NASAの惑星ハンティング衛星が生命存在の可能性がある新しい地球サイズの惑星を発見

NASATransiting Exoplanet Survey Satellite(トランジット系惑星探索衛星:TESS)は、地球サイズで生命が存在する可能性のある新たな惑星を発見した。この惑星は、地表に液状の水をたたえられる条件を満たす距離で恒星の軌道を巡っている。

パサデナにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の声明によれば、科学者たちはNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡を使用して「TOI 700 d」と呼ばれるこの惑星を確認した。

この新しい惑星は、TRAPPIST-1(トラスピット1)星系を初め、NASAのケプラー宇宙望遠鏡で発見されたその他の領域のいくつかの地球サイズの惑星の仲間に加わることとなったと、JPLでは話している。

「TESSは、近隣の恒星系を周回する地球サイズの惑星を探すために、特別に設計され打ち上げられました」と、ワシントンD.C.のNASA本部に所属する天体物理学部門長のPaul Hertz(ポール・ハーツ)氏は声明の中で述べている。「近隣の恒星を巡る惑星は、宇宙と地上の大型望遠鏡を使うことでもっとも容易に追跡できます。TOI 700 dの発見は、TESSにとって非常に重要な科学的成果となりました。スピッツァーでこの惑星のサイズと生命居住可能領域の状態を確認できたことも、この1月に科学観測の運用を終えようとしているスピッツァーの新たな功績です」

TESSは、空のひとつのセクターを27日間にわたって観測する。それにより、恒星の手前を横切る惑星の影による明るさの変化を追跡調査できる。

JPLによれば、TOI 700は小型のM型主系列星(いわゆる赤色矮星)で、地球から100光年以上離れた南天のかじき座の中にあると科学者たちが断定した。

緑の部分が生命居住可能領域

TESSが調査したこの恒星は、質量が太陽の40パーセントほどで、表面温度は太陽よりも低く、太陽の半分の摂氏5500度ほどだ。惑星は3つある。この恒星は、現在考えられているよりも大きく高温だと思われていたが、これはTESSのデータベースの分類ミスによるもので、太陽によく似た恒星であるとのレッテルが貼られていたのだ(この誤りは、高校生のアルトン・スペンサー君を含む研究者チームによって指摘された)。

「この恒星のパラメーターを集めてみたところ、サイズは小さくなり、いちばん外側の惑星は地球とほぼ同じサイズで、生命居住可能領域にあることが判明しました」と、シカゴ大学大学院生のエミリー・ギルバート氏。「さらに、11カ月間にわたる恒星フレアのデータから、TOI 700 dの生命の居住可能性が高まり、大気と地表の状態が簡単にモデリングできるようになりました」

JPLによれば、最も内側を回る惑星は、地球とまったく同じサイズで、10日間で軌道を1周するという。中間の軌道を回る惑星は、地球の2.6倍(地球と海王星の間のサイズ)で、公転周期は16日。

生命居住可能領域に位置するのは、いちばん外側を回る惑星だ。地球よりも20パーセントほど大きい。37日間で軌道を1周し、地球が太陽から受けるエネルギー量のおよそ86パーセントを、その恒星から受けている。

どの惑星も自転と公転が同期している。つまり、1回の公転につき1回だけ自転する。TOI 700 dも同期自転しているため、雲の形成や風のパターンなどは地球とは劇的に異なると考えられている。

現在のところ科学者たちは、惑星のサイズと恒星のタイプを使ったコンピューターによるモデリングに依存して、惑星の成り立ちや想像しうる地形を予測している。

あるシミュレーションは、地表全体が海に覆われ、二酸化炭素濃度が高い大気に包まれた世界を描き出した。これは原初の火星がそうであったとされている環境とよく似ている。このモデルでは、大気は恒星に面した側では分厚い雲の層に覆われている。その一方、別の可能性として、地球から雲と海を完全になくしたような世界も予測されている。そこでは、夜の側から吹き付ける風が、恒星に真っ直ぐ面している一地点に収斂するという。

研究者たちは、スペクトル線と呼ばれる信号を利用している。これは、惑星の大気を通過する恒星の光から観測されるもので、惑星表面の姿を示してくれる。

恒星の光が惑星の大気を通過するとき、二酸化炭素や窒素といった分子と干渉して特徴的なスペクトルを示す。それがスペクトル線だ。

「いつか、TOI 700 dの本当のスペクトル線が観測できるようになれば、私たちは元に戻って、シミュレーションで得られた最も近いスペクトルと照合して、モデルにそれを反映できます」と、ゴダード宇宙飛行センターUniversities Space Research Association(大学宇宙研究協会)客員研究助手でモデリングチームのリーダーGabrielle Engelmann-Suissa(ゲイブリエル・エンゲルマンスイサ)氏は言う。「この惑星に関する発見は何もかもが、地球のものとはまったく違うのですから、興奮します」

TESSは、マサチューセッツ州ケンブリッジのMITが主導、運営し、NASAのゴダード宇宙飛行センターが管理するNASA Astrophysics Explorer(天体物理学探検)ミッションのひとつだ。声明によれば、その他のパートナーとして、バージニア州フォールズチャーチのノースロップ・グラマン、カリフォルニア州シリコンバレーのNASAエイムズ研究センター、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード・スミソニアン天体物理学センター、MITリンカーン研究所、バルティモアの宇宙望遠鏡科学研究所が名を連ねている。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceX、NASAの宇宙望遠鏡を軌道に送り出す

SpaceX は、NASAの新しい太陽系外探査望遠鏡を地球高軌道に送り出すことに成功した。今後は月の重力補助を受けて軌道に乗りミッションを開始する。一方、地上ではFalcon 9の第一段ロケットがドローン船 Of course I Still Love Youへの着陸に成功した。

これは今年8回目の打ち上げで、SpaceXがFalcon 9の第一段 —— 人工衛星を大気圏外へと加速させたロケットの一部 —— を軟着陸させたのは計24回目だ。最終的な計画では、落下するロケットを「巨大キャッチャーミット」で捕獲するとElon Muskは言っていたが、ボートに乗ったミットは現在太平洋上にるが、今回の打ち上げは大西洋だった。

The rocket shortly after landing on Of Course I Still Love You. The ship’s feed cut out when the rocket landed.

回収したロケットは検査、再調整の後に、次のISS再補給ミッションで再利用される予定だ。しかしこの世代のFalcon 9は近々使い果たされる。SpaceXは第5世代のFalcon 9(ブロック5)をまもなく打ち上げる。これまでの2~3回よりも多く利用できるように再利用性を改善するためにさまざまな工夫がなされている。新世代ロケットの最初の打ち上げは来週計画されている。

2段目の噴射も無事に進みTESSは軌道に乗った。あとは月から必要な重力アシストを得られるようにNASAが軌道を微調整するだけだ。多少時間はかかるが、その後(数週間から数カ月以内)人工衛星からデータがやってくる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook