記述できるものと、JavaScript APIを使ってNode.jsベース直接プログラムできる環境とが用意されるようだ。Jiboは買ってきて数時間で飽きるオモチャではなく、スマホのような「プラットフォーム」の提供によるエコシステムの創出を狙っている、とJiboでエンジニアリングの責任者を務めるAndy Atkins氏はブログで書いている。Atkins氏はかつてAppleでNewtonのネットワーク関連APIを開発したことに始まり、後のAndroidを創業するAndy Rubinが共同創業者だったDangerでJavaベースのSDKの開発チームをリードしていた人物。今回TechCrunch Tokyoに登壇してくれるCEOのSteve Chambers氏は、音声認識エンジンや関連ソリューションで知られるNuanceを率いていた人物だ。NuanceはSiriにも技術提供をしていることで知られている。このほか、Jiboには、iRobotのプリンシパル・エンジニアだったRobert Pack氏もジョインするなど、どんどんタレントを集めている。潤沢な資金と人材を集めたJiboから出てくる「家庭向けロボット」という製品が、どんなものになるのか、とても興味深い。

JiboのSteve Chambers CEOは11月17日にTechCrunch Tokyo 2015で登壇予定である。ぜひ近未来の家庭向けロボットの話を聞きに来てほしい。

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締め切りまであと1週間!「TechCrunch Tokyo 2015」スタートアップ向けデモブース出展者募集中

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スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」の開催まで、いよいよ1カ月を切った。これまでも登壇してくれるスタートアップの起業家たちを少しずつ紹介してきたが、ほかの登壇者も続々決まっているので、逐次紹介していきたいと思っている。

それとあわせてお伝えしたいのが、展示ブース「スタートアップ・デモ・ブース」の出展募集があと1週間で終了するということだ。

スタートアップ・デモ・ブースは、創業3年以内のスタートアップ企業に限定して、TechCrunch Tokyoの会場でプロダクトをお披露目できるスペースを提供できるというもの。昨年を振り返ると、TechCrunch Tokyoの来場者は約1700人。起業家や投資家といったスタートアップ関係者のほか、大手企業の新規事業担当者なども多く参加していた。こういった層に自社のプロダクトを紹介したい、というスタートアップに向けては非常に価値のある場所を提供できると思う。

また出展料には2人分のイベント参加チケットも含まれている。前売りチケットは1人1万9440円なので、実質的には2万円の出展料でイベント来場者にアピールできるわけで、それなりのお得感はあるはずだ。ただし前述の通り、このブースは創業3年以内のスタートアップに限定した優遇措置となっている。

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イベント名:TechCrunch Tokyo 2015(ハッシュタグ #tctokyo)
イベント開催日:11月17日(火)、18日(水)
会場:渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区渋谷2−21−1)
出展料:5万8320円(税込み。2名分の参加チケットが含まれます)
販売数:30ブース
条件:創業3年以内の企業
主催:AOLオンライン・ジャパン株式会社
問い合わせ先:event@tc-tokyo.jp

イベントに参加したい、という人たちに向けては、現在前売りチケットも販売中だ。学生限定の学割チケットもあるため、学生の人は是非とも参加を検討いただければと思っている。

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2015年もやりますCTO Night! スタートアップを技術で支えるCTOたちを讃える

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11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015だが、今年もまたイベント内イベントという形で「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催するのでお知らせしたい。開催は2日間の会期のうち初日の夕方4時スタートで予定している。参加には申し込みが必要だけど、チケットは無料だ。

CTO Night自体は今年でもう3回目だが、昨年始めた表彰制度の「CTO・オブ・ザ・イヤー」の第2回を開催したい。CTO Nightは、CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればという趣旨で開催している。イベント形式は、8〜10社程度のスタートアップ企業のCTOに登壇いただいて、5分の発表と3分の質疑によるピッチ・コンテストとなっている。審査するのは技術によるビジネスへの貢献度で、もう少し具体的に言うと、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」について評価対象とする。

2014年11月の昨年は以下の9社が登壇。発表内容は組織論から技術的な発表までさまざまだったが、NewsPicksで知られるユーザーベースの竹内秀行CTOが、初代の「CTO・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのだった。

2014年のCTO Night登壇者

  • 株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO
  • Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
  • freee株式会社(freee) 横路隆CTO
  • Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
  • ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
  • 株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
  • 株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
  • 株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
  • 株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

今年もまた、昨年同様に経験豊富なCTOの方々に審査員をお願いしてあって、ギークとビジネスの間に立つ人たちにジャッジをお願いしようと思っている。審査員の方々のついては、昨年の記事も参考にしてほしいが、今年は2015年4月にソラコムを創業した玉川憲氏(昨年はAWSエバンジェリストだった)が抜けて、代わりにAWSのソリューションアーキテクトで、スタートアップ企業でのCTO経験もある松尾康博氏が審査員として加わる。ビズリーチの竹内真氏も、昨年はCTOだったが、いまは求人検索エンジン「スタンバイ」の事業部長という立場に変わられ、再び新規事業立ち上げに挑戦されている。また、新たにディー・エヌ・エーの川崎修平CTOが加わるほか、サイバーエージェントグループの子会社群で組織しているゲーム部門の技術責任者である白井英氏にも参加していただくこととなっている。とっても豪華な顔ぶれだ。

2015年のCTO Night審査員

  • グリー 藤本真樹CTO
  • DeNA 川崎修平CTO
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
  • アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博(ソリューションアーキテクト)

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コンテストはイベント初日の11月17日月曜日の夕方4時にスタートし、90分ほどでピッチ大会と表彰を行う。その後は、そのままTechCrunch Tokyo 2015の懇親会と合流する形となっている。今回はCTO Nightに関してはイベント参加費は無料となっている。CTOの皆さまには、ちょっと(だいぶ)早めに仕事を切り上げたりして参加を検討していただければと思う。これまで同様、イベント参加は、CTOや、それに準じるエンジニア組織をリードする立場にある人に限らせていただければと考えている。

ところで、今の日本では、かつてなかったほどCTOが必要されていると思う。ITや技術がスゴいと言っても、実社会への接点で価値が出せなければ意味がない。かつて企業や社会とITの接点といえば、「CIO」「情シス」「SIer」といった“IT業界”だけの話だった。しかし、いまやテクノロジーネイティブな人たちが、それぞれの領域で自分たちでビジネスやプロダクトを作るという動きが強まっている。社会にインパクトを与える価値をソフトウェア・エンジニアリングによって生み出すとき、そのカギとなるポジションの1つはCTOだと思うのだ。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2015初日の11月17日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを9社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2015」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
審査員
・グリー 藤本真樹CTO
・DeNA 川崎修平CTO
・クックパッド 舘野祐一CTO
・はてな 田中慎司CTO
・サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
・アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
問い合わせ先】event@tc-tokyo.jp
チケット】無料(参加申し込みは必要です)

ありそうでなかったウェアラブル・トランシーバー「BONX」 スノボ好きの元東大生が開発

“ウェアラブル・トランシーバー”というと既存ジャンルに思えるが、そうではない。日本のスタートアップ企業から面白いガジェットが登場した。2014年11月創業のチケイは今日、「BONX」を発表してクラウドファンディングを通じた予約販売を開始した。予約販売の価格は、1個1万5800円、2個だと1つあたり1万4800円などとなっている。色は4色。出荷は11月末から12月中旬。

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BONXは片耳にぶら下げる小型デバイスで、スノーボードや釣り、自転車、ランニングなど屋外で複数人で遊ぶようなときに仲間同士でリアルタイムで会話ができるというコミュニケーションツールだ。耳に装着したBONXは専用アプリを使ってBluetoothで利用者のスマホと接続する。アプリは3G/LTEのネット通信を介して、ほかの利用者と接続しているので、デバイス(利用者)同士の接続距離は、Bluetoothの制限を受けない。

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ここまで聞くと、Blutoothヘッドセットのような感じと思うかもしれないが、以下の点がBONXではユニークだ。

まず、しゃべっているときだけ利用者の音声を拾って接続中の仲間全員に届ける「ハンズフリーモード」を実装しているのが特徴だ。ハンズフリーモードでは、東大発ベンチャーのフェアリーデバイセズが開発した音声認識技術を使うことで、人間の発話だけを検知している。スノボや自転車だと速いと時速30〜50km程度で動くことになるが、このときの風切音や、周囲を行き交うトラックのエンジン音など、外部ノイズを拾いづらい設計になっている。マイクも2つ搭載してマルチレイヤーによる騒音、風切り対策をしているという。こうした対策がない一般的Bluetoothヘッドセットは、スポーツなどでは風切音で使い物にならなくなる。

