Theranos解散から1年、Truvian Sciencesが低コスト血液検査に挑む

一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの血液検査のスタートアップだったTheranos(セラノス)が解散してから1年余り。新たなスタートアップが、ポイントオブケア(ラボよりも身近な場所での検査)を提供する医療施設に、低コストの血液検査をもたらすというビジョンの達成に向け2700万ドル(約29億円)以上を調達した。

Theranosは、血液検査のほとんどが米食品医薬品局(FDA)の認可を必要としないと主張していたが、Truvian Sciences(トルビアンサイエンス)は違う。資金調達したのは、技術を改良しFDAの承認を得るには1年以上かかると見込んでのことだ。

「ヘルスケアの現状に不満を覚える人が増えている。高価な検査、不便な予約、自分の検査結果へアクセスできないことなどだ」と同社の社長兼最高経営責任者であるJeff Hawkins(ジェフ・ホーキンス)氏は声明で述べた。「他方、ドラッグストアの存在感は高まっている。手頃な価格で健康を維持向上する拠点になりつつある。検査機関での正確な血液検査をもっと身近にすることで、我々はよりシームレスな体験を消費者に提供し、通常の血液検査で得られる膨大な医学的洞察に基づいて消費者が次の行動を決められるようにする」。

ホーキンス氏はIllumina(イルミナ)で生殖・遺伝子健康事業の副社長兼ゼネラルマネージャーだった。ライフサイエンスの分野で経験豊富な経営陣が同氏を支える。Epic Sciencesの共同創業者だったDena Marrinucci(デナ・マリヌッチ)博士もその一人。Truvian Sciencesの共同創業者であり、事業開発上級副社長を務める。

Image courtesy of Flickr/Mate Marschalko

Truvian Sciencesはまた、Epic SciencesおよびIlluminaの経営陣だったKatherine Atkinson(キャサリン・アトキンソン)氏を新しく最高営業責任者として、Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)の取締役会会長だったPaul Meister(ポール・マイスター)氏をディレクターとして迎えると発表した。

資金を提供したのはGreatPoint Venturesのほか、DNS CapitalTao Capital Partners、既存株主であるDomain Associatesなどだ。

Truvian Sciencesの究極の目標は、20分間でしかもわずか50ドルで、微量の血液サンプルから正確な検査結果を提供できるような血液検査システムを開発すること。 通常こういった検査は、施設によって異なるが数百ドルから数千ドル(数万円から数十万円)の費用がかかる、とホーキンス氏は言う。

同社は、新しい自動化技術と検知技術で、生化学・免疫血清・血液学検査を単一の機器に統合し、脂質パネル、代謝パネル、血球数、甲状腺、腎臓・肝臓機能の検査などの標準的な血液検査の実施を目指している。

Truvian Sciencesの声明によると、同社のシステムにはリモート監視機能とメンテナンスを容易にする機能が含まれている。ドライ試薬技術により材料を室温で保管できるため、低温物流や冷蔵保管の必要がない。同社は欧州経済領域(EEA)でCEマークの取得に取り組むほか、FDAに510(k)クリアランスと、機器をドラッグストアなどの小売店舗や小規模の医療機関で使用する「臨床検査改善修正」免除申請書を提出した。

「指から採取した一滴の血液であらゆる事ができるとは考えていない」とホーキンスは言う(セラノスとは反対の立場)。「基本的な点を断っておきたいが、当社はヘルスケアの経験が豊富な経営陣が率いている」

Truvianは検査技術を市場に投入するにあたり、診断ツールキットを補完する手段として、企業と検査結果を受け取る患者を結ぶアプリ開発も検討している。ホーキンス氏によると、TruvianのデータはAppleとGoogle両方の健康アプリで使えるほか、同社独自アプリでも使える。

「結局のところ、精密医療はデータソースを統合することから生まれる」とホーキンス氏は言う。「当社が達成したいことができたら、定期的な血液検査がはるかに利用しやすくなる」。

画像クレジット:WLADIMIR BULGAR / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

世紀の詐欺スタートアップ・セラノスの裁判が2020年夏に開始、最高20年の懲役刑の可能性も

すでに解散したバイオテックユニコーンのTheranos(セラノス)の創業者であるElizabeth Holmes(エリザベス・ホームズ)の裁判は来夏に連邦裁判所で始まり、最高20年の懲役刑と数百万ドルの罰金を受ける可能性がある。

裁判が2020年8月にサンノゼ連邦地方裁判所で始まることを6月28日朝に発表した米地方裁判所判事Edward J. Davila(エドワード・J・ダビラ)氏によると、陪審員の選定は2020年7月28日に始まる。

ホームズと前Theranos会長のRamesh “Sunny” Balwani(ラメシュ・バルワニ)は昨年6月に計11件の罪で大陪審に起訴された。11件のうち2つの罪は通信詐欺を行った共謀罪(投資家に対してと、医師・患者に対して)だ。残り9つは実際の通信詐欺で、額はラボテストのコストから1億ドルまで幅広い。

Bloomberg(ブルームバーグ)によると、ホームズの弁護団は、ウォール・ストリート・ジャーナルのJohn Carreyrou(ジョン・キャリロー)記者が「連邦当局者に大きな影響力を持っていた」ことと、「Theranosのニュースを報道する以上の行為を行った」ことを指摘する計画だ。

ブルームバーグはさらに、「陪審員は調査報道としてニュースをすっぱ抜いて詳細を報じたい外部のアクターがTheranosに対する当局のフォーカスを覆い隠し、おそらく当局の見解を偏らせる方法で規制プロセスに影響力を働かせていたことを認識するべきだ」とホームズの弁護団は書いている。 「ゆえに、キャリロー記者と当局のやり取りは核心となる」。

スタンフォード大学をドロップアウトした19歳のホームズによって2003年に創業されたTheranosはプライベートマーケット投資家から7億ドル超を調達した。これについて証券取引委員会は「誇張、または社の技術や事業、業績について嘘の報告をすることによる精巧で長きにわたる詐欺」と言及した。

キャリロー記者は同社の血液テスト技術の効果に疑問を投げかける多くの調査記事を書いたが、その最初の記事が掲載された2015年10月にTheranosはまず最初の調査を受けた。当時、Theranosは企業価値が90億ドルとなり、またTim DraperやRupert Murdochといった名だたる投資家のサポートもあり、シリコンバレーで最も注目を集める企業の1つだった。

キャリロー記者の報道の結果、Theranosは公衆衛生にとって脅威となることがわかった。そして、Theranosのテクノロジーはわずか数滴の血液でさまざまな疾病を検査できるものにほど遠いことが明るみとなった。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、検察は証拠として200万ページ以上を集めた。十分な証拠にもかかわらず、ホームズは昨年の起訴以来、一貫して無実を主張している。

起訴を受け、ホームズは昨年Theranosを辞めた。ほどなくしてTheranosは解散した。一方のキャリロー記者はというと、Theranosの秘密と嘘をつづったベストセラー本「Bad Blood」を発刊した。ホームズとTheranosの栄光と没落を描いたドキュメンタリーは2019年にHBOからリリースされた。Jennifer Lawrence(ジェニファー・ローレンス)がホームズを演じる映画の制作も進行中とのことだ。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

史上最大の詐欺スタートアップ「セラノス」のドキュメンタリー、3/18にHBOで公開

バイオテクノロジー領域のスタートアップ、セラノス(Theranos)のファウンダーであるエリザベス・ホームズの大失敗を描いたドキュメンタリー「The Inventor: Out for Blood in Silicon Valley」がアメリカ時間で3月18日の午後9時、HBOのHBO GO、HBO NOW、HBO On Demand などで公開される。

同映画は、1月に開催されたサンダンス映画祭で上映された。監督はオスカー受賞歴のあるアレックス・ギブニー、制作はギブニーとジェシー・ディーターエリン・エダイケンが担当した。主演でホームズ役を務めるのはジェニファー・ローレンス。僕の同僚、ジョシュ・コンスタインが同映画をレビューしている。

セラノスは一滴の血液から数多くの病気の検査ができるテクノロジーを開発したとしてアメリカでもっとも有名なスタートアップに急成長した。しかし、その実態は大掛かりな詐欺だった。TechCrunchでも何度も報じてきている

セラノスは14億ドルを調達し、ピーク時の評価額は100億ドル。2015年、医療専門家から同社の検査方式に批判が集まり、翌年、米証券取引委員会が調査を開始。最終的に「大規模な詐欺」として起訴された。

2018年9月、同社は解散を発表し、ホームズは50万ドルの罰金を支払うことに合意した。Wall Street Journalの調査のスクープ記事から約3年経ってからの出来事だった。ホームズは今後10年間、公開企業での役員または取締役になることが禁止された。

HBOのプラットフォームにおける視聴は日本では対象リージョン外となっている。だが3月15日に同テーマのドキュメンタリー「The Dropout」を公開予定のABCによるポッドキャストは聞くことが可能だ。

ABCテレビ、空前の大型ハイテク詐欺、Theranosの栄光と転落を放映へ

Theranosは一滴の血液から数多くの病気の検査ができるテクノロジーを開発したとしてアメリカでもっとも有名なスタートアップに急成長した。しかしその内実は大掛かりな詐欺だったという。

これについてはTechCrunchも何度も報じてきた。なかでも決定的だったのはピューリッツァー賞を2度受賞している調査報道のベテラン、ジョン・カレイルー記者がTheranosの内実を暴いた経緯をBad Bloodという大部のノンフィクションにまとめたことだろう。

このほど、ABCテレビのニュースショー、 NightlineがTheranosとファウンダーのエリザベス・ホームズ、二人三脚で会社を運営したサニー・バルワニについてのドキュメンタリーを製作した。同時に6回連続のポッドキャストの1回目が公開された(毎週水曜日に順次公開される予定)。

Nightlineの特集、ポッドキャストの製作者でABCのビジネス、テクノロジー、経済担当主任、Rebecca Jarvisはこの3年間、Theranos問題を精力的に調査してきた。ファウンダーのエリザベス・ホームズはホームズはスタンフォード大学のドロップアウトで、いっときみずから資産を築いた最年少の女性ビリオネとなった。スティーブ・ジョブズの再来とも称賛された。しかしすべては徐々に崩壊していった。

TechCrunchはRebecca Jarvis (RJ)にインタビューすることができた(読みやすくするために若干の編集を加えてある)ABCの番組のオンエア日程はまだ公開されていないが予告編はこちらで公開されている。

TC: あなたはこの3年間、Theranos問題を深く掘り下げてきたわけだが、いちばん責任があるのは誰だと思うか? ホームズだろうか、バルワニにだろうか? ジョン・カレイルーの本ではバルワニは強欲な催眠術師として描かれている。

RJ: これまでわれわれは主として公開ずみの情報に頼らざるを得なかった。しかしインタビューの多くはホームズを擁護しようとする環境だったり、テクノロジーについて直接尋ねることを避けていた。しかし何百時間分もの宣誓供述のビデオや録音が公開され、詳しくチェックすることができるようになった。ホームズはこれまで答えることを避けてきた質問に答えざるを得なくなっていた。

タイラー・シュルツ(シュルツ元国務長官の孫でTheranosの社員、後に内部告発者)が述べているとおり、タイラーはホームズとバルワニに会社運営に疑念を抱いいた。しかしホームズはこれを無視し、サニーは腕力係としてタイラーに「自分の身に気をつけろ」と脅してこの問題を追求させないようにした。

TC: 2人は長年恋人関係にあったといいうことだが、本人たちも認めていたのか?

RJ: イェス。この番組では2人がロマンティックな関係にあったことを認める供述をしているのが見られる。

TC: 多数の供述に目を通してきたと思うが、いちばんショッキングだったのはどういう部分だったろうか?

RJ: 「Theranosの分析装置は病院、救急ヘリ、その他さまざまな医療施設で利用されている」とホームズが繰り返した述べていたことは多くの人々が証言している。ところが今回明らかになった宣誓供述では、その答えは一貫してノーだった。Theranosの装置は使われていなかった。【略】一滴の血液で診断ができるというのは願望であり現実ではなかった。誰がも知るとおり、願望と現実の間のギャップは深い。

TC: 司法省は2人を昨年6月に刑事訴追したが、ドキュメンタリーではこれも扱っているのか?

RJ: 2人とも司法省の訴追に対して無罪を主張している。ホームズのSECとの和解には「不法行為に関して認諾するものではない」という条項が入っていた。Balwaniは依然SECと争っている。いずれにせよ2人とも司法省の訴追に対して法廷で対決せざるを得ない。現在の政府の部分閉鎖で手続きは遅れている。

【略】

TC: ホームズには人格障害があったと思うか?

RJ:精神医ではないのでそれに答えられる資格はないが、ホームズをよく知る人々は「ソシオパス」という言葉を使っていた。

ホームズ家の友人で子供の頃のエリザベスを知る人々は「非常に早熟だった」という印象を語っている。「ぜがひでも成功する」と考えるようになったのは家族の歴史が関係があったと考える人々もいる。ある種の「失楽園」の物語だ。ホームズ家はイースト酵母で巨富を築いたチャールズ・フライシュマンの子孫だ。世代を重ねるに従って資産は失われ、父親のクリスチャン・ホームズの代に至る。これがエリザベスの性格に影響を与えたと考える人は多い。

TC: 調査の期間中、身の安全に不安を感じることはなかったか? ホームズは自分に都合の悪い人間を繰り返し脅迫したことで知られている。

RJ: それは別に感じなかった。われわれは何度もTheranosを訪れててはそのつど追い返されたのは事実だ。栄光の時代から転落に至る時代のすべてについてTheranosで働いていた経験のある人々にインタビューできた。ある証言者の女性は友達の家に転がり込んで数日ソファーで眠った。この住所は母親にも告げなかったのに法的文書が送達された。そのため彼女は「尾行されている」と確信したという。

【略】

TC: Theranosには著名人を含む大勢の人々が投資した。こうした投資家に同情を感じるか? 投資にあたってはデューデリジェンスの必要性が強調されてきたが、投資家はなぜやすやすと騙されることになったのだろう?

RJ: 残念ながらアーリー・ステージのスタートアップへの投資ではあまり詳細なデューデリジェンスは行われないのが普通だ。番組では200人の投資家の代理人を務める弁護士にインタビューしている。この人物は(投資詐欺で服役中の)バーニー・マドフを訴えた原告の弁護人をしたこともある。彼によれば、どちらも「社会的親近感を利用した詐欺」だという。尊敬すべき社会的サークルに属していれば投資しても安心だと思いこんでしまう。(アムウェイ創業家の財産を継ぐ)ベッツィ・デヴォスもメディア王のルパート・マードックも巻き込まれた。プロフットボールのニューイングランド・ペイトリオッツのオーナー、ロバート、クラフト、ウォルマートのウォルトン一族もだ。しかし損失を被った投資家はそうしたビッグネームばかりではない。企業幹部の元秘書は「これが次のAppleになる」という情報を聞いて退職後の資産の大部分を投資し、すっかり失ってしまたという。

(名門ベンチャー・キャピタリスト、DFJの共同ファウンダー) ティム・ドレイパーはホームズがスタンフォードからドロップアウトした直後に100万ドルを投資した。これがホームズが調達した最初の資金だった。ドレイパーの娘、ジェシーがエリザベスの友人だったからだという。しか2011年に著名人を集めた取締役会を組織できたのはスタンフォードの工学部長だったチャニング・ロバートソンの支援を取り付けたからだ。ロバートソンは非常に尊敬されている教授だったので取締役会に加わったことがホームズへの信頼性を大きく高めることになった。しかしスタンフォードの教授の多くは 学部で2年に満たない教育しか受けていない学生が革命的な医療機器をどうやって開発できたのか不審に感じていた。

(日本版)Uberの最初期の投資家として知られるVC、ジェイソン・カラカニスは著書、エンジェル投資家でTheranosへの投資を断ったことについて触れ「医療のような困難な分野で19歳のドロップアウトが革命を起こせると思うのが間違っている」と厳しく批判している。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

2018年に市場を去ったスタートアップたち

スタートアップを起業して成功させるより難しいことなど、この世にそう多くはない。それには、才能、ノウハウ、資金、そして、山ほどの幸運と奇跡的なタイミングに恵まれる必要がある。そうした魔法の材料がすべて揃ったとしても、勝算はまだまだ遠い。

TechCrunchでは、そんなスタートアップの世界で、最高にしてもっとも輝いている企業を、誇りを持って紹介してきた。スタートアップ企業を取材してまわることは、我々の仕事のなかでも、本当にエキサイティングで充実感のあるものなのだが、物事にはかならず終わりがある。悲しいかな、すべてのスタートアップが明るく輝いて成功するとは限らない。いや、成功できない企業のほうが多いのが事実だ。

そこで、今年の締めくくりと、来年の期待を込めて、2018年に消えていったスタートアップを振り返ろう。

Airware(2011〜2018)

調達総額:1億1800万ドル(約130億円)

Airwareは、建築業、採掘作業、その他の設備の損傷の検査にドローンを使用している企業向けに、クラウド・ソフトウエアシステムを開発した。独自のドローンも開発したが、中国のDJIなどの大手メーカーには太刀打ちできなかった。

廃業は突然だった。三菱から投資を受けて提携し、東京にオフィスを開いてわずか4日後のことだ。同社の発表によれば、「残念ながら、我々が予想していたよりも市場の成長には時間がかかってしまいました。長期的な成功を睨み、要請に応じて方向性をさまざまに切り替えてきましたが、資金が底をついてしまいました」とのことだ。

Blippar(2011〜2018)

調達総額:1億3170万ドル(約145億1500万円)
Blipparは拡張現実(AR)市場の初期のパイオニアだったが、残念なことに、AR市場はまだ、主流産業に採用されるという望みを叶えるだけの力を備えていない。今年の初めに投資ラウンドを獲得しながら、新規顧客を探している間に資金がみるみる減ってしまった。

それに拍車をかけたのが、マレーシアの政府系ファンドKhazanahが500万ドル(約5億5000万円)の緊急投資に反対するという、株主による突然の事件だ。同社はブログにこう書いていた。「信じられないほど悲しく、残念で、不幸な結果となりました」

Bluesmart(2013〜2018)

調達総額:2560万ドル(約28億2000万円)

米連邦航空局がスマートスーツケースを禁止したことで、もっとも大きな被害を受けたのが、ニューヨークを拠点とし、5月に廃業を余儀なくされたこのスタートアップだろう。CEOのTomi Pierucciは、今年の初めに航空各社が新しい規則を適用し始めたことに対して、「完全なる茶番だ」と遠慮のない批判を行っていた。

Bluesmartの立場からすれば、彼は正しい。このスタートアップはデジタル機器が接続できるスーツケースにすべてを賭けていたが、飛行機にバッテリーパックを持ち込めない規則になってから、そのスーツケースは使えなくなった。同社はすべての販売と生産を停止し、残された技術とデザインと知的財産を、スーツケースの大手メーカーTravelProに売却した。

Doughbies(2014〜2018)

調達総額:76万ドル(約8400万円)

500 Starupsの支援を受けた、サンフランシスコを拠点とするクッキーの即日配達サービスDoughbiesは、7月、すぐに営業を中止すると発表し、すべてが砕け散った。理由は資金不足ではない。Coughbiesは儲かっていた。ただ、創設者のDaniel ConwayとMariam Khanが、別のことをしたくなったためだ。

TechCrunchのJosh Constineは、当時、Doughbiesは実際にはベンチャー投資を必要としておらず、適切な利益を生むためのプレッシャーが、Doughbiesにとって予想以上に重かったのではないかと話していた。さらば、Doughbies。

Lantern(2012〜2018)

調達総額:2150万ドル(約23億7000万円)

それ以前に失敗した数多くのスタートアップと同様、サンフランシスコを拠点とするLanternも、買収契約が成立しなかったことで廃業となった。心の健康を提供するこのスタートアップは、Nicholas Bui LeTourneauとAlejandro Foungによって設立され、ピッツバーグ大学医療センターのベンチャー部門、Mayfield、SoftTechVCといったベンチャー投資家から何百万ドルもの投資を受けていたが、企業としての目的を果たすことができなかった。

その目的とは、ストレスや不安や身体イメージに対処するための、認知行動療法の技術を利用した個人向けツールとして、モバイルアプリを提供することだった。今や多くのメンタルウェルネス系アプリがひしめくこの市場の先駆者だったLanternは、サービスを展開するのに十分な顧客を獲得できなかった。

Lighthouse AI(2014〜2018)

調達総額:1700万ドル(約18億7500万円)

スマート防犯カメラのメーカーLighthouse AIは、録画映像を自然言語処理システムで再生できる製品を提供するはずだった。しかし、その分野には数多くの製品が登場したおかげで、同社の製品は消費者の心を掴むことができなかったようだ。Lighthouse AIは今月、事業を停止すると発表した。

「高度なAIと3Dセンシングを使って、便利で簡単なインテリジェンスを家庭に届けるという、Lighthouseチームが成し遂げた画期的な仕事を、私は心から誇りに思っています」とCEOのAlex Teichmanは書いている。「残念ながら、私たちは期待していたとおりの商業的な成功を収めることができず、近い将来、事業をたたむことになりました」

