Pixel 6のAI機能向けに設計されたTensor SoCで、グーグルは独自チップに賭ける

Google(グーグル)のPixel 6とPixel 6 Proほど、正式発表前に詳しい情報が得られたスマホは今までなかったのではないだろうか。しかし、同じようなAndroid携帯電話が多い中で、Googleは、特にそのすべてを動かすチップに関して、興味深い選択をした。Googleは今回、自社設計のSoCを搭載したスマートフォンを初めて提供する。

「Tensor」と名付けられたこのチップについて、Googleは2021年夏のはじめに初めて言及した。これはスマートフォンのすべてのオンデバイスAIを動かす。基本的には、Google独自のAI / MLアクセラレータに、比較的既製のArmのCPUコアとGPUコア、そしてGoogleの新しいセキュリティコアであるTitan 2を組み合わせたものだ。

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Googleは、TensorがPixel 5に搭載されていたチップよりも最大80%高速なパフォーマンスを提供することを約束している。率直に言って、Pixel 5はよりミッドレンジのスマートフォンだったが、日常的な使用では完全にスムーズに感じられる。米国時間10月19日の発表に先立ってリークされたベンチマークでは、Qualcommの最新のSnapdragonモバイルチップと同等とされているが、これらのベンチマークにはGoogle独自のAI / MLコアは含まれておらず、Pixel 6のカメラとその複雑なコンピュテーショナルフォトグラフィーのキレを良くするためにこれらの専用コアが果たす役割は、標準的なベンチマークでは実際には捉えられない。

しかし、これらの初期のリーク情報からわかったことは、Tensorは、Armのパフォーマンス重視のモバイル設計のフラッグシップであるArm Cortex-X1チップを2つ搭載しているということだ。比較すると、Snapdragon 888は1つしか搭載していない。最近のSoCではほとんどがそうであるように、低パフォーマンスでバッテリーを節約するコアもある。噂によると、古いA76ベースのコアと最近の超高効率のA55コアが混在しているとのことだ(これらはすべて、Pixel 6が約束された24時間のバッテリー寿命を達成するのに役立っている)。Google自体は、これらの詳細については完全に沈黙を守っているが、これは、同社がこのシステムのAI機能に全面的に注力しようとしていることを考えると、理に適っている。

また、このチップには、低消費電力のAI「Context Hub」が搭載されており、デバイス上で常時稼働する機械学習機能の一部を支えている。

Googleのハードウエア部門責任者であるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏は、19日の発表の中で、ライブ翻訳から携帯電話の写真・動画機能まで、これらのAI体験を強調した。

Google SiliconのシニアディレクターであるMonika Gupta(モニカ・グプタ)氏は、発表の中で次のように述べた。「Google Tensorによって、Motion Mode(モーションモード)、Face Unblur(フェイス アンブラー)、動画の音声強調モード、動画へのHDRnetの適用など、最先端のMLを必要とする驚くべき新しい体験を実現しています。Google Tensorは、スマートフォンの利便性の限界を押し広げ、画一的なハードウェアから、私たちが携帯電話を使用するさまざまな方法を尊重し、それに対応するのに十分な知能を持つデバイスにしてくれます」。

19日のイベントで同氏は、このチップがここ数年の間に開発されたものであることにも言及した。チームが行った設計上の選択はすべて、それらのAI機能を最大限に生かすことに基づいていたという。


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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

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Googleは新スマートフォン Pixel 6 / Pixel 6 Pro の発表イベントを米国時間10月19日に開催します。日本時間では20日午前2時から。

8月にプレビューとして外観や独自プロセッサ「Tensor」搭載などが明かされた Pixel 6 / Pixel 6 Pro の詳細を正式に発表するイベントです。

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

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8月のプレビューでは、カメラハウジング部分がゴーグルのように出っ張ったデザインや、6.7インチ120Hz画面の Pixel 6 Pro と 6.4インチ90HzのPixel 6を用意すること、独自モバイルプロセッサ Tensor 搭載といった概要が語られました。

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

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Tensor は Googleが Pixel のために4年前から開発してきた初の独自モバイルプロセッサ(SoC)。AI処理・機械学習処理に強いことが最大の特徴です。

高度な演算処理によって画像を取り出す「コンピュテーショナル・フォトグラフィー」によるカメラ機能や、高速・高精度なリアルタイムの音声書き起こし・翻訳といった場面で力を発揮するほか、従来のSoCでは他のコアやコンポーネントが必要だったワークフローをAI処理・機械学習処理で肩代わりすることで、省力化や高速化を実現するとされています。

Pixel が得意とする「コンピュテーショナル・フォトグラフィー」については、機械学習処理の高速化で動画に対しても静止画と同じHDR処理をリアルタイムに適用して画質を向上するほか、低照度下で動く被写体の撮影などでも威力を発揮します。