従来のBluetoothによる音声通話と、BLEによるスマホとのペアリングという新旧のBluetoothを同時に使う「デュアルモード」を使っているのも実装上の特徴で、これによって高音質と低消費電力を実現している。チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏によれば、バッテリー駆動時間は現在バッテリーモジュールの調達中のために不確定であるものの最低5時間以上は確保できるだろうとしている。

BONXはハンズフリーモード以外にも、「ノーマルモード」を用意している。これは、いわゆるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)で、トランシーバーのようにしゃべりたいときに明示的にボタンを押す形だ。ノーマルモードで利用するとバッテリーがより長時間持つほか、音声の遅延が少ないという。ハンズフリーモードでは音声検知をしている分、遅延が入るが、ぼくが量産試作機を実際に少し使ってみた感じでは実用上問題ないレベルのものに感じられたことを付け加えておこう。サーバ側の実装としても、遅延の蓄積が検知された段階で遅延分を無視して、リアルタイム性を優先するような処理を入れるなどBONXでは「スポーツなどでのリアルタイムコミュニケーション」というユースケースに特化した最適化をしているそうだ。この利用シーンについてチケイは「アウトドアで激しい運動をしている最中でも、まるでちゃぶ台を囲んでいるかのような自然な会話ができるというのは、実際に体験として画期的」で、「BONXを使うことで逆に、今までがどれだけ孤独だったのか気づきます」と説明している。

GoProにインスピレーション、スノボ好きの元東大生が起業

チケイを2014年11月に創業した宮坂貴大CEOは、東京大学で修士課程を終えるまで合計8年間大学にいたが、「大学時代は、半分くらいはスノボをやっていて、4年間は北半球と南半球を往復していた」というほどのスノボ好き。2011年4月の大学卒業後はボストン・コンサルティングで戦略コンサルタントとしての道を歩んでいたが、BONXのアイデアを思い付いて2014年8月に退社。もともと「いつかは自分で事業をやりたいとは思っていた」という宮坂CEOは、肥料や農薬を使わない「代替農業」での起業も考えていたが、GoProの華々しい成功にインスピレーションを受けたそう。

チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏

「BONXを思い付いたのは、GoProの事業を見たことがきっかけです。サーファーだった人(GoPro創業者のニック・ウッドマンのこと)が自分自身の姿を撮りたいということでカメラを作ったのがGoProの始まり。個人的なニーズを事業化したわけですよね。これは自分でもできるんじゃないかと思ったんです」。もともとスノボの経験から潜在的ニーズは感じていた。ただ、ニーズがあるならすでに製品があって良さそうなもの。「なぜ今までBONXのようなものがなかったのか?」という問いに対して、宮坂CEOはデュアルモード対応Bluetoothチップが出てきたことや、野外でも電波が入るようになった外的環境の変化を指摘する。

ウィンタースポーツの文脈で言えば、実は日本がウィンタースポーツ大国であるということもある。1992年のピーク時に2000万人いたウィンタースポーツ人口が800万人に激減しているとはいえ、まだまだ多いし回復の兆しもある。規模の違いはあれど、世界にある2000箇所のスキー場の3分の1は日本国内にあるそうだ。宮坂CEOは、すでに電波状況を調べるべく各地のスキー場へ足を運んでいるそうだが、シリコンバレーの人たちが必ずいくスキー場のタホ湖ではケータイの電波が入らないという。つまり、シリコンバレーのギークたちは「雪山なんて電波入らないじゃん」と思っているかもしれず、BONXは日本で生まれるべくして生まれたようなところがあるのだ。ちなみに全世界だとウィンタースポーツ人口は5000万〜1億人程度と言われているそうだ。もう1つのBONXのターゲット層であるサイクリストは数千万人規模。

宮坂CEO自身は文系だが、プログラミングやArduino工作を自分で勉強したりハッカソンに参加する中で、ハードウェア関連スタートアップ企業のユカイ工学創業者で代表の青木俊介氏に出会い、そこからiOSハッカーで知られる堤修一氏などをプロジェクトに巻き込んだ。現在は早稲田大学系VCのウエルインベストメントなどから総額1億円ほどの資金を集め、フルタイム4、5人、フリーランスも入れると14、5人というチームでプロジェクトが動き始めているという。

アイデアの検証は2014年末に開始して、今は量産試作段階。この11月にも深センでの量産を開始する。ハードウェアスタートアップが深センで量産するというと、予期せぬトラブル発生という事態も脳裏をよぎるが、実はプロジェクトチームには元エレコムのデザイナーが立ち上げたデザイン事務所が入っていて、深センでの発注経験があるエレコム時代のチームでやってるのだとか。国内GreenFundingでのキャンペーンを終えたら、第2弾として来春にはKickstarterでのキャンペーンも予定している。第2弾では、よりスポーツに適した性能を発揮するモジュールを組み込むアイデアもあるそうだ。

さて、BONXを発表したチケイだが、実は11月17日、18日に渋谷ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルのファイナリストとして登壇が決定している。書類審査による予選を勝ち残った12社のうちの1社だ。まだチケットを販売中なので、ぜひチケイのようなスタートアップの勇姿を会場に見に来てほしい。

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チャットUIこそブラウザに代わるもの、Layer創業者のビジョナリーに現状と未来の話を聞く

11月17日、18日に東京・渋谷で開催するTechCrunch Tokyo 2015への海外ゲストスピーカーがまた1人決まったのでお知らせしたい。どんなアプリやWebにも簡単にコミュニケーション機能を持たせられるLayerの創業者でCEOのロン・パルメリ(Ron Palmeri)氏だ。

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ロンは連続起業家で投資家でもあり、多くの会社を立ち上げてきた。中でも、Google Voiceの前身であるGrand Centralを2005年に立ち上げ、2007年にGoogleに売却したというのは大きな成功事例だ。Google Voiceは日本ではほとんど知られていないが、ネットで進化すべきだった音声電話を順当に進化させたGmailのような電話サービスだ。ぼくはアメリカに行くときに良く使っていて、あまりに衝撃を受けて2010年に記事を書いたこともある。Google Voiceを使ってみれば、いかに「ICT」のうちCだけがイノベーションに取り残されていて、いかに通信キャリアがネットやソフトウェアの使い方が下手なのかが良く分かる。

さて、そんなロンは1990年代中頃にはノベルで通信関連のビジネスに従事していたというから、シリコンバレーではベテランの連続起業家だ。Grand Centralや、先日Ciscoが6億3500万ドルで買収したOpenDNSを含めてMinor Venturesでベンチャー企業数社の立ち上げに携わってきた。

強いテクノロジーのバックグラウンドを持ち、2015年5月にぼくがサンフランシスコのオフィスに会いに行ったときには、説明のたびに立ち上がってホワイトボードにデータベースやプロトコル、ソーシャルグラフの関係をサラサラと描くような人だった。

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単一プラットフォームではなく、Layerが拓くエコシステムの多様性

LayerはiOS、Android、Webアプリに組み込めるチャットUIのSDKだ。ロン自身の言葉によれば、「モバイルの興隆によって、チャットこそがUIになった」ということで、かつてWebブラウザが果たしていたサービスとユーザーの間にあるインターフェイスは、例の左右に吹き出しが開くチャットになったというのだ。

なるほど、Facebookはメッセンジャーをプラットフォーム化するといい、中国ではWeChatが圧倒的な利便性とともに多様なサービスを統合し、日本を含むアジア圏ではLINEが優勢だ。

そして、これらの間には実はかなり大きな違いがあるし、Layerが目指す世界もだいぶ異なる。

FacebookやDropbox、Foursquareなどは2014年ごろには機能別に本体から複数アプリを切り分けて緩やかに連携する「アプリ・コンステレーション」(アプリ星座)モデルを目指していた。一方で、中国のWeChatはAPI開放によってサードパーティーアプリのエコシステムを作りつつ、何もかもを単一アプリに載せるアプローチで、決済はもちろんのこと、タクシーを呼んだり、税金や公共料金を支払ったりといったことができるようになっている。中国のWeChatの利便性があまりにスゴいという話が伝わって、シリコンバレーの人々は自分たちの周回遅れ感を気にしているようにぼくには見える。一方で、Facebook、WeChatともに、ここにはプラットフォームビジネスを巡る、もっと大きな問題が潜んでいる。ネットやPCの歴史上何度も繰り返されてきた、垂直統合によるサイロ型プラットフォーム対オープンエコシステムの対立軸の上を左右に揺れ動く業界という構図だ。

「Googleが検索によって、必ず人々が使うことになる『焦点』を掌握したように、Facebookは認証とソーシャルグラフを抑えることで、ネット上の人々の活動の全てを見ようとしています」

Facebookは先日の開発者向け会議F8のなかで、今やほとんどの人がブラウザでFacebookを開きっぱなしにしていることを得意げに話し、常時数億人と繋がっていてユーザーのことを把握できるのだと堂々と公言していることに、ロンはとても驚いたそうだ。