Mayfield Robotics(2015〜2018)

調達総額:不明

もともとBoschの一部だったMayfieldは、かわいいホームロボットKuriを開発した。しかし、7月、同社はKuriの生産を中止すると発表し、続けて、事業を完全に停止すると発表した。

「私たちは残念でなりません」と同社はブログに書いている。「私たちは、この4年間、ともにKuriをデザインし作ってきたきただけではありません。それと同じぐらい素晴らしい企業文化と精神を育ててきました」

Rethink Robotics(2008〜2018)

調達総額:1億4950万ドル(約164億9000万円)

産業用ロボット業界の立役者であったRethinkは、iRobotの共同創設者Rod BrooksとMITコンピューター科学人工知能研究所の元主任研究員Ann Whittakerによって設立された。ボストンに拠点を起くこのスタートアップは、BaxterやSawyerといったロボットを生み出したことで、協働と教育の両方のロボティクス分野でもっとも重要な企業に成長した。

しかし残念なことに、この企業も、ロボティクス系スタートアップの起業は難しいことを示す証拠のひとつになってしまった。卓越した頭脳と1億5000万ドル近い資金を得ながらも、事業を順調に進めるだけの十分な利益を生み出すことはできなかった。最後の頼みの綱だった売却契約も成立せず、Rethinkは、10月、廃業に追い込まれた

Theranos(2003〜2018)

調達総額:14億ドル(約1544億円)

これほどドラマチックなスタートアップ物語はないだろう。正式に廃業するまでの間に、Theranosは本になり、ドキュメンタリーになり、Adam McKay監督による長編映画にもなった。創設者のElizabeth Holmes役は、ジェニファー・ローレンスが演じた。Holmesは、2003年、血液検査に革新を起こそうとこの会社を立ち上げた。そして31歳で、彼女は世界一若い叩き上げの億万長者になった。

Theranosは14億ドル(約1544億円)を調達し、ピーク時の評価額は100億ドルにのぼった。2015年、医療専門家から同社の方式に批判が集まり、翌年、米証券取引委員会が調査を開始。最終的に「大規模な詐欺」として起訴された。9月、ついに同社は解散を発表し、Holmesは50万ドル(約5500万円)の罰金を支払うことに合意した。さらに彼女は、今後10年間、公開企業での役員または取締役になることが禁止された。

Shyp(2013〜2018)

調達総額:6200万ドル(約68億4000万円)

評価額2億5000万ドル(約275億7000万円)、一流の投資家(Kleiner Perkins、Slow Ventures)から資本を与えられたShypだが、オンデマンド運送業の解散は止められなかった。サンフランシスコを拠点とし、オンデマンドの運送会社として大きなハイプサイクルを起こそうと、ベンチャー投資家からいくつものラウンド投資を受けたスタートアップだったが、サンフランシスコ湾岸地域から外へ事業を拡大することができなかった

「今日まで、200年続いたこの業界に戦いを挑んだ気力あふれる社員たちを、大いに尊敬しています」とCEOのKevin Gibbonは、その時点で書いている。「しかし、何がなんでも成長しようとすれば、罠にはまります。たくさんのスタートアップが落ちていきました。私の会社もです」

Telltale Games(2005〜2018)

調達総額:5440万ドル(約60億円)

何年間にもわたり、Telltale Gamesはアドベンチャーゲームの再開発に成功したように見えた。『ウォーキングデッド』や『ゲーム・オブ・スローンズ』や『バットマン』といったビッグタイトルで、物語の展開にプレイヤーの選択が大きく関与するゲームを作ってきた。Netflixと提携して、『マイクラフト:ストーリーモード』もストリーム配信していた。

しかしこの会社には、長年にわたり業務上の問題があったようだ。2017年11月には90名の社員が解雇され、今年の9月にはさらに250名が解雇された。最小限の社員でNetflix向けの仕事は仕上げたが、Telltaleは死んでいるように見える。その社員も退職金なしで解雇され、これまでに伝えられていたブラックぶりに毒が上塗りされた。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

セラノスがついに解散へ(WSJ報道)

Theranosがついに永遠に消滅する。Wall Street Journalの調査が同社の血液検査テクノロジーに疑問を呈してから3年近くたっての出来事だ。WSJによると、同社の劇的な墜落は ベストセラー書籍となり、Theranosファウンダー・CEO Elizabeth Holmesにジェニファー・ロペスが扮する映画も作られたが、会社から株主あてにメールが送られ、このたび正式に解散し、残った現金を近く無担保債権者に返還する旨が書かれていた。

Holmesは6月にTheranos前社長のRamesh “Sunny” Balwaniと共に有線通信不正行為の謀議2件、および実際の有線通信不正行為9件で告発されたあとCEOを辞任した。

HolmesどBalwani共に不正行為の罪で証券取引委員会(SEC)に訴追された(刑事責任はSECによる民事告訴とは別に扱われる)。SECは訴状で、両者は「長年にわたり巧妙な詐欺をはたらき、会社の技術、事業、および財務状況について誇張しあるいは虚偽の申述を行った」結果、同社は投資家から7億ドル以上の資金を調達することが可能となったと述べた。

HomesとSECは示談に至り、Holmesは50万ドルの罰金を支払い、今後10年間上場会社の幹部または役員になることを禁止された。さらにHolmesは詐欺行為で得た株式1890万株を返却し、Theranosの議決権を放棄させられる。