Googleのデバイス&サービス部門シニアバイスプレジデントのRick Osterloh氏が Engadget に語った表現では、Pixel 6は「Googleがもっとも得意とすることを結集し、常により良くなってゆくスマートフォン」。

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

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こちらが Pixel 6。6.4インチ90Hzディスプレイ搭載。背面はマット仕上げのガラス。側面はアルミ。

Googleが新スマホPixel 6 / Pro発表イベントを日本時間10月20日午前2時から開催

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Pixel 6 Pro はやや大きい6.7インチ、最大120Hzディスプレイ。6にはない4倍望遠カメラも搭載します。

Googleの新スマホ Pixel 6 / 6 Proと独自プロセッサTensor発表情報まとめ

Engadget日本版より転載)

グーグルがPixel 6用にカスタムチップを開発、AIとMLを自社スマホの差別化要因にする

Google(グーグル)はさきほど、もうすぐ発売されるスマートフォン「Pixel 6」のニュースをぶちまけた。米国時間8月11日にSamsungの大規模なイベントがあるため、その前に行いたかったのだろう。それとも、秋の大々的な発表に数カ月先駆けて、多くの人の関心を集めたかったのかもしれない。今後のさまざまなリーク情報の、先手を打つという意味もあるだろう。

いずれにしても、Googleが次に出すAndroidスマートフォンの外観の第一印象としては、背面にあるカメラシステムの大きな新デザインが目立つ。これまでの正方形の構成が大きな黒いバーに変わり、ハードウェアの大型アップグレードへの強い意志を感じることができる。前バージョンと前々バージョンでのメインのポイントはソフトウェアとAIだった。

関連記事:グーグルが正式に新スマホPixel 6を公開、専用チップにTnsorを搭載

さらに興味深いのは、TensorがPixel 6とPixel 6 Proで新たにデビューするカスタムのSoCで登場したことだ。同社はこれまでずっと、混雑したスマートフォン市場で自らを差別化することに苦戦してきた。そのための同社の決定打が未だに出てこない現状において、Tensorを実装したカスタムチップは重要な持ち玉かもしれない。

それは、ハイエンドのシステムにおいてQualcommのチップを捨て、Appleに倣ってカスタムチップの道を進むということだ。ただしそのチップはベースがARMのアーキテクチャだ。それは今や世の中の至るところにあるQualcommのSnapdragonチップのベースでもある。そしてGoogleもその低価格製品A Seriesでは、コンポーネントのサプライをサンディエゴの企業(Qualcomm)にこれまで同じく依存している

画像クレジット:Google

「Tensor」という名前は明らかに、これまで多くのプロジェクトを牽引してきたGoogleのML(機械学習)システムであるTensorFlowに由来している。当然ながら、同社はAIとMLを、来るべきスマートフォンにおけるチップの基礎として位置づけている。Pixelのチームはこれまで長年、差別化要因として、コンピュテーショナルフォトグラフィー(計算写真学)といったソフトウェアによるソリューションを追究してきた。

「私たちのシリコンを設計してきたチームは、Pixelをもっと有能にしたいと考えました。例えばTensorがすべてのチップにあれば、すべてのチップをGoogleのコンピュテーショナルフォトグラフィーのモデルを動かせるようにカスタム化できるでしょう。ユーザーにとってそれは、まったく新しい機能であり、同時にまた既存機能の改善でもあります」とGoogleは述べている。

Tensorは、カメラシステムのアップグレードだけでなく、発話認識や言語学習などの改善でも主役となる。当然ながら、その詳細は秋の正式発売までは一般には発表されないが、今回の発表はPixelチームの刷新された未来の姿の紹介に終止していたようだ。スマートフォンにおいてもAIとソフトウェアにフォーカスすることは、まさにスマートフォン分野でGoogleがやるべきことの中心にあるはずだ。

2020年の5月に、Pixelチームの主要メンバーがGoogleを去り、それはチームの今後の変化の方向性を示していたようだ。当時、ハードウェア部門のトップであるRick Osterloh(リック・オスターロー)氏が、厳しい言葉を述べていたらしい。

「AIは私たちのイノベーションの未来ではありますが、今の問題は、私たちがコンピューティングの限界にぶつかっていることです。そのために、ミッションを全幅的に追究することが阻まれています」とオスターロー氏は本日のポストで書いている。「そこで私たちが挑戦したのは、私たちの最も革新的なAIと機械学習をPixelのユーザーに提供できるためのモバイルのテクノロジープラットフォームの構築でした」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GoogleGoogle PixelPixel 6スマートフォンAndroidTensor機械学習人工知能

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)