「Facebookは、今やある1人の人間の生活全体を把握できる立場にあります。でも、かつてNTTやAT&Tといった電話会社はそんなことはしませんでしたよね? Facebookがやっているのは、まさにそれです」

「決済やコマースを含めて、プラットフォーマーが何もかもやる。そういう巨大な単一プラットフォームに依存していていいのか、ということです。そう考えない開発者やユーザーが大勢いて、それがわれわれのターゲットです。Facebookに依存すると、使い勝手や機能で制限を受けますしね。Zyngaを覚えていますか? いつでもFacebookはポリシーを変えられるんですよ。もちろん、Facebook依存で全然構わないという人もいますけどね」

Facebookアプリとして大ヒットしたゲーム、FamilyVilleを提供していたZyngaは2010年ごろにFacebookとポリシーを巡って頻繁にもめていたし、Facebookの一方的な決定によってユーザーベースを何割も失うということが起こっていた。

プラットフォームへの過度の依存はビジネス的にも、プライバシーを気にする消費者の視点でも好ましくない。しかし一方、あまり気にしない人もいる。例えば、ぼくは自分のことをサービス提供側に深く知っていてほしいと思っている。YouTubeで増毛のCMが流れると「PCのカメラをオンにして顔を見てくれてもいいんだけど、髪はフサフサで困ってないよ!」と考える。ハゲてない人に増毛の広告を出すのは誰の得にもならない。サービス提供者がユーザーについて多くのことを知っていればいるほど最適なコンテンツや広告が届くわけだから良いことではないか。ぼくのメールを「読んでいる」のはソフトウェアでしかないし、プライバシー関連情報に従業員がアクセスできるような状態を許す企業は早晩ユーザーに見放されるだけ。だから、ぼくはプライバシーを一定レベルで諦めることについて拒否感が薄めだ。

というようなことをロンに言ったら、「それはまったくアジア人の発想だ」と返された。

ロンによれば、プライバシーの意識に関してアジア地域は世界のほかの地域とは全く違うという。ヨーロッパやアメリカは、単一の巨大なプラットフォーマーに情報を全部渡すというのはあり得ない発想だという。「南米もヨーロッパもアフリカもそう。だから、これら地域はわれわれには素晴らしいマーケットです。中国はまったく違う。そして私が知りたいのは日本はどうなのか、ということ」

日本は、アメリカと中国のどこか中間にあるのではないかというのがぼくの回答だけど、正直良く分からない。ここには、歴史的に長いものに巻かれ続けてきたか、市民革命によって自由を勝ち取ってきたのかというような社会の成り立ちの違いがあるのかもしれない。Firefox対Internet Explorerのときも、日本や韓国市場だけが長らくIEを使い続けていたようなこととも符合しているようにぼくには思える。ActiveX依存という技術的問題だったと言う指摘もあるかもしれないが、そもそも特定企業のテクノロジーを躊躇なく取り込んだ非インターネット的な舵取りこそアジア的だったとは言えないだろうか。

チャットインフラを作る必要はない、1人で10億人を対象にできる時代に

ともあれ、チャットインフラに選択肢があるのは良いことで、Layerのような企業がFacebookレベルのチャットUIを提供するというのは、開発者にとっては朗報だろう。Instagramが良い例だが、今やほとんど一夜にして数億人にスケールするようなサービスを数人のチームが生み出すようなことが起こっている。Andreessen Horowitzの投資家でジェネラル・パートナーのクリス・ディクソン氏が1年ほど前に「比較的限られた資金でInstagramは1億ユーザーに、次にWhatsAppが5億にリーチした。最終的には1人の起業家が10億ユーザーに手が届くようになる」と言った通りだ。Instagramは13人、WhatsAppは50人のチームだった。比較的少人数でもできるとはいえ、こうやって毎回毎回すべてのスタートアップがチャットのインフラを作るのは無駄な話だ、というのがLayerのロンの言い分だ。

そして現在は、シェアリングエコノミーとかオンデマンドエコノミーという言葉で象徴されるように、個人同士や、組織に所属する小回りの効くエージェント的なプロフェッショナルが相対で物品やサービス、情報をやり取りすることが増えつつある。これらのサービスではチャットこそが重要なビルディングブロックになりそうだ。Layerがブログで紹介している以下の2枚のスクリーンショットは、そうしたやり取りの事例だ。こうして見てみると、チャットUIをアプリ提供者が自由にカスタムできるのだとしたらメリットがありそうだなと分かる。