TechCrunchはTherenos広報アドレス宛にメールを送り、コメントを求めている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SEC、Theranosを「巧妙大規模な詐欺」として告発――エリザベス・ホームズは制裁受諾

SEC〔証券取引委員会〕は一時シリコンバレーの期待の星だったバイオテックのスタートアップTheranosにおける不正を長期間捜査していたが、このほどファウンダーのエリザベス・ホームズ、元プレジデントのラメシュ・サニー・バルワ二を大規模な詐欺を実行したとして正式に告発した。

SECの告発内容は、この2人が7億ドルを投資家から騙し取ったというのものだ。SECは2人が「数年にわたって同社のテクノロジー、ビジネス、財務実績に関して誇張ないし虚偽の発表を行うという巧妙な手口により」詐欺行為を働いたとしている。

SECによればTheranos とホームズは訴追事実について認否を明らかにしないものの、SECの課す制裁に同意して和解したという。

ホームズは50万ドルの制裁金の支払、上場企業の取締役ないし幹部への就任の10年間禁止、詐欺によって得た1890万株のTheranosへの返還、また同社のクラスB普通株をクラスA普通株に転換することにより同社の支配権を解消することに同意した。

SECはBalwaniについては連邦地方裁判所で訴追するという。

Theranosに最初に疑惑が浮上したのは2015年10月に、ウォールストリート・ジャーナルの記者でピューリッツァー賞を2回受賞しているJohn Carreyrouが驚くべき調査報道記事を発表したのがきっかけだった。当時Theraonosは90億ドルという途方もない会社評価額を得ていたが、WSJの記事は、数滴の血液で広汎な検査ができる画期的テクノロジーを開発したという同社の主張は著しく誇張されていると指摘していた。

元社員がCarreyrou記者に述べたところによれば、 Theranosが実際にラボで顧客の血液検査に利用していたのは、自社開発のものではなく、Siemensのような会社から購入した通常の医療検査用機材だったという。当時Theranosの代理人を務めていた著名な弁護士のDavid BoiesはWSJの取材に対して自社開発の検査機械を全面的に利用してはいないことを認め、移行は(時間がかかる)「旅路」だと述べた。

Theranosの社員は自社開発の検査機材の正確性について「強い疑い」を抱いていたと記事は指摘している。

しかし検査結果は何がなんでも正しくなければならなかった。最初期のTheranosの取締役だったタイラー・シュルツ(元アメリカ国務長官のジョージ・シュルツの孫)によれば、Theranos開発の機器はたびたび不正確な結果を出し、同社の社内の品質管理基準さえ満たしていなかったにもかかわらず、当時の社長、バルワニは顧客の血液検査を続けるよう社員に圧力をかけたという。

懸念を抱いたシュルツはニューヨーク州公衆医療組織に接触し、Theranosは有効性テストの過程で不正な操作を行っていると通報した。

Theranoに対する内部告発はシュルツに不利益をもたらした。シュルツが後にWSJに述べたところによれば、私立探偵に尾行されただけでなく、祖父のジョージ・シュルツとの関係もこじれ、弁護士を介してしか連絡ができないような状態になったという。しかしタイラー・シュルツの主張は連邦保健社会福祉省のメディケア・メディケイド・サービス・センターによって事実であると立証された。この結果、ホームズは昨年、血液検査業務に就くことを2年間禁じられた。Theranosの血液検査ラボは調査の結果、所定の基準を満たしていないことが判明し、すべて閉鎖された。

今回の決定はこうした一連の出来事を原因としている。SECはTheranos、ホームズ、バルワニは「投資家に対するプレゼンテーション、プロダクトのデモ、メディアに対する発表において無数の虚偽ないし誤解を招く主張を行い」、投資家を欺いたとしている。

Theranosのプレス窓口は今朝は取材を受け入れていないが、先ほど発表を行った。同社はこれまでいわゆるminiLabの販売に力を入れてきた。このデバイスは一滴の血液で多数の検査ができるというもので、昨年12月にFortress Investment Group(SoftBankの子会社)から1億ドルの借り入れを行っている。

SECと和解したとするTheranosの声明は控えめに行っても大胆なもので、「この問題に関して決着を付けられたことを欣快とする。今後はわれわれのテクノロジーのさらなる進歩を期待している」と述べている。

一方、元プレジデント、バルワニの弁護士は、別途メディア向け声明を発表し、TheranosにおけるBalwaniの役割を擁護し、SECの捜査は「不当なものだ」とした。

この声明で、バルワニのTheranosへの関与は「顕著な財政的リスク」の下になされたものであり、「同社から財政的利益を得たことは全くない」、逆に「個人的資産から数百万ドルを投資している」とした。これは「幹部として会社への異例の貢献だ」という。

〔日本版〕 SECの発表でサンフランシスコ支局長Jina Choiは「Theranos問題はシリコンバレーにとって重要な教訓だ。あるビジネスにおける革命とディスラプトを求めるイノベーターは、自分のテクノロジーが、将来こうなるだろうという希望ではなく、現在何ができるのかについて投資家に真実を告げねばならない」と述べている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

血液検査バイオのTheranos、1億ドルの資金を借り入れ――投資会社はSoftBank傘下

バイオのスタートアップ、Theranosが1億ドルの資金を借り入れることに成功した。画期的新方式の血液検査を提供するという触れ込みで登場したものの、検査結果に深刻な疑問が突きつけられて苦闘している会社に投資者が現れた。