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日本でいえば、先日のDeNAが発表したANYCAであれば、クルマを貸す人と借りる人は、カギの受け渡しのとき、あるいは実際の利用中のちょっとした連絡といったことをチャットでやりたいだろうし、そこに地図を貼って場所を示したり、写真を撮ってクルマの特定のパーツを見せたいかもしれない。チャットUIで飲食店を探せる「ペコッター」のような例もある。もう検索して探すより「新宿で打ち合わせできる静かな店ありませんか?」とチャットで聞きたいのだ。ベビーシッターのマッチングサイト「KIDSLINE」や、部屋さがしの不動産サイト「ietty」のようにチャットでエージェントとやり取りする例もある。これはアメリカの例だが、MOOCsのUdacityが学生の修了率の低さを解決するためにLayerを使ってチャットを導入したということもある。

1人1人の画面で見ればチャットというのはシンプルなものだ。しかし各デバイスとクラウド間での未読や端末のオンライン状態の状態管理、OSごとのプッシュ通知のハンドリング、そして何よりスケーラブルな分散インフラの構築など、やるべきことは多い。ちょうどAWSがスタートアップ企業に対して果たした役割を、Layerはモバイル時代に果たそうとしている、と言えるのかもしれない。サーバーやネットワーク機器をラックに収めて設定をするような煩雑な作業がなくなったように、ErlangだZeroMQだといってメッセージ配送システムを自前で作るよりも、Layerのような「SDK+サービス」で解決できれば話が早い。最もシンプルなメッセージ機能の実装なら1人の開発者でも1日でできるかもしれないが、Facebook並みにスケーラブルでリッチでクロスプラットフォームなものは相応の開発チームが常時取り組む必要があるだろう。というのが、Layerというスタートアップの目の付け所の良さだとぼくは思う。例えば、いまもノーティフィケーションの世界では、Webブラウザでの対応が進み、Androidではリッチなプッシュ通知ができるようになりつつあったりする。こうしたものにキャッチアップする体力が、すべてのスタートアップ企業にもあるわけではない。ぼくはAirbnbをかなり使うのだけど、あれほどのユニコーン企業ですらホストとのメッセージのやり取りの実装はお粗末だ。以下はUberっぽい架空のライド・シェアのアプリの例だ。上が現状、下がLayerが提供する自由度の高いチャットUIを使った場合の例。

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チャットシステムが手軽に統合できるようになれば、いまよりもっと多様なアプリが登場するのではないか、とロンは言う。

「ネットユーザーが30億人ほどいて、多様なニーズがるのに単一のアプリでいいわけがない。例えば写真アプリ1つとっても、家族向けでシェアしたいというのと、Instagramでは全く別です。サッカーコミュニティーを作るのにFacebookが最適かといえば、そんなことはないでしょう。インドで最も人気のデーティング・サービスも違います。インドでは女性がデートの各ステップの主導権を持っているのでニーズが違うんです」。

「何かを利用するハードルを下げて、それを広く開放すると人々は創造性を発揮するものです。これはサイクルのようなものですね」

Facebookのような「サイロ」の次にはオープンなプラットフォームが来る、それがLayerだということだ。今年はじめのF8で発表されたメッセンジャーに接続するアプリは、コミュニケーションを楽しくするGIFアニメアプリのような限定的なもので、その数も当初40程度と、Facebookのような巨大プラットフォームにしてはいかにも少ないとロンは言う。

Layerが提供するSDKでは、多くのMIME type(ファイルの種類)が扱えるので、地図や音声をチャットに埋め込むといったことも容易にできる。現在、リアルタイムの音声・動画チャット規格「WebRTC」は揺籃期だが、これも年内にLayerに取り込んでいくそうだ。Layer自体はユーザー情報の収集せず、したがって広告モデルでのビジネスもやらないという。

LayerはTechCrunch Disrupt SF 2013で優勝していて、2014年5月には1450万ドルを調達している。エコシステム創出を目指して、Layerを利用するアプリの開発者に対して少額を出資するファンドも立ち上げている。

最初から開発者を対象にしてプラットフォームやエコシステムを作るのだと言って大きな絵を描く。いかにもシリコンバレーっぽい、このベテラン起業家のビジョンや哲学を、ぜひ生の声でTechCrunch Tokyoに聞きに来て欲しい。

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