最初に報じたのはBusiness Insiderで、Theranosへの投資家はニューヨークに本拠を置くFortress Investment Groupという未公開株式投資会社だという。同社は今年初めにSoftbankに買収されている

もちろん今回の資金調達は借り入れで増資ではないが、今年、人員の半数以上を解雇し、さらに赤字を拡大しているTheranosは運転資金を切実に必要としていた。

一滴の血液だけで200種もの疾病を検査できると主張して登場したTheranosは一時、シリコンバレーの寵児となり、会社評価額90億ドルを記録した。しかし肝心の検査結果が疑わしいことが報じられて一気に転落し、いくつもの訴訟を起こされ、連邦機関による調査の対象にもなった。共同ファウンダー、CEOのエリザベス・ホームズは自社のラボに関与することを禁じられた。ラボは閉鎖され、会社はいわばピボットを余儀なくされた。Theranosは主力業務を血液検査サービスの提供からジカ熱感染を探知する装置の製造に切り替えた。

同社はこのトラブルのせいで2015年以降資金調達ができないままだった。昨夜(米国時間12/23)、ホームズは投資家に対し、「2018を通して運営を可能にする資金を確保した」と説明したという。

Buisiness Insiderの記事によれば、この借入には、いくつかの条件が付帯しており、Theranosは所定の成果を上げることが求められると同時にFortressはTheranosの持ち分の4%のを得たということだ。

ホームズの投資家への書簡には、品質管理やコンプライアンスなどを含め、Theranosを再び軌道に乗せるためにこの1年実施してきた改革の概要が示されている。Theranosは訴訟のいくつかで和解し、ラボの実態を調査していた連邦機関、CMS(Centers for Medicare and Medicaid Services)とも和解したという。書簡でホームズは近くラボを再開できることを期待していると述べている。

ホームズはTheranosは1年半から2年以内にジカ熱テスト装置の販売ができるとしている。これは2016年に事業をピボットして以来一環して主張してきたスケジュールだ。

ホームズはまた個人向けにカスタマイズされたセンサー・システムを用いてラボによる検査業務も復活させることも期待している。Theranosはこの分野で多数の特許を保有している。

こうした一連の動きはもちろんTheranosにとってグッドニュースだ。しかし本当の問題はTheranosが公衆の目から見て一度地に落ちたイメージを回復できるかどうかだろう。われわれはTheranosが本当に復活しつつあると信じられるだろうか? ともあれ2018年の運営資金を投じたFortessはそう信じたようだ。

このニュースはクリスマスの週末という時期に飛び込んできた。同社がこれ以上の詳細を発表する意思があるとしても、それはかなり先になりそうだ。 ただしわれわれはTheranosにコメントを求めておいたので、何か判明すればアップデートする。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

大手薬局チェーンのWalgreens、血液検査スタートアップのTheranosに1.4億ドルの損害賠償訴訟

2016-11-09-walgrees-logo

アメリカ第2の規模の薬局チェーン、Walgreensは血液検査スタートアップのTheranosに対し、1億4000万ドルの訴訟を起こした。

WalgreensはかつてTheranosの最大のパートナーだった。TheranosはWalgreensのアリゾナの数店舗をビジネス運営のテストのために利用したことがある。しかし、Walgreensはこの6月、正式にTheranosとの提携を解消した。WalgreensはTheranosの検査結果多数が無効とされたこと、運営に対して連邦当局の調査が行われたことを理由としている。 提携解消は「直ちに有効となる」とされた。

この発表の際、Walgreensの一般ヘルスケア事業開発担当上級副社長、Brad FluegelはTechCrunchに対してこう説明している。「多数の血液検査結果が無効とされたこと、連邦政府のメディケア・メディケイド・サービスセンターがTheranosの運営改善計画を不十分として制裁措置を発動したこと、これらの事実に照らしてTheranosとの関係を解消することがWalgreesの顧客の利益を守るために必要であると判断されるに至った」。

訴状によると、WalgreensはTheranosが契約の条件として合意した秘密保持契約(NDA)に定めた条項を破っていくつかの情報を公開したとしている。

Theranosとファウンダーのエリザベス・ホームズに対する契約不履行や血液検査テクノロジーの欠陥を理由とする訴訟の数は増え続けているが、Walgreesの訴えはその最新のものだ。

WalgreensはTheranosに対して訴を起こしたことは確認したが、それ以上の詳細についてはコメントを避けた。 Wall Street JournalのJohn Carryrou(Theranosの虚偽に関して最初にレポートした記者)は「WalgreensはTheranosに対し、デラウェア州で1億4000万ドルの訴訟を起こした」とツイートしている。

われわれの問い合わせに対してTheranosは回答しなかった。

画像: Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ヘッジファンドが医療スタートアップのTheranosを訴える―「虚偽、重大な説明の誤り」と主張

2016-10-12-elizabeth-holmes31

サンフランシスコに本拠を置くヘッジファンドのPartner Fund Management (PFM)は、 2014年に9600万ドルを血液検査スタートアップのTheranosに出資したと報じられているが、昨日(米国時間9/10)、同社はTheranosとそのファウンダー、エリザベス・ホームズを訴えたことが明らかになった。

PFMは契約締結にあたってTheranosが「一連の虚偽の説明をし、重要事項について誤った説明をし、また説明を省いたこと」によって不当に投資に誘い込まれたとしている。同時にPFMは「Theranosは証券詐欺その他の法律違反を含むこれら不法行為によってPFMに投資を決定させ、継続させた」と主張している。

PFMが名を連ねている 1億9800万ドルのシリーズC-2ラウンドの資金調達の結果Theranosは90億ドルの企業価値と評価されことになった。Fortuneは2014年6月にこのラウンドに関連してエリザベス・ホームズに好意的論調の記事を書いている。Forbesは後にこの記事に長文の訂正を追加した。

Wall Street Journalによれば、月曜にPFMが投資家に送った書簡で同社がデラウェア州の裁判所に訴を起こしことが明らかになった。PFMは「ホームズと他の経営幹部はPFMNに対して『Theranosが独自に所有権を有し、有効に稼働するテクノロジーを開発した』という明白極まる虚偽を告げた」としている。またTheranosはこのとき「行政の承認は間もなく得られる」と語ったという。

Theranos側では「この訴には根拠がなく、Theranosは断固として争う」と述べた。

先週、Theranosはラボ業務を閉鎖し、 340人(全社員の40%)を解雇した。同社は血液検査ではなく小型の医療検査機械の開発に集中していくとしている。

しかしこのミニチュア・ラボは8月にフィラデルフィアで開催されたカンファレンスで発表されたものの、科学者や医師その他の医療関係者からの評価は低かったTechCrunch記事)。

画期的とされる新テクノロジーの内容がどの専門誌の記事、論文によっても裏付けられていないことに気付いた専門家がTheranosに疑問を呈し始めたのは1年以上前になる。その後、Wall Street JournalはTheranosのテクノロジーは現実に使われているのかというさらに深刻な疑問を抱いた。連邦政府の機関がTheranosを精査した結果、この7月にホームズは、すくなくとも向こう2年間、医療検査業務に携われることを禁止された

Wall Street Journalを含む多数の記事によれば、2003年に公式に設立されて以來、Theranosは7億5000万ドルの資金を調達している。CrunchBaseには初期の投資者として、DFJ、ATA Ventures、Continental Ventures、Tako Venturesなどの名前が上がっている。2015年10月のFortuneの記事によると、レイト・ステージの投資家には、BlueCross BlueShield Venture Partners、Continental Properties Co.、Esoom Enterprise(台湾)、Jupiter Partners、Palmieri Trust、Dixon Doll、Ray Bingham、B.J. Cassinらが含まれる。

Wall Street Journalがインタビューした情報源によればPFMは投資の返還と損害賠償を求めている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

血液検査で疑惑のTheranos、当局が免許取り消しとファウンダーElizabeth Holmesの2年間就業禁止を検討

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

Theranosは近くホームレス化するかもしれない。連邦規制当局は ファウンダーのエリザベス・ホームズを血液検査業務への就業を2年間禁止し、カリフォルニアの同社の免許を取り消すことを検討している。

このニュースはWall Street Journalで最初に報じられたが、保健社会福祉省のメディケア・メディケイド・サービス・センターは、3月18付書簡で免許取り消しとホームズの就業禁止に加えてプレジデントのSunny Balwaniが医療関係企業を所有、運営することを少なくとも2年禁止するという制裁の意向を明らかにしていた。

業務が禁止される地域にはカリフォルニアとアリゾナの両州が含まれる。取り消される免許はカリフォルニアのニューアークとパロアルトの施設だ。Theranosが運営能力と情報公開における正確性の改善の要求に応えることに引き続き失敗するなら、これらの制裁が実施される運びになるといいう。

こうした制裁は現在90億ドルに評価されている同社にとって大きな経済的打撃となる。 Theranosは調達した資金が7億ドルほど銀行にあるはずだが、業務の運営にあたっては2つのラボからの売上が大きな役割を果たしていた。同時にファウンダーとプレジデントが追放さればTheranosは回復不可能な状況に陥る可能性がある。

書簡は一般に公表されたものではないが、そのコピーはWSJのこちらの記事に掲載されている。

これによるとCMSはTheranosに書簡の日付から10日間の猶予を与えている(この期限は数週間前に過ぎている)。

昨年6月1日から9月21日の期間で、Theranosは医療機器の操作にあたって資格をもち正規の訓練を受けた人材を当てることを怠り、無資格の社員に血液検査の結果を読み取らせ、検査結果の正確性を確保するため機器のメーカーが文書によって指示した正しい操作方法によるカリブレーションを行わなかった。

Theranosは2月にこれらの点を改善する計画を発表したが、3月18日の書簡でCMSは「これまでのTheranosの対応は不十分である」としている。

先週、TheranosはTechCrunchのインタビューに答えて「問題点を改善することをCMSに約束した」と述べていた。これにはニューアーク施設に正規の資格をもった新しい責任者を任命することも含まれていた。

Theranosは連邦当局による制裁を免れるために、同社が十分な対応を行ったことを証明しなければならない(制裁措置には、指示に従わなかった1日ごとに最高1万ドルに上る罰金も含まれる)。

Theranosの広報担当Brooke BuchananはTechCrunchに対し「CMSは現在制裁を実行していない。Theraosは3月18日の書簡に対して10日以内に適切に対応ずみだ。〔CMSの書簡はこうした場合に〕通常の手続きにすぎない。いずれにせよ、制裁が現に実行される場合を除いて、純粋に仮定の話題だ」と述べた。

画像: Mate Marschalko/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+